事業の背景と目的
2023年8月、東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理水の海洋放出が開始されました。これに対し、中国・香港・マカオ等が日本産水産物に対する輸入規制を大幅に強化した結果、北海道産ホタテをはじめとする水産品の輸出が激減する事態となりました。特にホタテは国内生産量の約40〜50%が中国向けに輸出されていたとされており、その打撃は北海道漁業・水産加工業にとって深刻なものでした。
本事業「ALPS処理水関連の輸入規制強化を踏まえた水産業の特定国・地域依存を分散するための緊急支援事業(国内販路拡大等支援事業)」は、こうした状況を踏まえ、農林水産省が令和6年度に実施した緊急支援パッケージの一環です。輸出依存度の高い水産品の国内販路を拡大することで、特定国・地域への依存からの脱却と、水産業経営の安定化を図ることを目的としています。
事業の仕組み(二段階補助方式)
本事業は、国が直接個々の水産事業者を支援するのではなく、「執行団体(事務局)」を公募・採択し、その執行団体が水産事業者(間接補助先)への支援を実施するという二段階補助方式を採用しています。
- 第一段階:農林水産省が執行団体(事務局)を公募・選定。補助総額約10.1億円が定額で交付される。
- 第二段階:採択された執行団体が、公募要領に基づき間接補助先(漁業者・水産加工業者・流通業者等)を選定し、国内販路拡大のための取組を支援する。
この方式により、業界全体を俯瞰できる業界団体・協同組合等が事務局として機能し、個々の事業者への支援を効率的・効果的に届けることが期待されています。
申請対象・要件
執行団体(事務局)の要件
- 法人格を有すること(株式会社、協同組合、一般社団法人等)
- 水産業に関連する事業または支援実績を有すること
- 間接補助先の選定・管理・実績報告を適切に行える体制を有すること
- 補助金の適正執行に必要な財務・コンプライアンス体制を有すること
間接補助先(水産事業者)の要件
- 漁業・水産養殖業・水産加工業・水産物流通業等に従事する事業者
- ALPS処理水関連の輸入規制強化の影響を受けた品目(ホタテ等)を取り扱っていること
- 国内販路拡大の具体的な取組を実施する意志・能力があること
支援対象となる取組の例
- 国内小売業者・外食チェーン・食品加工業者との商談会の開催・参加支援
- 消費者向けプロモーション・広告宣伝活動(SNS、TV、WEB等)
- 試食会・料理イベントを通じた消費者認知の向上
- ECサイト・通販チャネルの構築・強化
- ブランディング・パッケージデザイン改善
- 新商品・加工品の開発と国内向け販売促進
- ふるさと納税・ギフト需要の開拓
- 学校給食・病院食・介護食向け販路開拓
補助金額・補助率
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 補助総額 | 約10.1億円(定額) |
| 補助方式 | 定額補助(執行団体への補助) |
| 間接補助先への補助率・上限 | 公募要領参照 |
執行団体への補助は定額方式のため、採択団体は予算の範囲内で間接補助先への支援を設計・実施します。間接補助先が受け取れる金額・補助率の詳細は公募要領に定められています。
スケジュール
本事業は令和6年度(2024年度)の緊急支援事業として公募が実施されました。現在の公募は受付終了となっています。後継事業・追加公募の可能性については農林水産省の公式情報を随時確認してください。
申請のポイント
- 政策目的との整合性を明示する:ALPS処理水問題への対応という緊急性・公益性を前面に出した事業計画を策定する。
- 執行団体としての実績・体制を証明する:過去の補助金事務局運営実績、傘下組合員・会員数、財務健全性をアピールする。
- 具体的な支援設計を示す:間接補助先の選定基準、支援メニュー、目標値(販売額・取引先数等)を定量的に示す。
- 迅速な申請準備:緊急支援事業のため公募期間が短い場合がある。公募開始前から準備を進める。