室谷さん、最近「人を雇いたいんだけどお金が心配」って経営者からの相談が増えてますよね。雇用に使える補助金や助成金って、そもそもどのくらいあるんですか?
ほんとに多くて、正直全部把握しきれないくらい(笑)。大きく分けると厚生労働省が管轄する「雇用関係助成金」と、経済産業省・都道府県が出す「補助金」の2系統があって、合計すると常時30〜50本は動いてます。
えっ、そんなに!? 知らない経営者の方がほとんどじゃないですかね。
そうなんです。特に厚労省の助成金は要件を満たせば原則として受給できるという設計なので、競争審査のある補助金より現実的に受け取りやすい。だから雇用関連は助成金から攻めるのが定石ですね。
シンプルに言うと財源と難易度が違います。助成金は雇用保険料が財源で「要件さえ満たせば通る」。補助金は税金が財源で「審査があって競争がある」。雇用・職場改善の話なら助成金メインになりますね。
| 比較 | 助成金 | 補助金 |
|---|
| 財源 | 雇用保険料 | 税金(一般会計) |
| 管轄 | 厚生労働省 | 経産省・都道府県等 |
| 審査 | 要件充足で原則受給 | 競争審査あり |
| 申請時期 | 通年募集が多い | 公募期間が限定的 |
| 後払い? | 取り組み後に支給 | 基本的に後払い |
ここで大事なポイントを一つ。助成金は「先に行動してから申請する」後払い設計なんですよ。例えばキャリアアップ助成金なら、非正規を正社員にしてから申請する。だから資金繰りはしっかり組んでおく必要があります。
なるほど、先に使ってから返ってくるんですね。GビズIDとか事前準備って必要ですか?
GビズIDはe-GOVでの電子申請に必要で、作るのに2〜3週間かかります。助成金の電子申請を考えてるなら今すぐ申請しておいた方がいい。あと雇用保険・社会保険の適用状況も事前に整えておかないと対象外になりますよ。
雇用・採用系の主要助成金比較図
じゃあ具体的にどの助成金がおすすめなのか教えてください!
整理しますね。まず「賃上げ×雇用改善」「採用×定着支援」「働き方改革」「テレワーク」の4つに分けて考えると理解しやすいです。
最初に聞きたいのが業務改善助成金です。上限600万円って相当大きいですよね。
これは中小企業・小規模事業者の「最低賃金引き上げ+設備投資」を支援する制度です。事業場内の最低賃金を30円以上引き上げて、生産性向上につながる設備を入れれば助成が受けられる。補助率は3/4〜4/5なんで、実質負担がかなり軽くなります。
90円コースを選んで、設備投資を複数同時に実施すれば上限600万円に届きます。機械設備だけじゃなくてコンサルティング費用や人材育成費用も対象なのが地味に助かる。ざっくり30人未満の事業場なら30円コース1件で最大60万円からスタートできます。
次は採用・定着系でいちばん使われてる助成金ですね。パートやアルバイトを正社員に転換すると、中小企業なら1人あたり最大80万円もらえます。重点支援対象者(母子家庭のお母さんや障害者など)を正社員化した場合の金額です。
それでも最大40万円。3人転換で120万円になるんで、非正規雇用が多い会社は計画的に活用すると相当な資金になりますよ。
転換前に就業規則に「正社員転換規定」を盛り込んでおく必要があります。転換後に申請しても、事前に就業規則が整備されてないとアウト。これを知らずに後から「もらえるはずだった」って後悔する会社が多いんです(笑)
働き方改革推進支援助成金って種類がいっぱいありますよね。
そうなんです。大きく分けると「団体推進コース以外」が最大1,270万円、「業種別課題対応コース」と「団体推進コース」が最大1,000万円、「労働時間短縮・年休促進コース」が最大730万円です。
「勤務間インターバル導入コース」も気になりますが。
こっちは終業から翌日の始業までに最低9時間の間隔を設ける制度を導入する助成金です。最大600万円で補助率3/4。連続勤務を防ぐ制度を作るだけで助成がもらえるので、従業員の健康維持を考えてる会社には絶対に使ってほしいですね。
働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)のページも参考にしてみてください。
就職困難者の採用支援って、具体的にどんな人が対象ですか?
高年齢者(60歳以上)、障害者、母子家庭の母、生活保護受給者などです。ハローワーク経由で採用すると、中小企業の場合は1人あたり最大240万円(重度障害者等・3年コース)もらえます。高年齢者・母子家庭の母等は60万円(1年コース)が上限です。
支給期間が1〜3年かけて分割なので、月々の人件費補助として機能します。就職困難者の雇用は社会的意義もあるし、助成も手厚いし、一石二鳥の制度ですね。
「まず試しに雇ってみたい」って場合はどうすればいいですか?
それがトライアル雇用助成金です。職業経験が少ない方を3ヶ月間試行雇用すると、月最大8万円(障害者の方は最大12万円)もらえます。3ヶ月間で最大24万円の補助がつくので、採用ミスマッチのリスクを減らしながら雇えます。
原則はハローワーク紹介経由です。ただ最近は紹介会社経由でも対応できるケースが出てきてますよ。
社員の育成・スキルアップに使える助成金もありますよね?
人材開発支援助成金です。社員への研修・OJT・資格取得にかかった費用を助成してくれます。Off-JTなら経費の45〜75%、訓練中の賃金も最大960円/時間補助されます。
使えます。人材育成支援コースなら社内のOJTからeラーニングまでカバーしていて、特に「デジタル人材育成訓練」の場合は補助率がさらに上がります。ITスキルを身に付けさせたい会社に特におすすめですね。
両立支援等助成金ですね。「出生時両立支援コース(子育てパパ支援)」で、男性社員が育休を取れる環境を作ると最大140万円もらえます。最近この制度の認知度が一気に上がってきました。
「育児休業等支援コース」で対応してます。育休取得後に職場復帰させたら、1人あたり最大145万円支給されるコースもあります。少子化対策の観点から国が力を入れてる分野なので、金額が手厚いです。
テレワークの導入支援は東京都が充実してるんですよね?
そうです。「テレワークトータルサポート助成金」が令和7年度版で、最大250万円、補助率は従業員30人未満なら2/3です。テレワーク用のPCや業務ソフト、VPN構築費用まで対象になります。詳細は
テレワークトータルサポート助成金で要件を確認してみてください。
「育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金」があります。上限100万円で育児・介護中の従業員向けのテレワーク環境整備に特化した制度です。就業規則の見直し費用も対象になるのが嬉しい。詳細は
育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金で確認できます。
東京都の場合はさらに「テレワーク導入ハンズオン支援助成金」もあって、テレワーク導入が難しい業種向けに専門家のコンサルティングとセットで最大250万円支援してくれます。従来型の対面業種でも意外と使えることが多いですよ。
最近「年収の壁」の話が多いですけど、これに関連した助成金もありますか?
あります!「年収の壁対策支援奨励金」で、配偶者への家族手当のしくみを見直した東京都内の中小企業に最大10万円の奨励金が出ます。金額は小さいですが、制度見直しのきっかけにはなりますね。詳細は
年収の壁対策支援奨励金を参照してください。
「団体経由産業保健活動推進助成金」です。事業主団体が傘下の中小企業に産業医・保健師のサービスを提供する場合に、最大1,000万円、補助率9/10という手厚い制度です。業界団体や商工会が動けば傘下企業全体が恩恵を受けられます。
団体経由産業保健活動推進助成金の詳細もご確認ください。
雇用関連補助金フロー図
ここまで15本以上紹介していただきましたが、どれを選べばいいか整理できますか?
| 目的 | おすすめ助成金 | 上限額 |
|---|
| 最低賃金引上げ+設備 | 業務改善助成金 | 600万円 |
| 非正規→正社員化 | キャリアアップ助成金 | 80万円/人 |
| 労働時間短縮 | 働き方改革推進支援助成金 | 730〜1,270万円 |
| 就職困難者の採用 | 特定求職者雇用開発助成金 | 最大240万円/人 |
| 試行雇用 | トライアル雇用助成金 | 8万円/月 |
| 社員研修・育成 | 人材開発支援助成金 | 最大100%助成 |
| 育休取得推進 | 両立支援等助成金 | 140〜145万円 |
| テレワーク導入 | テレワーク促進助成金 | 250万円 |
テレワークの重複を除いても8種類ありますね。中小企業が一番最初に使うべきはどれですか?
最低賃金の引き上げを考えてる会社なら業務改善助成金、非正規が多い会社はキャリアアップ助成金が最初の選択肢です。どちらも制度の設計が比較的シンプルで、要件を満たせば受け取れる確率が高いですよ。
いくつかあります。まず「事前着工禁止」。補助金の場合は採択通知の前に工事や発注をしてしまうと対象外になります。助成金も同じで、制度によっては「計画書の届出前に行動してはいけない」という縛りがあります。
めちゃくちゃ多いです(笑)。急いで人を採用してから「そういえば助成金があったな」と気づいても、手続き順序を間違えると失格になることがある。特にキャリアアップ助成金は「就業規則の整備→採用→転換申請」という順番が大事です。
1ハローワーク・都道府県労働局に制度内容と要件を確認
2GビズID(電子申請用)を事前に取得(2〜3週間かかる)
4計画書・届出書を提出(着工・採用前に必要な場合あり)
- 雇用保険・社会保険の加入状況が適正でないと対象外
- 過去に「不正受給」があった場合は一定期間申請不可
- 申請は取り組み「後」が基本。事前着工・事前採用は失格の原因に
- 社会保険労務士への相談は無料窓口(都道府県産業労働局)も活用できる
そうなんです。書類申請で2〜3週間、急ぎの場合でも即日は無理です。「申請したい!」と思ったらまずGビズIDの取得を動かすのが鉄則ですよ。
助成金は社会保険労務士が得意とする領域で、複雑な制度設計や書類作成を代行してもらえます。成功報酬型が多いので「申請できなかったら費用ゼロ」の先生も多い。複数の助成金を同時活用したいなら専門家に相談した方が効率がいいですね。
使えます!実は複数の助成金を組み合わせるのが上手な会社の共通点です。例えば「キャリアアップ助成金で非正規を正社員化」しながら「両立支援等助成金で育休環境を整備」して「人材開発支援助成金で研修費を補填」する、という3本立ては十分現実的ですよ。
しかも重複申請NGの組み合わせは限られていて、多くの場合は並行して動かせます。ただし書類管理が大変なので、年間計画を立てて優先順位をつけるのが大事です。ざっくり言うと、まず金額の大きい制度から攻めるのが基本戦略ですね。
助成金の場合は「要件を正確に満たす」こと、これだけです。競争審査じゃないので、書類が整っていれば基本的に通ります。補助金の場合は事業計画書の「新規性・将来性・数値目標の具体性」が採択率を左右します。ここは社会保険労務士や中小企業診断士と一緒に書くのが効果的ですね。
今日は盛りだくさんでしたね。改めてポイントをまとめていただけますか?
雇用・職場改善の補助金・助成金は大きく2系統あります。厚生労働省の雇用関係助成金は「要件を満たせば原則受給できる」制度設計なので、要件確認→書類整備→申請という流れを丁寧に踏めば受け取れます。経産省・都道府県の補助金は競争審査ありですが、テレワーク促進助成金のように採択率の高い制度も多い。
今日紹介した助成金、全部でいくらくらいになりますか(笑)?
計算したら軽く3,000万円は超えますよ(笑)。もちろん全部同時に受け取れるわけじゃないですけど、計画的に取り組めば中小企業でも年間数百万円は十分にありえます。人を採用したり育てたりするコストは今後も上がる一方なので、使える制度は全部使ってほしいですね。