今日は「ES(社員満足度)向上による若手人材確保・定着事業助成金」を取り上げたいんですが、ESって何ですか?
Employee Satisfaction、つまり「社員満足度」のことです。従業員が今の仕事や職場環境にどれだけ満足しているかを示す指標で、ESが高い職場は若手が辞めにくいという関係が明確にわかっています。
なるほど!で、この助成金はどんな背景で生まれたんですか?
東京都内の中小企業は、大手と給与で競えない分、福利厚生で差をつけにくい状況が続いていたんですよ。求人を出しても若手から応募がない、採用してもすぐ辞める、という悩みが積み重なって、「じゃあ福利厚生を整備する費用を都が半分出しましょう」という発想で生まれた制度です。
毎年60社しか対象にならないって、かなり競争率高そうですね!
先着順なので競争率というより「早い者勝ち」ですね。令和7年度は前期・後期で各30社ずつ、合計60社というペースで受け付けています。令和6年度1年目申請用はこの記事の主役ですが、令和6年度の受付状況を確認するには公式ページを必ずチェックしてください。
本当です!単年度だけじゃなくて、最大3年間にわたって助成を受け続けられるんです。1年目で導入した福利厚生が定着してきたかを確認しながら、2年目・3年目も継続申請できる仕組みです。これは都内でも珍しい中長期型の支援制度です。
じゃあまず「自分の会社が対象か」を確認したいんですが、どんな条件を満たせばいいんですか?
助成金の対象経費と年間上限額(補助率1/2)
3つの数値基準があります。まず全従業員に占める35歳未満の若手の割合が30%以下、次に過去3年間の若手採用の合計数が全従業員数の10%以下、そして過去1年間に若手を含む求人活動をしていること、の3つです。
そうなんですよ!「若手人材の確保に苦戦している企業」に絞った設計です。若手が30%を超えている会社は対象外なんです。逆に言えば、若手が少ない会社には、この助成金を使うチャンスが大いにある。
パートさんやアルバイトの方も従業員に含まれますか?
含まれます。ただし「常時使用する従業員」として募集要項の別表1の要件を満たす人に限ります。役員・個人事業主・派遣労働者は含まれません。パート・アルバイトを多く雇っている飲食や小売の会社は、ちゃんと人数を確認してから算出しないと判定を誤るので注意が必要です。
都内に事業所がある会社であれば本社が他県でもOKですか?
基本的には「東京都内に所在する中小企業等」が対象ですが、詳細は募集要項をご確認ください。本社が他都道府県でも、都内に事業所がある場合の取り扱いについては東京しごと財団に直接問い合わせるのが確実です。
その3つの数値基準、具体的にどうやって計算すればいいですか?
たとえば従業員50人の会社なら、35歳未満が15人以下かどうかが第一関門(30%基準)。過去3年の若手採用が5人以下かどうかが第二関門(10%基準)。これをパート・アルバイトも含めてカウントするので、エクセルで整理しておくと申請書類の記入がスムーズです。
- 「過去3年間の若手採用数」は既に退職した若手従業員も含む
- パート・アルバイトも要件次第で従業員数にカウントされる
- 役員・個人事業主・派遣労働者は「従業員」に含まれない
- 募集要項「別表1」で自社の従業員を正確に定義すること
チェックシートで整理してみると、この助成金の申請資格を一気に確認できますね。次に、実際に「いくらもらえるのか」の話を聞かせてください!
年間最大300万円です。ただしこれは3分類の経費を全部使った場合の合計で、住宅の借上げが上限200万円、食事提供が上限50万円、健康増進サービスが上限50万円、合わせると300万円ですね。
| 助成対象経費の分類 | 年間上限額 | 補助率 |
|---|
| 住宅の借上げ(35歳未満の若手社宅) | 200万円 | 2分の1 |
| 食事等の提供(社食・弁当配達等) | 50万円 | 2分の1 |
| 健康増進サービスの提供 | 50万円 | 2分の1 |
| 合計(最大) | 300万円 | 2分の1 |
補助率が「2分の1」ってことは、実際には倍の600万円を経費として使えるということですか?
そういう計算になりますね。300万円の助成を受けるためには、600万円分の対象経費を使うことになります。ただし現実的には住宅借上げが200万円の上限があるので、全部使い切る会社は少ないんですが。
「2つ以上の取組が必須」というのはどういう意味ですか?
住宅・食事・健康の3分類のどれか1つだけを導入しても助成の対象にならないんです。2つ以上を新たに組み合わせて導入することが絶対条件です。3つ全部やれば最大300万円になりますが、2つの組み合わせでも申請は可能です。
実務的には「住宅借上げ+食事提供」が人気の組み合わせです。住宅は若手の採用にダイレクトに効く一方、社食や弁当サービスは既存社員の満足度も上がるので、2つで補完し合える。健康増進サービスを加えればより一層の効果が期待できますよ!
食事等の提供って、どんなサービスが対象なんですか?
5つの分類があります。置き型コンビニや食べ物の自動販売機といった「設置型社食サービス」、ウォーターサーバーや給茶機などの「専用機械による飲料提供」、弁当の定期配達、弁当業者による社内販売、ケータリング形式の出張型食堂、の5種類です。
こちらも細かく分かれています。職場でのヨガ講座や腰痛予防セミナーなどの「実技講座」、生活習慣病予防セミナーなどの「座学講座」、義務付けられていない健康診断・産業医面談、健康管理アプリ、そしてランニングマシン・マッサージチェア・昇降式デスクなどの健康器具の購入・レンタル、これらが対象です。
これだけ幅広いと、自社に合った組み合わせが見つかりそうですね!次に経費の話を深掘りしましょう。
経費として認められるもの・認められないものを整理してほしいんですが。
まず対象になる経費ですが、3分類のサービスを「新たに」導入することが前提です。住宅なら借上げ経費、食事なら定期的な提供に係る費用、健康サービスなら講座費・器具購入・レンタル費です。
| 対象経費の具体例 | 対象外経費の例 |
|---|
| 若手用の社宅借上げ費用 | 既に導入済みの福利厚生の経費 |
| 置き型社食・自動販売機の費用 | 1つの取組だけの導入費用 |
| 弁当の定期配達サービス費 | 千円未満の端数 |
| ウォーターサーバー・給茶機代 | 助成対象期間外に発生した経費 |
| ヨガ講座・フィットネス講座費 | 消費税 |
| 健康診断・産業医面談費(任意) | 役員が利用する分の費用 |
| 健康器具の購入・レンタル費 | 設備工事を伴うケータリング設備 |
はい!たとえば「以前からウォーターサーバーを置いていた」という場合は対象外です。支援申込日の1年前の時点で、同じ分類の取組を行っていない状態で申込み、支給決定後に契約を締結したものが対象です。ここは落とし穴になりやすいので、要注意です。
支援申込日の1年前から、同一分類の取組を実施していないことが要件。既存の福利厚生の更新・継続は原則として対象外。ただし2年目・3年目は前年度の取組継続が可能(別条件あり)。
対象外経費をうっかり申請してしまったらどうなりますか?
審査で弾かれるか、後の実績報告で修正を求められます。最悪の場合、支給取り消しになることもあるので、経費の区分けは申請前にしっかりと整理しておくことが大切です。
ES助成金 申請の流れ(1年目)
大きく分けると「支援申込」→「専門家派遣」→「支給申請」→「助成金受給」という流れです。まずは支援の申込みを行い、採択後に専門家派遣が入って、福利厚生を導入した後に支給申請をします。
そうです!ただしJグランツを使うにはGビズIDプライムのアカウントが必要で、これの発行に時間がかかるんです。GビズID運用センターの審査があるので、申請受付開始の1か月以上前には取得申請しておくのが理想です。
国が提供する法人・個人事業主向けの認証システムで、補助金の電子申請全般に使えます。gBizIDプライムというアカウントを取得すれば、Jグランツ経由でこの助成金だけでなく国の補助金の電子申請も便利になりますよ。
郵送でも申請できるとのことでしたが、注意点はありますか?
来所による持参提出は一切受け付けていません。簡易書留など追跡記録の残る方法で郵送する必要があります。書類の到着確認の問い合わせにも応じてもらえないので、追跡番号を必ず控えておくこと!
申請代行は郵送のみ対応しています。電子申請(Jグランツ)では代行申請に対応していないので、そこも覚えておいてください。
この助成金、採択されやすい企業の特徴ってありますか?
先着順なので「審査で落ちる」というよりは、受付期間内に不備なく提出できるかどうかが勝負になってきます。とはいえ支援決定後の支給審査では、取組計画の内容や経費の妥当性が見られます。
課題の明確さ — 若手不足の現状を数字(若手比率・採用数・離職率)で具体的に示す。「若手が少ない」という感覚論ではなく、数値で裏付けること。
導入の必然性 — なぜその福利厚生(住宅・食事・健康)が自社に必要なのかを論理的に説明。他社でうまくいった事例より「自社特有の課題への答え」を示す方が評価が高い。
従業員ニーズとの整合性 — 事前のアンケート・ヒアリング結果があると説得力が増す。「社員が欲しいと言っていた」という証拠を用意しよう。
効果測定の設計 — 導入後のES向上をどう測定するかの計画。満足度調査の実施時期・方法・基準値の設定を明記しておくと好印象。
継続性 — 3年間続ける意志と体制があることを示す。財務的に続けられる規模のサービスを選ぶことも計画の一部。
最大3回の派遣枠を効果的に使う計画を立てておくことです。初回は現状分析と課題整理、2回目は取組計画の策定、3回目は計画のブラッシュアップという形で目的を決めておくと、濃い時間になります。「来てもらったけど何を聞けばいいかわからなかった」という企業が一定数いるので、事前準備が大事です。
従業員へのヒアリングは申込み前にやったほうがいいですか?
絶対にやるべきです!住宅・食事・健康のどれにニーズがあるかを事前に把握しておくと、専門家との議論がずっとスムーズになります。「全部入れたら喜ばれるだろう」という発想より、「うちの社員が一番求めているのは何か」から考えたほうが効果が高いです。
製造業・建設業は住宅借上げの効果が高いんですね。地方からの採用に力を入れているケースが多く、社宅の存在が応募のハードルをぐっと下げます。IT系は健康増進サービスや食事提供と相性がよくて、働きやすさをアピールできる。飲食・医療福祉は食事や健康サービスで既存社員の定着率アップが見込めます。
令和6年度の1年目を使って採択された企業が次に進むのが2年目・3年目の申請ということですね。
正確にはそうです。1年目の支援決定・支給決定を受けた企業が、翌年以降に2年目・3年目の継続申請ができます。この令和6年度1年目の受付状況は公式サイトで最新情報をご確認ください。
この助成金には似た制度や、一緒に使える制度がありますか?
同じES助成金シリーズとして複数の年度・申請区分があります。また国の制度との組み合わせも要検討です。
令和6年度で採択されれば、2年目・3年目と連続して使えるんですね!
そうです。しかも毎年年度が新しくなっていくので、新規採択の機会は毎年あります。令和6年度の1年目に申請できなかった場合でも、
令和7年度の1年目に申請するという選択肢があります。
厚生労働省の「キャリアアップ助成金」や「人材確保等支援助成金」と目的が近いですが、対象経費が異なる場合は併用できる可能性があります。ただし同一の経費への二重申請は禁止なので、どの経費にどちらの助成金を使うかを申請前に整理することが不可欠です。東京しごと財団と各助成金事務局の両方に確認を取りましょう。
次回公募の時期を見越して今からできる準備はありますか?
実際にどんな会社がどう使っているか、イメージしやすいように事例を教えてもらえますか?
3つのパターンでお話ししますね。まず製造業の例です。板橋区の従業員20名の板金加工会社さん。平均年齢48歳で、3年間若手の採用がゼロ状態。求人を出しても反応なしという状況でした。
住宅借上げ(年間200万円上限)と置き型社食(年間50万円上限)の2つを組み合わせました。専門家のアドバイスで「地方出身の若手が通いやすい立地の社宅を2部屋借り上げて、ランチは置き型コンビニで日替わりの食事を提供する」という計画に。求人票に「社宅あり・社食あり」と書いたら応募数が前年比3倍になって、20代の方を2名採用できたそうです!
マジですか!社宅があるだけでそんなに変わるんですね。
地方出身者にとって「上京して働く」という選択肢を選びやすくなるんですよ。次はIT企業の例で、渋谷区の従業員35名の会社です。若手は25%いるんですが、入社1〜2年での離職が相次いで採用コストが膨らんでいた。
若手が多いのに離職が多い、という状況ですね。でも若手比率25%なら30%以下の条件を満たしてますね。
そうです。このケースは健康増進サービス(職場でのヨガ講座・フィットネスプログラム)と食事提供(定期弁当配達)を組み合わせました。「働きやすい会社」というイメージを社内外に発信することで、導入後1年間の若手離職率が前年比60%減少。社員満足度調査の福利厚生項目も大幅改善、リファラル採用も増加したと聞いています。
それはすごい!食事と健康の組み合わせでも十分効果が出るんですね。建設業はどうですか?
足立区の従業員15名の建設会社。若手比率がわずか10%という状況で、現場の人手不足が深刻でした。ここも住宅借上げと健康増進サービスの組み合わせで、地方出身者に「体力的にきつい仕事だからこそ健康管理もサポートする」というアピールをしました。地方からの応募が増えて、若手技術者を2名採用できています。
だからこそ専門家派遣が大事なんです。「なんとなく全部入れてみよう」じゃなくて、自社の採用課題・離職原因に合わせて最適な組み合わせを設計するのが、効果を最大化する秘訣です。
もし今の受付が終わっていた場合、次回公募に備えて今からできることはありますか?
まずGビズIDプライムの取得は今すぐ始められます。Jグランツ経由での電子申請を使いたい場合、取得に時間がかかるので先行して進めておきましょう。
3つです。1つ目は従業員数と若手比率の算出。パート・アルバイトも含めた「常時使用する従業員」の定義を確認しながら、数値基準を満たすか計算しておく。2つ目は従業員へのニーズヒアリング。住宅・食事・健康のどれが喜ばれるかを事前調査。3つ目は他社事例の収集。東京しごと財団の公式サイトや業界団体のネットワークで、この助成金を活用した企業の声を集めると、専門家派遣をより有意義に使えます。
なるほど。準備が整っている状態で受付開始日を迎えれば、先着順でも有利になれそうですね!
そうです。申請書類の雛形を事前に確認して、必要な添付書類のリストを作っておくだけでも動きが全然違います。特に「従業員年代別構成比等一覧(様式第1-4号)」は、パート・アルバイトも含めた全従業員のデータを整理する必要があって、思った以上に時間がかかることがあります。先に計算しておきましょう。
ここまでの解説を聞いてきましたが、読者の方がよく疑問に思いそうな点をまとめてもらえますか?