室谷さん、うちのクライアントにコンサルタント会社や調査機関が増えてきたんですけど、「補助金って自分たちも使えるの?」って聞かれることが増えてきて。製造業じゃないから対象外だと思ってる人が多いみたいで。
ああ、それよくある誤解ですね。学術研究・専門サービス業って、補助金の対象業種として明確に記載されてることが多いんですよ。コンサルタント、調査会社、設計事務所、研究機関、知財事務所、弁理士事務所……どれも使える制度が85件以上あります(笑)。
しかも国の制度だと大型のやつがゴロゴロあって。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託研究、経済産業省の海外展開支援、文科省のスタートアップ支援……億単位の制度もあるくらいで。
億単位ですか(笑)。それはさすがに大企業向けですよね?
大企業向けが多いのは事実ですね!ただ中小企業・スタートアップ向けの制度も充実しているんですよ。知財支援、IT導入、事業展開、人材育成……用途別に分けてみると全体像が見えてきます。
補助金の全体像:学術研究・専門サービス業向け比較
じゃあまず全体像を教えてください。どんな種類があるんですか?
大きく3つに分けると、「研究開発・技術実証系」「海外展開支援系」「中小企業共通系」になりますね。研究機関や技術系コンサルには前者が刺さる、士業や調査会社には後者が使いやすい、という感じです。
カテゴリ 代表的な制度 補助上限 対象 研究開発・技術実証 NEDOフロンティア育成事業 公募要領参照 研究機関・技術系事業者 海外展開支援 グローバルサウス事業 最大5億円 海外展開を目指す企業 知財・IP支援 知財支援地域連携促進事業 1,000万円 産業支援機関 スタートアップ支援 フュージョンエネルギー実証 最大600億円 先端技術系スタートアップ 中小企業共通 スマート保安実証支援 5,000万円 IoT・AI導入企業 コンテンツ・IP IP新規創出支援(音楽) 7,000万円 コンテンツ制作企業
グローバルサウス(ASEAN・インド・アフリカ等)への展開を目指す企業向けの制度で、実現可能性調査(FS)で最大1億円、小規模実証で最大5億円です!コンサル会社が現地の社会課題調査とかインフラ設計をやる場合にも使えるんで、専門サービス業にはかなり相性がいい制度ですよ。
申請フロー図:NEDOとjGrantsを使った申請手順
まず研究開発系の制度から聞かせてください。具体的にどんなものがありますか?
一番目立つのが令和7年度フュージョンエネルギー発電実証推進事業補助金 ですね。補助率10/10で、理論上600億円規模の大型制度で。核融合発電の実証に取り組む企業・研究機関が対象です。
600億はさすがに規模違いすぎますよね(笑)。もう少し現実的なやつは?
NEDOってよく聞くんですけど、どこが運営してるんですか?
経済産業省所管の国立研究開発法人です。産業技術・エネルギー分野の研究開発を国が支援する組織で、かなりの数の公募を常時出してますよ。AI、水素、半導体、バイオ……専門サービス業で「技術調査や評価、分析をやっている」ならNEDOとの相性は良いです。
正直、単独申請は厳しいですね。大学や研究機関と組んでコンソーシアムを作るのが現実的です。専門サービス業がコンソーシアムのメンバーとして参加して、調査・分析・事業化評価を担当するパターンが多い。
なるほど、コンソーシアム参加という戦略があるんですね。
そうです。
令和6年度産学融合拠点創出事業 は、補助金の交付事務を担う執行団体を公募する制度です。大学のオープンイノベーション拠点づくりを行政的に支えるための事業で、産業界から「事業執行団体」として参画する形になります。一般企業が直接補助を受けるタイプではなく、産学連携の仲介・管理機能を担う組織向けの制度ですよ。
海外展開系の詳しい話を聞かせてください。コンサル会社とか調査機関はここが本命ですか?
そうですね。
グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金 は専門サービス業にとって一番狙い目のカテゴリだと思ってます。
令和6年度補正版(二次公募) でいえば、FS(事業実施可能性調査)が最大1億円、中小企業は補助率2/3以内というのがポイントで。
1億で補助率2/3……それって実質、3,000万円負担すれば1億円分の調査ができるってことですよね?
計算合ってます(笑)。ASEAN・インド・中東・アフリカ・中南米など、経済成長が見込まれる地域で社会課題解決型のビジネス調査をする費用ですね。コンサル会社が「現地のエネルギー需要調査」「農業インフラの設計調査」「スマートシティ構想の立案」なんかをやる場合にフィットします。
令和7年度日中経済交流等事業費補助金 ですね。補助率定額で最大2,000万円。中国市場での調査事業、セミナー・マッチング、ハイレベル交流事業が対象です。中国政府機関との協力関係がある企業・団体向けなので、中国ビジネスに実績のあるコンサルには刺さる制度ですよ。
知財系の制度も紹介してもらえますか? 特許事務所とか知財コンサルの人から聞かれることがあって。
申請区分がA(支援拡充型、上限1,000万円・補助率1/2)とB(支援構築型、定額・上限500万円)の2種類あって!対象は産業支援機関なので、弁理士事務所や知財コンサルが単独申請するよりも、商工会議所や大学などとコンソーシアムを組んで申請するパターンが多いですよ。
コンテンツ系の会社はどうですか? 音楽プロデューサーとか映像制作会社も専門サービス業に入りますよね?
スマート保安実証支援事業費補助金 は、IoT・AI・ドローンを活用した産業保安の技術実証を支援する経済産業省の制度です。補助率2/3(または1/2)、補助上限5,000万円。中小企業・中堅企業が対象で、ITベンダーと連携してスマート保安技術を導入・実証する際の費用を支援します。保安業務の調査・評価を専門とするコンサル会社にも参画の機会があります。
ビッグデータ分析による設備の予兆保全、AIによる異常検知、ドローンを活用した点検の省人化……産業インフラの保守・点検をデジタル化する実証ですね。評価・検証を外部コンサルに委託するケースもあって、そこに入れるかもしれないです。
令和6年度原子力産業基盤強化事業補助金 ですね。補助率1/2で最大9億円。原子力関連の機器・サービスの安全性・信頼性向上に資する技術開発・認証取得が対象です。原子力分野で安全評価や技術分析をやっている専門機関には大型の支援があります。
令和6年度洋上風力発電人材育成事業費補助金 は補助率2/3以内・予算6億円で、洋上風力の人材育成カリキュラム策定やトレーニング施設整備を支援します!人材育成コンサルや研修会社が「事業開発・エンジニア・専門作業員の3分野で育成プログラムを作る」用途で使えますよ。
ディープテックって最近よく聞くんですけど、具体的にどんな会社が対象ですか?
自然科学分野の研究成果に基づく技術で、事業化すれば社会課題の解決に大きなインパクトを与える潜在力を持つ技術、という定義ですね。バイオ、量子、核融合、AIロボットなどが典型例です。
はい、
徳島県ディープテック・イノベーション創出支援費補助金 は地方特化の制度で、上限30万円・補助率1/2(J-Startup WEST選定なら2/3)で展示商談会出展やカンファレンス参加費を補助します。小規模ですが、地方でディープテック系コンサルや研究機関をやってるなら使いやすい。
「ディープテック支援の調査・分析」を受託する会社向けの制度もありましたよね。
ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金・NEDOの各事業を含むほぼすべての国の補助金は、jGrants(補助金等申請システム)経由での申請が必須です。jGrantsには「GビズIDプライム」または「GビズIDメンバー」が必要で、取得に2週間以上かかる場合があります。申請締切の直前では間に合わないため、今すぐ取得手続きを始めてください。
GビズIDって、専門サービス業の方も全員必要なんですか?
国の補助金を申請するなら全員必要です。法人でも個人でも取得できて、GビズIDがあればjGrantsで一括管理できる。複数の補助金に申請する予定があるなら、早めに取っておくに越したことはないですよ。
制度によってかなり違いますね。ものづくり補助金22次でいうと、申請1,552件に対して採択582件で採択率37.5% という結果でした(公式採択結果より)。NEDOの研究開発系は競争率が高いことが多くて30%台のこともある。ただ「専門性の高い調査・分析が求められる制度」は応募者が絞られるので、意外と採択率が高いケースもあります。
専門サービス業の場合、一番大事なのは「自分たちの専門性と制度の目的がなぜマッチしているかを具体的に書く」ことですね。「コンサルですが支援できます」ではなく、「過去X件の◯◯分野での調査実績があり、本制度の趣旨である◇◇に対して具体的に貢献できる」という書き方です。実績データがある会社は有利ですよ。
事業計画書の「自社の強み」欄に、過去の具体的な実績件数・業界名・成果指標を入れる
GビズIDを事前取得して、jGrantsアカウントを開設しておく
認定経営革新等支援機関(認定支援機関)と事前相談する。ものづくり補助金は認定支援機関の確認書が必須
かなりの制度が揃ってますね。どれから当たればいいですか?
自社のメインビジネスに合わせて決めるのがベストですね!海外展開を考えているならグローバルサウス系、IP・知財に強みがあるなら知財支援系、AI・IoT技術を持っているならNEDO系。補助金は手段であって、自社の事業戦略に沿ったものだけ申請するほうが採択率も上がりますよ。
「とりあえず申請してみる」はあまりよくないわけですね。
そうです。専門サービス業の補助金申請で失敗するパターンの多くは「制度の目的と自社の事業の整合性が薄い」ことです。特に研究開発系のNEDO案件は、事業目的との合致度を厳しく審査されます。
今日はすごく勉強になりました。85件以上あるって聞いてびっくりしましたけど、実際に使いやすいものと大規模すぎるものが混在してるんですね。
ひとことで言うと、中小のコンサル・調査会社が現実的に狙えるのは、海外展開FS調査系(グローバルサウス・アフリカ・日中交流)、知財支援系、スマート保安・IoT系、NEDOのディープテック周辺事業あたりですね。いずれも「実績があってGビズIDを持っている」ことが最低ラインです。
GビズID、今日話を聞いてすぐ取りに行く方が多そうですね(笑)。
2週間かかるんで、「公募が始まってから取る」では遅すぎる。あと、公募のスケジュールは各省庁のHPや、jGrantsのポータルで随時確認してください。NEDOとMETIは特に公募頻度が多いので、メルマガ登録しておくと見逃しが減りますよ。
専門サービス業が補助金を活用するための3つのポイント
GビズIDを今すぐ取得 : 申請には必須。取得に2週間以上かかる
コンソーシアム参加を狙う : 大型のNEDO案件は大学・研究機関との連携が鍵
自社の専門性と制度の目的を一致させる : 「なぜ自社が担当できるか」を具体的に書く