NEDOが2026年度の「JCM等を活用した低炭素技術普及促進事業・実証設計」を公募してますよね。そもそもJCMって、ざっくりどういう制度なんですか?
JCMは「Joint Crediting Mechanism」の略で、日本が優れた低炭素技術を海外のパートナー国で導入・実証し、削減したCO2量をクレジットとして日本のNDC(国別削減目標)にカウントできる仕組みです。日本のパリ協定目標達成を海外の協力で加速させる、国際的な気候変動対策の枠組みですね。
えっ、日本が海外で削減したCO2が日本の実績になるんですか!?
そうなんです。日本単独では削減コストが高い分野でも、途上国・新興国に日本の省エネ技術や再エネ設備を入れることで、コスト効率よく大量削減できる。その削減量をJCMクレジットとして両国で分け合うスキームです。
なるほど!じゃあ今回NEDOが公募してる「実証設計」フェーズって、どこに位置付けられるんですか?
本事業は3つのフェーズに分かれていて、今回の公募は最初の「実証設計」フェーズです。現地調査・技術適合性検討・事業スキーム設計・関係者合意形成などを1年かけて行い、次の本格的な「実証事業」フェーズに繋げていく前準備の段階ですね。
JCM市場創出促進事業の3フェーズ構成図
実証設計は「現地でちゃんと機能するか」を調査・設計する段階なので、設備の導入・運転は行いません。現地パートナーとの協議、規制調査、MRV方法論の設計、事業スキームの策定といった机上+現地調査が中心です。それで1件当たり原則5500万円以内(税込)が使える委託予算です。
5500万円!かなり大きいですね。そこから実証事業に進むとどうなるんですか?
実証設計の成果を外部有識者委員会とNEDO内の審査委員会が評価して、合格すれば実証事業フェーズへ移行。そこでは1件当たり原則10億円以内(税込)・原則3年以内の委託事業として、実際に設備を導入して実証運転まで行います。スケールが一桁違いますね。
10億円!すごい規模ですね。じゃあ実証設計を勝ち取ることが最初の関門ということですよね。採択→実証事業へ進む道筋を早い段階から描いておく必要がある、と。
まさにその通りです。「実証設計フェーズで採択されたら終わり」じゃなくて、実証事業フェーズへの移行を見据えた提案書を書かないと審査員に響きません。そのロードマップをどれだけ具体的に描けるかが勝負です。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 公募開始 | 2026年4月20日 |
| 応募期限 | 2026年6月5日 正午まで |
| 実施機関 | 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) |
| 事業形態 | 委託事業(成果物納品型) |
| 実証設計 上限 | 1件当たり原則5500万円以内(税込) |
| 実証事業 上限 | 1件当たり原則10億円以内(税込) |
| 実施期間(実証設計) | NEDOが指定する日から原則1年以内 |
| 対象地域 | JCMパートナー国(約28か国) |
| 申請方法 | Jグランツ(電子申請のみ) |
| 問い合わせ先 | NEDO 事業統括部 国際3課(askjcm@ml.nedo.go.jp) |
| 公式サイト | NEDO公式公募ページ |
本公募はプレエントリー申請者のみが応募できます。2026年4月24日(金)正午がプレエントリーの締切でした。今後の応募に備えるため、予告ページを定期確認してください。プレエントリーなしに応募書類を提出しても受理されません。
申請はJグランツからのオンラインだけなんですね。郵送とかメールは受け付けてもらえないと。
そうです。「原則Jグランツのみ」とNEDO公募要領に明記されています。GビズIDを持っていないとJグランツが使えないので、まだ取得していない方は今すぐ申請を!取得まで2週間程度かかります。
こういう国際的なプロジェクト、大手の企業しか参加できないイメージがあるんですが、実際はどんな組織が応募できるんですか?
意外と間口は広いですよ。民間企業はもちろん、大学・研究機関・コンサルティングファーム・公益法人なども対象です。単独応募でもいいし、コンソーシアム(共同提案体)での応募も推奨されています。
- 民間企業: メーカー、エネルギー事業者、商社、エンジニアリング会社
- 研究・学術機関: 大学、国公私立研究機関
- 専門サービス: コンサルティングファーム、シンクタンク
- 公益法人等: 一般社団法人・財団法人
- 共同提案体(JV・コンソーシアム): 複数の組織による共同応募
コンソーシアムでの応募が推奨なんですか?なぜですか?
JCM案件は「日本の技術者 + 現地パートナー + MRV専門家」の組み合わせが理想的なんです。1社で全スキルを持つのは難しいので、役割分担した共同提案体のほうが審査員への説得力が増します。日本側技術者・コンサル・現地パートナー企業・MRV専門家の4者が揃えばベストな布陣ですね。
なるほど。逆に「この分野の経験がなければ厳しい」という条件もあるんですか?
JCMパートナー国での事業経験・ネットワーク・英語力は実質的な必須要件です。現地の規制対応や関係機関との合意形成が求められるので、「現地のことを全く知らない」状態では提案書の説得力が出ません。また、過去に公的資金の不正使用や実績不良があった組織は除外されます。
じゃあ初めて海外事業に挑戦する企業にとっては、まず現地パートナーを探すことが最初の一歩ですか?
それがスタートラインですね。そしてできればLOI(Letter of Intent)やMOU(Memorandum of Understanding)を提案書に添付できると、審査における信頼性が大幅に上がります。「絵に描いた餅」じゃないことを証明できるんです。
2024年時点でざっくり28か国あります。アジアを中心に、インドネシア、ベトナム、タイ、モンゴル、バングラデシュ、フィリピン、カンボジアなどの東南・南アジア。アフリカではケニア、エチオピアなど。中南米ではメキシコ、チリなど。太平洋島嶼国もパラオ等が含まれます。
アジアだけじゃないんですね。なるほど。対象技術分野は?
エネルギー起源CO2の排出削減に関わる技術が対象の核心です。省エネ(高効率ボイラー・産業用モーター・コジェネ等)、再エネ(太陽光・バイオマス等)、廃棄物処理(メタン回収・食品廃棄物活用)、交通(EV・水素車両)といった分野が主なターゲットです。
「森林由来によるCO2吸収のみに関する事業」は明示的に対象外とされています。また、実証事業のモニタリング期間で1,000t-CO2以上のJCMクレジット発行が可能で、かつ実証事業終了後の普及展開期間で年間10,000t-CO2以上の排出削減効果が見込まれることも要件のひとつです。スケールが小さすぎる案件は採択されません。
数字の規模感が明確ですね。応募前の実現可能性調査(フィジビリティスタディ)が既に完了していることも要件なんですよね?
そうです!「本公募への応募時点で、当該技術・システムの実証事業に関する実現可能性調査が完了していること」が条件です。つまり、一から検討を始める段階ではなく、「FS(フィジビリティスタディ)は終わった、次は実証設計だ」という準備ができている案件が対象なんです。
委託事業だと費用の使い方にルールが細かいですよね。何に使えて、何に使えないんですか?
整理しますね。実証設計フェーズで認められる主な経費は5カテゴリーです。
JCM実証設計 対象経費カテゴリーチェックリスト
| 経費カテゴリー | 具体例 |
|---|
| 人件費 | 日本側担当者・現地対応スタッフの直接人件費、法定福利費 |
| 海外出張費 | 渡航費、宿泊費・日当、現地移動費 |
| 外注費 | 現地調査の再委託、MRV専門家への委託、現地弁護士費用 |
| 翻訳・通訳費 | 提案書・合意書の翻訳、現地協議の通訳、報告書翻訳 |
| その他経費 | ワークショップ・キックオフ等の会議費、現地規制資料購入、通信運搬費 |
実証設計フェーズでは設備購入費は原則対象外です。「じゃあ現地に機材を持っていって試してみよう」はできません。設備の導入・運転は次の実証事業フェーズで行います。また、委託契約期間外の経費、対象国以外での費用、他の公的資金で既に支援を受けた経費も対象外です。経費の二重計上は厳禁!
経費管理がすごく厳密そうですね。領収書管理とか精算処理が大変そう。
委託事業の特性として「精算払い」が基本なので、経費の証拠書類管理は徹底する必要があります。特に海外出張費は現地通貨でのレシート管理・換算処理が必要になるので、経理担当者との連携が重要です。経費管理体制も提案書に含めておくと審査員への安心感が増しますよ。
実際にどうやって応募するんですか?ステップを教えてもらえますか?
NEDO公式サイトで公募要領を入手
NEDO公式公募ページから公募要領・仕様書・応募様式一式をダウンロード。対象国・技術分野・成果物要件・評価基準を詳細確認します。
プレエントリーの申請(必須・先に確認)
本公募はプレエントリー申請者のみ応募可能。2026年度分の応募期限は2026年6月5日ですが、プレエントリー期限(2026年4月24日正午)は既に過ぎているため、次回公募の予告ページで必ずプレエントリーしてください。
対象国と技術テーマの選定
JCMパートナー国の中から自社技術との適合性・市場性が高い国を選定。省エネ・再エネ・廃棄物・交通のどの分野で勝負するか絞り込みます。
現地パートナーとの事前協議
対象国の民間企業・政府機関・金融機関等と事前協議を実施。LOI(Letter of Intent)やMOU(Memorandum of Understanding)を取得できると提案書の信頼性が大幅アップします。
実証設計内容の具体化
現地調査計画、技術適合性検討、MRV方法論設計(何をどう計測するか)、事業スキーム(投資主体・運営主体・クレジット配分)、リスク評価を具体化。実証事業フェーズへのロードマップも描きます。
提案書・経費計画の作成
NEDO仕様書要件に完全対応した提案書を作成。「対象国の選定根拠」「技術の適合性」「現地パートナーの信頼性」「MRV方法の妥当性」「後続実証事業への展開可能性」を重点記述します。
Jグランツで応募申請
2026年6月5日 正午の期限に余裕を持ち、数日前には提出を完了させる計画で進めます。持参・郵送・メール提出は受け付けられません。
ステップ2の「プレエントリー必須」というのは落とし穴ですよね。これを知らずに提案書を作り込んでから「応募できない」と気付いたら相当凹みそう。
実際に過去のNEDO公募でそういうミスをした会社を見たことがあります(笑)。まず予告ページをブックマークして、プレエントリー受付が始まったら即日登録するのが鉄則です。
提案書の中で、特にここを重視するべきというポイントはありますか?
- 現地パートナーの質とコミットメント: LOI/MOUを提案書に添付できると説得力が大幅アップ。単なる「検討中」レベルでは審査員に刺さりません。
- MRV方法論の具体性: 「どの計測機器で何を測定し、どのようにJCMクレジット量を算定するか」を詳細に設計。ここが曖昧だとクレジット発行の見込みが立たないと判断されます。
- JCMスキームの国別理解: パートナー国ごとに合意書・方法論・クレジット配分ルールが異なります。対象国のJCMスキームを正確に理解した提案書かどうかは審査員にすぐわかります。
- 後続フェーズへのロードマップ: 実証設計→実証事業→定量化フォローアップのストーリーを時間軸付きで示すこと。JCMクレジット発行までの全体像が見えているか。
- リスク評価と緩和策: 政治・規制変更リスク、為替リスク、現地パートナー与信リスク、技術トラブルリスクを洗い出し、各リスクの緩和策まで記述。リスク管理力の高さは評価に直結します。
MRVって具体的にどういうことをするんですか?専門的すぎてイメージがわかなくて。
MRV(Monitoring, Reporting, Verification = 測定・報告・検証)は、CO2削減量を定量的に把握・証明するための仕組みです。例えば「高効率ボイラーを入れました。削減量は年間500t-CO2です」と主張しても、実際に計測機器で消費エネルギーを測定し、国際的な検証機関に審査してもらわないとJCMクレジットとして認められません。この計測・報告・検証の方法論を実証設計段階から具体的に設計することが求められています。
なるほど、「削減した」と言うだけじゃなくて、証明できる仕組みを作らないといけないんですね。これは確かに専門的なスキルが必要そうで、MRV専門家を共同提案体に入れる理由がよくわかりました。
まさに。大手コンサルや研究機関がMRV専門家として共同提案に参加するケースが多いのはそのためです。初めて取り組む企業はJCM既経験者をチームに入れることを強く推奨します。
具体的にどんな方法論がJCMで使われているんですか?
JCMの方法論(Methodology)はパートナー国ごとに環境省が認定したものがあります。例えば「高効率産業用モーターへの更新によるエネルギー消費削減」「太陽光発電システム導入によるCO2削減」「廃棄物最終処分場からのメタンガス回収・発電」などです。既存の認定済み方法論が使えれば審査上のハードルが下がりますが、新規の方法論開発が必要な場合は別途「新規方法論開発に向けた調査」事業も活用できます。
方法論が認定済みかどうかも、提案書を書く前に調べておく必要があるんですね!
必須の事前調査です。環境省のJCMウェブサイトで対象国・対象技術の既存方法論を確認してから、提案内容を設計してください。
他の国際的な補助金・支援制度と組み合わせることはできるんですか?
JCMには複数の支援スキームがあって、うまく組み合わせるのが実際の案件開発の鉄則です。役割分担を整理しますね。
| スキーム | 主な役割 | 実施機関 |
|---|
| NEDO JCM実証設計(本事業) | 実証前の設計・調査フェーズ | NEDO |
| NEDO JCM実証事業 | 設備導入・運転フェーズ(上限10億円) | NEDO |
| 環境省JCM促進事業 | 実現可能性調査・シナジー型JCM | 環境省 |
| 環境省JCM設備補助事業 | 民間投資主体の設備導入補助 | 環境省 |
| JICA技術協力 | 途上国での技術移転・人材育成 | JICA |
ということは、「FS(実現可能性調査)→ 本NEDO実証設計 → NEDO実証事業」という流れが王道ルートですか?
そうです。環境省のJCM促進事業でFSを実施 → 本NEDO事業で実証設計 → NEDOの実証事業(設備導入)というルートが標準的な流れです。ただし、経費の二重計上は絶対NG。各スキームでどの経費を充てるかを明確に区分してください。
国際金融機関の資金との組み合わせも視野に入れた提案は国際競争力を高めます。特にアフリカや中南米案件では、GCF(緑の気候基金)やADBの資金と組み合わせることで、スケールの大きな案件設計が可能になります。ただしこれは経験値が必要な領域なので、国際協力案件の実績がある組織と組むことをおすすめします。
最後に、応募を検討している企業からよく出てくる質問をいくつか聞かせてください。
まず、「これって補助金ですか?」という基本的な質問から。
これは補助金ではなく委託事業です。NEDOと受託者が委託契約を締結し、仕様書で定められた実証設計作業を遂行して成果物(報告書等)を納品する構造です。補助金のような「使った費用の○%を補助」ではなく、「仕様書通りの成果物を出してください、その対価を支払います」という形です。
「現地パートナーが必須かどうか」という質問もよくありそうですよね。
事実上必須です。JCM案件は現地での実証導入を前提としているため、現地実施パートナー(設備導入者・運営者)との連携が提案書の信頼性を大きく左右します。LOI/MOUを取得して提案書に添付できると有利ですが、「協議中」の段階でも熱意と進捗状況を詳細に記述することが重要です。
提案書審査・ヒアリング・採択候補者決定を経てNEDOと委託契約を締結します。単年度で実証設計を実施し、年度末までに成果物を納品。その成果に基づいて外部評価委員会が実証事業への移行可否を判断し、合格すれば次の実証事業フェーズに進む流れです。採択から商業展開まで、5年〜10年のスパンで見ていく長期案件です。
強く推奨します!日本側技術者・現地パートナー・MRV専門家など異なる役割を組み合わせた共同提案体のほうが、単独応募より体制の厚みと実現可能性で優位に立てます。コンソーシアムの場合は代表機関を決めてNEDOとの窓口を一本化するのが基本です。
参加資格の確認や詳細な評価基準は、必ずNEDOの公募要領を直接確認する必要がありますよね。
絶対に公募要領と仕様書を熟読してください。本記事で紹介した内容は概要ですが、実際の審査では公募要領の細部まで要件を満たしているかが確認されます。不明点はNEDO事業統括部 国際3課(
askjcm@ml.nedo.go.jp)へのメール問い合わせが一番確実です。
最後に、都道府県別の補助金情報も教えてもらえますか?