室谷さん、うちの会社トラック運送してるんですけど、「2024年問題」でドライバーの残業が減って売上が落ちてるんですよ。補助金って実際、運輸業でも使えるものありますか?
あります!というか、むしろ今が一番手厚い時期かもしれないですよ。国交省・環境省・経産省の3省が競うように運輸業向け補助金を出してる状況で。大きく分けると「省エネ・脱炭素系」「物流効率化系」「人材・安全系」の3ジャンルがあって、規模の大きい会社なら億単位の補助を狙えます。
トラックのEV化とか、共同配送のシステム導入とかだと上限が数十億円の事業もあります。中小事業者向けでも数百万〜数千万単位の補助は普通にありますよ。
ちょっと整理してほしいんですけど、どのジャンルから攻めるのが正解ですか?
事業者のフェーズによりますね。「まず手っ取り早く受け取れるもの」を探してるなら、全日本トラック協会(全ト協)の助成金が鉄板です。採択審査が比較的ゆるくて、要件さえ満たせば受け取れる設計になってる。一方で、設備投資の資金を大きく回収したいなら国の補助金を狙うべきで、こっちは審査があるかわりに金額が段違い。
全ト協の助成金って、トラック協会の会員じゃないと使えないですよね?
そうですね、全ト協の助成事業は都道府県トラック協会の会員が対象です。ただ、会費を払って加入するメリットが助成金だけで十分元が取れたりする。ドライバーの安全装置、SAS(睡眠時無呼吸症候群)検査、アイドリングストップ機器、免許取得支援と複数の助成事業があって、1社でいくつも組み合わせて申請できます(笑)。
カテゴリ 代表的な補助金・助成金 補助率 / 補助額 所管 省エネ・脱炭素(車両) ハイブリッドトラック・バス導入支援 差額の1/2 環境省 省エネ・脱炭素(車両) 商用車の電動化促進事業(EV・FCV) 差額の2/3 国交省/環境省 省エネ・脱炭素(車両) 低炭素型ディーゼルトラック普及加速化 上限75万円 環境省 物流効率化 データ連携促進支援事業費補助金 1/2、上限4,000万円 国交省 物流効率化 トラック輸送省エネ化推進事業 1/2〜定額 資エネ庁 安全対策 事故防止対策支援推進事業(ASV等) 1/3〜1/2 国交省 安全対策(全ト協) 安全装置等導入促進助成事業 対象経費の1/2 全ト協 人材確保 若年ドライバー免許取得支援助成 定額(全ト協経由) 全ト協 人材確保 船員計画雇用促進助成金 定額 国交省 倉庫・物流施設 サステナブル倉庫モデル促進事業 1/2、上限1億円 環境省 海外展開 中堅・中小企業輸出支援エコシステム 1/2、上限2,000万円 経産省 コールドチェーン 冷凍冷蔵機器の脱フロン化推進事業 原則1/3、上限5億円 環境省
12種類もあるんですね。ちょっと多くて頭がパンク(笑)。
でも実際に使えるのは自社の状況に合った数種類だと思うので、「今どの課題を解決したいか」から逆算するのが一番迷わないですよ。
運輸業向け主要補助金 比較チャート
省エネ・脱炭素系って、やっぱりEVトラックへの買い替えのことですか?
大きくはそうです。ただ「脱炭素=即EV」じゃなくて、段階的な選択肢が用意されてるんですよ。ざっくり3段階あって、①まずディーゼルトラックの最新世代への更新、②ハイブリッドや天然ガス車への移行、③完全電動(EV・FCV)への転換という感じ。
「いきなりEVはハードルが高い」って事業者が多いので、国もそこに対応してる。ディーゼルでも「2025年規制適合の低炭素型」なら補助が出るし、まずそこから始めるって選択も全然ありです。
商用車の電動化促進事業(EV・FCV・PHEVトラック)
でも長距離輸送だとEVトラックはまだ充電インフラが整ってないって聞きますが…。
それが正直なところです。ただ、「令和7年度補正予算 商用車の電動化促進事業」は国交省と環境省が連携して大規模予算を組んでいて、EV・FCV・PHEVのトラックに対して車両価格と同クラス従来型との差額の2/3 を補助する仕組みです。都市内配送メインの車両から始めるのが現実的な作戦ですね。
なります。トラック、タクシー、バスそれぞれの電動化を別枠で補助してる。バス事業者さんなら「ハイブリッド連節バス導入支援事業」という事業もあって、ハイブリッド連節バスの導入経費の1/2以下を補助してます。詳細は
商用車の電動化促進事業(令和6年度補正)のページ で確認できます。
出てます!「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金」という大型事業があって、充電設備や水素充てん設備の整備に対して補助が出ます。車両と充電設備をセットで申請するのがポイントです。詳細は
充電・充てんインフラ等導入促進補助金のページ を参照してください。
ハイブリッドトラック・バス導入支援事業
いきなりEVはきつい、でも脱炭素は進めたい、って場合のベストプラクティスは何ですか?
そのケースは「ハイブリッド及び天然ガストラック・バス導入支援事業」が鉄板ですよ。環境省の補助で、ハイブリッドトラック・バスと天然ガス自動車の導入に対して従来型との価格差額の1/2 を補助する仕組み。上限は車種によりますが、大型ハイブリッドトラックだと1台あたり1,155万円まで出た実績があります。
1台で1,000万円超の補助って、かなり大きいですね。
低炭素型ディーゼルトラック普及加速化事業
そうです。最新の低炭素型ディーゼルトラックに更新した場合、1台あたり最大75万円の補助が出ます。「脱炭素の入口」として使い勝手がいい。申請は環境優良車普及機構(LEVO)が窓口で、毎年6〜7月ごろから公募が始まることが多いです。
令和7年度の低炭素型ディーゼル補助のページ で詳細を確認できます。
トラック輸送省エネ化推進事業(資源エネルギー庁)
車両の買い替えじゃなくて、システムや機器で省エネする場合はどうなりますか?
それなら資源エネルギー庁の「トラック輸送省エネ化推進事業」が使えます。3つのメニューがあって、①高輸送効率車両(ダブル連結トラック等)の導入、②荷待ち・積卸し時間を削減する予約受付システムや配車計画システムの導入、③クラウド型車両動態管理システムの導入、これらに定額または1/2の補助が出ます。
2024年問題って、時間外労働の上限規制だから、「少ない人数でいかに多く運ぶか」が課題になってる。そこに対応した補助金はありますか?
まさにそれをターゲットにした補助金が複数ありますよ。「共同輸配送や帰り荷確保等のためのデータ連携促進支援事業費補助金」が代表格で、複数の荷主企業や物流事業者がデータを連携させてトラックの空き積載を減らす取り組みを支援します。上限4,000万円、補助率1/2 という規模感です。
基本的に複数者の連携が条件です。荷主側と運送側が一緒に申請するイメージ。ただそれがハードルになる一方で、単独では実現しにくい大規模データ連携ができるというメリットもある。詳細は
共同輸配送データ連携促進補助金のページ を参照してください。
単独じゃ厳しいですか。荷主との連携ってどうやって組むんでしょう?
既存の取引先との協議から始めるのが現実的です。荷主企業も物流コスト削減のメリットがあるので、話を持ちかけると乗ってくることが多いですよ。もう一つ面白いのが「持続可能な物流効率化実証事業費補助金」。物流の構造的な輸送力不足に対応するため、複数企業が連携して物流効率化に取り組む実証事業を支援します。補助率1/2、上限3億円の大型支援で、物流施設の自動化・機械化に使える机器やシステムが対象。
なります!「買物困難者対策版」という枠では自動配送ロボットを活用した実証事業に対して上限5,000万円の補助がある。ラストワンマイルの配送問題を抱えてる会社には注目してほしい補助金ですよ。
持続可能な物流効率化実証事業の詳細はこちら で確認できます。
「令和8年度 運輸部門エネルギー使用合理化・非化石エネルギー転換推進事業費補助金(新技術活用によるサプライチェーン全体輸送効率化事業)」は、経産省・資エネ庁と国交省が連携した超大型補助事業で
上限43億5,000万円 です。内航船の非化石エネルギー化も対象に含まれてて、物流全体の脱炭素に取り組む事業者向けの補助です。詳細は
令和8年度の輸送効率化補助のページ をどうぞ。
事故防止とかドライバー不足への対策って、補助金で支援してもらえますか?
これも充実してますよ。国交省の「事故防止対策支援推進事業(被害者保護増進等事業費補助金)」は、外部専門家によるコンサルや研修で安全意識を高める取り組みに対して補助率1/3〜1/2 で支援します。ASV(先進安全自動車)の装備導入、運行管理の高度化、過労運転防止、社内安全教育の4つのメニューがある。
全ト協(全日本トラック協会)の「安全装置等導入促進助成事業」がまさにそれです。ドライブレコーダー、バックセンサー、サイドビューカメラ、デジタルタコグラフ等の安全装置を購入した会員事業者に、対象経費の1/2を助成します。これは採択審査がないタイプで、要件を満たせば受け取れる。
さらに全ト協には「ドライバー等安全教育訓練促進助成制度」もあって、外部講師による安全教育研修費用を助成します。「SAS(睡眠時無呼吸症候群)スクリーニング検査助成事業」もあって、健康起因事故の未然防止に使えます。
全ト協の「若年ドライバー等確保のための運転免許取得支援助成事業」があります。若手ドライバーを採用する際に第一種・第二種免許の取得費用を助成する仕組みで、人手不足対策に直結します。一方、内航海運など船員の雇用については「船員計画雇用促進助成金」が全国の運輸局管轄で実施されています。
事故防止対策支援推進事業の詳細はこちら で確認できます。
都道府県トラック協会の会員であることが前提
同じ会社で複数の助成事業を組み合わせて申請できる
採択審査がなく、要件を満たせば確実に受け取れる
年度ごとに内容・金額が変わるため毎年確認必須
倉庫や物流センターの設備投資に使える補助金って何かありますか?
「サステナブル倉庫モデル促進事業」が2026年度も継続してて、物流施設の省エネ・脱炭素化に取り組む事業者を支援します。上限1億円、補助率1/2 で、太陽光パネル、LED照明、高効率空調の導入等が対象。公募が複数回行われることが多いので、逃した場合は次の公募を待つのも手です。
冷凍食品とか医薬品の輸送に使う冷蔵車の場合はどうですか?
「コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業」がまさに対応してます。冷凍冷蔵機器(冷凍車の冷凍ユニット含む)の脱フロン・省エネ化に対して原則1/3、上限5億円の補助が出ます。食品物流や医薬品輸送の会社には超重要な補助金ですよ。詳細は
コールドチェーン冷凍冷蔵機器の脱フロン化補助のページ をどうぞ。
モーダルシフト(トラックから船や鉄道への転換)に対する補助もありますか?
あります。東京港では「東京港物流効率化等事業補助金」があって、モーダルシフト推進を支援してます。広域では国交省・資エネ庁連携の「運輸部門エネルギー使用合理化・非化石エネルギー転換推進事業費補助金」の中に内航海運部門が含まれていて、船舶の非化石エネルギー化に対して最大5億円の補助が出ます。
運輸業向け補助金 申請フロー
実際に申請する際に、経験者として「これだけは押さえろ」ってポイントを教えてもらえますか?
一番大事なのはGビズIDの事前取得 です。国の補助金はほぼ全部「Jグランツ」という電子申請システムを使うんですが、Jグランツへの登録にGビズIDが必要で、取得に1〜2週間かかる場合があります。公募が始まってから「さあ申請しよう」とならないよう、先に取っておく。
実際、公募開始直後に申請殺到するので「公募の最初の週に申請できないと採択率が下がる」とも言われてます。あとは後払いの資金繰りリスク も要注意で。補助金って、先に設備を購入して実績を報告してから入金される後払い設計なんです。採択決定から入金まで半年以上かかることも普通にある。
そうなんです。だから「補助金が入るまでの運転資金」を金融機関と事前に話しておく、あるいは日本政策金融公庫の低利融資と組み合わせる、という戦略が現実的です。補助金ありきで先に設備を発注して、入金が遅延して資金繰りが詰まる、というミスが一番多い。
「なぜこの事業が自社にとって必要か」の事業計画部分です。物流業だと「2024年問題に対応するためにどう生産性を上げるか」という文脈で書くと採択されやすい傾向があります。脱炭素の補助金でも「単なる車両更新ではなく、CO2削減の数値目標をもった経営計画の一環」として記述すると強くなる。
中小企業要件(資本金・従業員数)を事前に確認する
補助金ごとに「申請時点で事業を開始していない」等の条件がある
補助金が確定する前に設備を発注・購入すると補助対象外になる
加点項目(賃上げ実施企業等)に該当する場合は必ず記載する
GビズIDを公募開始前に取得(gBizID.go.jp から申請)
申請対象の補助金を複数候補に絞り、公募スケジュールを把握
採択前の設備発注は禁止(交付決定後に発注すること)
事業計画書は「2024年問題への対応」「CO2削減目標」を数字で記載
実績報告書の締切を事前にカレンダーに登録(遅延で補助金没収リスクあり)
補助金名 補助率 / 補助額 主な対象 申請先 商用車電動化促進(EV・FCV) 差額の2/3 トラック・タクシー・バス事業者 国交省/環境省 ハイブリッドトラック・バス導入 差額の1/2 トラック・バス事業者 環境省(LEVO) 低炭素型ディーゼルトラック 上限75万円/台 トラック事業者 環境省(LEVO) 充電・充てんインフラ導入 補助率は公募要領参照 充電設備設置者 経産省 共同輸配送データ連携促進 1/2、上限4,000万円 複数事業者の連携体 国交省 物流効率化実証事業 1/2、上限3億円 物流事業者・荷主 経産省 運輸省エネ化推進(DX系) 1/2〜定額 トラック事業者 資エネ庁 サステナブル倉庫モデル促進 1/2、上限1億円 倉庫・物流施設保有者 環境省 コールドチェーン脱フロン化 原則1/3、上限5億円 冷凍冷蔵機器保有者 環境省 事故防止対策支援(ASV等) 1/3〜1/2 バス・タクシー・トラック事業者 国交省 安全装置等導入助成(全ト協) 対象経費の1/2 全ト協会員事業者 全ト協 若年ドライバー免許取得支援 定額(全ト協経由) 全ト協会員事業者 全ト協 内航海運 エネルギー転換 1/2、上限5億円 内航海運事業者 資エネ庁 超大型省エネ(サプライチェーン) 定額、上限43億円 物流・運輸事業者 資エネ庁/国交省 東京港物流効率化補助金 1/2等 モーダルシフト推進者 東京都
こんなにあるんですね。何から始めたらいいか、まとめて教えてもらえますか?
規模や状況によりますけど、「すぐ動ける小規模事業者」なら①全ト協の会員助成事業(安全装置・SAS・免許取得)から始める、「車両更新を考えてる会社」なら②ハイブリッドトラック or 低炭素ディーゼル補助金を年度初めに申請、「物流DXや複数社連携に動ける会社」なら③データ連携促進補助金 or 物流効率化実証事業が狙い目です。どの補助金も公募開始から締切まで1〜2ヶ月と短いので、公募スケジュールを年頭に把握しておくのが勝ちパターンですよ。
ありがとうございました!都道府県ごとの補助金情報も確認したいです。
それは各都道府県の運輸業・物流関連ページで確認できます。例えば東京都なら
東京都の補助金一覧 で、地元独自の上乗せ補助が見つかることも多いですよ。