キャリアアップ助成金とは?コース・金額・申請方法をわかりやすく解説

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キャリアアップ助成金とは?非正規を正社員にすると国からお金がもらえる制度

アルバイトやパートで長く働いてもらっている従業員を、そろそろ正社員にしてあげたい。でも人件費が一気に増えるのが怖い——そんな経営者の悩みに直接応える制度が、キャリアアップ助成金です。

キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者(有期雇用・短時間・派遣)のキャリアアップを支援するために厚生労働省が設けた助成金制度です。正社員化や処遇改善(賃上げ・賞与制度の新設など)に取り組んだ事業主に対して、国が費用を補助します。

中小企業が非正規労働者を正社員に転換すると、1人あたり最大80万円を受け取れます。年間20人まで申請できるため、複数人を転換する事業者にとっては大きな財源になります。

この記事では、キャリアアップ助成金の全コースの金額・条件・申請の流れを、2026年度(令和8年度)の最新情報をもとに解説します。


あなたはどれに当てはまりますか?

  • パートやアルバイトを正社員にしたい → 正社員化コースのセクションへ
  • 非正規社員の給与を3%以上上げたい → 賃金規定等改定コースのセクションへ
  • 賞与や退職金制度を新しく作りたい → 賞与・退職金制度導入コースのセクションへ
  • まず申請の全体の流れを知りたい → 申請の流れのセクションへ
  • 計画書の書き方がわからない → キャリアアップ計画書の書き方

コース別の支給金額|いくらもらえるか確認しよう

キャリアアップ助成金は「正社員化支援」と「処遇改善支援」の2種類に分かれています。2026年度(令和8年度)4月1日時点の金額は以下の通りです。

正社員化コース

最もよく使われるコースです。有期雇用(契約社員・パート・アルバイト)や無期雇用の労働者を正社員に転換した場合に支給されます。

2025年度から「重点支援対象者」制度が導入され、支給額の体系が変わりました。

企業区分対象者転換の種類支給額(1人あたり)
中小企業重点支援対象者有期雇用→正規雇用80万円 (40万円×2期)
中小企業重点支援対象者無期雇用→正規雇用40万円 (20万円×2期)
中小企業上記以外有期雇用→正規雇用40万円 (1期のみ)
中小企業上記以外無期雇用→正規雇用20万円 (1期のみ)
大企業重点支援対象者有期雇用→正規雇用60万円 (30万円×2期)
大企業重点支援対象者無期雇用→正規雇用30万円 (15万円×2期)
大企業上記以外有期雇用→正規雇用30万円 (1期のみ)
大企業上記以外無期雇用→正規雇用15万円 (1期のみ)

重点支援対象者とは、次のいずれかに当てはまる有期雇用労働者を指します。

  • 雇用期間が通算3年以上の者
  • 雇用期間が3年未満で、かつ「過去5年間の正規雇用期間が1年以下」かつ「過去1年間に正規雇用の経験がない」者
  • 人材開発支援助成金の訓練を受けた者、派遣労働者、母子家庭の母等

具体的な金額のイメージ

例えば、飲食店を経営するAさん(従業員8人)は、3年間パートとして働いているBさんを正社員にすることを検討しています。Bさんは雇用期間が3年以上のため「重点支援対象者」に該当。中小企業のAさんの店が受け取れる助成金は 80万円 (40万円×2期)です。

一方、雇って1年半のパートを正社員化する場合(重点支援対象者の条件に該当しない)は 40万円 (1期のみ)です。どちらにしても、事前の計画書提出が必須です。

さらに加算できるケース

加算条件加算額(中小企業)
正社員転換制度を新たに就業規則に規定した場合20万円(1事業所1回)
多様な正社員制度(勤務地・職務限定・短時間正社員)を新設した場合40万円(1事業所1回)
派遣労働者を派遣先が直接正社員として雇用した場合28万5,000円(1人あたり)

正社員化コースの詳しい条件・手順は 正社員化コースの条件と申請の流れ で解説しています。


賃金規定等改定コース

非正規雇用労働者の基本給を3%以上引き上げた事業主に支給されます。1年度1事業所あたり上限100人まで申請できます。

昇給率中小企業(1人あたり)大企業(1人あたり)
3%以上4%未満4万円2万6,000円
4%以上5%未満5万円3万3,000円
5%以上6%未満6万5,000円4万3,000円
6%以上7万円4万6,000円

例えば、時給1,000円のパート20人を一斉に5%以上賃上げした中小企業が、6.5万円×20人=130万円の助成を受けたケースもあります。さらに、職務評価の手法を活用した場合や昇給制度を新たに規定した場合は、1事業所あたり20万円(大企業15万円)の加算があります。


賃金規定等共通化コース

有期雇用労働者と正社員に共通の賃金規程を新たに作成・適用した場合に支給されます。

企業区分支給額(1事業所あたり)
中小企業60万円
大企業45万円

賞与・退職金制度導入コース

非正規雇用労働者を対象とした賞与や退職金制度を新設し、支給または積立を実施した場合に支給されます(1事業所1回のみ)。

導入内容中小企業大企業
賞与または退職金のどちらか一方を導入40万円30万円
賞与と退職金の両方を同時に導入56万8,000円42万6,000円

2026年度新設:短時間労働者労働時間延長支援コース

2026年(令和8年)4月1日に新設されたコースです。「年収の壁」への対応として、短時間労働者を新たに社会保険(健康保険・厚生年金)に加入させるとともに、労働時間の延長等により収入を増加させた事業主に助成されます。

詳細な金額・条件は厚生労働省の公式パンフレット(令和8年度版)をご確認ください。


コースの選び方に迷ったら

目的が「正社員にする」なら正社員化コース、「賃金を上げる」なら賃金規定等改定コース、「賞与制度を作る」なら賞与・退職金制度導入コースを選びましょう。条件を満たせば複数コースを組み合わせることもできます。


対象になる事業主と労働者の条件

事業主の要件

以下の5つを満たす事業主が対象です。

  1. 雇用保険適用事業所の事業主であること
  2. 事業所ごとに キャリアアップ管理者 を配置していること
  3. キャリアアップ計画を作成し、管轄の都道府県労働局に届け出ていること(取組み実施前日まで)
  4. 対象労働者の労働条件・賃金支払い状況を明らかにする書類を整備していること
  5. キャリアアップ計画期間内に計画に沿った取組みを行っていること

中小企業の定義は業種によって異なります。

業種資本金または出資の総額または常時雇用する労働者数
小売業(飲食店含む)5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
製造業・その他3億円以下300人以下

資本金または労働者数のどちらか一方が基準以内であれば中小企業として扱われます。

対象労働者の要件

正社員化コースを例に挙げると、対象となる労働者の主な条件は次の通りです。

  • 有期雇用・短時間・派遣などの 非正規雇用 の労働者であること
  • 転換前に 通算6ヶ月以上、当該事業主に雇用されていること
  • 事業主や役員の 3親等以内の親族でない こと
  • 新規学卒者の場合、雇入れから1年を経過 していること
  • 過去3年間に正規雇用・無期雇用で雇われていた者でないこと

パートで5ヶ月のスタッフはまだ対象外です。しかし、あと1ヶ月で条件を満たすなら、今のうちから計画書を準備しておけば間に合います。

申請の全体像が見えたところで、次は具体的な手順を確認しましょう。


申請の流れ|正社員化コースを例に

キャリアアップ助成金で最も重要なのは、取組みを実施する前日までに計画書を提出しておくことです。

ステップ1:キャリアアップ管理者を選任する

事業所ごとに1人、キャリアアップ計画の作成・実行を管理する「キャリアアップ管理者」を決めます。専従でなくてもOKで、人事担当者が兼任するケースが多いです。

ステップ2:キャリアアップ計画書を作成・提出する

非正規労働者のキャリアアップに向けた計画を作成し、管轄の都道府県労働局に届け出ます。2025年度からは届け出のみでOKになり、認定は不要になりました。

これが全ての前提です。計画書提出前に正社員化してしまうと助成金は受け取れません。

計画書の書き方の詳細は キャリアアップ計画書の書き方と提出方法 を参照してください。

ステップ3:就業規則を整備する

正社員化コースの場合、正社員への転換規定(転換条件・転換時期・転換後の待遇等)を就業規則に明記する必要があります。既存の就業規則に転換規定がなければ追記し、労働基準監督署に届け出ます。

ステップ4:正社員化を実施する

転換日に雇用契約を結び直します。このとき、転換後の賃金が転換前より 3%以上高いこと が条件です(通勤手当・住宅手当などの付加的な手当は除く)。正社員として社会保険(健康保険・厚生年金)に加入させることも必要です。

ステップ5:支給申請をする

  • 第1期: 正規雇用の賃金を6ヶ月分支給した日の翌日から2ヶ月以内に申請
  • 第2期: 正規雇用の賃金を12ヶ月分支給した日の翌日から2ヶ月以内に申請(重点支援対象者のみ)

申請先は管轄の都道府県労働局またはハローワークです。電子申請も利用できます。

申請書類の詳細・電子申請の手順は キャリアアップ助成金の申請方法と必要書類 を参照してください。


2026年度(令和8年度)の変更点

2026年度のキャリアアップ助成金で押さえておきたい主な変更点です。

2026年4月から新設

  • 短時間労働者労働時間延長支援コース: 「年収の壁」対策として新設。短時間労働者を社会保険に新規適用させ、労働時間延長により収入を増やした事業主に助成されます。

2025年度からの継続変更点(引き続き適用)

  • 正社員化コースに「重点支援対象者」区分を導入
  • キャリアアップ計画書の手続き簡素化(認定不要・届け出のみに)
  • 新規学卒者(雇入れから1年未満)を支給対象から除外
  • 賃金規定等改定コースの支給区分が2区分から4区分に細分化

過去に申請経験がある方は、特に重点支援対象者の区分と金額体系の変更に注意が必要です。


よくある質問

Q. 個人事業主でもキャリアアップ助成金は使えますか?

A. 使えます。雇用保険の適用事業所であれば、個人事業主でも申請できます。ただし、事業主(個人事業主本人)や同居の親族は対象外です。雇用している非正規労働者が対象となります。

Q. キャリアアップ助成金は1人80万円ですか?

A. 中小企業が「重点支援対象者」に該当する有期雇用労働者を正規雇用に転換した場合、1人あたり最大80万円(40万円×2期)です。ただし、重点支援対象者でない場合は40万円(1期のみ)です。大企業は最大60万円です。

Q. パートを正社員にすると何万円もらえますか?

A. 中小企業の場合、パートが「重点支援対象者」(雇用期間3年以上など)に該当すれば80万円、それ以外は40万円です。さらに正社員転換制度を就業規則に新たに定めた場合は20万円の加算があります。

Q. 申請期限はいつまでですか?

A. 正社員化コースの第1期は「正規雇用としての賃金を6ヶ月分支給した日の翌日から2ヶ月以内」です。この期限を過ぎると申請できなくなります。支給申請日を逆算して余裕を持って準備しましょう。

Q. 問い合わせ先はどこですか?

A. 管轄の都道府県労働局またはハローワークに問い合わせてください。東京都の場合は東京労働局、愛知県の場合は愛知労働局が窓口です。

Q. 就業規則がない場合はどうすればいいですか?

A. キャリアアップ助成金を申請するには就業規則(または賃金規程等)への転換規定の明記が必要です。就業規則がない場合は社会保険労務士に相談することをお勧めします。


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まとめ|まず「キャリアアップ計画書」の作成から始めよう

キャリアアップ助成金は、非正規から正社員への転換コストを大幅に軽減できる制度です。中小企業なら最大80万円の支給は、採用・人件費のコスト回収として見ても大きな意味があります。

ただし、取組みの前日までにキャリアアップ計画書を提出していないと一切もらえません。「後から申請しよう」では間に合わないのが最大の注意点です。

今すぐできることを整理します。

  1. キャリアアップ管理者を決める(担当者を選ぶだけでOK)
  2. キャリアアップ計画書を作成・提出する(正社員化などの取組み前日までに)
  3. 就業規則に転換規定を追加する(なければ新たに作成)
  4. 正社員化を実施して、転換後の賃金を3%以上にする
  5. 6ヶ月後に支給申請をする

計画書の書き方は キャリアアップ計画書の書き方と提出方法、申請書類の準備は キャリアアップ助成金の申請方法と必要書類 を参考にしてください。不明点は社会保険労務士や管轄のハローワークに相談するのが確実です。

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