正社員化コースの条件と金額|パート・アルバイトを転換すると最大80万円
目次
正社員化コースとは?アルバイト・パートを正社員にすると最大80万円
アルバイトやパートを正社員に転換したとき、国から助成金がもらえることを知っていますか?キャリアアップ助成金の「正社員化コース」は、中小企業が非正規雇用の労働者を正社員化した場合に最大80万円が支給される制度です。
ただし、「転換してから申請すればいい」と思っていると、助成金をもらえません。正社員化コースには守らなければならない手順があり、その順番を間違えると支給対象外になります。
この記事では、正社員化コースの対象者・支給金額・申請の流れを、実際の手順に沿って解説します。
支給金額|重点支援対象者かどうかで変わる
正社員化コースの支給額は、転換する労働者が「重点支援対象者」かどうかで大きく変わります。2025年度からこの区分が導入されました。
| 企業区分 | 対象者 | 転換の種類 | 支給額(1人あたり) |
|---|---|---|---|
| 中小企業 | 重点支援対象者 | 有期雇用→正規雇用 | 80万円 (40万円×2期) |
| 中小企業 | 重点支援対象者 | 無期雇用→正規雇用 | 40万円 (20万円×2期) |
| 中小企業 | 上記以外 | 有期雇用→正規雇用 | 40万円 (1期のみ) |
| 中小企業 | 上記以外 | 無期雇用→正規雇用 | 20万円 (1期のみ) |
| 大企業 | 重点支援対象者 | 有期雇用→正規雇用 | 60万円 (30万円×2期) |
| 大企業 | 重点支援対象者 | 無期雇用→正規雇用 | 30万円 (15万円×2期) |
| 大企業 | 上記以外 | 有期雇用→正規雇用 | 30万円 (1期のみ) |
| 大企業 | 上記以外 | 無期雇用→正規雇用 | 15万円 (1期のみ) |
1年度1事業所あたり上限20人まで申請できます。
重点支援対象者の要件
重点支援対象者に該当するのは、次のいずれかの条件を満たす有期雇用労働者です。
条件①: 雇用期間が通算3年以上の者
条件②: 雇用期間が3年未満で、かつ以下の両方を満たす者
- 過去5年間の正規雇用期間が1年以下
- 過去1年間、正規雇用の経験がない
条件③: 人材開発支援助成金の対象訓練を受けた者、派遣労働者、母子家庭の母等
つまり、長期間パートやアルバイトとして働いてきた方や、正社員経験が少ない方が主な対象です。なお、雇用期間が通算5年を超える有期雇用労働者は、無期雇用労働者として扱われます。
加算措置
条件を満たすと、基本支給額に上乗せで加算を受けられます。
| 加算条件 | 加算額(中小企業) |
|---|---|
| 正社員転換制度を新たに就業規則に規定した場合 | 20万円(1事業所1回) |
| 多様な正社員制度(勤務地・職務限定・短時間正社員)を新設した場合 | 40万円(1事業所1回) |
| 派遣労働者を派遣先が直接正社員として雇用した場合 | 28万5,000円(1人あたり) |
例えば、就業規則に正社員転換規定がなく、今回初めて規定を新設して3年以上勤務のパートを正社員化した場合、中小企業なら 80万円(基本)+20万円(加算)=100万円 を受け取ることができます。
対象となる事業主の条件
以下の要件をすべて満たす事業主が対象です。
- 雇用保険適用事業所の事業主であること
- 事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置していること
- キャリアアップ計画書を作成し、管轄の都道府県労働局に届け出ていること(取組み実施の前日まで)
- 対象労働者の労働条件・賃金支払い状況を明らかにする書類を整備していること
中小企業の定義(業種別)
| 業種 | 資本金または出資の総額 | または常時雇用する労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 製造業・その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
対象となる労働者の条件
正社員化コースの助成金を受けるには、転換する労働者にも条件があります。
- 有期雇用・短時間・派遣などの非正規雇用の労働者であること
- 転換前に 通算6ヶ月以上、当該事業主に雇用されていること
- 事業主・役員の 3親等以内の親族でない こと
- 新規学卒者の場合、雇入れから1年を経過 していること(2025年度からの変更点)
- 過去3年間に正規雇用・無期雇用で雇われていた者でないこと
- 定年まで1年以上残っていること
「雇入れから6ヶ月以上」という条件は見落としがちです。採用してすぐ正社員化しても助成対象にはなりません。
申請の流れ|5つのステップ
正社員化コースの申請は、必ずこの順番で進めてください。
ステップ1:キャリアアップ管理者を選任する
事業所ごとに1人、キャリアアップ計画の実行を管理する担当者を決めます。専従でなくてもOKで、人事担当者や経営者自身が兼任するケースも多いです。
ステップ2:キャリアアップ計画書を作成・提出する(必ず取組み前日まで)
非正規労働者のキャリアアップ計画書を作成し、管轄の都道府県労働局に届け出ます。計画書は3〜5年の計画期間で作成します。
2025年度からは「届け出のみ」でOKになり、労働局長の認定は不要になりました。ただし、提出が取組み実施後になった場合は助成対象外です。この手順は絶対に守ってください。
計画書の書き方の詳細は キャリアアップ計画書の書き方と提出方法 を参照してください。
ステップ3:就業規則を整備する
正社員への転換規定(転換の条件・時期・転換後の処遇など)を就業規則に明記します。
- 既に転換規定がある場合:内容を確認し、転換後の待遇(賞与・退職金・昇給など)の規定が適切かチェック
- 転換規定がない場合:新たに規定を作成し、労働基準監督署に就業規則変更届を提出
就業規則に転換規定を新たに定めた場合は、20万円の加算を受けられます(1事業所1回)。
ステップ4:正社員化を実施する
転換日に雇用契約を正社員として結び直します。このとき確認が必要な条件は2点です。
転換後の賃金が3%以上増加していること
転換前6ヶ月の賃金と転換後6ヶ月の賃金を比較して、3%以上の増加が必要です。なお、通勤手当・住宅手当・残業代などは比較対象の賃金に含まれません(基本給・定額の諸手当が比較対象)。
社会保険(健康保険・厚生年金)に加入させること
正社員化と同時に社会保険の加入手続きが必要です。社会保険適用のタイミングがずれると助成対象外になる場合があるため注意が必要です。
ステップ5:支給申請をする
第1期の支給申請
正規雇用の賃金を6ヶ月分支給した日の翌日から 2ヶ月以内 に申請します。
第2期の支給申請 (重点支援対象者の場合のみ)
正規雇用の賃金を12ヶ月分支給した日の翌日から 2ヶ月以内 に申請します。第1期で不支給決定を受けた場合、第2期は申請できません。
申請先は管轄の都道府県労働局またはハローワークです。
注意点|よくある失敗パターン
失敗1:計画書提出前に正社員化してしまった
計画書提出前の取組みは助成対象外です。「先に正社員にして、後から計画書を出せばいいや」は通りません。これが最も多い失敗です。
失敗2:賃金が3%増えていなかった
転換後の賃金増加率の計算ミスです。通勤手当や住宅手当を含めて計算してしまうと、実際の比較対象賃金で3%に届かないケースがあります。事前に社会保険労務士や都道府県労働局に確認することをお勧めします。
失敗3:支給申請の期限を過ぎた
「6ヶ月分支給した翌日から2ヶ月以内」という期限を忘れていた、または計算を間違えたケースです。転換日を起点に申請期限を手帳やカレンダーに記録しておきましょう。
失敗4:就業規則に転換規定がなかった
申請時に「転換規定の確認」を求められます。就業規則に転換の条件・時期・転換後の待遇が明記されていないと、審査が通りません。
よくある質問
Q. アルバイトを正社員にしたいが、6ヶ月未満でも対象になりますか?
A. なりません。転換前に当該事業主のもとで6ヶ月以上雇用されていることが条件です。あと数ヶ月で条件を満たす場合は、今のうちにキャリアアップ計画書を準備しておきましょう。
Q. 派遣社員を自社の正社員として直接雇用した場合はもらえますか?
A. もらえます。派遣労働者を派遣先が直接雇用した場合、28万5,000円の加算があります(基本支給額に上乗せ)。
Q. 正社員化コースと他のコースは同時に申請できますか?
A. 別々の取組みに対してであれば、複数のコースを申請できます。ただし、同一の取組みに複数コースを重複して申請することはできません。
Q. 申請書類の保管はいつまで必要ですか?
A. 書類は支給決定日から5年間保管することを推奨します(行政検査や監査の際に提示が求められる場合があります)。
申請書類の準備
申請に必要な書類の詳細・電子申請の手順については キャリアアップ助成金の申請方法と必要書類 をご覧ください。
キャリアアップ助成金の全体像や他のコースについては キャリアアップ助成金ガイド をご参照ください。
まとめ
キャリアアップ助成金の正社員化コースは、手順さえ守れば確実に受け取れる制度です。最大のリスクは「計画書提出前に転換してしまうこと」だけです。
今すぐできる準備として、まずキャリアアップ管理者を決め、計画書を作成・提出してください。転換する労働者が「重点支援対象者」に該当するかどうかも事前に確認しておきましょう。
わからないことがあれば、管轄の都道府県労働局またはハローワークに相談するか、社会保険労務士に依頼するのが確実です。