今日は「東京都障害者安定雇用奨励金」について聞かせてください。障害者雇用に取り組みたい企業にとって、かなり使えそうな制度みたいですけど、実際どんな制度なんですか?
これは東京都が独自にやってる奨励金で、障害のある方を正規雇用や無期雇用で迎え入れた企業に、最大200万円を支給する制度です! 国の助成金とは別枠なので、実質的に上乗せで受け取れるのが一番のポイントですよ。
えっ、最大200万円ですか! それは大きいですね。
中小企業で精神障害者の方を雇い入れた場合、賃金が最低賃金を10%以上上回っていれば200万円まで受け取れます。通常でも180万円なので、かなりのインパクトですよね。しかも一事業主あたりの支給人数に上限がないので、複数名採用するほど積み上がっていきます。
なるほど! 国の制度と組み合わせて使えるっていうのが、東京都らしい独自施策って感じですね。次は金額の詳細を教えてもらえますか?
東京都障害者安定雇用奨励金 支給金額一覧表
支給金額って、障害の種別や会社の規模によって違うんですか?
そうなんです、ざっくり言うと「障害種別 × 雇用形態 × 企業規模」の掛け合わせで決まります。令和8年4月1日以降に雇入れ・転換した場合の金額をまとめると、こうなります。
| 区分 | 中小企業(精神障害者) | 中小企業(その他障害者) | 大企業・特例子会社 |
|---|
| 雇入れ奨励金(通常) | 180万円 | 150万円 | 130万円(精神)/100万円(その他) |
| 雇入れ奨励金(賃金10%超) | 200万円 | 170万円 | 同上 |
| 転換奨励金(通常) | 150万円 | 120万円 | 130万円(精神)/100万円(その他) |
| 転換奨励金(賃金10%超) | 160万円 | 130万円 | 同上 |
既に有期雇用で働いている障害者の方を、正規雇用や無期雇用に転換した場合にもらえる奨励金です。新規採用だけでなく、既存の社員を転換するケースにも使えるのが便利なんですよ。
ああ、すでにパートで働いてもらってる障害者の方を正社員にしたときも対象になるんですね!
そうです! ただし令和8年4月1日より前に雇入れ・転換した場合は改正前の金額が適用されますので、注意してください。金額は変わりますが制度の骨格は変わっていません。
- 中小企業で精神障害者を雇入れ → 最大180万円(賃金10%超なら200万円)
- 中小企業でその他障害者を雇入れ → 最大150万円(賃金10%超なら170万円)
- 大企業・特例子会社 → 精神障害者130万円、その他100万円
- 支給人数の上限なし(複数名採用で積み上がる)
- 雇入れだけでなく「転換」(有期→無期)も対象
実際にこの制度を使うには、どんな条件を満たさないといけないんですか?
まず事業所の要件として、東京都内に本社または雇用する事業所があること、雇用保険の適用事業所であることが必要です。それから雇用要件として、これがかなり具体的なんですよ。
雇入れの場合は5つの要件を全部クリアする必要があります。1つ目は「週20時間以上の無期雇用で雇い入れる」こと。2つ目は賃金要件で、中小企業なら最低賃金を3%以上、大企業(特例子会社)なら5%以上継続して上回ることが必要です。
そうです。それから3つ目が「制度要件」で、次の8つの中からどれか2つ以上を設けていることが必要です。昇給制度、賞与制度、通院有給休暇または病気有給休暇制度、テレワーク制度、フレックスタイム制度、通勤緩和制度、時間単位での年次有給休暇制度、永年勤続表彰制度です。
8つのうち2つ以上なら、かなり柔軟ですね。テレワーク制度だけでもかなりの企業が対応できそうです。
そうなんです。4つ目が「雇入れ後6か月間の評価と育成方針の策定」。5つ目が特定求職者雇用開発助成金(国の助成金)の支給決定を受けていることです。ここが重要ポイントで、国の特開金の支給決定が条件なんですよ。
えっ、国の助成金の支給決定が条件なんですか! それって先に国のほうを申請しないといけないってことですよね?
その通りです。だから順番が大事で、先にハローワーク経由で特定求職者雇用開発助成金を申請して支給決定を受けてから、東京都に申請するという流れになります。これが「国と上乗せで使える」という意味なんです。
- 国の「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース/発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」の支給決定が必要
- 転換の場合は「特定求職者雇用開発助成金」または「トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)」の支給決定が必要
- 支給決定前に東京都へ申請しても受け付けられない
- 申請期限は採用・転換日から6か月経過した日から2か月以内(遅れると権利消滅)
身体障害者手帳、療育手帳(愛の手帳)、精神障害者保健福祉手帳のいずれかを持っている方が対象です。手帳の種別によって支給金額が変わるのは精神障害者の場合だけで、身体・知的障害の方は「精神障害者以外」の区分になります。
発達障害のある方は精神障害者保健福祉手帳の取得者が多いんですよね?
そうですね。最近は精神障害者・発達障害者の雇用が急増していて、手帳を持っている方の数も増えています。特開金の「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」が条件に明示されているのも、こういう背景があります。
制度名も最近「障害者や難病患者の安定雇用」という副題がついているくらいで、難病患者の方も含まれています。対象が広いのが東京都の制度の特徴ですね。
対象者の幅が広いのは申請企業にとってもチャンスが多いですね。では次に申請の流れを教えてください。
東京都障害者安定雇用奨励金 申請フロー
大きく5つのステップで進みます。準備段階が特に重要なんですよ。
1採用前の体制整備 — 職場環境のバリアフリー化、支援機器の準備、支援機関との連携体制の構築。8つの制度要件のうち2つ以上を整備しておくこと
2ハローワーク経由で採用・特開金申請 — ハローワークの求人票に障害者雇用である旨を明記して採用活動を行う。採用後、速やかに特定求職者雇用開発助成金をハローワークへ申請する
3雇入れ後6か月間の定着・処遇改善 — 育成方針を策定し、処遇改善(昇給、制度の整備等)を実施。取り組み内容を記録に残しておく。国の特開金の支給決定を受ける
4申請書類の作成と東京都へ提出 — 採用・転換日から6か月経過した日から2か月以内に申請。郵送(簡易書留等)、持参(事前電話予約必要)、またはJグランツで電子申請
5審査・奨励金受給 — 東京都による審査後、支給要件が確認されると奨励金が振り込まれる。必要に応じて現地調査が行われる場合もある
そうです! ただしJグランツを使う場合はGビズIDのアカウント取得が必須です。GビズIDの取得には数週間かかることがあるので、電子申請を考えている企業は早めに準備しておいてください。
雇入れの場合は支給申請書・誓約書・障害者手帳の写し・育成方針・特開金の支給申請書の写しが基本の5点です。転換の場合はこれに加えて支給決定通知書の写しなどが必要になります。チェックリストが公式ページでダウンロードできるので、必ず使ってください。
一番大事なのは「処遇改善の取り組みを日常から記録する習慣」です。この制度は「雇用の数」より「雇用の質」を重視していて、形式的な申請では審査が通りにくいです。
たとえば面談記録、個別の配慮内容のメモ、昇給の決定過程の書類、研修の実施記録といったものです。「何月何日に〇〇さんと面談し、テレワーク制度の利用を検討した」というレベルの記録が審査で効いてきます。
- 障害特性を理解したオーダーメイドの配慮を実施している
- 就労支援機関(ハローワーク特定子会社、ジョブコーチ等)と継続的に連携している
- 8つの制度要件のうち3つ以上整備している(2つが最低ラインだが評価が上がる)
- 育成方針が具体的で個別性がある(「○○業務でスキルアップを図る」等)
- 処遇改善の取り組みを書面で証明できる
めちゃくちゃ大事です! 受入部署の社員が障害者雇用を「特別対応」と感じている環境では定着しません。管理職向けの障害理解研修を事前にやっておくと、審査書類にも書けるし、実際の定着率も上がります。
キャリアアップの仕組みを作るのも評価されるんですか?
そうです。「この職場で長く働きたい」と思えるキャリアパスがあることは、処遇改善要件に直結します。段階的に職務範囲を広げていくロードマップを採用時に示せると、本人のモチベーションも上がりますし、審査書類も充実します。
奨励金を受け取った後、どんな経費に充てることができますか?
奨励金はあくまで「雇用に対する報奨金」なので、使途は原則自由です。ただ想定される活用例として、職場のバリアフリー化費用、支援機器の導入費、障害理解研修の実施費用などがあります。最大200万円が自由に使えるのでインパクトは大きいですよ。
| 活用例 | 具体的な支出内容 |
|---|
| 物理的環境整備 | 車椅子対応デスク、静音スペース、バリアフリー改修工事 |
| IT・支援機器 | 音声読み上げソフト、タブレット端末、遠隔操作ツール |
| 研修・教育 | 障害理解研修、個別業務訓練、外部研修への派遣 |
| 外部支援活用 | ジョブコーチ費用、就労支援機関への委託 |
| 制度整備 | 就業規則の改定、キャリアパス制度の設計コンサルティング |
いろんな場面で活用できるんですね。法定雇用率の話も聞いてみたいんですが、達成できていない企業でも申請できますか?
できます! 法定雇用率の達成が要件ではないんです。「これから達成に向けて取り組む」という姿勢でも申請できます。ただし、労働関係法令に違反している状態では申請できないのでそこは注意してください。
この奨励金と組み合わせて使えるほかの制度はありますか?
| 組み合わせる制度 | タイミング | 効果 |
|---|
| 特定求職者雇用開発助成金(国) | 採用時・同時期 | 雇入れコストをさらに軽減(両者は必ずセット) |
| トライアル雇用助成金・障害者トライアルコース(国) | 本雇用前のトライアル期間 | お試し期間の費用を支援し、確信を持って本採用へ |
| 障害者雇用納付金制度に基づく助成金 | 職場環境整備時 | バリアフリー化・支援機器の導入費を助成 |
組み合わせると相当なサポートになりますね。ただ二重受給って大丈夫なんですか?
同一の支給事由に対して重複受給はNGです。ただしこの奨励金と特開金は「同一経費への重複支給」ではなく、それぞれ別の目的で出るお金なので基本は併用できます。一方、キャリアアップ助成金(正規転換コース)など国の一部の制度とは重複NGになるケースがあるので、申請前に東京都の窓口に確認することを強くお勧めします。
- 国が支給するキャリアアップ助成金
- 国が支給する障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)のうち正規・無期転換に係る助成金
- 東京都正規雇用等転換安定化支援助成金
- 東京都緊急就職支援事業助成金
なるほど! 初めての障害者雇用なら「スタート支援奨励金」も検討できるし、規模が小さければ「支援助成金」もある。本制度は規模を問わず最も金額が大きいケースがあるんですね。
まさに。複数の制度を横断的に確認して、自社の状況に合わせて選ぶ(あるいは組み合わせる)のがベストです。
業種によって使いやすさが違うんですよね。テレワークを導入しやすい情報通信業は相性抜群です! IT企業なら「週3日テレワーク可能な無期雇用エンジニア」として発達障害の方を採用する事例が増えています。
製造業は工程が明確に分かれているので、障害特性に合わせた業務の切り出しがしやすいです。例えば検品・梱包・仕分け業務をマニュアル化すれば、知的障害のある方が安定して活躍できる環境が作れます。飲食業も調理補助・食材仕込み・洗い場など段階的な業務拡大が可能です。
医療・福祉業はどうですか? 障害者支援の事業所が障害者を雇うというのも面白いですね。
医療・福祉の事業所は合理的配慮のノウハウが社内にある分、採用後のフォロー体制が整いやすいんですよね。バックオフィス業務や事務作業に障害者の方を配置するパターンが多いです。
| 業種 | おすすめの雇用形態 | 活用イメージ |
|---|
| 情報通信業 | フルテレワーク無期雇用 | 発達障害のある方をQAエンジニア・データ入力職に採用 |
| 製造業 | 定時制無期雇用 | 知的障害のある方に検品・梱包をマニュアル化して担当 |
| 小売・物流 | シフト制無期雇用 | 身体障害のある方にバックヤード業務を中心に担当 |
| 飲食業 | 時差出勤制無期雇用 | 調理補助・仕込み作業に精神障害のある方が活躍 |
| 医療・福祉 | 一般事務無期雇用 | 事務・受付補助に身体・精神障害のある方を配置 |
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 東京都障害者安定雇用奨励金 |
| 支給上限額 | 最大200万円(中小企業・精神障害者・賃金10%超の場合) |
| 申請期間 | 2025年4月1日〜2034年3月31日 |
| 申請期限 | 採用・転換日から6か月経過した日から2か月以内 |
| 対象地域 | 東京都(都内に事業所がある企業) |
| 実施機関 | 東京都産業労働局 雇用就業部 就業推進課 障害者雇用促進担当 |
| 電話番号 | 03-5320-4663(代表) |
| 所在地 | 東京都新宿区西新宿2-8-1 東京都庁第一本庁舎21階北側 |
| 公式サイト | TOKYOはたらくネット |
| Jグランツ | 電子申請フォーム |
そうです、約9年間なんですよ。企業が採用のタイミングを見計らって、しっかり準備してから申請できるのが大きなメリットです。ただし採用後6か月以降の2か月間という申請タイミングは絶対に守らないとNGなので、人事カレンダーに必ず入れておいてください。
今日はかなり詳しく教えていただきました! ダイバーシティ推進に本気で取り組みたい企業にはかなり使いやすい制度ですね。
まさに。法定雇用率の達成だけを目的にするのではなく、「障害のある方が本当に活躍できる職場を作りながら、国と都の支援を最大活用する」という発想で取り組めば、人材確保と社会的評価の向上を同時に実現できます!
まだ疑問が残っている方もいそうなので、よくある質問もまとめてもらえますか?
FAQ①:法定雇用率を満たしていない企業は申請できませんか?
申請可能です。法定雇用率の達成は要件ではありません。ただし、この奨励金の申請を機に法定雇用率の達成に向けた計画を立てることをお勧めします。達成状況は現地調査で確認される場合があります。
FAQ②:既に雇用している障害者の方への申請はできますか?
原則として新たな雇入れまたは転換(有期→無期)が要件です。既存の無期雇用者については対象外となるケースがほとんどです。新規採用や有期→無期転換のタイミングで申請してください。
書類に不備がなければ数か月程度が目安ですが、追加書類の提出を求められる場合があります。審査期間中も現地調査が入る可能性があるため、関連書類は整理して保管しておいてください。
持参する場合は「事前電話予約」が必要なんですね。それは忘れずに!
重要です! 予約なしで行っても対応してもらえない場合がありますよ。電話番号は03-5320-4663です。郵送の場合は記録が残る簡易書留等で送るよう注意してください。
最後に、この制度に関連する参考リンクや同様の制度を教えてください。
東京都の障害者雇用支援の制度が複数ある中で、この奨励金は規模を問わず一番金額が大きいケースがあるんですね。東京で事業をやっている企業には絶対チェックしてほしい制度ですね!
障害者雇用は「コスト」ではなく「投資」として捉える時代になっています。この奨励金を活用しながら、ダイバーシティ経営を経営戦略の柱の一つに据えていただければと思います!