申請フロー図 雇用補助金は計画届出が取組開始前に必要
室谷さん、うちのお客さんの京都の中小企業なんですけど、「人を採りたいけどお金がかかる」「社員の働き方を改善したいけど投資できない」って相談が最近すごく多くて。雇用関係で使える補助金って、実際どのくらいあるものですか?
やっぱり人件費と労務投資って今の中小企業の最大の悩みどころですよね。で、実は雇用・職場改善に使える国の制度だけで30制度以上あって、京都府や京都市の独自制度まで合わせると40件超の補助金・助成金が選択肢 として存在します。しかも補助金と違って、雇用関係の助成金は「要件を満たせば原則もらえる」仕組みなんですよ。
正確には「採択競争がない」って言った方が正確ですね。補助金は予算枠内で審査・採択されますけど、助成金(主に厚生労働省系)は雇用保険料を財源にしているので、要件を満たした事業主には原則支給されます。ただ取組前に計画届を出す必要があるので、「やってから申請」では受け取れないことが多い。ここを間違える会社が結構多いんです。
そうなんです。これが雇用関係助成金の鉄則で、知らずに進めると受給できなくなる一番多い失敗パターンです。順番を間違えると労働局に「受け付けられません」ってなっちゃう(笑)。
主要雇用補助金・助成金比較表(2026年版)
まず国の制度から教えてもらえますか。どのカテゴリに分類されるのかがわかると選びやすそうで。
大きく5つのカテゴリで整理できます。「採用・雇入れ系」「育成・スキルアップ系」「働き方改革系」「障害者・外国人雇用系」「雇用維持・再就職系」ですね。それぞれに複数の制度があって、自社の取組テーマに合わせて選ぶのが基本です。
キャリアアップ助成金 が圧倒的に件数が多いですね。非正規雇用の方を正社員化するだけで1人あたり最大80万円もらえる。令和8年度版では重点支援対象者(就職氷河期世代など)はさらに加算されて最大160万円になるケースもあります。これは「正社員化コース」の話で、ほかにも賃金規定等改定コース、社保適用時処遇改善コースなど複数あります。
なるほど、正社員化するだけでお金がもらえるんですね。
「だけで」ってわけでもなくて、就業規則に転換規定を整備して、実際に6ヶ月以上雇用継続した後に申請する流れです。事前にキャリアアップ計画書も届け出ておく必要があります。手続きはやや複雑なので社労士さんに頼む会社が多いですね。リスキリングと組み合わせる場合は
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 も検討してみてください。
業務改善助成金(最大600万円)
業務改善助成金ってよく聞きますけど、雇用改善と何か関係あるんですか?
実は直結してるんですよ。業務改善助成金 は事業場の最低賃金を引き上げることを条件に、その実現のための設備投資費用を最大600万円(補助率3/4〜9/10)助成してくれる制度です。例えばPOSレジや機械設備を導入して業務効率を上げ、浮いた分で賃上げを実現する、という使い方ですね。
働き方改革推進支援助成金(令和8年度最大1,370万円)
働き方改革推進支援助成金って、令和8年度から金額が増えたって聞きましたけど。
そうなんです。
令和8年度版の働き方改革推進支援助成金 は最大1,370万円まで拡充されました。主に4つのコースがあって、労働時間短縮・年休促進支援コース(成果目標達成で最大150万円+賃金引上げ加算)、勤務間インターバル導入コース(最大150万円)、業種別課題対応コース(建設・運送・医療など特定業種向け)、団体推進コースです。
申請期間っていつまでですか!建設業も運送業も2024年問題の対応が急いでますよね。
令和8年度は令和8年4月13日から令和8年11月30日(予算到達で早期終了あり)です。取引環境改善コースと団体推進コースは別途確認が必要ですね。建設業・運送業・医療系の京都の事業主さんには特に業種別課題対応コースが刺さりますよ。
建設業と運送業は2024年問題で労働時間の上限規制が適用になったから、使いやすい制度が出てきたってことですね。
両立支援等助成金・人材開発支援助成金
ありますよ。両立支援等助成金 は出生時両立支援コース(男性育休取得促進)で上限60万円、介護離職防止支援コースで上限140万円など複数のコースがあります。育休や介護支援の制度を整備した企業に支給される仕組みです。
人材開発支援助成金は訓練・研修の経費と賃金の一部を助成してくれます。OFF-JTの場合、中小企業は経費の60〜75%、実習(OJT)分の賃金助成もあります。DX・リスキリング訓練も令和8年度から対象に加わって、デジタル人材の育成にも使えるようになりました。京都には伝統工芸と最先端ITが共存してますから、こういう制度は活用余地が大きいですよ(笑)。
社員にデジタルスキルを身につけてもらいながら費用の補助も受けられるのはいいですね。
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)
もう一つ注目してほしいのが、産業雇用安定助成金のスキルアップ支援コース で、これが上限1,000万円と破格です。在籍型出向で社員を別の会社に出向させてスキルアップさせ、復帰後に賃金が5%以上上昇した場合に出向元に支給されます。
1,000万円ってすごいですね!京都の中小企業でもこれ使えますか?
使えますよ。ただ条件として「スキルアップ目的の出向」であることが必要なので、人員整理目的の出向はNGです。きちんとした人材育成計画があれば取り組みやすい制度です。ハローワークで相談してみてください。
国の制度のほかに、京都府や京都市独自の補助金ってありますか?
あります!京都府には中小企業の人材確保・定着を支援する独自補助が複数あって、国の制度と組み合わせると実質的な支援総額がかなり大きくなります。
まず京都市の企業立地系ですが、
京都市企業立地促進制度補助金(本社・工場等新増設等支援制度) は製造業・IT系が京都市内に本社機能や工場を新設・増設する際に、固定資産税・都市計画税相当額の100%〜150%(最大1億円)を補助してくれます。常時雇用者5名以上の増加が条件ですが、雇用創出と設備投資が絡む大型案件なら検討の価値ありです。
京都市外から初めて進出する企業向けには
市内初進出支援制度 もあって、こちらは市内居住の常時雇用者数に応じて最大7,000万円(年間2,500万円×2年度分)。雇用者1人あたり年10万円で、海外企業や京町家オフィスに入居する場合は補助額が2倍になります。ユニークですよね(笑)。
観光と産業を融合させた京都らしい発想ですよね。あと
京都型グローバル・ニッチ・トップ企業育成補助金 は、市の認定を受けた中小企業が市内で事業所を新設・増設すると固定資産税の100%(最大1億円)が補助されます。認定のハードルはありますが、B to Bのニッチ分野で強みを持つ京都の中小企業には刺さる制度です。
京都府全体(府域市町村)で使える雇用系の制度はどうですか?
府全体では正規雇用転換促進補助(非正規→正規の転換を後押しするもの)、多様な働き方推進事業費補助(テレワーク・短時間勤務制度等の導入)などがあります。金額は単体で上限50〜200万円程度ですが、国のキャリアアップ助成金と組み合わせると合計で1人あたり200万円超になることもある。組み合わせ設計をちゃんとするかどうかが、貰える額の差になります。
制度名 最大金額 補助率 対象 申請先 キャリアアップ助成金(正社員化) 最大80万円/人(加算で160万円) 定額 非正規→正社員化 ハローワーク 業務改善助成金 最大600万円 3/4〜9/10 最低賃金引上+設備投資 労働局 働き方改革推進支援助成金 最大1,370万円 3/4 労働時間削減・年休促進 労働局 両立支援等助成金(介護離職防止) 最大140万円 定額 育休・介護支援制度導入 ハローワーク 人材開発支援助成金 経費60〜75%助成 3/4 訓練・研修・リスキリング ハローワーク 産業雇用安定助成金(スキルアップ) 最大1,000万円 定額 在籍型出向+賃上げ ハローワーク 京都市企業立地促進補助金(新増設) 最大1億円 100〜150% 製造業・IT系 新設 京都市 京都市初進出支援制度 最大7,000万円 定額 市外からの初進出 京都市
並べてみると金額の幅がすごいですね。業種や状況によって全然違う。
だから「うちに合う制度をどう選ぶか」が肝心なんです。国の助成金だけでも30制度以上、京都の独自制度を加えると相当な選択肢があるわけで、全部を知ってる人が一人で申請するのは現実的じゃない。社労士や商工会議所のコーディネーターと一緒に「組み合わせ設計」をするのが一番効率的ですよ。
3つあります。まず「計画届出を先に」。これは何度も言いますが、助成金は取組を始める前に計画届を出さないとダメです。「先月から育休支援制度を運用し始めた、さあ申請しよう」ってやると受け付けてもらえません。
次に「36協定と就業規則の整備」。雇用関係助成金の多くは、就業規則がきちんと整備されていることを前提にしています。36協定が未締結だったり、就業規則が実態と違ったりすると受給できないケースがあります。あとは「GビズIDの事前取得」。電子申請が拡大していて、GビズIDがないと申請できない制度が増えています。取得に2〜3週間かかるので早めに動いてください。
GビズIDって補助金申請全般で必要になってきてますよね!かなり定番化してきた。
就業規則・36協定が現状に合っているか(最近見直したか)
GビズIDを取得しているか(取得に2〜3週間)
計画届出を取組開始前に提出しているか
働き方改革推進支援助成金は令和8年11月30日が申請期限(予算切れ早期終了あり)
先着・採択制の補助金は募集開始直後に動くこと
助成金でも要領改定が頻繁にあるため、厚生労働省公式の最新要領を必ず確認
特に業種別課題対応コースは予算枠が絞られてることがあるんですよ。これまでに何社も「1週間遅かった」って話を聞いています。とにかく思い立ったら即行動が鉄則です(笑)。
「採用コストを下げながら定着率も上げたい」という場合はどの制度を使えばいいですか?
王道パターンがあって、キャリアアップ助成金(正社員化コース)と京都府の正規雇用転換促進補助を組み合わせると、1人あたりの支援を最大化できます。正社員化で国から最大80万円、京都府独自補助が30万円前後、加算が適用されると合計100万円超になることも。
さらに定着支援を上乗せもできますか!これはかなりお得ですね。
できます。人材開発支援助成金で採用後の研修・OJTの経費を助成してもらいつつ、両立支援等助成金で育休・介護サポート制度を整えると「入社後のフォロー体制がある会社」として採用競争力も上がります。ざっくり計算すると、中小企業で正規雇用1名の採用・育成コストのうち200万円近くを助成金で回収できる組み合わせも理論上はあり得ます。
全部のコースを同時に取れるわけじゃないですし、手続き工数もかかるので「ゼロコスト採用」は言い過ぎですが、使える制度を知ってるのと知らないのとでは数百万円の差が出る会社もあります。京都の中小企業はまだまだ助成金活用率が低い印象があるので、もったいないなと感じることが多いですよ。
現状課題を明確にする(採用力不足/定着率低下/労働時間過多/賃上げ余力不足)
ハローワーク(公共職業安定所) : キャリアアップ助成金・両立支援等助成金・人材開発支援助成金・産業雇用安定助成金
京都労働局 : 業務改善助成金・働き方改革推進支援助成金(Tel 075-241-3269)
公益財団法人 京都産業21 : 京都府独自補助金(賃上げ支援・人材育成など)
京都市産業観光局 : 京都市企業立地促進補助金・市内初進出支援制度
今日の話をまとめると、京都府の雇用・職場改善に使える補助金・助成金は国だけで30制度以上あって、京都市・京都府独自制度を加えると40件超の選択肢があると。
そうです。ただ全部を使うのは現実的でなく、自社の課題に合った2〜3制度を「組み合わせ設計」するのが実用的なアプローチです。社労士や京都府中小企業支援センター、商工会議所に相談しながら計画を立てるのが一番の近道ですね。
「計画届出が取組開始前」というのは絶対に忘れないようにしないといけませんね。
ほんとに。これだけで受給できるかどうかが決まりますから(笑)。まず今の就業規則の確認とGビズIDの取得から始めてみてください。それだけでも動き出せます。