編集長の佐藤です。今回は「事業承継」に関する補助金について、株式会社MYUUU代表の室谷さんに詳しく伺います。室谷さん、よろしくお願いします!
よろしくお願いします。事業承継は経営者の高齢化が進む中で、多くの中小企業が直面する重要な課題です。国や東京都がいくつか支援制度を用意しています。大きく分けて、東京都中小企業振興公社が実施する「事業承継支援助成金」と、INPITが実施する「INPIT事業再編計画支援事業補助金」の2つが本命ですね。
なるほど。まず東京都の事業承継支援助成金から教えてください。上限は200万円と聞きました。
そうです。東京都内の中小企業が対象で、補助率は3分の2、上限200万円です。ただし、この助成金には申請前に公社や商工会議所など支援機関の事前支援を受けていることが必須です。単独で申請はできません。まずは支援機関に相談し、診断や助言を受けてから申請する流れになります。
事前支援が必要なんですね。確かに編集メモにも「専門家を使う前に確認すべきもの」とありました。あと、この助成金にはA〜Dの4タイプがあると聞きました。
その通りです。事業承継の進捗段階に応じて4つのタイプが用意されています。
- Aタイプ: 後継者が未定の段階。事業承継の基本計画策定や候補者探索などを外部専門家に委託する費用が対象。
- Bタイプ: 後継者決定後、具体的な引継ぎ準備(事業価値算定、株価算定、M&A仲介など)に使える。
- Cタイプ: 経営改善が必要な企業向け。事業継続のための再生計画策定など。
- Dタイプ: M&Aなどで他社の事業を譲り受ける場合の費用。
いずれも補助率3分の2、上限200万円です。ただし、令和7年度第2回の公募(事業承継支援助成金(令和7年度第2回))では、小規模企業者がA・B・Dタイプで「企業価値や事業価値の算定」に取り組む場合、補助率が10分の10になる特例があります。つまり実質無料で専門家に依頼できるケースもあるんです。
それはすごい! 小規模企業者にとっては朗報ですね。ちなみに、この助成金は毎年募集があるんですか?
東京都の事業承継支援助成金は毎年度、複数回公募されています。過去の実績を見ると、令和5年度は第1回(
令和5年度第1回)と第2回、令和6年度も第1回(
令和6年度第1回)と第2回(
令和6年度第2回)が行われました。令和7年度は現在第1回(
令和7年度第1回)が2025年7月25日締切、第2回が2025年12月19日締切で募集中です。
申請の流れを詳しく教えてください。注意点もあれば。
まず、東京都中小企業振興公社または商工会議所などの支援機関に相談し、事業承継に関する診断や助言を受けます。これが前提条件です。その上で、外部専門家(税理士、弁護士、中小企業診断士など)に委託する計画を立て、助成金を申請します。
ここで絶対に気をつけてほしいのが、交付決定前に専門家と契約・発注しないことです。補助金は原則として「交付決定後に発生した経費」が対象です。もし先に契約してしまうと、後から「対象外」と判定され、全額自己負担になる可能性があります。また、契約書や領収書などの証拠書類はしっかり保管しておきましょう。
なるほど。決定前に動き出すのは危険ですね。では、補助金の対象経費は具体的に何が含まれるんですか?
外部専門家への委託費用が中心です。具体的には、事業承継計画の策定、企業価値算定、M&A仲介手数料、株価算定、デューデリジェンス、契約書作成などが該当します。ただし、自社の従業員の人件費や交通費などは対象外です。あくまで「第三者の専門家に支払う費用」が対象です。
もう一つ、INPITの補助金について教えてください。上限650万円、補助率1/3とありますが、どのようなケースで使うんですか?
この補助金は、産業競争力強化法に基づく事業再編計画の認定を受けた
特定中堅企業が対象です。事業再編(M&Aや組織再編など)に伴って、保有する知的財産のデューデリジェンスや特許ポートフォリオの再構築、ライセンス戦略の見直しなどに活用できます。
例えば、M&Aで他社の特許を引き継ぐ場合、その特許の有効性や権利範囲を調査する費用、あるいは、自社の特許を再編後の事業に合わせて整理する費用などが補助対象になります。補助率は1/3、上限650万円で、締切は2026年12月18日です(
INPIT事業再編計画支援事業補助金)。
まず、対象となる企業規模が違います。東京都の助成金は中小企業が対象ですが、INPITの補助金は「特定中堅企業」が対象です。特定中堅企業とは、資本金や従業員数が一定規模以上(中小企業より大きい)の企業です。また、INPIT補助金は知的財産に特化しているため、特許や商標などの権利処理が発生するケースで有効です。
一方、東京都の助成金は事業承継全般をカバーしているので、より汎用的です。両方とも利用できる場合は、目的に応じて併用も可能ですが、同一経費の重複はできません。
では最後に、事業承継を考えている経営者にアドバイスをお願いします。
まず、早めに専門家や支援機関に相談することが何より大事です。事業承継は準備に数年かかることも珍しくありません。東京都の事業承継支援助成金は、後継者が未定のAタイプから使えるので、まだ承継先が決まっていなくても相談してOKです。
また、補助金を利用する際は、必ず公募要領を確認し、締切を逃さないようにしましょう。令和7年度第1回はあと1ヶ月を切っています。気になる方はすぐに東京都中小企業振興公社のウェブサイトや商工会議所に問い合わせることをおすすめします。
ありがとうございました。事業承継でお困りの方は、ぜひ補助金を上手に活用して、スムーズな引継ぎを実現してください。
本記事で紹介した制度の詳細は、各補助金の公式ページをご確認ください。