INPIT事業再編計画支援事業補助金 基本情報
室谷さん、「INPIT事業再編計画支援事業補助金」って初めて聞いたんですけど、これ何をやってる補助金なんですか?
端的に言うと、M&Aや組織再編を行う中堅企業が、保有する特許や商標などの知的財産を守り・活かすために必要な調査費用を最大650万円まで補助してもらえる制度です。運営しているのはINPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)です。
INPITってあの特許情報の機関ですよね? 知財が絡む補助金ということ?
そうです!(笑)産業競争力強化法(産競法)第34条の2第2項が根拠法令で、事業再編をした企業が「知財どうしよう」ってなったときに使う補助金です。2つの企業が統合したら特許ポートフォリオもくっつくじゃないですか。そこの整理・分析費用が結構かかるんですよ。
補助率は対象経費の1/3以内、補助上限額は650万円です。知財コンサルや特許事務所への委託費用は数百万円規模になりますから、ざっくり650万の1/3がもらえるというのは実務上かなり助かります。
令和8年度(2026年度)は2026年4月1日から2026年12月18日までです。ちなみに令和7年度は2025年4月から12月19日まででしたから、ほぼ同じスケジュールですね。年度をまたいで継続して公募されている制度です。
年間通して受け付けてるんですね。ただ予算枠がなくなったら早期締切になりそう?
その可能性はあります! 予算上限に達した場合は締切前でも受付終了になることがあるので、認定を持っている企業は早めに動くのが正解ですね。
じゃあ、誰でも申請できるわけじゃないですよね。対象者の要件を教えてください。
これが結構ハードルが高くて。まず産業競争力強化法第2条第24項に規定する「中堅企業者」であること。従業員数が901名以上の規模感が目安です。さらに成長発展を図るための事業活動を行っていると主務省令で認められる「特定中堅企業者」でなければなりません。
そうなんです。中小企業基本法の中小企業や小規模事業者は本補助金の対象外です。中堅企業者以上のみ。でもそれだけじゃなくて、もう一個要件がある。産競法第23条第1項の「事業再編計画」の認定を受けていることが絶対条件です。
事業再編の内容や目標などを所管省庁(経済産業省など)に申請して認定を受ける手続きです。この認定を取得するだけでも相当の労力なんですが、裏を返せば認定を持っている企業はこの補助金に申請できる数少ない適格者ということになります。競合が少ない=採択率が上がるとも言えますね。
なるほど、認定があれば穴場的な制度ってことか。全国・全業種が対象ですか?
はい、業種・地域の制限はなく全国・全業種対象です。製造業のM&A後の特許統合から、小売業のDXを伴う事業再編まで、業種を問わず使えます。対象業種は農業・林業・漁業から始まって建設業・製造業・情報通信業・医療福祉まで18業種ですね。
補助額と補助率についてもう少し詳しく教えてもらえますか? 枠ごとの違いとかあるんでしょうか。
本補助金は枠の区分はなく、シンプルに一本構成です。条件を満たした対象経費に対して補助率1/3が適用されます。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 補助上限額 | 650万円 |
| 補助率 | 対象経費の1/3以内 |
| 補助下限額 | 定めなし(公式情報より) |
| 支払方式 | 後払い(精算払い) |
| 申請年度 | 令和8年度(2026年度) |
後払いっていうのは自分で立て替えないといけないってこと?
そうです。交付決定が出た後に調査事業を実施して、完了報告書を提出して検査を通過してからお金が振り込まれる仕組みです。なので最大で1,950万円規模の調査プロジェクトの1/3分=650万円を補助してもらえるというイメージですね。資金繰りの計画は必ず事前に立てておいてください。
ほんとに大きい知財調査ができそうですね! 次に対象経費を聞いてもいいですか?
工業所有権(特許・実用新案・意匠・商標など)の保護・活用を図るために必要な検討に要する調査事業等の経費が対象です。具体的には3つのカテゴリがあります。
| 経費カテゴリ | 対象となる具体例 |
|---|
| 知財調査費 | 特許ポートフォリオ分析、先行技術調査、知財デューデリジェンス、侵害リスク調査 |
| コンサルティング費 | 知財戦略策定、ライセンス戦略立案、ブランド統合戦略策定 |
| 外部専門家費 | 弁理士への相談・委託、弁護士への知財法務相談、知財鑑定 |
弁理士への委託費用も入るんですね! 逆に使えない経費は?
- 特許出願・登録にかかる直接費用(調査ではなく権利化そのものの費用)
- 既存のライセンス契約の使用料
- 社内人件費(自社スタッフが実施する調査は対象外)
- 事業再編計画の認定申請に要する費用(補助金申請の前提として必要な費用)
- 設備投資費用
- 渡航費・宿泊費
社内人件費が対象外ってのは意外でした。外部に委託した分だけなんですね。
そうなんです。だから知財部門が内製でやっている会社でも、外部の特許事務所や知財コンサルに一部委託する形で補助金を活用するのが一般的です。社内調査と外部委託を組み合わせれば、外部委託部分について本補助金を使えます。
実際に申請するまでの手順を教えてください!
INPIT事業再編計画支援事業補助金 申請フロー
全体の流れは5ステップです。一番大事なのは最初のステップ、事業再編計画の認定が「前提条件」になっているという点です。
4GビズIDでjGrantsにログインして電子申請する
実は意外と持ってない会社もあるんですよ(笑)。GビズIDの取得には代表者のマイナンバーカードか印鑑証明書が必要で、最短で2〜3週間かかります。申請を検討してるなら今すぐ取得手続きを始めることをおすすめします。
そうか、GビズIDがないと電子申請できないんですね。早めの準備が大事だ。次は審査のポイントを聞いてもいいですか?
- 整合性が明確 — 認定事業再編計画のどの部分に知財調査が必要か、具体的に紐づけている
- 委託先が実績ある専門家 — 知財デューデリジェンスや特許ポートフォリオ分析の実績がある大手特許事務所や知財コンサルを選定している
- 調査結果の活用計画が具体的 — 「調査してわかりました」で終わらず、結果をどう事業再編に活かすかのアクションプランまで記載している
そこが一番の審査ポイントです。知財調査が「なんとなくやります」ではダメで、認定を受けた事業再編計画のどのフェーズ・どの課題に対応する調査なのかを具体的に説明する必要があります。例えば「A社とのM&A後の統合フェーズで、双方の保有特許の価値評価と侵害リスク洗い出しのために調査が必要」みたいに。
影響しますね。知財デューデリジェンスや特許ポートフォリオ分析は高度な専門知識が必要な領域です。「とりあえず近くの弁理士事務所に依頼します」より、実績のある大手特許事務所や知財コンサルティング会社を委託先にすると申請の説得力が上がります。
活用計画ってどのくらい具体的に書けばいいんでしょう?
「調査結果をもとに、不要特許30件を売却候補リストアップして来年度内に売却交渉に入る」とか「統合ブランドの商標ポートフォリオを整理し、不要商標は2026年度内に放棄、新ブランドは2027年4月に出願開始」みたいなレベルが理想です。数字と時期が入ると一気に具体性が増します。
他の知財系の補助金との違いもわかると申請の判断がしやすいんですが、比較してもらえますか?
整理してみましょう。INPIT関連だと外国出願補助金と一緒によく比較されます。
効果的な組み合わせはこんな感じです。本補助金で知財デューデリジェンスを実施して「このM&A先の技術は海外で特許取得する価値がある」と分かったら、次のステップでINPIT外国出願補助金を使って海外出願するという流れですね。ただし同一経費への二重補助は禁止なので、調査費と出願費は経費項目を明確に切り分ける必要があります。
なるほど、戦略的な知財の2段階活用ができるんですね。
- ステップ1(本補助金) — 事業再編後の特許ポートフォリオ分析で、海外展開すべき技術を特定(調査費用を補助)
- ステップ2(外国出願補助金) — 特定した技術について米国・EU・中国・ASEANへの特許出願(出願費用を補助)
- 経費は明確に区分することが必須(同一経費への二重補助は不可)
ここまでの内容をまとめると、事業再編計画の認定を持っている中堅企業にはかなり狙い目の補助金ってことですよね?
そうです!(笑)対象者が「特定中堅企業者で事業再編計画認定済み」という二重の要件があるため、申請できる企業は限られています。競合が少ない分、認定を持っていれば採択率は高めと推察されます。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | INPIT事業再編計画支援事業補助金(令和8年度) |
| 実施機関 | INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)知財活用支援センター |
| 根拠法令 | 産業競争力強化法第34条の2第2項 |
| 対象者 | 特定中堅企業者(事業再編計画認定済み・従業員901名以上が目安) |
| 補助上限額 | 650万円 |
| 補助率 | 対象経費の1/3以内 |
| 対象地域 | 全国 |
| 対象業種 | 全業種(農林水産業・建設・製造・情報通信・医療福祉など) |
| 申請期間 | 2026年4月1日から2026年12月18日 |
| 申請方法 | jGrants(電子申請) |
| 公式HP | INPIT事業再編計画支援事業補助金 |
| 問い合わせ | INPIT知財活用支援センター 助成事業担当 電話 03-3581-1101(内線3852)/ ip-ct06@inpit.go.jp |
電話でも問い合わせできるんですね。内線番号まであって丁寧!
INPITは知財の相談窓口として有名なので、補助金だけでなく知財全般の相談にも乗ってくれます。申請前に一度問い合わせて、自社の調査計画が対象になるか確認するのもいい手ですよ。
多いのが「中小企業は申請できますか?」という質問ですね。
残念ながら本補助金は「特定中堅企業者」限定なので、中小企業基本法上の中小企業は対象外です。中小企業の知財支援には、INPIT知財総合支援窓口(無料相談)や、よろず支援拠点などを活用するのがいいですね。
事業再編計画の認定をまだ受けていない企業はどうすればいい?
まず認定取得が先です。認定には所管省庁への申請と審査が必要で、数か月はかかります。本補助金の申請を見据えているなら、今すぐ事業再編計画の認定申請の準備を始めることをおすすめします。
原則として補助対象期間は交付決定日から年度末までです。長期の調査の場合は年度内に完了する範囲で計画を立てるか、年度ごとに分割申請するかになります。詳細はINPIT知財活用支援センターに確認してください。
最後に、この補助金を活用すべき企業像をまとめてもらえますか?
- 産業競争力強化法の事業再編計画認定を受けた特定中堅企業者(これが大前提)
- M&A・会社分割・事業統合などの事業再編を実施中または直後の企業
- 統合により特許・商標・意匠などの知財ポートフォリオが複雑化した企業
- 知財デューデリジェンスや特許ポートフォリオ分析に外部委託を検討している企業
- 海外展開も視野に入れており、知財戦略を体系的に整備したい企業
ありがとうございます! 事業再編×知財という非常にニッチで専門性の高い補助金ですね。対象者が限られる分、認定を持っている企業にとってはまさに「穴場」ですね。
まさにそれです!(笑)認定を持っている中堅企業の担当者はぜひINPITに問い合わせてみてください。