排出削減が困難な産業におけるエネルギー・製造プロセス転換支援事業
基本情報
この補助金のまとめ
この補助金の特徴
大規模定額補助
補助上限額は最大4,247億円と国内最大規模。製造プロセス転換に伴う巨額の設備投資コストを定額で支援し、事業者の財政的負担を大幅に軽減します。
ハードトゥアベイト産業への特化支援
鉄鋼・化学・紙パルプ・セメント等、通常の省エネ手法では排出削減が構造的に困難な産業を明確にターゲットとした専用プログラムです。
製造プロセス転換と燃料転換の両輪支援
製造プロセス自体の抜本的転換(例:高炉から電炉へ)に加え、自家発電設備における化石燃料から水素・アンモニア等への燃料転換も対象とし、サプライチェーン全体の脱炭素を包括的に支援します。
GX推進戦略との整合
国のGX推進法・GX基本方針に基づく政策的優先度の高い事業であり、長期的・安定的な政策支援の継続が期待されます。
大規模・長期プロジェクト向け設計
単年度補助ではなく、複数年にわたる大規模実装プロジェクトを念頭に置いた制度設計となっています。
ポイント
対象者・申請資格
対象産業
- 鉄鋼業(高炉製鉄、電炉製鋼等)
- 化学工業(石油化学、基礎化学品製造等)
- 紙パルプ産業(製紙、パルプ製造等)
- セメント・窯業(セメント製造、ガラス製造等)
- その他排出削減が構造的に困難な産業
対象となる取り組み
- 現行の製造プロセスから脱炭素型プロセスへの転換投資
- 自家発電設備における化石燃料から水素・アンモニア・その他低炭素燃料への転換
- 上記に付随する設備・システムの導入
申請主体の要件
- 日本国内に事業所を有する法人であること
- 対象産業に属する製造事業者であること
- 省エネ法・温対法等の関連法規を遵守していること
- 補助事業を適切に実施する体制を有すること
事業計画要件
- CO2排出削減効果が明確に定量化できること
- 技術的実現可能性が確認されていること
- 費用対効果(削減CO2あたりのコスト)が合理的な水準であること
ポイント
あなたは対象?かんたん診断
8問の質問に答えるだけで、この補助金の対象かどうかを簡易診断できます。
申請ガイド
Step 1: 公募情報の確認
経済産業省および執行機関(NEDO等)の公式サイトで公募要領・応募様式を入手します。公募期間・採択スケジュールを確認し、社内体制を整備します。
Step 2: 事前相談・技術確認
執行機関への事前相談窓口を活用し、事業の対象適格性や必要書類について確認します。大規模事業の場合、事前相談が採択に向けた重要なステップとなります。
Step 3: 事業計画の策定
CO2削減量・削減コスト・技術的実現可能性を定量的に示す事業計画書を作成します。専門コンサルタントや技術機関との連携を検討します。
Step 4: 必要書類の準備
会社概要・財務諸表・設備仕様書・CO2排出量実績・技術検証データ等、公募要領が要求する書類を網羅的に準備します。
Step 5: 申請書類の提出
指定された申請システム(Jグランツ等)または郵送にて期限内に提出します。不備のないよう最終確認を徹底します。
Step 6: 審査・採択通知
書類審査・ヒアリング審査を経て採択結果が通知されます。採択後は交付申請・交付決定を経て事業開始となります。
ポイント
審査と成功のコツ
CO2削減効果の定量的明示
技術的実現可能性の証明
事業継続性・財務健全性の提示
GX政策との整合性の強調
実施体制の充実
ポイント
対象経費
対象となる経費
設備費(製造プロセス転換)(4件)
- 電炉・水素還元炉等の新型製鉄設備
- 電化ボイラー・ヒートポンプ等の熱源転換設備
- CO2分離・回収設備(CCS/CCU関連)
- 脱炭素型化学プロセス設備
設備費(燃料転換)(4件)
- 水素・アンモニア対応バーナー・燃焼設備
- 水素・アンモニア貯蔵・供給設備
- 燃料転換対応の自家発電設備本体
- 燃料転換に伴う付帯設備・配管工事
工事費(3件)
- 設備設置・据付工事費
- 既存設備の撤去・改修工事費
- 電気・配管等のインフラ整備工事費
技術開発・実証費(3件)
- プロセス転換に係る技術開発費
- パイロット実証試験費
- 技術評価・分析費
システム・ソフトウェア費(3件)
- プロセス制御システム導入費
- エネルギー管理システム(BEMS/FEMS)導入費
- CO2モニタリングシステム導入費
調査・設計費(3件)
- フィージビリティスタディ(FS)費用
- 基本設計・詳細設計費
- 環境影響評価関連費用
対象外の経費
対象外の経費一覧(7件)
- 既存製造プロセスの単純な維持・補修費用
- 通常の省エネ改善のみを目的とした設備更新費(プロセス転換を伴わないもの)
- 土地の取得費・賃借料
- 建物・構築物の新設・増築費(設備設置に必要な最小限の附帯工事を除く)
- 汎用品・消耗品の購入費
- 人件費(補助事業の実施に直接従事する場合を除く)
- 補助対象外の技術に係る研究開発費
よくある質問
Q補助上限4,247億円とはどういう意味ですか?自社がそれだけ受け取れるのですか?
4,247億円は本事業全体の予算総額(上限)です。個別の事業者が受け取れる補助額は、事業計画の内容・CO2削減効果・費用対効果等の審査によって個別に決定されます。複数の事業者・プロジェクトがこの予算を分け合う形となるため、1社が全額を受け取ることはありません。ただし、大規模なプロセス転換プロジェクトであれば、数百億円規模の補助を受けられる可能性もあります。
Q中小企業でも申請できますか?
本事業は企業規模による明示的な制限はありませんが、対象となる製造プロセス転換・燃料転換は大規模設備投資を伴うため、実質的には大企業・中堅企業が主な対象となる可能性が高いです。中小規模の製造事業者は、ものづくり補助金・省エネ補助金・中小企業向けGX支援事業等、別途設計された支援制度も並行して検討することをお勧めします。
Q定額補助とはどういう意味ですか?補助率(1/2補助等)とどう違いますか?
定額補助とは、補助対象経費の何割かを補助する「定率補助」とは異なり、事業計画に基づいて補助額が固定的に決定される方式です。CO2削減量・費用対効果・事業規模等を総合的に評価した上で、プロジェクトごとに補助額が設定されます。大型プロセス転換プロジェクトでは、補助率換算で実質的に高い補助率となる場合もあります。
Q「排出削減が困難な産業」とは具体的にどの業種ですか?自社が該当するか判断する方法は?
主な対象は鉄鋼業、化学工業、紙パルプ産業、セメント・窯業等、製造プロセスに化学反応等によるCO2排出が内在する産業です。判断の基準は「通常の省エネ・電化だけでは削減が構造的に困難か」という点です。自社の排出削減ポテンシャルを分析し、プロセス転換なしにカーボンニュートラルが達成できない場合は対象産業に該当する可能性が高いです。不明な場合は執行機関への事前相談を活用してください。
Q公募はすでに終了していますか?次の公募はいつですか?
現在のステータスはclosed(公募終了)です。ただし、GX推進政策の継続性から、次回公募が実施される可能性があります。経済産業省・NEDO等の公式サイトで最新の公募情報を定期的にご確認ください。また、GX推進法に基づく10年間の政策枠組みの中で、継続的な支援プログラムが設計される見込みです。
Q申請から採択・補助金受領までどのくらいの期間がかかりますか?
本事業のような大規模産業支援事業では、公募開始から採択通知まで数ヶ月、採択から交付決定・事業開始まで更に数ヶ月を要するのが一般的です。実際の補助金の受領(精算払い)は事業完了後となるため、大型プロジェクトでは概算払い・中間払いの活用が重要です。資金繰り計画を事前に検討しておいてください。
Q申請書類の作成にあたり、どのような技術データが必要ですか?
主に必要なデータは、(1)現状のCO2排出量実績(スコープ1・2別)、(2)転換後のCO2排出量の試算値とその根拠、(3)転換先技術の仕様・性能データ(可能であればパイロット実証データ)、(4)設備投資額・工事費の見積もり、(5)事業実施スケジュール、(6)自社の財務状況を示す書類です。技術的な根拠の充実度が採択に直結するため、専門家の協力を得て精緻なデータを準備することを強くお勧めします。
Q採択されなかった場合、再度申請することはできますか?
一般的に、次回公募において再度申請することは可能です。不採択となった場合は、執行機関からのフィードバックを活用して事業計画を改善した上で、次回公募に備えることをお勧めします。CO2削減効果の定量化精度の向上、技術実証データの充実、費用対効果の改善等が再挑戦のポイントとなります。
Q他の補助金・助成金と併用できますか?
本事業は経済産業省のGX政策の中核事業であるため、他の補助金・支援制度との組み合わせについては公募要領で明示されるルールに必ず従ってください。一般的な考え方として、同一経費への重複補助は認められません。ただし、異なる経費区分や事業フェーズについては、複数の支援制度を活用できる可能性があります。 併用が考えられる関連制度としては、NEDOの水素・燃料アンモニア関連実証事業、省エネルギー設備投資に係る利子補給事業、カーボンニュートラル実現のための省エネ・再エネ投資促進税制(特別償却・税額控除)、GX推進機構による支援等が挙げられます。税制優遇(グリーンイノベーション基金関連の特別償却等)は補助金との原則的な重複制限対象外となる場合があります。 企業規模・業種によっては、中小企業向けの別途支援制度(ものづくり補助金、省エネ補助金等)との役割分担を整理することも重要です。本事業は大規模プロセス転換を主対象とするため、中小企業は関連する別途支援制度の活用も検討してください。 最終的な併用可否は採択時の条件確認が必須です。事前に所管省庁・執行機関への確認を強くお勧めします。
詳細説明
事業の背景と目的
日本政府は2050年カーボンニュートラルの実現を国家目標として掲げており、そのためにはすべての産業でのCO2排出削減が不可欠です。しかし、鉄鋼・化学・紙パルプ・セメント等の重厚長大産業では、製造プロセス自体にCO2排出が不可避的に組み込まれており、通常の省エネ対策では削減に限界があります。これらは国際的に「ハードトゥアベイト(排出削減困難)産業」と呼ばれており、脱炭素化のために製造プロセスそのものの抜本的転換が求められています。
本事業「排出削減が困難な産業におけるエネルギー・製造プロセス転換支援事業」は、このような産業構造的課題に正面から取り組む事業者を国が直接支援するために設計されました。最大4,247億円という国内最大規模の補助予算を確保し、製造プロセス転換と燃料転換の両面から産業脱炭素化を強力に後押しします。
対象となる産業と取り組み
本事業が対象とする主な産業と転換の方向性は以下のとおりです。
- 鉄鋼業:高炉(石炭コークスを使用)から電炉・水素還元炉等へのプロセス転換。鉄鋼業は国内最大のCO2排出産業であり、本事業の中核的なターゲットです。
- 化学工業:石油由来の原料・エネルギーから、電化・水素・バイオ原料等を活用したプロセスへの転換。石油化学コンビナートの大規模改造が想定されます。
- 紙パルプ産業:化石燃料を大量使用するボイラー等の電化・燃料転換、バイオマス活用拡大等のプロセス改革。
- セメント・窯業:焼成プロセスの電化・水素化、廃熱回収強化、原料代替等によるプロセス転換。
- 自家発電設備の燃料転換:上記産業に限らず、重油・石炭等を使用する自家発電設備を水素・アンモニア・その他低炭素燃料に転換する取り組みも対象です。
補助の仕組みと規模
本事業の補助形態は定額補助です。補助率(補助対象経費の何割を補助するか)ではなく、事業計画に基づいて補助額が決定されます。補助上限は最大4,247億円と、国内の産業支援補助金としては破格の規模です。
ただし、この上限額は事業全体の予算規模であり、個別案件への配分額は事業計画の内容・CO2削減効果・費用対効果等の審査結果によって決定されます。複数年にわたる段階的な支援も想定されており、大規模な設備投資プロジェクトに対応した制度設計となっています。
審査の視点と評価基準
本事業の採択審査では、以下の観点が重視されます。
- CO2削減量と費用対効果:1t-CO2あたりの削減コスト(補助金額÷削減CO2量)が審査の核心指標です。削減効果が大きく、費用対効果の高い案件が優先採択されます。
- 技術的実現可能性:転換先の技術が実証段階以上であること、自社または協力機関の技術力で確実に実施できることが求められます。
- 事業継続性:補助期間終了後も事業を継続できる事業計画と財務基盤を有すること。
- GX政策との整合性:国のGX推進戦略・産業脱炭素ロードマップとの整合が明示されていること。
- 実施体制の充実:大規模プロジェクトを確実に実施できる社内体制と外部連携体制。
申請にあたっての準備ポイント
本事業への申請を検討する際は、以下の準備を早期に進めることをお勧めします。
- 現状のCO2排出量の精緻な把握:スコープ1・スコープ2排出量を把握し、転換後の削減量を定量的に試算できるデータを整備してください。
- 転換技術の選定と技術検証:複数の転換技術候補を比較評価し、自社の設備・操業条件に適合する技術を選定します。パイロット試験データがあれば申請の説得力が増します。
- 長期事業計画の策定:大規模設備投資を伴うため、資金調達計画・工事スケジュール・稼働後の操業計画を含む長期事業計画が必要です。
- 社内合意形成と経営判断:製造プロセスの根本的転換は経営上の重大意思決定です。取締役会等での承認を経た計画として申請することが求められます。
- 専門家・コンサルタントの活用:技術面・申請書類の作成面で、GX・脱炭素分野の専門コンサルタントや技術機関の支援を活用することを検討してください。
今後の展望
本事業はGX推進法に基づく10年間・150兆円のGX投資計画の一環として位置付けられており、長期的・安定的な政策支援の継続が期待されます。カーボンニュートラル実現の期限(2050年)を見据えると、製造プロセス転換の着手時期が遅れるほど、対応コストと事業リスクが増大します。本事業を活用して早期に転換に着手することが、長期的な企業競争力の維持・強化につながります。
また、脱炭素化の進展は国際的なサプライチェーンの再編や、欧州CBAM(炭素国境調整措置)等の規制対応にも直結します。本事業への参画は、単なる補助金の受給にとどまらず、グローバル競争における戦略的優位性の確立という観点からも重要な意味を持ちます。