今日は「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」を取り上げたいんですけど、そもそも「グローバルサウス」ってどのあたりの国を指すんですか?
ASEAN、南西アジア(インドやバングラデシュ等)、中央アジア・コーカサス、中東、アフリカ、中南米、太平洋島嶼国等、いわゆる新興国・途上国群をまとめて指す言葉ですね。中国や韓国はここには含まれません。
えっ、インドもアフリカも太平洋の島々も全部まとめて対象なんですか!それはすごく広い範囲ですね。
そうなんです。しかも「グローバルサウス」には現状、明確な国際的定義がない。なので公募要領でも「判断に迷う場合は事務局に相談のこと」と書いてあるくらい。個別に確認しながら進める制度です。
なるほど。そのグローバルサウス諸国に日本企業が進出するのを国が補助してくれる、ということですよね?
正確には、インフラ等の海外展開に向けた「事業実施可能性調査(FS事業)」と「小規模実証事業」が対象です。まず市場調査をして、その結果を踏まえて現地で小規模な実証実験をする、という2段階の流れですね。
FS事業で上限1億円、小規模実証事業で上限5億円です。補助率は中小企業が2/3以内、大企業でも1/2以内。海外展開系補助金の中ではかなり高水準ですよ。
FS事業と小規模実証事業の比較図
「FS事業」と「小規模実証事業」って、具体的に何が違うんでしょう?
FS(Feasibility Study)事業は、現地市場の調査・パートナー発掘・収益性評価・法令調査など、「この事業を本当にやれるかどうかを調べる」段階です。補助上限は1億円、事業期間は原則12か月以内。
実機・実システムを使って現地で「本当に使えるかどうか」を確かめる段階ですね。補助上限は5億円と大きく、事業期間は原則18か月以内です。
そうなんです。今回のFS事業で採択されたら、その調査結果を踏まえて次年度以降の実証事業(上限5億円)への展開を狙う、という長期戦略設計が審査で高く評価されます。
| 項目 | FS事業 | 小規模実証事業 |
|---|
| 補助上限額 | 1億円 | 5億円 |
| 補助率(中小企業) | 2/3以内 | 2/3以内 |
| 補助率(大企業) | 1/2以内 | 1/2以内 |
| 事業期間 | 原則12か月以内 | 原則18か月以内 |
| 目的 | 市場調査・収益性評価・パートナー発掘 | 現地実証・有効性・経済性の確認 |
| 採択予定 | FS・実証合わせて80件程度 | FS・実証合わせて80件程度 |
80件程度というのは少ない感じもしますが、それだけ大型な案件が多いということですか?
そうですね。1件当たりの補助額が最大5億円というレベルですから、100件も200件も採択するのは予算上難しい。本気で海外展開を狙う企業が、腰を据えて取り組む制度です。詳細な申請方法については、まず対象分野の話を聞いてみましょう。
対象の分野について教えてください。DX/GXが重点とのことですが。
公式サイトに3つの重点分野が明示されています。GX分野(化石燃料からクリーンエネルギーへの転換等のGHG排出削減)、DX分野(デジタル技術でビジネスモデル変革)、そして経済安保分野(特定重要物資に係る案件)です。
「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律施行令」で指定された特定重要物資に関わる案件ですね。半導体・蓄電池・重要鉱物など、特定国への依存が高い物資のサプライチェーン多角化に繋がる事業が対象です。
米国関税の影響を受ける企業も対象に書かれていましたよね?
そうなんです。公募要領に明示されている通り、米国関税の影響を受ける日本企業の新市場開拓が明確な支援目的の一つです。アメリカ一辺倒だった輸出先を分散させる、という国家戦略と連動していますね。
製造業や情報通信業なら業種を問わずかなり使えそうですね。ただDX/GX以外でも申請できますか?
公募要領上はDX/GX・経済安保以外のグローバルサウスの課題解決事業も対象となり得ます。ただ重点分野の方が審査で優位になる可能性が高い。自社事業を可能な限りDX/GX文脈で位置づける工夫が重要ですね。
事業類型が3つあると官公式サイトに書いてあったのですが、これはどういうことですか?
補助対象となる事業は「類型1: 我が国のイノベーション創出につながる共創型」「類型2: 日本の高度技術海外展開型」「類型3: サプライチェーン強靱化型」のいずれかに該当する必要があります。
類型1は、グローバルサウスでの調査・実証から得たデータや知見が将来的にリバースイノベーションとして日本のイノベーションにつながる「共創型」です。類型2は、日本の技術・システムが商業化に至り、その国でのデファクトスタンダードを取り、ひいては日本の雇用増につながるもの。類型3はサプライチェーン強靱化に直結するものです。
はい、複数類型への応募も可能です。むしろ複数に当てはまる事業の方が審査官への訴求力が高まることもありますよ。
- 類型1(共創型): グローバルサウスから日本へのリバースイノベーションを意識した設計が鍵。現地パートナーとの知識・技術交流が評価される
- 類型2(技術海外展開型): 商業化の見通し・デファクトスタンダード取得の論拠を具体的に示すことが重要。現地競合との差別化を明確に
- 類型3(サプライチェーン強靱化型): 日本の輸入依存度が高い物資との関連性を数値で示す。複数の輸入代替先確保につながる設計が高評価
どんな企業が応募できるんですか?規模の制限はありますか?
中小企業・大企業ともに対象です。従業員数の上限もありません。ただ「本邦企業(日本に本拠地がある企業)」であることが前提で、詳細な応募資格は募集要領P.10〜11に記載されています。
どちらも可能です。共同申請の場合、幹事法人と共同申請者に対してそれぞれ異なる要件があります。また、複数事業への申請も可能ですが、同一事業の分割申請や複数者からの同一案件申請は認められません。
海外現地法人については「大企業等(1/2以内)」の補助率が適用されます。共同申請の場合は、法人格ごとに補助率が個別に適用される仕組みです。
以下の事業は本公募の対象外です。別途公募が存在するため、自社の案件が該当しないか確認してください。
- 大型実証事業: ASEAN加盟国向け(デロイト経由)・非ASEAN加盟国向けで別公募
- ウクライナ復興支援事業: 欧州企業連携・中東欧諸国等連携強化として別公募
- 研究開発支援・設備投資支援: 本事業は対象外
FS事業の場合は、現地市場調査費・現地法令・規制調査費・現地パートナー発掘調査費・事業性評価費などが対象です。それに加えて外部委託費、渡航費、人件費なども含まれます。
実証用機器・設備の購入費、実証用システム開発費、実証データ収集・分析費、現地での実証運用費が主体になります。どちらの事業でも翻訳・通訳費やローカルカウンセル費用も対象ですね。
海外案件特有の費用もカバーされているんですね。対象外になるものは?
交付決定前に着手した費用は絶対に対象外です。「見込みで先に動いた」は全滅します。あとは土地・建物の取得費、事業者の通常業務に係る経常的経費、他の補助金で補助される経費との重複分なども対象外です。
| 経費区分 | 具体例 |
|---|
| 調査費(FS事業) | 市場調査費・法令調査費・パートナー発掘費・収益性分析費 |
| 実証実験費(小規模実証) | 実証用機器・設備費・システム開発費・データ分析費 |
| 外部委託費 | コンサルタント費・ローカルカウンセル費・翻訳通訳費 |
| 旅費・渡航費 | 現地調査のための渡航費・滞在費・現地パートナー招聘費 |
| 人件費 | プロジェクト専従者・現地スタッフ雇用費 |
| その他経費 | 広報費・成果報告会費・知的財産関連費用 |
かなり幅広いですね。では実際に申請するにはどうすればいいか教えてください。
グローバルサウス補助金申請フロー
一番差がつくのは「経済安全保障ストーリーの明確さ」ですね。単なる海外展開ではなく、「特定国依存の低減」「サプライチェーン強靱化」「米国関税回避による新市場開拓」といった国家戦略との整合性を、事業計画書の冒頭で明示することが採択の決め手になります。
極めて重要です。グローバルサウス事業は「絵に描いた餅」になりがちで、審査官もそこを一番懸念します。MOUや覚書のコピーを添付できると説得力が格段に上がります。発掘中の段階であれば、FS事業としてパートナー探索そのものを調査内容に含めて申請することが可能です。
重点分野なので審査優位性はあります。ただ、大切なのは「現地のニーズと自社の強みが一致しているか」の説得力です。エネルギー×DX、医療・ヘルスケア×DX、防災×DXなど、組み合わせの妙で独自性が出せますよ。
- 経済安全保障との整合性: 事業計画冒頭で特定国依存低減・サプライチェーン強靱化を明示する
- 現地パートナーのエビデンス: MOUや覚書など具体的な連携証拠を添付する
- DX/GX×現地ニーズのマッチング: 重点分野の文脈で自社技術を位置づける
- FS→実証の2段階構想: FS採択後の実証事業(最大5億円)への展開を見据えた設計にする
- 現地法令・規制対応計画の具体化: ローカルカウンセル起用計画・認可スケジュールを盛り込む
申請の早い遅いで採択可否は変わりません(締切日以降に比較審査)。ただ、問い合わせ締切が2026年5月1日 12時00分と公募締切の10日前に設定されているので、対象国や対象経費に不安がある場合は早めに事務局に確認することが重要です。直前に質問しても「回答が公募締切直前になる可能性がある」と事務局も言っています。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 正式名称 | 令和7年度補正グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金(小規模実証・FS事業) |
| 所管省庁 | 経済産業省 |
| 運営事務局 | TOPPAN株式会社 |
| 対象 | 本邦企業(中小・大企業) |
| 補助上限額 | FS事業 1億円 / 小規模実証事業 5億円 |
| 補助率 | 中小企業 2/3以内 / 大企業等 1/2以内 |
| 採択予定件数 | FS・実証合わせて80件程度 |
| 公募期間 | 2026年4月17日〜2026年5月11日(12時00分必着) |
| 問い合わせ締切 | 2026年5月1日 12時00分 |
| 採択決定予定 | 2026年6月下旬 |
| 交付決定予定 | 2026年9月〜10月頃 |
| 公式サイト | r7h-gs-hojo-web-fspoc.jp |
| 申請方法 | Jグランツまたは事務局指定データ送受信サービス |
グローバルサウス関連の補助金って、この制度だけじゃないんですよね?
そうなんです。今回の制度は「令和7年度補正 グローバルサウス未来志向型共創等事業」のうち、FS事業と小規模実証事業を対象とするものです。同じ枠組みに、大型実証(ASEAN加盟国向け・非ASEAN加盟国向け)とウクライナ復興支援関連の別公募があります。
前の年度(令和6年度補正)でも似た制度があったんですよね?
規模感の違いもありますが、大型実証はASEAN加盟国向け・非ASEAN加盟国向けで別々の公募が設けられています。今回の小規模実証・FS事業はグローバルサウス全域が対象で、1〜5億円クラスの案件を想定しています。
海外展開を狙う企業にとって、まずどの制度から入るのがいいでしょう?
グローバルサウス全域を視野に入れた中小〜中堅企業なら、今回のFS事業(上限1億円)から入るのが現実的です。FS段階で市場調査・パートナー発掘を補助してもらい、成果を踏まえて実証事業(上限5億円)に進む、という2段階設計が理想的ですね。
最後にFAQをまとめて教えてもらえますか。現地パートナーがまだ決まっていない段階でも申請できるのかが気になります。
FS事業であれば、現地パートナーの発掘そのものを調査内容に含めて申請できます。小規模実証事業の場合は実証実施のための現地パートナーが必須ですが、FS事業ならパートナー不在でも申請可能です。ただし申請時にMOUや覚書等の具体的連携エビデンスを提示できる方が審査で大きく有利です。
他の海外展開補助金(JETROなど)と重複して使えますか?
同一経費について他の国庫補助金との重複は原則不可です。JETROの海外展開支援・中小機構の海外展開支援・経産省の他の海外展開関連補助金との重複には特に注意が必要。ただし補助対象経費を明確に区分できれば、自治体補助金や民間財団の助成金との組み合わせは可能です。
申請にはGビズIDプライムアカウントが必要です。取得には数週間かかることもあるのでできる限り早めに申請してください。Jグランツの公式サイト(jgrants-portal.go.jp)から手続きできます。
「複数件の申請が不採択になる可能性がある」という記述が公式FAQにありましたが、これはどういうこと?
「本事業を多くの事業者に活用していただくために」という観点から、同一事業者が複数案件を申請した場合、審査の結果として一部または全部が不採択になることがあるということです。事業内容が各々異なる内容であれば複数申請は可能ですが、過度な件数申請は避けた方が無難でしょう。
- GビズIDプライム取得済みか: 未取得なら今すぐ申請(数週間かかる)
- 対象国の確認: 迷う場合は2026年5月1日 12時00分までに事務局へメールで相談
- 事業類型の確認: 類型1(共創型)・類型2(技術展開型)・類型3(サプライチェーン強靱化型)のいずれかに該当するか
- 現地パートナーのエビデンス: MOUや覚書が用意できるか(FS事業はパートナー不在でも申請可)
- 交付決定前着手の禁止: 採択が見込まれても2026年9月〜10月の交付決定前に費用を使わない
- 問い合わせ締切の確認: 不明点は2026年5月1日 12時00分までに事務局へ
ありがとうございます。次回公募に備えて今からできることはありますか?
今回の公募は2026年5月11日締切なので、現時点では申請中です。もし今回見送った場合は、採択後の採択一覧が公表された際に採択企業の事業内容を分析し、自社案件の改善に役立てることをおすすめします。また、GビズIDの取得、現地パートナーの発掘・MOU締結、経済安全保障ストーリーの構築に今から着手しておくと、次回公募(令和8年度補正での類似制度の可能性)にも備えられます。
この補助金は全国どの企業でも申請できるんですよね?
基本は全国対象です。ただ、各都道府県では独自の海外展開支援補助金が別途存在することもあります。地域ごとの補助金情報も合わせてチェックしておくといいですよ。
例えば
東京都の補助金一覧や
大阪府の補助金一覧では、各都道府県が実施している海外展開支援の上乗せ補助や、産業振興財団の助成金情報も確認できます。国の補助金と自治体の補助金を組み合わせることで、さらに手厚い支援を受けられますよ。