室谷さん、今日はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公募を始めた、ちょっとすごい規模の研究開発案件を一緒に見ていきたいんですが。
あー、浮体式洋上風力の次世代技術開発ですね。2026年4月27日に公募が始まったやつ。予算規模が29億円以内(税込)ですからね、国の本気度が伝わります。
簡単にいうと、「2040年以降に浮体式洋上風力を大量に普及させるための次世代技術を今のうちに開発しておこう」という研究開発プロジェクトです。国が委託費を出すから、技術力のある企業や大学が手を挙げてくれ、という仕組みですね。
浮体式洋上風力って、普通の洋上風力と何が違うんですか?
着床式は海底に杭を打って固定するタイプ。水深が浅い海でしか使えない。でも日本の周辺海域って深いところが多いじゃないですか。そこで登場するのが浮体式で、海面に浮かんだ構造物の上に風車を乗せる技術です。日本にとっては浮体式こそが洋上風力の本命といわれています。
政府の第7次エネルギー基本計画で再生可能エネルギーを主力電源に位置付けていて、洋上風力産業ビジョン(第2次)では2040年までに15GW以上の浮体式洋上風力の案件形成目標が設定されています。でも今の技術コストじゃとても達成できない。だから今から技術開発を急いでいる、という流れです。
大きく2つの柱があります。1つ目は「要素技術の検証」。浮体構造、係留方式、施工方法、運転・維持管理手法について、まだ検証されていない新しいテーマや追加検証が必要なテーマを精査します。
「技術課題の整理および実海域実証に向けた計画の検討」です。要素技術の検証で得た成果をもとに、商用化に向けた課題を明らかにして、次のステップである実海域実証に向けた具体的な取組内容や実施スケジュールを検討します。
NEDOって2024〜2025年度にもいろいろ研究してたんですよね?
そうです。直近では「TLP型ハイブリッド浮体式洋上風車支持構造物の開発」「フルコンクリート製コンパクトセミサブ型浮体および大水深係留の技術開発」「大型浮体式垂直軸型風車の実現性検証」など5テーマを進めていました。今回はそれらで検証できなかった新しいテーマや、追加的に検証が必要なテーマに取り組む位置付けです。
つまり、前回やりきれなかったことを今回やる、という感じ?
そのとおりです。2030年以降の本格的な低コスト化実現に向けて、技術課題を体系的に整理して次世代技術の実現可能性を検証する。これが今回の事業の核心部分ですね。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 事業名 | 次世代浮体式洋上風力発電システム実証研究 |
| 実施機関 | 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) |
| 予算規模 | 29億円以内(税込) |
| 事業期間 | 2026年度〜2027年度(2年間) |
| 事業分類 | 研究委託事業 |
| 対象者 | 企業・大学等(国内研究開発拠点必須) |
| 公募期間 | 2026年4月27日〜2026年5月29日正午 |
| 採択予定件数 | 複数件(予算の範囲内) |
| 技術分野 | 風力発電 |
| 問い合わせ | 再生可能エネルギー部 風力・海洋ユニット |
NEDO 次世代浮体式洋上風力発電 公募スケジュール
ポテンシャルは極めて大きいんです。ただ、欧州と比べると日本の海は条件が厳しい。台風、強い波、水深が深い。そのぶん技術的なハードルが高くて、コスト面でも着床式に比べてまだまだ高水準です。
欧州は北海が浅いから着床式でOKなんですよ。でも日本の場合、水深200m、300mとかいうエリアも多い。着床式は無理。だからこそ浮体式の技術確立が日本のエネルギー自給率を上げるカギになるわけです。しかも安全保障の観点からもエネルギーの国内自給は最重要課題ですからね。
2040年に15GWって、どのくらいすごいんですか?
原発15基分ぐらいに相当します。これを洋上風力だけで達成しようというんですから、相当な技術革新と産業育成が必要です。今からコツコツと技術開発を積み重ねて、2030年代の本格普及に備えるわけです。
じゃあ、この事業に応募できるのはどんな組織ですか?
基本は国内に研究開発拠点を有する企業・大学等です。単独でも複数法人での共同でも応募できます。ただ、いくつか条件があります。
まず、当該技術または関連技術の研究開発実績を持っていること。つまり風力発電や海洋工学、浮体構造の分野でなんらかの実績が必要です。次に、研究開発目標の達成に必要な組織・人員を有していること。それから、委託業務を遂行するための十分な経営基盤と情報管理体制を持っていること。
できます。企業でも大学でも研究機関でも。ただ、国立研究開発法人が応募する場合は、民間企業への再委託は原則認められていません。また、複数法人での共同応募の場合は、各法人の責任と役割を明確にする必要があります。
原則として国内拠点を有する組織が対象ですが、国際標準獲得の観点から国外の企業・大学等との連携が必要な場合は、国外機関も参画できる形での応募が可能です。ただし、あくまで主体は国内組織となります。
できます!しかも審査で加点があります。中堅・中小・ベンチャー企業が直接委託先として重要な役割を担う場合は加点対象になります。若手研究者(40歳以下)が責任者または主要研究者として参加する場合も加点があります。
応募資格チェックリスト
全部電子申請です。政府の電子申請システム「Jグランツ」を使います。持参・郵送・FAX・メールは原則受け付けていません。
そうなんですよ。Jグランツを使うにはGビズIDのプライムアカウントまたはメンバーアカウントが必要で、これの取得に2週間以上かかる場合があります。今すぐ申請するつもりがなくても、GビズIDは早めに取っておくことをおすすめします。
1GビズIDを取得する(未取得の場合は2週間以上前に手続き開始)
2NEDO公式サイトから公募要領・提案書フォームをダウンロード
3提案書(別添1)、研究開発統括責任者等の研究経歴書(別添2)、提案者情報(別添3)等を作成
62026年5月11日(月)の説明会への参加(推奨)
72026年5月29日(金)正午までにJグランツで申請完了
必須ではないですが、応募予定の方は可能な限り参加してくださいとNEDOが言っています。説明会は2026年5月11日(月)15時〜16時で、オンライン(Microsoft Teams)開催です。申込期限は2026年5月11日(月)正午まで。
締め切りの当日に説明会があって、申込も当日午前中なんですね。急がないといけない。
その通りです。説明会の申し込みはNEDO公式サイトのTeamsイベントページから行います。会議URLは登録メールアドレスに送られてきます。
原則ダメです。ただし、応募者の責に依らない理由(たとえばGビズIDの組織的な取得不可や、Jグランツ自体のシステム障害)の場合は、提出期限前にNEDO担当者に連絡して指示を仰ぐことで対応してもらえる可能性があります。とはいえ、ぎりぎりまで待つのはリスクが高いですね。
| 書類 | 内容 |
|---|
| 提案書(別添1) | 研究開発計画の詳細(WORD形式、512KB) |
| 研究経歴書(別添2) | 研究開発統括責任者・責任者の経歴、若手研究者数 |
| 提案者情報(別添3) | 法人情報等(EXCEL形式) |
| 情報管理体制確認票(別添4) | 情報セキュリティ体制の確認 |
| 事前相談申込書 | 事前相談を希望する場合のみ |
| 積算用総括表 | 経費の積算明細 |
審査基準が7項目あります。順番に見ていきましょう。
- 事業の適合性: 本事業の目的・目標(浮体式洋上風力の次世代技術開発)に適合しているか
- 開発の優位性: 提案内容に新規性・優位性があるか。他社には出せない技術提案が必要
- 計画の妥当性: 達成目標が明確で、スケジュールが効率的かつ効果的か
- 実用化・事業化の取組: 商用化ターゲットが明確で、社会・経済への波及効果が期待できるか
- 実施体制・能力: 役割分担が明確で効率的か。必要な人員・設備・関連分野の実績があるか
- 提案の経済性: 予算の範囲内で必要経費を適切に計上しているか。他事業との重複がないか
- 総合評価: 全体を踏まえた総合的な判断
審査員によって重み付けが違うので断言は難しいですが、「開発の優位性」と「実施体制・能力」は特に重視されます。NEDOはこの分野でかなり詳しい専門家を審査員にするので、技術的な新規性がない提案はすぐに見抜かれます。
技術の実現可能性を証明することが第一です。「やってみないとわかりません」ではダメ。事前の計算・シミュレーション・実験データで実現性の根拠を示す必要があります。あと、2030年以降の商用化に向けたロードマップを具体的に描けているかどうかも重要です。
- えるぼし認定企業・プラチナえるぼし認定企業(女性活躍推進法)
- くるみん認定・プラチナくるみん認定・トライくるみん認定企業(次世代育成支援)
- ユースエール認定企業(若者雇用促進法)
- 中堅・中小・ベンチャー企業が直接委託先として重要な役割を担う場合
- 若手研究者(40歳以下)が研究開発責任者または主要研究者として参加する場合
NEDOとして次世代の研究者育成も意識しているんですよ。若手が活躍する体制を示すことで評価が上がります。また事業期間中に技術委員会を4回程度開催することも求められているので、その運営コストも予算計画に含めておく必要があります。
| 日程 | 内容 |
|---|
| 2026年4月27日 | 公募開始 |
| 2026年5月11日(月)正午まで | 説明会申込締切 |
| 2026年5月11日(月)15時〜16時 | オンライン説明会 |
| 2026年5月29日(金)正午まで | 応募締切 |
| 2026年6月下旬(予定) | 採択審査委員会(外部有識者による審査) |
| 2026年6月下旬(予定) | 契約・交付審査委員会 |
| 2026年7月上旬(予定) | 委託先決定 |
| 2026年7月下旬(予定) | 公表 |
| 2026年8月頃(予定) | 契約 |
はい。採択結果はJグランツ上で通知されます。採択案件については、事業者名と事業概要がNEDO公式サイトで公表されます。不採択の場合は理由とともに提案者に通知されます。
委託先が決まったら業務委託契約を締結します。最新の「業務委託契約約款」に基づく契約で、NEDOが提示する事務処理マニュアルに従って業務を進めることになります。また、追跡調査・評価への協力や、研究活動の適正な実施(不正防止体制の整備)も求められます。
委託事業なので「自由に」とはいきませんが、研究開発に必要な経費が委託費として支払われます。ただし、内訳は積算根拠を明確にして提案書に記載する必要があります。
研究開発に直接必要な費用が対象です。人件費(研究者・技術者の給与相当額)、材料費、機器・設備の購入・借用、外注費(再委託費)、旅費、その他必要経費など。ただし、不合理な重複(他の公的資金で同じ研究を行っている場合)や過度の集中(一組織への集中)は認められません。
提案の経済性(予算の妥当性)は採択審査の基準のひとつです。過大な積算は審査で指摘されます。また、他の公的研究資金との重複は必ずチェックが入ります。研究費の不正使用・不正受給が発覚した場合は、最大3年間NEDOとの契約締結・補助金等交付が停止される厳しいペナルティがあります。
できます。NEDO公式サイトから事前相談申込書フォーマットをダウンロードして申し込めます。提案内容に不明点がある場合や、自社の応募適格性を確認したい場合は、早めに活用することをおすすめします。
この事業って、国としてどういう位置付けなんですか?
第7次エネルギー基本計画の核心部分を担う事業です。洋上風力は「大量導入とコスト低減が同時に期待できる重要な電源」とされていて、特に浮体式は日本の海域条件に合っている。そこを国が主導して技術開発を推し進めているわけです。
大いに関係あります。GX(グリーントランスフォーメーション)の文脈でも再生可能エネルギーの拡大は必須です。浮体式洋上風力を国産技術で商用化できれば、エネルギー安全保障と産業競争力の両方に貢献できる。だからこそNEDOが大きな予算をつけているわけです。
浮体式洋上風力は世界でもまだ本格普及していない技術です。日本が先行して技術確立・標準化を進めれば、将来的に世界市場でも競争力を持てる。浮体の製造から設置・保守まで、新たな国内サプライチェーンの構築にもつながる可能性があります。
研究開発ではなく、実際の設備導入を支援するものもあるんですね。
ロードマップで言うと、今回のNEDO事業で技術確立→実海域実証→そして実際の商業導入へという流れです。それぞれの段階に応じた補助・支援制度が用意されています。エネルギー関連の研究開発をしている企業や大学は、段階に合った制度を組み合わせて活用することが重要です。
最後に、よくある疑問をいくつか聞かせてください。採択件数はどのくらいですか?
「複数件」とされていますが、具体的な件数は明示されていません。予算29億円以内という上限があるので、提案の規模によっては数件から十数件になる可能性があります。
Jグランツ上での申請は代表法人が一括して行います。代表法人以外の参画法人はJグランツ上での個別申請は不要です。ただし、代表法人と参画法人の役割・責任分担を提案書に明確に記載する必要があります。
原則は国内拠点を持つ組織が応募主体ですが、国際標準獲得の観点などから国外機関との連携が必要な場合は、国外機関も参画する形での提案が認められています。あくまで主体は国内組織である必要があります。
安全保障貿易管理(海外への技術漏洩防止)への対応が求められています。また、特許出願の非公開制度(2022年施行)への対応も必要です。研究活動の不正行為(ねつ造・改ざん・盗用)が発覚した場合は、最大10年間NEDOの事業への応募が制限されます。
公的研究費の不正使用等があった場合は、不正の重大性に応じて研究費の全部または一部の返還、NEDOとの契約締結・補助金等交付の最大3年間停止、事業者名の公表、他の資金配分機関への情報共有などの措置が取られます。応募前に研究費の管理・監査体制を整えておくことが重要です。
まず公募要領を読むこと。それと同時にGビズIDの取得手続きを始めることです。GビズIDは申請できるまで2週間以上かかる場合があるので、今から動いておく必要があります。
2026年4月27日から公募が始まって、締め切りが5月29日正午ということは、実質1ヶ月ちょっとしかないんですね。
そうなんです。GビズIDが未取得の方は今すぐ手続きを。公募要領と提案書フォームはNEDO公式サイトからダウンロードできます。事前相談も受け付けているので、応募する意思があれば早めにNEDOに相談してみてください。