室谷さん、「BCP実践促進助成金」って名前からして少し難しそうですが、要するにどんな助成金なんですか?
一言でいうと「BCPを紙だけで終わらせるな!」という助成金ですね(笑)。BCP(Business Continuity Plan = 事業継続計画)って、作ることが目的になりがちなんですよ。でも実際に地震や感染症が起きたとき、計画書だけあっても非常食も発電機もなければ何もできないじゃないですか。
なるほど!じゃあこの助成金は、実際に備品を揃えるための費用を出してくれるわけですか?
そうです。BCPを実践するために必要な物品・設備の購入費用を最大500万円まで助成してくれます。令和3年度からは基幹システムのクラウド化も対象になりました。現場のIT担当者には特に喜ばれています(笑)。
地震で社内サーバーが吹き飛んだら、業務が止まりますよね。だから「クラウドに移行してバックアップ」という費用も、BCPの一環として認めてくれているんです。
発電機、非常食・水の備蓄、安否確認システム、NAS(データバックアップ)、土のう・止水板、転倒防止装置、感染症対策物品などですね。あとは耐震診断も対象になります。
マスク・消毒液・体温計などです。コロナ禍を経て「感染症もBCPの想定リスク」として明確に位置づけられました。ほんとに幅広い対象ですよ(笑)。
BCP実践促進助成金の助成額・助成率比較図(中小企業者1/2・小規模企業者2/3)
助成額の詳細を教えてください。企業規模によって違うんですか?
そうなんです。企業規模によって助成率が変わります。中小企業者か小規模企業者かで大きく違うので、まずここをチェックしてほしいですね。
| 区分 | 助成率 | 助成限度額 | 下限額 |
|---|
| 中小企業者 | 助成対象経費の1/2以内 | 500万円 | 10万円 |
| 小規模企業者 | 助成対象経費の2/3以内 | 500万円 | 10万円 |
小規模企業者だと2/3も出るんですか!それはかなりありがたいですね。
ざっくり言うと、300万円分の設備を揃えたら200万円が戻ってくるイメージです(中小企業者の場合)。小規模企業者なら200万円分の設備で約133万円戻ってきます。
クラウド化(基幹システム)については助成額の上限が150万円です。500万円の助成限度額の中に含まれる形です。IT投資として考えても十分な金額ですよね。
複数の事業者が共同で設備を使う場合は「連携型」で申請します。こちらは助成限度額が最大1,000万円に上がります(
令和8年度 第1回BCP実践促進助成金 連携型)。グループ会社や近隣の中小企業が一緒にBCP対策を進める場合に活用できます。
なるほど、今回の記事では単独型を中心にみていきましょうか。
そうですね。多くの中小企業にとっては単独型がメインになると思います。では対象者について詳しく見ていきましょう。
大きく3つの条件があります。「法人・個人の要件」「BCP認定の要件」「東京都内での事業継続の要件」です。この3つを全部クリアすることが必要です。
そうです。次の3パターンのいずれかを満たすBCPの提出が必要です。
1公社のBCP策定支援事業を活用(平成29年度以降)
東京都中小企業振興公社が実施する「BCP策定講座」または「BCP策定コンサルティング」を受けて作成したBCP
2中小企業強靱化法の「事業継続力強化計画」の認定
中小企業庁に申請して認定を受けた計画書。この内容に基づいて作成したBCP
3平成28年度以前の都・公社のBCP策定支援事業を活用
少し古いルートですが、過去に活用していれば認められます
えっ、今からBCPを作り始めた企業は申請できないんですか?
ポイントはそこなんです(笑)。今まさに「BCP、そういえば作ってないな」という企業は、まず公社のBCP策定講座に申し込む必要があります。今回の第1回は申請期間が短いですが、第2回(令和8年9月)・第3回(令和9年1月)もあるので、今から動けば十分間に合います。
公社の「BCP策定講座」はBCPの基礎から実際の計画書作成まで教えてくれます。「BCP策定コンサルティング」は専門家が個別に伴走してくれるタイプです。どちらも無料ではないですが、この助成金を受けるための"入場券"だと思って活用する価値は十分あります。
申請日時点で、東京都内に登記簿上の本店または支店があり、都内で実質的に1年以上事業を行っていることが必要です。個人事業主は東京都内で開業届を出していることが条件です。「実質的に」というのがポイントで、登記だけで実態がなければ認められません。
東京都内に本店がある場合に限り、関東近郊の7県(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川・山梨)への設置も可能です。神奈川や埼玉に工場がある東京本社の会社にとってはうれしい仕組みですね。
NPO法人、財団法人、社団法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人、医療法人は申請できません。また、金融業・保険業・農林水産業も対象外です。一般的な中小企業・個人事業主がメインターゲットです。
これが重要で、過去に単独型BCP実践促進助成金の交付を受けたことがある企業は申請できません。1社1回限りの助成金です。「去年ももらった」は通らないので注意が必要です。
では、具体的にどんな経費が使えるのか教えてください。
募集要項を細かく読むと、主に3カテゴリーに分かれます。
| カテゴリー | 具体的な品目 |
|---|
| 物品・設備購入費 | 発電機・ポータブル電源・UPS、非常食・水・毛布等の備蓄品、安否確認システム、NAS、感染症対策物品(マスク・消毒液・体温計)、止水板・土のう、転倒防止装置、飛散防止フィルム、耐震診断 |
| 工事費等 | 上記設備の設置に直接必要な工事費(機器本体の25%が上限) |
| クラウドサービス利用料等 | 安否確認システムのサブスクリプション費用、NASのクラウドサービス初期費用・利用料、基幹システムのクラウド化費用 |
はい、物品・設備の品目数は全部合わせて20品目が上限です。備蓄品については「従業員1人あたり3万円×人数」が対象経費の上限になります。たとえば従業員20名なら最大60万円分の備蓄品が対象です。
要件があります。ポータブル電源は「可搬式で非常時に設置して使用するもの」であること、「平常時の売電・節電に使用するものでないこと」が求められます。また合理的な理由で機器を選定し、必要とする電気量に見合った発電量・蓄電容量であることが審査されます。高すぎる機器は対象外になる可能性があります。
「ストレージデバイス(HDD等)に通信機器を備えたもの」または「クラウドサービスによるNASを使用したデータのバックアップ」が対象です。よく間違える人が多いのですが、ストレージサーバー・ファイルサーバーは対象外です。
- パソコン・スマートフォン・タブレット(汎用性が高すぎる)
- 日常使い可能なモバイルバッテリー(充電式)
- 乾電池・文房具などの消耗品
- 冷蔵庫・テレビ・扇風機・電気ストーブ
- 空気清浄機・CO2測定器
- 中古品全般
- リース・割賦払いの設備
- 保険料・保守費・人件費
なるほど。「普段も使える」系の物はほぼ対象外なんですね。
その通りです。「緊急時専用」「BCPのためだけ」というのが鉄則です。Wi-Fi設備も「福利厚生・安全衛生向け」と判断されれば対象外になります。
対象経費がわかったところで、申請の流れを教えてもらえますか?
BCP実践促進助成金の申請フロー図(GビズID取得→BCP策定→Jグランツ申請→交付決定→設備購入→完了検査→助成金受領)
2BCP策定支援事業を受講(または事業継続力強化計画の認定を取得)
まだBCPを作っていない場合は公社のBCP策定講座・コンサルティングを活用します。認定済みの場合はスキップ可
3BCPを策定・更新する
申請に必要なBCPの記載項目を確認し、基本方針・リスク分析・緊急対応フロー・役割分担・訓練計画などが揃っているか確認
4購入する物品・設備を決定し、見積書を取得する
1品目につき50万円以上の物品は2社以上から見積が必要。複数の見積書を取得し、選定理由を整理しておく
5申請書類を準備する
申請書(Excelファイル)、BCP文書、決算書、確定申告書、会社の登記簿謄本、見積書等を用意
7審査を経て交付決定(令和8年7月下旬予定)
審査では設備導入の必要性・妥当性が確認されます
9完了報告書を提出し、完了検査を受ける
購入した設備の写真・領収書等を提出。検査後に助成金が確定
10助成金を請求、受領
後払い方式のため、先に全額立て替えてから請求する形になります
GビズIDって2週間かかるんですか!それは早めに動かないと間に合わないですね(笑)。
第1回の申請期間は令和8年5月13日から19日までと、たった7日間しかありません。GビズIDを持っていない人は今回の第1回はあきらめて第2回(令和8年9月9日〜15日)以降を狙う方がいいです。
はい、持参・郵便・電子メールでの提出は一切受け付けません。Jグランツのみです。申請フォームにログインしていても、受付時間外はボタンが押せなくなるので、余裕を持って完了させてください。
Jグランツのシステム上は全国どこからでも申請できますが、助成金を受けられるのは東京都内に本店または支店がある事業者のみです。
実は審査で落ちる一番の原因は「必要性・妥当性が説明できていない」ことです。単純に「高い機器を申請すれば採択される」わけではないんです。
- なぜその機器が必要か — BCPとの紐付けを明確に。「地震対策のために〇〇を設置する」という理由が必要
- 適正価格の見積を取る — 市場価格から大きく乖離した高価格品は審査で弾かれます。複数の見積書を取ること
- BCPに品目を明記する — 申請する物品の品名・個数・設置場所がBCPに記載されていることが必要
- 他社とかぶらないようにする — 他社とほぼ同一の申請内容は不採択になります
- 20品目ルールを守る — 物品の品目数の上限(20品目)を超えないよう整理
はい、募集要項に明記されています。「他の中小企業・小規模企業者等から提出された申請と同一若しくはきわめて類似した内容の事業を申請した場合は不採択」とあります。コンサルタントが同じフォーマットを複数社に提供しているようなケースは要注意ですね。
後払い方式というのはどういうことですか?資金繰りが心配で…
助成金の支払いは「完了検査の後」なので、一度全額を自己資金で立て替えてから申請する仕組みです。500万円の設備を入れる場合、一時的に500万円を用意する必要があります。金融機関に相談して、つなぎ資金を準備しておくのが現実的です。
同一経費での重複受給は不可です。「この発電機についてはBCP助成金を使う」「このシステムについては別の補助金を使う」というように経費を明確に分ける必要があります。申請段階から他の補助金との関係を整理しておくことが重要です。
第1回だけじゃないんですよね?スケジュール全体を教えてください。
| 回 | 電子申請受付期間 | 交付決定 | 助成対象期間 |
|---|
| 第1回 | 令和8年5月13日(水)9時〜5月19日(火)17時 | 令和8年7月下旬 | 令和8年8月1日〜11月30日 |
| 第2回 | 令和8年9月9日(水)9時〜9月15日(火)17時 | 令和8年11月下旬 | 令和8年12月1日〜令和9年3月31日 |
| 第3回 | 令和9年1月8日(金)9時〜1月15日(金)17時 | 令和9年3月下旬 | 令和9年4月1日〜7月31日 |
そうなんです。「予算がなくなり次第終了」という面もあるので、準備ができたら早めに動くことが大切です。GビズIDの取得・BCP策定・見積取得を済ませて、受付開始直後に申請するのが理想です(笑)。
助成対象期間が4か月しかないですが、それで十分間に合いますか?
大きな設備工事が必要な場合は注意が必要です。発注・契約・購入・支払いの全てを助成対象期間内に完了する必要があります。設置工事が長引きそうな場合は、工期の見積もりを事前に業者と確認してください。
- 交付決定日より前に購入した設備は全額対象外です
- 助成対象期間内に支払が完了していない経費は対象外
- 普通預金・当座預金からの振込以外(手形・現金・電子マネー等)は対象外
- 助成金が確定してから受け取るまでには時間がかかります(完了検査→助成金確定→請求→支払)
事業継続力強化計画の認定は、どのくらいの期間がかかりますか?
中小企業庁への申請から認定まで、おおよそ45日程度かかります。第2回・第3回を狙うなら今すぐ手続きを開始した方がいいです。中小企業庁のサイトから申請書をダウンロードして、最寄りの経済産業局に提出します。
できます!ただし、申請日時点で都内に開業届の提出があること、都内事業所で1年以上事業を行っていることが条件です。そして小規模企業者として申請できる場合は助成率が2/3に上がります(卸売業・小売業・サービス業は5人以下、製造業・その他は20人以下が小規模企業者の基準)。
テレワーク用の設備や在宅勤務の費用は対象になりますか?
在宅勤務の設備(PCやスマートフォン等)は対象外です。ただし「安否確認システム」のサブスクリプション費用は対象になります。テレワーク関連であれば、東京しごと財団が別途「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」を実施しているので、そちらも確認してみてください。
耐震診断を受けたいんですが、賃借している建物でもいいですか?
耐震診断については条件が厳しくて、申請者が所有する建物であることが必要です。賃借物件は対象外です。また昭和56年5月31日以前に建築された建物であることも条件になります。
可能です。その場合は「同意書(代理申請用)」を提出する必要があります。中小企業診断士や行政書士などのコンサルタントに頼むことも多いですね。ただし、代理申請でも内容の責任は申請者にあります。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 助成金名称 | 令和8年度 第1回BCP実践促進助成金(R81BCP)単独型 |
| 実施機関 | 公益財団法人 東京都中小企業振興公社 |
| 助成対象 | BCPを実践するための物品・設備・クラウドサービス費用 |
| 助成限度額 | 500万円(クラウド化の上限150万円を含む) |
| 助成率 | 中小企業者: 1/2以内、小規模企業者: 2/3以内 |
| 下限額 | 10万円 |
| 申請受付期間 | 令和8年5月13日(水)9時〜5月19日(火)17時 |
| 助成対象期間 | 令和8年8月1日〜令和8年11月30日(4か月以内) |
| 交付決定予定 | 令和8年7月下旬 |
| 申請方法 | Jグランツによる電子申請のみ |
| 必要な前提条件 | GビズIDプライム + 認定BCP |
| 問い合わせ先 | 企画管理部 設備支援課 TEL 03-3251-7889(9時〜12時、13時〜17時) |
| 公式ページ | BCP実践促進助成金 東京都中小企業振興公社 |
似たような補助金として連携型もありますが、どう選べばいいですか?
シンプルに言うと、「設備を自社だけで使う」なら単独型、「複数の事業者で共用する」なら連携型です。
| 比較項目 | 単独型(今回の記事) | 連携型 |
|---|
| 利用人数 | 1事業者のみ | 複数事業者で共用 |
| 助成限度額 | 500万円 | 1,000万円 |
| クラウド化上限 | 150万円 | 300万円 |
| BCP認定要件 | 公社支援 or 事業継続力強化計画 | 連携事業継続力強化計画 |
| 向いているケース | 単体の中小企業・個人事業主 | 商店街・工業団地・ビルのテナント群 |
「連携事業継続力強化計画」は普通の事業継続力強化計画とは別なんですか?
別です。複数事業者が連携してBCPに取り組む計画で、中小企業庁に共同で申請します。商店街や工業団地、ビルのテナント同士が協力して防災設備を整備する場合に有効です。
令和8年度 第1回BCP実践促進助成金 連携型もJグランツで同じ期間に受け付けています。
過去に令和7年度のBCP実践促進助成金を受けた企業はどうなりますか?
注意が必要です。
過去に単独型BCP実践促進助成金の交付を受けたことがある企業は今回も申請できません。一方で、令和7年度は未申請だった企業は今回が初めてのチャンスになります。令和7年度第2回(
令和7年度 第2回BCP実践促進助成金)が終了していれば、今回の第1回が最初の申請機会です。
連携型の過去回はどうですか?令和7年度の連携型で申請した企業は?
連携型も同様に1回限りです。令和7年度第2回の連携型(
令和7年度 第2回BCP実践促進助成金 連携型)で交付を受けた事業者は今回の連携型には申請できません。単独型と連携型は別制度として扱われますので、過去に連携型を使った企業が今回の単独型に申請するのは可能です。
- GビズIDプライムの取得申請を開始する(発行に約2週間)
- BCPを策定済みかどうかを確認し、必要なら公社のBCP策定講座に申し込む
- 購入したい物品・設備のリストアップと見積書の取得
- 直近の決算書・確定申告書の準備
- 東京都内での事業実態(1年以上)の確認
- 登記簿謄本(発行後3か月以内)の取得
- 過去に同助成金を受けていないかの確認
申請期間がとても短いので、準備をしっかりしておかないとですね。
本当に。第1回は令和8年5月13日から5月19日のわずか7日間しかないので、今日からGビズIDの取得を始めることをおすすめします。BCPを使って東京の事業を守りましょう!
ありがとうございました。東京都内の補助金をもっと調べたい方は
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公益財団法人 東京都中小企業振興公社 企画管理部 設備支援課
TEL: 03-3251-7889(受付時間: 9時〜12時、13時〜17時)
公式ページ: BCP実践促進助成金