室谷さん、今日のテーマは「令和5年度病院勤務者勤務環境改善事業・救急医療体制強化事業【仕入控除税額報告】」。名前が長すぎません?
そうですね(笑)。まず分解しましょう。東京都の保健医療局が実施している「病院勤務者勤務環境改善事業・救急医療体制強化事業」という補助金があって、その中の「仕入控除税額報告」という手続きの申請フォームです。
えっ、補助金そのものの申請フォームじゃないんですか!
そこが最大の落とし穴です。このフォームは、すでに補助金の交付を受けた病院が、消費税の確定申告で仕入税額控除を行ったときに出す報告用なんですよ。
はい。補助金で賄った経費に含まれる消費税を仕入税額控除すると、補助金と控除で二重に得した形になります。だから報告して、必要なら返す。それがこの手続きの役割です。
1つ目の柱は、病院が行う医師と看護職員の勤務環境改善、離職防止と定着、そして職場を離れた医師などの再就業支援に、東京都が必要な経費を補助すること。これで都内医療体制の安定確保を目指します。
そうです。都内の救急医療体制の中核を担う救急車年間受入2,000件以上の病院に対して、医師と看護職員の勤務環境を改善し、離職防止、負担軽減、復職、定着を図る取組の経費を補助します。
2,000件って相当な激務の病院ですよね。そこを重点的に支えるわけか。
ええ。救急の現場は特に負担が大きいので、重点支援の意味は大きいんです。
この制度の特徴補助率10/10
原則は対象経費の全額補助。資産形成経費のみ9/10
医療人材の定着に特化
離職防止・負担軽減・復職・定着を支援
救急の中核病院を重点支援
救急車年間受入2,000件以上の病院が対象
仕入控除税額の報告手続き
消費税の確定申告で控除を受けたら報告
原則は全額です。ただし設備などの取得費用にあたる資産形成経費は9/10になります。それでも極めて高い水準です。
対象は都内の病院で、従業員数の縛りもなし。複数申請もできると聞きました。
その通りです。対象業種は医療と福祉、対象地域は東京都、従業員数の制約はありません。輪郭が見えてきましたね。
ここが面白いところで、掲載情報では補助上限額が「-」、つまり上限額の記載がないんです。
「記載がない」というのが正確なところです。実際の交付額は予算の範囲内で決まります。交付要綱にも、補助金は都の予算の範囲内において交付する、と明記されています。
はい。上限の細かい考え方は公募要領で要確認です。ここは憶測で語らないほうが安全ですね。
交付要綱に手順が書かれています。まず別表の基準額と、対象経費の実支出額を比べて、少ない方を選びます。
次に、その額と「総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額」を比べて、また少ない方を選び、そこに補助率を掛けます。算出額に1,000円未満の端数が出たら切り捨てです。
ええ。基準額、実際の支出、寄附金などの収入。この3つを押さえる必要があります。
| 区分 | 補助率 |
|---|
| 一般の対象経費 | 10/10(全額) |
| 資産形成経費 | 9/10 |
表にすると分かりやすい! ちなみに資産形成経費って、具体的に何を指すんですか?
設備整備のうち資産の取得にあたる費用です。対象経費には設備整備費(資産形成経費)として、ICT導入費、業務効率化設備費、休憩施設整備費、院内保育施設整備費が挙がっています。
じゃあその4つは9/10で、それ以外は10/10と。
そういう整理です。ただし最終的な区分は実施要綱と交付要綱の別表で確認してくださいね。
病院勤務者勤務環境改善事業は、東京都内に所在する病院、つまり医療法に基づく病院で、医師と看護職員の勤務環境改善に取り組むところ。離職防止・定着促進や再就業支援の取組を実施する病院が対象です。
ここで挙がっているのは「病院」です。診療所が対象になるかどうかは、実施要綱の第2に定める補助対象者を見る必要があります。公募要領で要確認ですね。
救急のほうは、救急車年間受入2,000件以上でしたよね。
はい。東京都内に所在する病院で、救急車の年間受入件数が2,000件以上の病院、つまり都の救急医療体制の中核を担う病院が対象です。
2,000件って、1日あたりにすると相当な数ですよね。
日常的に救急対応が入り続ける規模です。そうした病院の勤務環境を整えることが、結果的に都民の救急医療を守ることにつながります。
2つの事業の違い| 項目 | 病院勤務者勤務環境改善事業 | 救急医療体制強化事業 |
|---|
| 対象となる病院 | 東京都内に所在する病院(医療法に基づく病院) | 東京都内に所在し、救急車年間受入2,000件以上の病院 |
| 主な取組 | 勤務環境改善、離職防止・定着、再就業支援 | 勤務環境改善、離職防止、負担軽減、復職、定着 |
| 補助率 | 10/10(資産形成経費は9/10) | 10/10(資産形成経費は9/10) |
| 目的 | 都内医療体制の安定的な確保 | 救急医療体制の安定的な確保 |
なるほど、目的が少し違うだけで、補助率は同じなんですね。
そうなんです。どちらも同じ要綱に基づく事業で、補助率の考え方も共通です。
消費税の免税事業者だったら、この報告は関係ないんですか?
仕入税額控除を行った場合の報告なので、控除がなければ報告は生じない、という整理になります。ただし免税事業者や簡易課税制度を選んでいる場合は計算方法が違ってきます。
ええ、顧問税理士に確認してください。判断を誤ると、あとから返還や加算金の話になりますから。
交付要綱には、返還を命じられた場合に年10.95パーセントの違約加算金や延滞金といった定めもあります。正確な処理が一番の防御です。
対象経費を教えてください。まず勤務環境改善のほうから。
勤務環境改善経費として挙がっているのは、短時間正規雇用制度導入費、交代制勤務体制整備費、院内保育所運営費、休憩・仮眠環境整備費の4つです。
そうですね。休憩・仮眠環境の整備も、夜勤のある病院では切実なテーマです。
メンタルヘルスケア対策費、キャリア支援プログラム費、福利厚生充実費、ハラスメント防止対策費。これらが離職防止・定着支援経費です。
はい。それから再就業支援経費として、復職支援研修費、ブランクのある医療者向け研修費、復職相談窓口運営費が挙がっています。
職場を離れた人を呼び戻す取組もしっかり対象なんですね。
救急体制強化経費は、救急対応人員確保費、夜間・休日体制強化費、救急医療機器整備費、救急部門の環境改善費。設備整備費(資産形成経費)は、ICT導入費、業務効率化設備費、休憩施設整備費、院内保育施設整備費です。
ICT導入も入っている。使途に「設備整備・IT導入をしたい」とあったのはこれか。
そういうことです。ただし資産形成経費は補助率が9/10になる点は忘れないでください。
対象になる経費・ならない経費- 短時間正規雇用制度導入費
- 交代制勤務体制整備費
- 院内保育所運営費
- 休憩・仮眠環境整備費
- メンタルヘルスケア対策費
- 復職支援研修費
- 救急医療機器整備費
- ICT導入費
×デメリット
- 病院の通常運営に係る経常的経費
- 土地・建物の取得費
- 既存設備の通常の維持管理費
- 飲食・接待に係る費用
- 他の補助金で賄われている経費
- 消費税の仕入税額控除対象額
病院の通常運営に係る経常的経費、補助対象外の診療部門の経費、土地・建物の取得費、既存設備の通常の維持管理費、飲食・接待に係る費用、事業に直接関係しない研修・出張費、他の補助金で賄われている経費、消費税の仕入税額控除対象額。これらは対象外です。
そうですね(笑)。あと「他の補助金で賄われている経費」が入っているのが、この制度の厳しさです。交付要綱にも、国や地方公共団体などの他の補助金等を充当して実施する事業は対象外、と明記されています。
まず消費税の確定申告で仕入税額控除を行ったかどうかを確認します。経理部門や顧問税理士と連携して、対象となる控除額を特定します。
補助事業に係る経費のうち、消費税の部分だけを見るんですね。
はい。次に、補助対象経費に含まれる消費税のうち、仕入税額控除の対象となった金額を正確に算定します。個別対応方式と一括比例配分方式のどちらを採っているかで計算方法が変わります。
仕入控除税額報告の流れ- 1
消費税確定申告を確認
仕入税額控除を行ったか、経理部門と確認
- 2
控除税額を算定
個別対応方式か一括比例配分方式かで計算が変わる
- 3
GビズIDを準備
jGrantsで電子申請するときに必要になる共通アカウント
- 4
報告書を作成
控除税額・計算根拠・確定申告書の写しなどを用意
- 5
jGrantsまたは郵送で提出
東京都保健医療局医療政策部医療人材課へ
- 6
jGrantsでの電子提出のほか、郵送での提出もできます。報告書には算定した控除税額、計算根拠、消費税確定申告書の写しなどを添付します。
交付要綱には「消費税仕入控除額報告書(別記第6号様式)」と書かれていましたよね。
よく見ていますね。その様式で速やかに知事へ報告します。全国的に事業を展開する組織の一支部などで、自ら消費税の申告をしていない場合は、本部の課税売上割合などの申告内容に基づいて報告します。
支店じゃなくて本部の数字を使うんですね。知らなかった!
いいえ。東京都が内容を確認したあと、仕入控除税額に相当する補助金の返還を求められる場合があります。知事が全部または一部の納付を命じたら、納付が必要です。
はい。だからこそ正確な算定と早期の報告が大事になります。
そういえば、実績報告というのも別にあるんですよね?
あります。補助事業が完了したら、完了後1か月以内、または交付決定に係る都の会計年度が終わったときの、いずれか早い日までに実績報告書を出す決まりです。仕入控除税額報告はその後の手続きという位置づけです。
一番は税額計算です。消費税の確定申告書との整合性を確保して、補助対象経費に係る控除税額を漏れなく把握する。計算根拠を文書化しておけば、東京都からの確認にも素早く対応できます。
数字が合わないと、それだけで信頼を失いますもんね。
そうですね。担当者が替わっても説明できる状態にしておくのが理想です。
事業完了期限は2026年3月31日です。募集期間は2025年10月29日から2026年9月30日まで。期限を過ぎると、補助金の返還請求や今後の補助金申請への影響につながる可能性があります。
交付要綱では、補助事業に係る収入・支出その他の関係書類を、事業の属する会計年度終了後5年間、整理保管することが求められています。
経理部門との連携です。補助金を扱う部署と経理の部署が情報を共有していないと、報告漏れが起きます。
たしかに、締切直前に「そんなの聞いてない」ってなりそう(笑)。
ありがちです(笑)。組織内で担当者と期限を共有して、余裕を持って出す体制をつくる。これが結局は一番の攻略法です。
大原則があります。同一経費に対する国と都の二重補助は認められません。交付要綱にも、他の補助金等を充当して実施する事業は対象外と書かれています。
そうとも限りません。異なる事業として実施される補助金との組み合わせは、対象経費が異なる範囲において可能な場合があります。東京都の他の医療関連補助金との併用も、経費の重複がなければ認められる可能性があります。
そこは必ず事前に東京都保健医療局の医療人材課へ確認して、適正な経費区分を行ってください。自己判断は禁物です。
了解です。ちなみに、この仕入控除税額報告で扱う消費税額は?
実質的に補助金の一部返還と同義になるので、経理処理でも注意が必要です。
スケジュールの目安2025年10月29日
募集期間スタート
申請フォームの受付開始
2026年3月31日
事業完了期限
補助事業の実施期間の終わり
2026年9月30日
募集期間の終了
掲載されている受付期間の最終日
確定申告後
仕入控除税額の報告
控除額が確定したら速やかに報告
事業完了が2026年3月31日で、受付期間は9月30日まである。順番を間違えるとまずいですね。
そうですね。事業を終えたあとに実績報告、消費税の確定申告を経て仕入控除税額報告。流れを頭に入れておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 令和5年度病院勤務者勤務環境改善事業・救急医療体制強化事業【仕入控除税額報告】 |
| 実施機関 | 東京都保健医療局 医療政策部 医療人材課 人材計画担当 |
| 募集期間 | 2025年10月29日〜2026年9月30日 |
| 事業完了期限 | 2026年3月31日 |
| 対象地域 | 東京都 |
| 対象業種 | 医療、福祉 |
| 補助率 | 10/10(資産形成経費は9/10) |
| 補助上限額 | 記載なし(都の予算の範囲内で交付) |
| 従業員数 | 制約なし |
| 申請受付 | 有(複数申請可) |
| 根拠法令 | 病院勤務者勤務環境改善事業・救急医療体制強化事業実施要綱/同交付要綱 |
| 公式URL | https://www.jgrants-portal.go.jp/subsidy/a0WJ200000CDWQzMAP |
これ1枚で概要がつかめますね。実際の運用は要綱を見ないとダメですか?
補助対象や補助要件等は「実施要綱及び交付要綱による」とされているので、最終判断は必ず要綱で確認してください。
はい。経費区分や併用の可否など、迷ったらここに確認するのが確実です。
掲載されている情報ですので、問い合わせの際に使ってください。
最後にもう一度、一番大事なことを聞いていいですか?
「このフォームは補助金の新規申請ではない」という点ですね。
そこです。すでに交付を受けた病院が、消費税の確定申告で仕入税額控除を行ったときに出す報告。これを取り違えると、せっかくの手続きが空回りします。対象かどうか迷ったら、まず医療人材課に確認しましょう。