人材開発支援助成金とは?コース・助成額・申請方法をわかりやすく解説

目次

人材開発支援助成金とは?社員研修に最大75万円戻ってくる制度

社員のスキルを上げたい。でも研修費用が高くて二の足を踏んでいる——そんな経営者・人事担当者のために、厚生労働省が設けたのが人材開発支援助成金(人開金)です。

人材開発支援助成金は、事業主が雇用する労働者に職業訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する国の制度です。「社員に研修を受けさせたい」「リスキリングを進めたい」「新事業に必要なスキルを身につけさせたい」——そのような取り組みを、国が資金面で後押しします。

中小企業なら訓練経費の最大75%が戻ってきます。賃金助成(訓練時間中の賃金補填)もあるため、実質的な研修コストを大幅に下げることができます。

この記事では、人材開発支援助成金の仕組み・コース・助成額・申請の流れを、令和7年度(2025年度)の公式情報をもとにわかりやすく解説します。


あなたはどれに当てはまりますか?

  • 人材開発支援助成金を初めて知った → このまま読み進めてください
  • コースを選ぶための比較が知りたい → 「7つのコース比較」のセクションへ
  • いくらもらえるか確認したい → 「助成額・助成率」のセクションへ
  • 申請手順を知りたい → 申請方法と必要書類
  • リスキリング・DX人材育成に使いたい → 「事業展開等リスキリング支援コース」のセクションへ

人材開発支援助成金の7つのコース比較

人材開発支援助成金には、目的や対象者によって7つのコースがあります。まず自分の会社がどのコースを使えるか確認しましょう。

コース名こんな企業・場面に向く
人材育成支援コース従業員への研修一般(最も使いやすい)
教育訓練休暇等付与コース従業員が自発的に研修を受けやすい環境を作る
人への投資促進コースデジタル人材育成・サブスク型研修・大学院進学
事業展開等リスキリング支援コース新事業進出・DX・GXに伴う人材育成
建設労働者認定訓練コース建設業界(認定職業訓練)
建設労働者技能実習コース建設業界(技能実習)
障害者職業能力開発コース障害者の職業能力開発施設の設置・運営

多くの中小企業が使うのは上位4コースです。このページでは主に「人材育成支援コース」「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」(上位3コース)を詳しく解説します。建設業向けコースや障害者コースは、業種・状況に応じて管轄の労働局に相談してください。


人材育成訓練でいくらもらえる?助成額と助成率

コースの中でも最も利用者が多い「人材育成支援コース」の助成額を確認しましょう。

人材育成訓練(Off-JT)の助成額

対象労働者経費助成率賃金助成(1人1時間あたり)
正規雇用労働者(中小企業)45%800円
正規雇用労働者(大企業)30%400円
有期契約労働者等(中小企業・大企業共通)70%800円 (中小)/ 400円(大企業)

さらに、賃上げ要件(訓練終了後に5%以上の賃上げ等)を満たすと加算措置があります。

加算の種類加算額
経費助成への加算(賃上げ要件)+15%
賃金助成への加算(中小企業)+200円 (1人1時間あたり)
賃金助成への加算(大企業)+100円(1人1時間あたり)

具体的な金額で確認しよう

事例1: 製造業(従業員30人、中小企業)のケース 溶接技術の研修を1人10万円・20時間で5人に受講させた場合:

  • 経費助成:10万円×45%×5人=22万5,000円
  • 賃金助成:800円×20時間×5人=8万円
  • 合計:30万5,000円 が助成される(訓練費用50万円の61%)

事例2: IT企業(従業員15人)のケース プログラミング講座をeラーニングで1人30万円で3人受講させた場合:

  • 経費助成:30万円×45%×3人= 40万5,000円 (eラーニングは賃金助成なし)

事例3: 有期契約労働者(パート)の場合 パート従業員1人に3万円・15時間の研修を受講させた場合(中小企業):

  • 経費助成:3万円×70%=2万1,000円
  • 賃金助成:800円×15時間=1万2,000円
  • 合計:3万3,000円 (研修費用の110%以上が戻ってくる計算)

有期契約労働者の場合は経費助成率70%と高く設定されているため、正社員化を目指したパート・アルバイトの教育に特に有効です。

助成額の上限ですが、1事業所あたり1年度3回まで申請でき、支給限度額は1,000万円です。

次のセクションでは、リスキリングやDX人材育成に使いたい場合の2コースを解説します。


リスキリング・DX人材育成に使える2コース

事業展開等リスキリング支援コース

新しいビジネスを始めたい、DXやGX(グリーントランスフォーメーション)を推進したい——そんな企業に向けた助成金です。

対象となる取り組み

  • 新分野への進出・事業転換・業種転換
  • DX(デジタル・トランスフォーメーション)化
  • グリーン・カーボンニュートラル化

助成額・助成率

区分経費助成率賃金助成(1人1時間あたり)
中小企業70%800円
大企業60%400円

人材育成支援コース(中小企業45%)より高い70%が適用されるため、リスキリング文脈での訓練には積極的に活用したいコースです。

リスキリング支援コース 活用イメージ

例えば、旅館を経営する会社が、訪日外国人向けサービスに事業展開するため、従業員3人に英語接客研修(1人10万円)を受けさせた場合:

  • 経費助成:10万円×70%×3人=21万円
  • 訓練が30時間なら賃金助成:800円×30h×3人=7万2,000円
  • 合計:28万2,000円 が助成される

人への投資促進コース

デジタル人材を育てたい、社員が自発的に学べる環境を整えたい——そんなニーズに応えるコースです。

主な対象訓練の種類

訓練の種類概要
高度デジタル人材訓練ITSSレベル4以上のデジタルスキルを習得
成長分野等人材訓練データサイエンス、AI、サイバーセキュリティ等
自発的職業能力開発訓練従業員が自ら申し込んだ訓練にも助成
定額制訓練(サブスク型)サブスクリプション型の研修サービス
長期教育訓練休暇等MBA等の大学院・長期プログラムへの休暇取得

活用事例

製造業でIoT・AIの活用を進めたい中小企業が、エンジニア2人に月額5万円(年間60万円)のデジタルスキル系サブスク研修を導入した場合:

  • 経費助成(定額制訓練):60万円×45%×2人=54万円

「社員研修にサブスクを使いたいが高い」と感じている場合、このコースを活用すれば年間の研修費を半額以下に抑えられます。


受給要件|申請できる会社・できない会社

人材開発支援助成金を申請するには、いくつかの要件を満たす必要があります。

対象となる事業主の主な要件

  • 雇用保険の適用事業所であること
  • 職業能力開発推進者(社内の教育訓練担当者)を選任していること
  • 事業内職業能力開発計画を策定・従業員に周知していること
  • 支給申請日の前日から1年以内に労働関係法令の違反がないこと
  • 過去に不正受給をしていないこと(5年間は申請不可)

職業能力開発推進者」と「事業内職業能力開発計画」が必須

これが最初のハードルです。推進者とは「社内の教育訓練を担当するキーパーソン」で、人事担当者や部課長クラスが一般的です。事業内計画は「会社の人材育成方針と訓練体系を文書化したもの」ですが、難しく考えなくてOKです。厚生労働省のホームページに作成の手引きやひな型が公開されています。

対象となる訓練の主な要件(人材育成訓練の場合)

  • 職務に関連した専門的な知識・技能の習得を目的とした訓練であること
  • Off-JT(座学・研修)であること
  • 通学制・同時双方向型通信・eラーニング・通信制のいずれかであること
  • 1コースあたり実訓練時間が10時間以上(eラーニング等は標準学習時間10時間以上または1か月以上)

対象とならないケース (よくある例)

  • 訓練が始まってから計画届を出す(訓練開始前の届出が必須)
  • 従業員自身が費用を負担している
  • 法律で義務付けられた講習(消防訓練など)
  • 資格取得後の維持研修

受給要件の詳細は公式パンフレットで確認し、不明な点は管轄の労働局に問い合わせるのが確実です。


申請の流れ|ステップで確認しよう

人材開発支援助成金の申請は、「訓練前の計画届」と「訓練後の支給申請」の2段階で進みます。(事前届出が必須)

Step 1: 事前準備(3〜4週間)

  1. 職業能力開発推進者の選任
  2. 事業内職業能力開発計画の策定・従業員への周知
  3. 訓練内容・訓練機関の決定

Step 2: 計画届の提出(訓練開始の1か月前までに)

  • 管轄の労働局またはハローワークに「職業訓練実施計画届」を提出
  • 電子申請(雇用関係助成金ポータル)も可能
  • 注意:訓練開始の1か月前を過ぎると申請できません

Step 3: 訓練の実施

  • 計画通りに訓練を実施
  • 出席記録・受講証明書などを保管する

Step 4: 支給申請(訓練終了日の翌日から2か月以内に)

  • 管轄の労働局に支給申請書・証拠書類を提出
  • 電子申請可能

Step 5: 審査・支給決定

  • 書類審査や実地調査が行われる場合がある
  • 支給決定まで数か月かかることがある

申請に必要な書類・記入例については申請方法と必要書類で詳しく解説しています。


よくある質問

個人事業主でも人材開発支援助成金は使えますか?

個人事業主が自分自身の研修費用に使うことはできませんが、雇用保険に加入している従業員がいる個人事業主なら申請できます。事業主本人は対象外で、あくまで「事業主が雇用する労働者」の訓練が対象です。従業員ゼロの一人事業主は申請できません。

何時間以上の研修から対象になりますか?

人材育成訓練(通学制・同時双方向型通信)は1コースあたり実訓練時間が10時間以上必要です。eラーニング・通信制は標準学習時間10時間以上、または標準学習期間1か月以上が目安です。1時間単位の短い勉強会は対象になりません。

社内研修(自社で講師を立てる研修)も対象になりますか?

「事業内訓練(社内研修)」も対象です。ただし、講師が自社の従業員の場合、「職業訓練に関する専門的な知識・技術・経験を有する者」であることの証明が必要です。一般的には資格・職歴など。社外の研修会社に依頼する「事業外訓練」の方が手続きがシンプルです。

リスキリング支援コースと人材育成支援コースはどちらを選ぶべきですか?

新事業進出・DX・GXに伴う訓練であれば「事業展開等リスキリング支援コース」(経費助成率70%)の方が高い助成率を受けられます。通常の社員研修なら「人材育成支援コース」(中小企業45%)を使います。両コースの併用はできませんが、別々の訓練に対して別のコースで申請することは可能です。

訓練計画届の提出後に訓練内容を変えることはできますか?

変更届を提出することで一定の変更は可能です。ただし変更の種類や内容によって手続きが異なり、認められない変更もあります。変更が生じた場合は速やかに管轄の労働局に連絡してください。

助成金を受け取るまでにどのくらい時間がかかりますか?

訓練終了から支給申請、そして実際の入金まで、通常で3〜6か月かかります。審査に必要な書類が多く、かつ厳格に審査されるため、他の助成金より時間がかかる点に注意してください。「先に研修費を立替え、後から助成金を受け取る」という流れです。


人材開発支援助成金と一緒に使える関連制度

社員の能力向上や人材確保に取り組む場合、人材開発支援助成金以外にも活用できる制度があります。

  • キャリアアップ助成金 — 非正規社員を正社員に転換すると最大80万円。人材育成訓練と組み合わせ可能
  • 業務改善助成金 — 賃上げ+設備投資で最大600万円。研修以外の設備投資に
  • 働き方改革推進支援助成金 — 労働環境整備・就業規則の見直しに活用できる

また、従業員個人が利用できる関連制度として専門実践教育訓練給付金(雇用保険加入者が資格取得講座の最大70%を受給できる制度)もあります。会社側の助成金と個人側の給付金を上手に組み合わせることで、研修コストを最小化できます。

リスキリング・人材育成の補助金一覧中小企業向け補助金・助成金一覧も参考にしてください。


まず何から始めればいい?最初の一歩

人材開発支援助成金を使うには、 「職業能力開発推進者の選任」と「事業内職業能力開発計画の策定」 が出発点です。

「計画書を書くのが面倒そう」と思う方も多いですが、厚生労働省の公式サイトに作成の手引きやひな型が用意されています。社内で育てたい人材・習得させたいスキルをリストアップするところから始めてみてください。

次のステップとして、今受講させたい研修の受講費用と時間数を確認し、助成金でどのくらい戻るかを計算してみましょう。訓練開始の1か月前には計画届を提出する必要があるため、 「研修を探し始めたら、同時に計画届の準備も始める」 という習慣が大切です。

詳しい申請書類と手順は申請方法と必要書類で確認できます。管轄の労働局(ハローワーク)でも無料で相談に応じてもらえますので、ぜひ積極的に活用してください。

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