室谷さん、「地域共生を目指したデータセンター脱炭素化設備導入支援事業」って、名前が長くてちょっと難しそうなんですけど、どんな補助金なんですか?
一言でいうと、データセンターを脱炭素化するための設備を入れたら、費用の最大半額(上限10億円)を国が補助してくれる制度 です。環境省が財源を出して、一般社団法人地域循環共生社会連携協会(以下「協会」)が運営しています。
データセンターって電気をものすごく使う施設なんです。生成AIやクラウドサービスの普及で需要が急増していて、温室効果ガスの排出量も急増することが見込まれています。だから環境省が「ここを本気でなんとかしよう」と補正予算を組んで手厚い補助を用意した、という背景があります。
なるほど!令和7年度(補正予算)って書いてありますが、今からでも申請できるんですか?
はい、間に合います。公募期間は令和8年5月15日(金)から令和8年6月12日(金)正午まで です。申請はJグランツという電子申請システムを使います。締切まで約1ヶ月しかないので、今すぐ動き出す必要があります。
6月12日正午が締切か、けっこうタイトですね。どんな設備が対象になるんですか?
3つの脱炭素化設備タイプ
補助対象の設備って、具体的にはどんなものがありますか?
大きく3つのカテゴリーに分かれています。Aが「未利用再生可能エネルギー利用設備・蓄エネ設備」、Bが「熱利用設備」、Cが「省エネルギー設備」です。この3つはどれか1つだけ、あるいは2つ以上を組み合わせて申請することもできます。
ふんふん。AとBとC、それぞれもう少し詳しく教えてもらえますか?
Aは、既設の太陽光発電など再エネ設備の「未利用」電力をデータセンターに供給する設備ですね。条件として、年間使用電力量の10%以上を未利用再エネで賄える ことが必要です。蓄電池(EMS込み)も補助対象に含まれます。
そうです。すでに売電しているFIT認定設備は対象外です。使い切れていない電力、あるいは自営線で融通できる既設設備の電力が対象です。Bの熱利用設備は、地中熱・温泉熱・河川熱・海水熱・下水熱・雪氷熱・工場廃熱など「未利用熱」をデータセンターの冷却や暖房に使う設備が対象です。排熱供給設備(DC外の施設に熱を供給する設備)も含まれます。
Cは、データセンターの電力使用効率を示す「PUE」という指標が1.28以下 になる冷却設備の導入が対象です。PUEは、施設全体のエネルギー使用量をICT機器のエネルギー使用量で割った値で、1に近いほど効率的なデータセンターということになります。
カテゴリー 内容 主な補助対象設備 A:未利用再エネ・蓄エネ 既設再エネの未利用電力を活用 自営線・受変電設備・蓄電池・EMS B:熱利用設備 未利用熱をDCへ供給 or DCから排熱供給 熱交換器・ヒートポンプ・熱導管・蓄熱槽 C:省エネ設備 高効率冷却(PUE設計値1.28以下) 高効率空調・冷却設備および付帯設備
3種類の組み合わせもOKなんですね。自社のデータセンターの状況に合わせて選べるのはいいですね。ちなみに、補助対象外になる設備はありますか?
いくつかあります。注意してほしいのは、新規に導入する再エネ発電設備(太陽光パネル本体など)は補助対象外 という点です。あくまで「未利用」の活用設備が対象で、発電設備自体は別の補助金を使ってください。あとは非常用発電設備、ICT機器自体、事業実施に直接関連のない経費なども対象外です。
なるほど。新しく太陽光を設置したい場合は別の補助金を組み合わせる必要があるんですね。次に補助額のことを詳しく聞かせてください。
気になるのは補助率と上限額ですよね。実際どのくらいもらえるんですか?
基本的には補助対象経費の2分の1(上限1事業につき10億円) です。ただし、蓄エネ設備(蓄電池)については補助率が3分の1に下がります。この違いは覚えておいてほしいポイントです。
設備種別 補助率 補助上限額 未利用再エネ利用設備・熱利用設備・省エネ設備 補助対象経費の1/2 1事業につき10億円 蓄エネ設備(蓄電池) 補助対象経費の1/3 同上
10億円って相当大きな事業規模ですよね。たとえば5億円の設備を入れたら2.5億円が補助されるって理解でいいんですか?
基本的にはそういう計算になります。ただし蓄電池の部分は別途計算が必要で、また蓄電池には「目標価格」が設定されていて、業務・産業用は1kWhあたり11.8万円(工事費込み) がその目安です。この目標価格を超える場合は、1kWhあたり3.9万円を上限に補助金が交付されます。
蓄電池は少し複雑なんですね。事業期間はどうなりますか?
原則として単年度ですが、単年度での実施が困難な場合は最大3年度まで延長できます。本年度の実施期間は交付決定日から令和9年2月28日まで です。複数年度申請の場合は、年度ごとに事業経費を区分した経費内訳書と実施計画書を提出する必要があります。
どんな組織が申請できるんですか?中小企業もOKですか?
はい、業種制限はほぼなく、従業員数の制約もありません。応募できるのは以下の法人・団体です。
民間企業(業種を問わず)
独立行政法人・地方独立行政法人(特定業務のもの)
国立大学法人・公立大学法人・学校法人
社会福祉法人・医療法人
特別法に基づく協同組合等
一般社団法人・一般財団法人・公益社団法人・公益財団法人
その他環境大臣の承認を経て協会が適当と認める者
かなり広いですね。ということはIT系の企業だけじゃなく、医療機関や大学がデータセンターを持っていても使えるわけですか?
その通りです!(笑)ただし、財務健全性の要件があります。具体的には、直近決算期で債務超過でないこと、自己資本比率が10%未満でないこと、流動比率が100%未満でないこと、そして複数期連続赤字でないことが求められます。
マジですか。財務要件ってかなり厳しい感じがしますね。
設備導入規模が大きいですから、継続的に運営できる経営基盤があることを証明する必要があるんです。10億円の補助を受けて「やっぱり経営が厳しくなりました」ではダメなので、当然と言えば当然ですよね。あと、データセンターが国立公園の特別保護地区や自然環境保全地域などに立地する場合は補助対象外になることも頭に入れておいてください。
財務要件さえクリアできれば、幅広い事業者が申請できそうですね。では実際の手続きに移りましょう。
申請の8ステップ
申請の流れってどうなっているんですか?電子申請というのがポイントみたいですね。
Jグランツ(デジタル庁が運営する補助金の電子申請システム)を使います。手順を追って説明しますね。
1 GビズIDプライムの取得
法人代表者または委任された方のGビズIDプライムが必要です。取得には2〜3週間かかることがあるので、今すぐ申請してください。取得先 2 Jグランツへのログイン・申請者情報登録
GビズIDでJグランツにログインし、申請者情報を登録します。
3 公募要領・様式のダウンロード
協会ホームページ(https 4 必要書類の作成
応募申請書(様式1)・実施計画書(別紙1)・経費内訳(別紙2)を作成します。CO2削減量の算出根拠ファイルやキャッシュフロー図など、合計13種類の書類が必要です。
5 Jグランツで電子申請
令和8年6月12日(金)正午までにJグランツから提出します。やむを得ない場合のみメール提出が認められますが、原則はJグランツです。
6 書類審査・ヒアリング
書類審査後、外部有識者で構成される審査委員会がCO2削減量・PUE・事業継続性などを審査します。必要に応じてヒアリングが実施されます。
7 採択通知・交付申請
採択された場合、交付申請書を提出します。交付決定日以降に設備の発注・事業開始が可能になります(交付決定前の発注は補助対象外)。
8 事業実施・完了報告・補助金受取
事業完了後30日以内または令和9年3月10日のいずれか早い日までに完了実績報告書を提出します。書類審査・現地調査を経て交付額が確定し、精算払請求後に補助金が支払われます。
CO2削減量の算出が特に手間がかかります。設計値と稼働率50%の場合の両方を計算する必要があるので、専門家(設備メーカーやエネルギーコンサルタント)に相談しながら進めることをお勧めします。
締切まで約1ヶ月しかないのに、13種類の書類を揃えるのは相当タイトですね。
ほんとうに!(笑)だから今日すぐGビズIDの確認をしてほしいんです。すでにGビズIDプライムを持っている場合はいいですが、ない場合は今すぐ手続きを始めてください。問い合わせ期間は令和8年5月18日(月)から令和8年6月3日(水)17時まで なので、疑問点はその期間内に聞いておきましょう。
どんな経費が補助対象になって、どんなものがNGなんですか?
補助対象は、設備導入に必要な工事費・設備費・業務費・事務費などです。ただし設計費については、システム設計費・実施設計費は対象ですが、事前調査費や基本設計費は対象外です。
用地の確保に要する経費(土地代)
建屋の建設にかかる経費
事故・災害の処理費用
ICT機器本体(サーバー等)
新規に導入する再エネ発電設備(太陽光パネル等)
非常用発電設備
官公庁への申請・届出費用
本補助金の応募・申請手続きに係る費用
浸水対策などの嵩上げ基礎に係る経費
建屋コストは含まれないんですね。補助金を活用するために新しいデータセンターを建てた場合でも、建物代は自己負担になる。
そうです。補助対象はあくまで「脱炭素化のための設備」が中心です。もう一点大事なことがあって、同一設備に対して国の他の補助金と重複して受けることはできません 。たとえばSII(環境共創イニシアチブ)のZEH-M補助金などを既に活用している場合は、同じ設備には適用できないのでご注意を。
重複NG、覚えました。では審査基準のポイントを教えてください。採択されやすい提案ってどんなものですか?
審査基準ってどんな観点ですか?採択されるためのコツはありますか?
公募要領に審査項目が明記されています。大きな評価ポイントを整理しますね。
CO2削減量(大きいほど加点) : 削減効果の算出根拠が明確で、合理的な稼働率計算があること
CO2削減コスト(低いほど加点) : 費用対効果が高い事業が評価される
PUE(低いほど加点) : 電力使用効率が高いデータセンターが優遇
未利用再エネ使用率(高いほど加点) : 特に「自家消費型」「地産地消型」が高評価
事業継続性 : 稼働率算出の蓋然性、顧客確保状況の客観的証拠
優先採択 : 総務省「デジタルインフラ整備基金」採択済み事業は優先採択対象
稼働率の話が出ましたけど、何%で計算すればいいんですか?
想定稼働率と稼働率50%の両方を計算 する必要があります。稼働率50%未満の場合は50%として評価されます。重要なのは「稼働率の蓋然性を示す客観的な情報」の添付、つまり顧客の確保状況を証明する書類を揃えることです。
はい。さらに加点される追加項目もいくつかあります。たとえば、賃金引き上げ計画 (中小企業なら前年比1.5%以上)を表明した場合、RE100やSBT(科学に基づく目標設定)に加盟している場合、脱炭素先行地域で実施する場合、近隣住民への説明やコミュニケーションを行っている場合なども加点対象です。
なるほど!賃上げ表明が加点になるのは、他の補助金でも最近よく見るパターンですね。
運営主体の過去3期平均売上高が総事業費を超えると加点、10倍以上あるとさらに加点、自己資本比率30%超でも加点です。財務的に余裕のある事業者が有利になる設計ですね。審査委員会のヒアリングで「合理的な説明ができない」と判断されると、稼働率50%で評価されてしまうので、CO2削減量の算出ロジックをしっかり固めることが採択への近道です。
わかりました。審査対策まで含めて、次は基本情報をまとめて確認させてください。
似たような補助金と比べてどんな違いがあるのか気になります。
同じ「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」の制度名を持つ類似補助金がいくつかあります。
同じ「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」でも細かく事業が分かれているんですね。
ポイントは「重複受給は原則不可」という点です。同一設備に2つの補助金を使うことはできません。ただし、異なる設備に別々の補助金を使うことは可能です。たとえば、建物の断熱改修で別の補助金、データセンター内の冷却設備でこの補助金、という組み合わせは問題ありません。
なるほど。組み合わせで使うときは設備の区分を明確にしておく必要があるんですね。
そうです。あと参考情報として、総務省の「デジタルインフラ整備基金」でデータセンターの整備事業として採択済みの事業は、この補助金で優先採択の対象 になります。複数の補助金を組み合わせた大型プロジェクトを組む場合は、先にデジタルインフラ整備基金の採択を取りに行く戦略も有効です。
最後にQ&Aでよくある疑問を聞かせてください。まず「FIT認定を受けた太陽光発電設備の電力は使えるの?」という質問はよく来そうですね。
これは対象外です。公募要領に明記されていて、「FIT認定またはFIP認定を取得しないこと」という要件があります。FITで売電している電力は「未利用再エネ」ではなく「売電用の電力」ですから、活用方法が異なります。
既存のFIT設備を持っている場合は、FITを離脱してから申請しないといけない?
既設設備の場合、FIT認定の有無が論点になります。詳細は協会に個別確認を。新規導入の場合は「FIT認定を取得しないこと」が要件なので、認定を取らずに自家消費専用で設置することになります。
では「PPA(電力購入契約)で設備を導入した場合でも申請できますか?」という質問はどうですか?
オンサイトPPAを利用する場合は可能ですが、PPA事業者が代表事業者 として申請する形になります。そしてリース料やサービス料から補助金相当分が減額されることが条件です。自己託送(電気事業法第2条第1項第5号ロに定める接続供給)は不可です。
複数の会社が共同でデータセンターを建設している場合はどうなりますか?
共同実施も認められています。2者以上が共同で申請する場合、代表事業者が取りまとめます。ただし、共同申請者全員が「応募資格がある法人・団体」の要件を満たす必要があります。代表事業者が全責任を負いますので、共同事業者の選定は慎重に行ってください。
採択されたあと計画を変更したくなったらどうなりますか?
軽微な変更以外は、計画変更承認申請書を提出して協会の承認を受ける必要があります。補助金額が変わる場合は変更交付申請書も必要です。「後から変えればいいや」という発想は危険で、申請前に計画を固めることが大切です。
はい、2つ大きな義務があります。1つは事業完了から3年間、毎年度CO2削減量の実績を報告 すること(事業報告書を翌年度4月30日までに提出)。もう1つは、補助事業で取得した設備を法定耐用年数の期間は補助金の交付目的に従って使用すること。無断で別の用途に転用したり、処分したりすると補助金の返還を求められます。
3年間の事後報告義務があるんですね。これはしっかり社内でルール化しておかないといけませんね。
まとめると、このデータセンター脱炭素化補助金はかなり大型の補助金ですね。どんな事業者に特に向いていますか?
一番向いているのは、①すでにデータセンターを運営していて、②未利用の再エネ電力や熱エネルギーの活用余地があり、③財務が健全で、④CO2削減の定量的な根拠を示せる事業者です。新しくデータセンターを建設して脱炭素設備も一緒に導入する事業者にも向いていますが、その場合は建設期間を考えると令和9年2月28日の事業完了期限に間に合うかの確認が先決です。
公募説明会は開催されませんが、代わりに
事業概要の動画説明 が公開されています。また、Web・電話による個別相談が受けられます。個別相談の申込は協会ホームページから行ってください。
GビズIDプライムが未取得 : 取得に2〜3週間かかります。今日すぐ確認してください
CO2削減量の算出不備 : 算出ロジックに「明らかな不備や合理性を欠く」と判断されると不採択になります。専門家を活用しましょう
交付決定前の発注 : 交付決定前に設備を発注しても補助対象外になります。「先に動いてしまった」は通用しません
特に「交付決定前の発注NG」は盲点になりやすいですよね。
データセンターの工期を考えると焦りたくなる気持ちはわかりますが、交付決定の日付が全てです。発注書の日付が交付決定前だと、その分は全額自己負担になります。まずはJグランツから申請して採択・交付決定を取りに行くこと、これが先決です。
わかりました!令和8年6月12日正午の締切に向けて、今すぐGビズIDを確認するところから始めましょう。室谷さん、今日はありがとうございました!
ありがとうございました!データセンターの脱炭素化は、AIの時代に向けた重要なインフラ整備です。大型の補助金をうまく使って、環境に優しいデータセンター運営を実現してください。
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