室谷さん、今回紹介するのは「事業承継を契機とした成長支援事業(一般コース)」ですよね。令和8年度第1回の公募が始まったと聞いたんですが、これって具体的にどんな制度なんですか?
はい!これは東京都中小企業振興公社が実施している助成事業で、親御さんや先代から会社を引き継いだ後継者が「新しいことにチャレンジしたい」という場合に使える制度なんです。助成金の支給に加えて、専門家のアドバイザー派遣もセットになっている、かなり手厚い支援ですよ。
そうなんです。助成上限額が最大800万円で、かつ採択後には専門家が1社あたり2回・無料で派遣されます。後継者が新しい事業展開を進めるうえで、お金と知見の両面でサポートしてもらえる構造になっています。
800万円か!なかなかの規模ですね。事業承継したばかりの後継者にとってはかなり心強い。
令和8年5月18日から令和8年6月17日16時まで申請受け付けていますので、東京都内で事業を展開している後継者の方には、ぜひ確認してほしい制度です。
助成率比較表:通常・賃金引上げの違いを一目で確認
助成率のところが少し複雑そうなんですが、整理してもらえますか?
大きく3パターンあります。まず通常の場合は、助成対象経費の3分の2以内(約66.7%)が助成されます。さらに、賃金引上げ計画を策定して実施する場合は条件が良くなるんです。
正確には、賃金引上げ計画を策定・実施した場合、中小企業者は4分の3(75%)以内まで上がります。そして小規模事業者だとさらに有利で、5分の4(80%)以内まで助成されます。
| 申請者の区分 | 助成率 | 例:100万円の経費の場合 |
|---|
| 通常(中小企業・個人事業主) | 2/3以内(約66.7%) | 約66.7万円 |
| 賃金引上げ計画あり(中小企業) | 3/4以内(75%) | 75万円 |
| 賃金引上げ計画あり(小規模事業者) | 4/5以内(80%) | 80万円 |
助成上限は800万円ですよね。ということは、ざっくり800万円を申請するなら経費は最低1,000万円以上かかるってことですか?
通常の場合そうなりますね。ただ賃金引上げ計画ありの小規模事業者なら、1,000万円の経費に対して800万円が助成される計算になります。まず賃金引上げ計画を立てられるかどうかを確認してみてください。
賃金引上げ計画を策定・実施することで助成率が上昇します。計画書の提出が必要で、申請書と一緒にJグランツにアップロードします。助成対象期間(交付決定日から最大1年間)内に実際に賃金を引き上げることが求められます。賃金引上げ計画書のフォームは公式サイトからダウンロードできます。
じゃあ次に「誰が申請できるか」を教えてください。「事業承継した後継者」というのはどう定義されているんですか?
まずベースとして、東京都内で事業を行う中小企業者(個人事業主を含む)であることが必要です。そして、令和3年4月1日から本事業申請日の前日までの間に事業承継を行い、それを契機とした新規事業展開に取り組む方が対象になります。
令和3年4月1日以降の承継ということは、2021年4月以降に会社を継いだ人ですね。
そうです。ただ、申請日の前日から遡って3年以内か、令和6年3月31日から遡って3年以内のいずれかに事業承継が行われていれば対象になります。この2つの基準日のどちらかを満たせばよい、という緩やかな設計になっています。
えっ、2つの基準があるんですか。それは助かりますね(笑)
法人の場合は、いくつかのパターンがあります。同一法人内での事業承継(後継者が代表に就任し先代が退任)、M&Aによる事業譲渡、M&Aによる株式譲渡。個人事業主の場合は、承継期間内に代表権の移転(後継者が開業し、先代が廃業)があり、先代から後継者へ事業用資産が引き継がれていること、が条件です。
なるほど、M&Aで会社を買った場合も対象になるんですね。
はい!ただし、「新規事業展開」に取り組むことが前提です。既存事業の単純な継続では対象にならないので、そこは注意してください。
以下の取組みは助成の対象外になります。
- 売上増加に直接貢献しない取組: 内部システムの更新など
- 単なる老朽化の復旧・既存設備の入替: 旅館の改修工事など
- 既存製品の単なる改良: 新規事業展開と認められない取組
新規顧客・新市場への展開、自社にない技術・設備の開発・導入が助成対象の典型例です。
幅広い範囲で認められていますよ。原材料・副資材費、機械装置・工具器具費、委託・外注費、産業財産権の出願・導入費、規格等認証・登録費、設備等導入費、システム等導入費、専門家指導費、不動産賃借料、販売促進費、その他経費、というラインナップです。
マジですか、かなり広い!でも何か注意点はありますか?
いくつかあります。まず委託・外注費のうち「市場調査費」、「専門家指導費」、「販売促進費」、「その他の経費」については、これらだけを単独で申請するのはNG。他の経費とセットで申請する必要があります。
既存事業に係る販売促進費は対象外です。新規事業展開に直接関係する販売促進のみが対象になります。これは結構引っかかりやすいポイントなので、計画書を書く段階でしっかり区別しておいてください。
| 経費区分 | 対象可否 | 具体例 |
|---|
| 機械装置・工具器具費 | 対象 | 新規製品製造のための設備 |
| システム等導入費 | 対象 | 新規事業向けITシステム |
| 販売促進費(新規事業) | 対象 | 新製品のWebマーケティング費 |
| 販売促進費(既存事業) | 対象外 | 既存商品のチラシ作成費 |
| 市場調査費のみ | 単独申請不可 | 他の対象経費とセットなら可 |
申請の流れ:GビズID取得から交付決定まで
電子申請のみです。国(デジタル庁)が提供する「Jグランツ」を使って申請します。まずJグランツを使うための「GビズIDプライム」アカウントが必要になるので、まだ持っていない方は今すぐ取得を始めてください!
GビズIDプライムアカウントを取得する(https
事業承継の経緯・新規事業展開計画を事業計画書としてまとめる
申請書(Excel形式)を公式サイトからダウンロードし記入する
必要書類(申請書、誓約書、事業計画書等)を準備する
Jグランツ(https
//www.jgrants-portal.go.jp/)にログインし、本事業のページから電子申請する
令和8年5月18日14時〜令和8年6月17日16時の期間内に提出する
GビズIDの取得に時間がかかると聞いたんですが、どのくらい?
書類に問題がなければ審査に1週間程度かかります。なので、申請期限の6月17日に間に合わせるためには、今すぐ取得手続きを開始することをお勧めします!
GビズIDプライムの取得には書類審査があり、問題がなくても1週間程度かかります。書類に不備があればさらに時間がかかるため、申請期間開始前(令和8年5月18日より前)に取得しておくことが必須です。GビズIDに関する質問は、デジタル庁のGビズIDヘルプデスク(0570-023-797)に問い合わせてください。
審査で重視されるポイントってあるんですか?採択されるためのコツを教えてほしいです。
まず大前提として、「新規事業展開」の新規性・独自性が評価されます。既存の取り組みの延長ではなく、明確に新しい市場・技術・顧客層への展開であることを説得力をもって書く必要があります。
公式サイトに「取組例」が出ていて参考になります。「業務用空気清浄機の製造会社が家庭用小型製品を開発する」「美容室が写真館を隣に新設してセットでサービスを提供する」というように、既存の強みを活かしながら新市場を開拓するストーリーが審査員に刺さりやすいです。
- 新規性の明示: 既存事業との違いを数値・ターゲット・販路で具体的に示す
- 実現可能性: 後継者自身の強み・人脈・技術を活かした計画であることを説明する
- 市場の根拠: 需要の裏付け(市場調査、顧客インタビュー、競合分析)を添付する
賃金引上げ計画を立てると助成率が上がるということでしたが、その計画はどの程度具体的に書けばいいんですか?
賃金引上げ計画書(Excelフォーム)を記入して提出する必要があります。助成対象期間内(交付決定日から最大1年間)に実際に賃金を引き上げることが求められるので、現実的な計画を立てることが重要です。計画を立てておきながら実施できなかった場合はペナルティの可能性がありますので、無理な計画は立てないようにしましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 令和8年度第1回 事業承継を契機とした成長支援事業(一般コース) |
| 実施機関 | 公益財団法人 東京都中小企業振興公社 |
| 助成上限額 | 800万円 |
| 助成率 | 2/3以内(賃金引上げ計画あり:3/4〜4/5以内) |
| 助成対象期間 | 交付決定日から最大1年間 |
| 申請受付期間 | 令和8年5月18日(月)14時〜令和8年6月17日(水)16時 |
| 交付決定予定日 | 令和8年9月頃 |
| 申請方法 | Jグランツによる電子申請のみ |
| 対象地域 | 東京都内で事業を行う中小企業者 |
| アドバイザー派遣 | 採択後、1社2回・無料 |
そうです。令和8年9月1日から9月30日16時まで第2回の受付が予定されています。もし今回の第1回に間に合わなかった場合でも、第2回での申請チャンスがあります。ただ早ければ早いほど、交付決定も早くなるので、動ける方はぜひ第1回で申請してください。
この制度と似たような補助金は他にもありますか?併用したり、代替で使えるものがあれば教えてほしいです。
なるほど、それぞれ特徴が違うんですね。東京都の中小企業には、今回の制度はかなり使いやすそうですね。
最後によくある疑問をいくつか教えてください。まず「新規事業展開」って、どのくらい「新規」でないといけないんですか?
明確な線引きはありませんが、公式の資料では「新たな顧客・新たな市場へ向けた新規事業展開」「自社にない技術・設備の開発・導入」が例示されています。逆に「既存製品の単なる改良」や「売上の増加に直接貢献しない取組(内部システムの更新等)」は対象外になっています。
はい、M&Aによる事業譲渡・株式譲渡も事業承継として認められます。ただし、申請要件として定められた期間内(申請日前日から遡って3年以内、または令和6年3月31日から遡って3年以内)にM&Aが実施されていることが必要です。
申請できます!ただし法人の場合と要件が異なり、承継期間内に後継者が開業し先代が廃業した事実、かつ先代から後継者へ事業用資産が引き継がれていることが確認できる書類が必要です。
申請書の書き方がわからないときはどこに聞けばいいですか?
申請前に必ず
公式サイトの募集要項を熟読してください。その上で、事務局(TEL 03-4446-4650)に問い合わせることができます。ただし公式サイトでは「募集要項をご確認前のお問合せはお控えください」と明記されています。まず要項を読んでから電話することが大前提です。
可能です。代理申請の場合は、申請者(事業者)が「同意書(代理申請用)」を作成し、Jグランツの申請フォームの指定箇所にアップロードする必要があります。代理申請する代理人(士業や支援機関など)がいる場合は、募集要項のP.26を必ず確認してください。
- 窓口名: 東京都中小企業振興公社 事業承継を契機とした成長支援事業事務局
- TEL: 03-4446-4650
- 受付時間: 9時00分〜16時30分(土日祝・年末年始を除く)
- 公式ページ
東京都の中小企業向けの補助金は他にもたくさんあるんですか?
東京都中小企業振興公社だけでも数多くの助成事業があります。事業承継系以外にも、販路拡大・設備投資・人材育成など豊富な支援メニューがそろっています。当サイトでも
東京都の補助金・助成金一覧からまとめて探せますので、ぜひ活用してください。
今日はありがとうございました!事業承継した後継者の方にとって、最大800万円の助成金とアドバイザー派遣がセットになった非常に頼もしい制度ということがよくわかりました。
第1回の申請期限は令和8年6月17日16時です。まだGビズIDを持っていない方は、今日から取得手続きを開始することをお勧めします!