災害時の通信を守る国の大型補助制度


佐藤
編集長
室谷さん、「情報通信拠点機能強化支援事業費補助金」って名前からして難しそうなんですが、どんな補助金なんですか?

室谷
代表取締役
一言でいうと、通信事業者が災害時の応急復旧機材を買うときに、国がその費用の3分の1を出してくれる制度です。移動電源車とか可搬型基地局って聞いたことありますか?

佐藤
編集長
移動電源車!なんとなくイメージできます。大きな台風が来たときに、テレビで見かけるやつですか?

室谷
代表取締役
そうそう、あれです! 地震や台風で通信基地局が停電したり壊れたりしたとき、あの車が電源を供給したり、一時的な基地局として動いたりするんです。でも導入コストが高くて、整備が思うように進んでいないという問題があって。

佐藤
編集長
だからこそ国が補助してくれると。

室谷
代表取締役
その通り。特に市町村役場や災害拠点病院といった防災上の重要拠点で通信が途絶えると、住民への避難指示も医療機関の連携もできなくなる。だから国として「通信事業者に機材を揃えてもらおう」という方針なんです。

佐藤
編集長
令和7年度補正予算で実施されたんですね。背景にはどんな事情があったんでしょう?

室谷
代表取締役
2024年1月の能登半島地震が大きなきっかけです。あのとき、石川県内の基地局が大規模に被災して、通信が長期間使えなくなった地域が出ました。その反省から、応急復旧機材の整備を国が加速させようということになったんです。
補助率・補助上限額の詳細

佐藤
編集長
具体的な補助の内容を教えてもらえますか?補助率と上限額が気になります。

室谷
代表取締役
補助率は事業費の3分の1です。そして補助上限額が12億8,000万円と、かなり大きな規模になっています。

佐藤
編集長
12億8,000万円!?これは1社がもらえる上限ですか?

室谷
代表取締役
この予算は事業全体の上限と理解してください。応募多数の場合は予算の範囲内で補助金額を調整する場合があると明記されていますから、早期申請が有利なんですね。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 事業費の3分の1 |
| 補助上限額 | 12億8,000万円(事業全体予算) |
| 実施主体 | 総務省(総合通信基盤局) |
| 対象地域 | 全国 |
| 事業分類 | 令和7年度補正予算 |

佐藤
編集長
「事業費の3分の1」ということは、自己負担が3分の2になるわけですよね。たとえばどれくらいの規模感なんでしょう?

室谷
代表取締役
移動電源車1台の価格は機種にもよりますが、数千万円から1億円以上になるケースもあります。可搬型基地局は数百万円〜数千万円のレンジ。大手通信キャリアが複数台一気に整備するとなると、事業費は数億円規模になりますから、補助金の恩恵はかなり大きいです。

佐藤
編集長
そうか、3分の1でも数千万円の支援になるんですね。では次に、誰が申請できるのかを教えてください。
申請できる事業者の要件

室谷
代表取締役
対象は大きく2種類です。携帯電話事業者と固定通信事業者です。ただし条件があって、「都道府県庁や市区町村役場に通信サービスを提供している事業者」に限られます。

佐藤
編集長
それって、大手キャリア(NTTドコモとかSoftBankとか)だけじゃないってこと?

室谷
代表取締役
そう! 地域に根ざした固定通信事業者も対象になり得ます。たとえば、ある県の市役所に専用線や光回線サービスを提供しているローカルの通信会社さんでも、要件を満たせば申請できます。詳細は交付要綱第6条に定められているので、必ず確認してください。

佐藤
編集長
へえ、地方の通信会社にもチャンスがあるんですね。

室谷
代表取締役
そうなんです。むしろ地方の通信会社こそ、地域の防災インフラを担う立場として申請を検討してほしい。自治体の役場に通信サービスを入れているなら、まず自社の該当性をチェックしてみることをお勧めします。
対象外になるケース
- 都道府県庁や市区町村役場に通信サービスを提供していない通信事業者
- 通信機材のメーカー・販売代理店(直接申請できない)
- 一般企業(通信事業者のみが対象)
- 既存設備の維持管理・修繕のみを目的とした申請

佐藤
編集長
要件の確認に迷ったらどうすればいいんですか?

室谷
代表取締役
総務省に事前相談するのが一番確実です。担当は総合通信基盤局 電気通信事業部 安全・信頼性対策課(電話: 03-5253-5858)で、申請を検討している場合は早めに連絡することを公式に推奨しています。
対象となる機材・経費

佐藤
編集長
どんな機材が補助対象になるんでしょう?

室谷
代表取締役
災害時の応急復旧に使う機材の購入費用が対象です。具体的にはこんなものが含まれます。
| 対象カテゴリ | 具体例 |
|---|---|
| 応急復旧機材 | 移動電源車、可搬型基地局、移動基地局車、衛星通信機器 |
| 付帯設備 | 機材の輸送・設置に必要な付帯設備、保管・管理設備 |
| 工事費 | 機材設置に係る工事費、配備拠点の整備工事費 |

佐藤
編集長
反対に、対象外になるものは?

室谷
代表取締役
これも整理しておくと重要で、平時に使う一般設備や維持管理費は対象外です。「災害時の応急復旧に直結する」という目的が明確な機材に限られます。
補助対象外の経費
- 通常の事業運営に使用する一般設備(通常の基地局設備など)
- 既存設備の維持管理・修繕費
- 人件費・旅費・事務経費
- 土地の取得費
- 消耗品費
- リース・レンタルに係る費用
- 他の補助金で賄われる経費

佐藤
編集長
「リース・レンタルに係る費用」が対象外というのは気をつけないといけないですね。購入じゃないとダメなんですね。

室谷
代表取締役
ええ、あくまで「購入」が前提です。交付要綱に明記されていますから、調達方法の設計段階から意識しておく必要があります。
申請の流れとスケジュール


佐藤
編集長
実際の申請はどのように進めれば良いんでしょうか?

室谷
代表取締役
大きく5つのステップで進みます。ポイントは第一次締切の案件から順次交付決定が行われることです。早く申請するほど採択が早くなる仕組みです。
1要件確認と事前相談(総務省へ連絡)
自社が携帯電話事業者または固定通信事業者に該当し、都道府県庁や市区町村役場に通信サービスを提供しているか確認します。自己判断が難しい場合は、総務省の安全・信頼性対策課(03-5253-5858)に相談してください。
2整備計画の策定
購入予定の応急復旧機材(種類・数量・配備先)を具体化し、事業費の見積もりを取得します。どの防災拠点の通信確保に貢献するかを明確にした整備計画を作成します。
3申請書類の作成・提出
交付要綱(別紙1)に基づき、事業計画書・経費内訳書・見積書等を作成します。提出方法はメールまたは大容量ファイル転送システム、またはJグランツ(補助金申請システム)の2通りがあります。
4交付決定の受領
令和8年2月以降、随時交付決定が行われます。第一次締切から順次決定されるため、早い締切での申請が有利です。
5機材購入・配備・実績報告
交付決定通知を受けた後、計画に基づいて機材を購入・配備します。事業完了後に実績報告書を提出し、補助金が確定・交付されます。

佐藤
編集長
申請の締切が複数回あるんですね。どれを選べばいいんでしょう?

室谷
代表取締役
準備できた段階で最も早い締切を選ぶのが正解です。第一次(令和8年1月26日 正午必着)、第二次(同年2月16日 正午必着)、第三次(同年3月31日 正午必着)の3回ですが、応募状況によっては第三次以降も随時受け付ける場合があります。
| 締切 | 日程 | 備考 |
|---|---|---|
| 第一次締切 | 令和8年1月26日(月)正午必着 | この案件から優先的に交付決定 |
| 第二次締切 | 令和8年2月16日(月)正午必着 | 順次交付決定 |
| 第三次締切 | 令和8年3月31日(火)正午必着 | 予算範囲内で調整の可能性あり |
| 随時受付 | 第三次以降も個別相談で対応 | 総務省へ直接連絡 |

佐藤
編集長
正午必着というのは注意が必要ですね! 17時ギリギリに送って間に合ったと思ったら、実は締切を過ぎていた、という事態になりかねない。

室谷
代表取締役
その通り。メールや電子申請の場合でも、ファイルサイズが大きい資料を送る場合は時間に余裕を持って送信しないと危ないですね。余裕を持って、締切の数日前には提出できるよう準備しましょう。
審査を通過するための攻略法

佐藤
編集長
採択されやすくするためのコツはありますか?
採択のための5つのポイント
- 事前相談を必ず行う。担当官との認識合わせが採択率に直結する
- 防災拠点のカバレッジデータを定量的に示す(拠点数・現状の通信脆弱性・改善見込み)
- 過去の災害での自社の被災・復旧実績データを記載する
- 機材導入による通信復旧時間の短縮幅を数値化する
- 中長期の整備ビジョンも添えつつ、当年度の優先機材を明確に位置づける

室谷
代表取締役
この補助金の審査では「防災拠点の通信確保にどれだけ貢献するか」が最重要の評価軸になります。ただ機材を買いたいという話ではなく、どの防災拠点のどんな通信リスクを解決するのかを具体的に示すことが大切です。

佐藤
編集長
「市内の市役所○棟と災害拠点病院○施設をカバーする計画です」みたいな具体性が求められるということですね。

室谷
代表取締役
まさに。現在は通信が途絶えた場合にどのくらい復旧に時間がかかるかを示して、機材を導入したら72時間以内に復旧できるようになる、といった定量的な改善見込みを書けると強いです。

佐藤
編集長
自治体との連携実績があると、申請書に説得力が出そうですね。

室谷
代表取締役
そう! 地域の防災訓練に参加していたとか、過去の災害で自治体と連携して早期復旧を実現した実績があれば、それは絶対に書くべき情報です。通信事業者としての実績が、補助金の目的に沿っていることの証明になりますから。
申請書に必ず入れたい内容
- 自社通信エリア内の市町村役場・災害拠点病院のリスト
- 過去の大規模災害時の被害状況と復旧実績(日数・対応機材数など)
- 今回購入する機材の配備先と、それによるカバー率の変化(○%→○%)
- 機材導入で通信復旧目標時間がどれだけ短縮されるか
- 自治体防災計画との整合性(連携している場合は明記)
類似の通信・防災インフラ補助金との比較

佐藤
編集長
似たような補助金もあるんですか?比べてみたいんですが。

室谷
代表取締役
総務省系の通信・放送インフラ強化補助はいくつかあります。いずれも能登半島地震を受けて強化された制度です。自社の事業領域と照らし合わせてみましょう。
| 補助金名 | 主な対象 | 補助率 |
|---|---|---|
| 情報通信拠点機能強化支援事業費補助金 | 携帯・固定通信事業者(自治体に通信提供) | 1/3 |
| 辺地共聴施設の高度化支援事業 | 辺地の共聴施設運営者 | 補助あり |
| ケーブルテレビネットワークの耐災害性強化事業 | ケーブルテレビ事業者 | 補助あり |
| 地上基幹放送等の耐災害性強化支援事業 | 地上基幹放送事業者 | 補助あり |

佐藤
編集長
どれも「通信・放送インフラを災害から守る」という目的は同じなんですね。

室谷
代表取締役
そうです。ただ、対象となる事業者の種類と対象設備が違います。移動電源車や可搬型基地局を整備したい通信事業者なら今回の補助金、ケーブルテレビ事業者なら耐災害性強化事業、と自社に合った制度を選ぶことが重要です。
他の補助金との組み合わせ

佐藤
編集長
この補助金と、他の補助金を組み合わせることはできるんですか?

室谷
代表取締役
同一事業について他の国庫補助金との重複受給は基本的にできません。ただ、異なる事業目的であれば、他省庁の防災関連補助との組み合わせを検討できる場合があります。補助率が3分の1なので、残り3分の2の自己負担部分について、自治体の独自補助制度や金融機関の政策融資を活用するのが有効な戦略です。

佐藤
編集長
政策融資というと、日本政策金融公庫とかですか?

室谷
代表取締役
そうですね。防災・減災を目的とした設備投資は、日本政策金融公庫の「防衛関連産業等振興対策資金」や「企業活力強化貸付」の対象になり得ます。また、地方自治体が通信インフラの整備を推進するための独自補助を設けている場合もあります。申請前に総務省や地方支分部局に相談しながら、最適な資金調達スキームを設計することをお勧めします。
基本情報まとめ

佐藤
編集長
ここまでの話をまとめると、この補助金の全体像はどうなりますか?
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 情報通信拠点機能強化支援事業費補助金 |
| 実施主体 | 総務省 総合通信基盤局 |
| 補助率 | 事業費の3分の1 |
| 補助上限 | 12億8,000万円(事業全体) |
| 対象者 | 携帯電話事業者・固定通信事業者(自治体に通信サービス提供が条件) |
| 対象経費 | 移動電源車・可搬型基地局等の応急復旧機材の購入費用 |
| 公募開始 | 令和8年1月16日 |
| 第一次締切 | 令和8年1月26日 正午必着 |
| 第二次締切 | 令和8年2月16日 正午必着 |
| 第三次締切 | 令和8年3月31日 正午必着 |
| 交付決定 | 令和8年2月以降随時 |
| 対象地域 | 全国 |
| 申請方法 | メール・大容量ファイル転送 または Jグランツ |
| 問い合わせ | 総務省 安全・信頼性対策課 電話 03-5253-5858 |
| 公式情報 | 総務省報道資料 |

室谷
代表取締役
この補助金は2026年度の申請期限が設定されていますので、対象事業者の方は早めに動き出すことをお勧めします。
受付終了の場合の備え方

佐藤
編集長
もし申請期限を逃してしまったり、受付が終了していた場合はどうすればいいんでしょう?

室谷
代表取締役
まず「次の公募に備える」という姿勢が重要です。この種の防災インフラ整備補助は、大規模災害が発生するたびに補正予算で手当てされることが多い。2016年の熊本地震後、2019年の台風19号後と、過去にも同様の補助制度が繰り返し実施されています。

佐藤
編集長
次の公募に向けて、今からできることは?

室谷
代表取締役
いくつかあります。まず、Jグランツのアカウント(GビズID)を今のうちに取得しておくこと。GビズIDの発行には数週間かかる場合があるので、公募が始まってから申請しようとすると締切に間に合わないケースが出てきます。

佐藤
編集長
なるほど! 事前準備が大事なんですね。

室谷
代表取締役
それと、整備計画書のたたき台を作っておくことです。どの防災拠点に何台の機材を配備するか、防災計画との整合性はどうかを整理しておけば、次の公募が来たときにすぐ動けます。総務省の担当課に「次の公募があれば申請したい」という意向を伝えておくのも効果的ですよ。
今から準備しておくこと(次回公募に備えて)
- GビズIDの取得(発行に数週間かかるため早めに申請)
- 防災拠点のリストアップと現状の通信カバレッジ調査
- 整備計画書のたたき台作成(機材の種類・数量・配備先)
- 総務省への事前意向伝達
- 地域の自治体防災計画との整合性確認
問い合わせ先
総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 安全・信頼性対策課 電話: 03-5253-5858(平日9時30分〜18時15分) 公式情報: 総務省報道資料
よくある質問

佐藤
編集長
申請を検討している方がよく疑問に思うことを教えてもらえますか?

室谷
代表取締役
そうですね、特によく聞かれるのはこんな点です。

佐藤
編集長
「MVNOや仮想移動体通信事業者も申請できますか?」という質問はありそうですね。

室谷
代表取締役
MVNO(仮想移動体通信事業者)については、都道府県庁や市区町村役場に直接通信サービスを提供しているか否かが判断の分かれ目です。自治体向けに専用線や通信サービスを提供しているMVNOなら申請対象になり得る可能性がありますが、交付要綱第6条の解釈については必ず総務省に個別に確認してください。

佐藤
編集長
「申請書の提出は電子申請だけですか?」という質問も来そうです。

室谷
代表取締役
申請方法は2通りあります。メールや大容量ファイル転送システムによる電子データの提出か、Jグランツ(jgrants-portal.go.jp)からのオンライン申請です。どちらでも構いません。ただし、Jグランツで申請する場合はGビズIDが必要なので、事前取得が必須になります。

佐藤
編集長
「補助金を受け取った後に、機材を転売したり目的外に使うことはできますか?」という点も気になります。

室谷
代表取締役
これは絶対NGです。補助金の目的外使用や財産処分(売却・廃棄・担保設定など)を行う場合は、事前に総務省の承認が必要です。無断で行うと補助金の返還を求められる場合があります。機材の管理規程を整備して、適切に管理することが求められます。