室谷さん、今日は岐阜県の補助金を深掘りしたいと思います。まず、この「業務改善助成金」って、どんな制度なんでしょうか?
中小企業・小規模事業者が、事業場内で最も低い賃金、つまり事業場内最低賃金を50円以上引き上げて、そのうえで生産性向上に資する設備投資などを行った場合に、かかった費用の一部を助成する制度です。国が実施している業務改善助成金の令和8年度(2026年度)分、岐阜県向けの申請窓口ですね。
えっ、賃金を上げるのと設備投資がセットなんですか? 給料アップと会社の効率化を同時にやらないとダメってことですよね。
そのとおりです! ただ設備を導入するだけではなく、まず事業場内最低賃金を50円以上引き上げる計画を立てます。そのうえで機械設備の導入やIT化などの設備投資を行う。この2つがそろって初めて助成金の対象になります。
なるほど。じゃあ「事業場内最低賃金」って何か、もう少し丁寧に教えてもらえますか?
事業場内最低賃金って、パートさんやアルバイトさんを含めた一番低い時給のことですよね?
はい、事業場で働く人の中で最も低い時間給を指します。ただし、ここには条件があって、雇入れ後6か月を経過した労働者の事業場内最低賃金を引き上げていただく必要があります。計算方法は、地域別最低賃金と同様に、最低賃金法第4条や施行規則の規定に基づいて算定されます。
はい。引き上げた後の事業場内最低賃金の金額と同額を、就業規則などに定めなければなりません。それから、複数回に分けての引き上げは認められていないので、50円以上を一気に上げる計画が必要です。
ちなみに対象になる労働者の範囲はどうなってるんですか?
引き上げる対象になる労働者は、週の所定労働時間が20時間以上ある雇用保険加入者です。このあたりはあとで詳しく見ていきますね。
地域別最低賃金って、ニュースで毎年10月ごろに改定されるって聞きますけど、関係あるんですか?
あります! 地域別最低賃金の発効に対応して事業場内最低賃金を引き上げる場合、発効日の前日までに引き上げておく必要があります。たとえば10月1日に新しい地域別最低賃金が発効される場合、発効日の前日、つまり9月30日までに引き上げを完了していれば対象です。
ということは、発効日の当日に引き上げるとダメなんですか?
残念ながら対象外になります。この「前日まで」という期限は非常に重要です。申請期間も、この地域別最低賃金の発効日の前日で締め切られる可能性がありますから、スケジュールは早めに組みましょう。
いえ、じつに幅広いです。農業、林業、漁業、鉱業、採石業、砂利採取業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸業、郵便業、卸売業、小売業、金融業、保険業、不動産業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、教育、学習支援業、医療、福祉、複合サービス事業、サービス業(他に分類されないもの)、分類不能の産業まで入っています。
ほとんど全業種じゃないですか(笑)。これなら「うちは対象外かな?」と心配する必要はあまりなさそうですね!
そうなんですよ。小売りも飲食も建設も医療も対象です。ただし、あくまで中小企業・小規模事業者であることが前提です。この条件は次の見出しでしっかり確認していきましょう。
業務改善助成金の特徴賃金引上げと設備投資がセット
事業場内最低賃金を50円以上引き上げることが前提
生産性向上に資する設備投資等が対象
機器・設備の導入やIT導入、経営コンサルティングなど
従業員数の制約なし
従業員数の上限は設定されておらず、中小企業・小規模事業者が対象
岐阜県内の事業場が対象
申請先は岐阜労働局。事業場所在地を管轄する労働局に提出します
申請資格の話が出ましたが、具体的にどんな事業者が対象なんですか?
まず中小企業・小規模事業者であること。そして大企業と密接な関係を有する企業、いわゆる「みなし大企業」ではないことが条件です。さらに、事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満であることなども求められます。
うちは家族経営の小さな会社なんですけど、大丈夫でしょうか?
小規模事業者も対象ですから、基本的に問題ないでしょう。ただし、資本関係や出資関係などで「みなし大企業」に該当すると対象外になります。このあたりは交付要綱でご確認ください。
大企業と密接な関係を有する企業が該当する、とされています。具体的な判断基準は公募要領を確認するのが確実です。あと、これは重要なポイントですが、解雇や賃金の引き下げなどの不交付事由がないことも要件になっています。
中小企業・小規模事業者であれば対象になり得ます。重要なのは、工場や事務所などの労働者がいる事業所ごとに申請する、という点ですね。工場Aと事務所Bがあったら、それぞれ別々に申請します。
jGrantsの情報では「従業員数の制約なし」とされています。ですから、人数で門前払いされることはないですね。その代わり、助成上限額の区分では、事業場規模が30人未満かどうかで金額が変わってきます。
なるほど。人数で諦める必要はないけど、もらえる額は変わる、と。ここはあとで詳しく見たいですね!
さっき「不交付事由がないこと」とありましたが、どんな場合が該当するんですか?
例として挙げられているのは、解雇や賃金の引き下げなどです。こうした事由があると助成金を支給できない、ということですね。もう少し具体的な内容は、最新の交付要領・申請マニュアルで確認してください。
逆に言えば、雇用を守りながら賃金を上げる会社を応援する制度なんですね。
まさにそのとおりです。労働者の待遇改善と生産性向上の両方を国が後押しする、というのがこの制度の肝です。事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満であることも条件ですから、そもそもの賃金が低い事業場ほど恩恵を受けやすい設計になっています。
ここからは金額の話です。補助率は3/4~4/5とありますが、どうやって決まるんでしょう?
事業場内最低賃金が1,050円未満の事業者は4/5、1,050円以上の事業者は3/4です。つまり、もともとの賃金が低い会社ほど手厚い補助率になっているんですね。
なるほど。低賃金の事業所ほどお金を多く出してくれる、と。じゃあ補助上限はどうなってますか?
上限は最大600万円です。ただし、これはコースと引き上げる労働者数によって変わります。事業場内最低賃金の引き上げ額が50円コースなのか、70円コースなのか、90円コースなのか。そこに人数を掛け合わせて上限が決まります。
あります。令和8年度のリーフレットに載っている表をまとめると、こうなります。
| コース | 引き上げる労働者数 | 事業場規模30人未満 | 右記以外 |
|---|
| 50円コース | 1人 | 40万円 | 30万円 |
| 50円コース | 2〜3人 | 70万円 | 40万円 |
| 50円コース | 4〜5人 | 70万円 | 70万円 |
| 50円コース | 6〜7人 | 90万円 | 90万円 |
| 50円コース | 8人以上 | 110万円 | 110万円 |
| 50円コース | 10人以上※ | 130万円 | 130万円 |
| 70円コース | 1人 | 50万円 | 40万円 |
| 70円コース | 2〜3人 | 100万円 | 50万円 |
| 70円コース | 4〜5人 | 130万円 | 130万円 |
| 70円コース | 6〜7人 | 180万円 | 180万円 |
| 70円コース | 8人以上 | 230万円 | 230万円 |
| 70円コース | 10人以上※ | 300万円 | 300万円 |
| 90円コース | 1人 | 100万円 | 90万円 |
| 90円コース | 2〜3人 | 240万円 | 150万円 |
| 90円コース | 4〜5人 | 270万円 | 270万円 |
| 90円コース | 6〜7人 | 360万円 | 360万円 |
| 90円コース | 8人以上 | 450万円 | 450万円 |
| 90円コース | 10人以上※ | 600万円 | 600万円 |
おお、かなり細かいですね。この※の10人以上って、どういう意味ですか?
※の注釈ですが、「10人以上の上限額区分は、特例事業者が10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合に対象になります」。つまり、特例事業者でない一般の事業者が10人以上の労働者を上げる場合、この区分がそのまま使えるかどうかは要領で確認が必要です。特例事業者の話は次の見出しで説明しますね。
2つの要件があります。1つは「賃金要件」で、申請事業場の事業場内最低賃金が1,050円未満であること。もう1つが「物価高騰等要件」で、原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、申請前6か月間平均における利益率が前年度と比べて3%ポイント以上低下している事業者です。
助成上限額の拡大と、物価高騰等要件に該当する場合は助成対象経費の拡大も受けられます。つまり、特例事業者になれるかどうかで使える金額や経費の範囲が変わってくるわけです。まずは自分がどちらの要件に当てはまるか、しっかり確認しましょう。
特例事業者の2つの要件| 項目 | 賃金要件 | 物価高騰等要件 |
|---|
| 内容 | 申請事業場の事業場内最低賃金が1,050円未満 | 外的要因で利益率が前年度比3%ポイント以上低下 |
| 助成上限額の拡大 | 対象 | 対象 |
| 助成対象経費の拡大 | 対象外 | 対象(パソコン等の新規導入など) |
じゃあ実際にいくらもらえるか、計算例はありますか?
リーフレットに分かりやすい例がありました。事業場内最低賃金が1,040円、助成率が4/5。8人の労働者を1,130円まで引き上げる、つまり90円コースだと助成上限額は450万円です。一方、設備投資などの額が600万円だったとすると、600万円×4/5=480万円。これと上限の450万円を比べて、安い方の450万円が支給されます。
なるほど!「かかった費用×助成率」と「コース別の上限額」を比べて、小さいほうがもらえるんですね。
その理解でバッチリです。補助率だけ見て「600万円かけたら480万円返ってくる!」と思っても、上限額を超えていたらその分は出ない。この計算の流れはしっかり押さえておいてください。
生産性向上に資する設備投資等が対象です。具体的にリーフレットで挙げられているのは、POSレジシステム導入による在庫管理の短縮、リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮、国家資格者による顧客回転率の向上を目的とした業務フロー見直しの経営コンサルティング、顧客管理情報のシステム化などです。
なります。ただし「国家資格者による」という限定が付いています。コンサルであれば何でもOKというわけではないので、専門家の資格の有無を確認する必要がありますね。あとは機器・設備の導入も対象ですから、IT導入のイメージで考えてもらって大丈夫です。
対象になる経費と注意が必要な経費- POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
- リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
- 国家資格者による業務フロー見直しの経営コンサルティング
- 顧客管理情報のシステム化
×デメリット
- 交付決定前に導入した設備は対象外
- 一般事業者はパソコン等の端末が対象外(特例事業者のうち物価高騰等要件に該当する場合は新規導入に限り対象)
- 複数回に分けての事業場内最低賃金の引上げは認められない
一般の事業者だと、パソコンやスマホ、タブレットといった端末と周辺機器は助成対象外です。ただし、特例事業者のうち「物価高騰等要件」に該当する場合は、パソコンなどの新規導入が認められる場合があります。あくまで新規導入に限りますし、この特例は助成対象経費の拡充も受けられます。
パソコンを新しくしたい会社は、物価高騰等要件に当てはまるかどうかがカギになるんですね。
そうなります。ただし、併せて就業規則等に事業場内最低賃金が1,100円である旨を定める必要がある、という例も示されています。特例を使う場合は、賃金の引き上げ幅も意識しておきましょう。
何と言っても、交付決定前に助成対象設備の導入を行った場合は対象外になることです。先に設備を買ってしまってから「そういえば助成金があったな」と思っても、それは対象になりません。必ず交付決定を受けてから事業を実施してください。
うわ、それは痛いミスですね。あと、就業規則を変える必要があるんでしたっけ?
はい。引き上げ後の事業場内最低賃金額と同額を就業規則等に定めなければなりません。賃金台帳や勤怠の管理も含めて、計画的に進める必要がありますね。
「引き上げる労働者数」という言葉が出てきましたが、人数の数え方に注意点はありますか?
あります。事業場内最低賃金である労働者の賃金を引き上げることにより、賃金額が追い抜かれる労働者が「引き上げる労働者」に算入されます。ただし、いずれも申請コースと同額以上賃金を引き上げる必要があります。
リーフレットに例があります。事業場内最低賃金が1,050円の事業場で70円コースを申請する場合、Aさんは事業場内最低賃金の労働者なので算入可。Bさんは申請コース以上賃金を引き上げていないので算入不可。CさんはAさんに賃金額が追い抜かれる労働者であり、かつ申請コース以上引き上げているので算入可。Dさんは既に引き上げ後の事業場内最低賃金以上なので算入不可です。
なるほど。名前だけ見ると対象っぽくても、実際に上げた金額がコースに届いていないと数えられないんですね!
jGrantsの募集期間の表示は2026年8月31日から2028年3月31日までです。ただし、公式の説明では、申請期間は「令和8年9月1日から、申請事業場の都道府県において適用される地域別最低賃金の発効日の前日又は同年11月30日のいずれか早い日」とされています。
えっ、じゃあ2028年3月31日まで受け付けてくれるわけじゃないんですね?
そこがポイントです! 地域別最低賃金が発効する前日で締め切られる可能性があります。つまり、11月30日まで待たずに動くのが安全です。事業完了期限は交付決定年度の1月31日ですから、申請後のスケジュールも逆算して計画を立てましょう。
Jグランツの電子申請フォームを使います。まずGビズIDを取得して、申請フォームに必要事項を記入。そして交付申請書・添付書類をアップロードして申請する流れです。厚生労働省のウェブサイトに、交付要綱・交付要領や申請マニュアル、Q&A、お役立ちツールも掲載されていますから、申請前に必ず目を通してください。
交付申請書・添付書類と表現されていますが、具体的な様式や添付書類の内容は、交付要綱・各種様式のページで確認できます。申請フォームに必要事項を記入したうえで、作成した交付申請書・添付書類を申請フォームの「申請書類」欄にアップロードします。
業務改善助成金の申請フロー- 1
- 2
交付要綱・申請マニュアルを確認
厚労省サイトで公募要領を熟読
- 3
交付申請書と添付書類を作成
必要事項を記入し、申請フォームにアップロード
- 4
労働局の審査・交付決定
事業完了期限は交付決定年度の1月31日
- 5
事業実施・賃金引上げ
設備投資等を行い、事業場内最低賃金を50円以上引上げ
- 6
実績報告・助成金受領
事業の結果を報告し、助成金が支給
取得財産の処分に係る事前承認手続きなど、一部の手続きは電子申請ができません。こうした手続きは都道府県労働局に直接行うことになっています。あと、交付決定後に設備を購入する、という順番は絶対に守ってください。
事業完了期限は交付決定年度の1月31日です。ここまでに設備投資等を完了させて、賃金引上げも実施しておく必要があります。申請期間だけではなく、事業をやり切る期限もセットで覚えておきましょう。
申請から事業完了までのスケジュール令和8年9月1日
申請受付開始
Jグランツで受付開始
地域別最低賃金の発効日の前日
賃金引上げ完了の期限
事業場内最低賃金の引上げを完了する
発効日の前日 または 11月30日
申請期間の終了
いずれか早い日が申請締切
交付決定年度の1月31日
事業完了期限
設備投資等の事業を完了
まず書類の添付漏れ・記載ミスです。公式がわざわざ注意喚起しているくらいですから、ここが最大の落とし穴でしょう。交付申請の際に書類の添付漏れや記載ミス等が多く見受けられます、とまで明記されています。
交付申請後に書類の修正や添付漏れがわかった場合は、申請を行った都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に連絡してください。もう1つの注意点が、提出先の誤りです。この申請フォームは岐阜労働局への申請フォームですが、誤った提出先に申請すると「棄却」処理されてしまいます。
非常に厳しいです。故意に事実と異なる記載をした場合や添付書類の偽造など、偽りその他不正の行為による申請があった場合は、不正受給額の返還に加えて加算金を支払う義務を負う場合があります。刑事事件として告発される可能性まであると明記されています。
そうですね。助成金をもらうための手続きは、地味ですが正確さが何より大事です。また、現在、取得財産の処分に係る事前承認手続きなど、一部の手続きは電子申請ができません。これらの手続きは都道府県労働局に対して直接行うことになっています。
以前、業務改善助成金を使ったことがあるんですけど、また申請できますか?
大丈夫です。過去に業務改善助成金を活用した事業者も助成対象になると明記されています。同じ事業所の申請は年度内1回までですから、毎年度チャンスがあると考えていいでしょう。
申請したいけど、予算が足りなくなって締切前に終わるってことはないですか?
あります。予算の範囲内で交付するため、申請期間内に募集を終了する場合があると明記されています。つまり、気づいたら募集終了していた、という事態もあり得るわけです。制度の存在を知ったら、早めに準備するのが得策です。
業務改善助成金コールセンター、電話番号は0120-366-440です。受付時間は平日の9時から17時まで。なお、Jグランツの「この補助金に問い合わせる」機能には対応していませんので、電話か岐阜労働局に問い合わせてください。
とにかく、交付要綱・交付要領と申請マニュアルを熟読すること。これに尽きます。公式ページにはQ&Aや申請書の作成に便利なお役立ちツールも掲載されています。書類の添付漏れや記載ミスが多いという注意書きを真に受けて、提出前のダブルチェックを徹底しましょう!
ありがとうございます! これで申請に進めそうです!
あともう一度だけ確認です。交付申請書・添付書類の準備は、必ず最新の交付要綱・要領と申請マニュアルを見ながら進めてください。書類の添付漏れや記載ミスが本当に多いので、提出前のダブルチェックを忘れずに!