室谷さん、今回取り上げるのは東京都の医療機関向けの補助金ですよね。そもそも何でこんな制度ができたんですか?
背景にあるのは令和6年4月からの医師に対する時間外・休日労働の上限規制の適用開始です。地域での医療提供体制を確保しながら、医師の労働時間短縮を強力に進めていく必要が出てきました。そこで東京都が組んだのが、この地域医療勤務環境改善体制整備特別事業なんです。
なるほど、規制が始まったから現場も動かないといけない、と。
そうなんです。特に指導体制を整えて、基本的な診療能力に加えて最新の知見や技能、あるいは高度な技能を修得できるような医師を育成する医療機関が対象です。診療中に教育研修を行う勤務環境改善も含めて、働きやすく働きがいのある職場づくりを進める。そこに補助を出す仕組みなんですね。
ええ。他職種も含めた医療機関全体の効率化や勤務環境改善の取組として、チーム医療の推進やICT等による業務改革を進めていくことが目的に掲げられています。
実施機関は東京都です。だから対象地域は東京都、対象業種は医療、福祉。都内の医療機関が対象になります。根拠になっているのは地域医療勤務環境改善体制整備特別事業実施要綱と、その補助金交付要綱です。
はい、東京都保健医療局医療政策部医療人材課人材計画担当が窓口です。連絡先は後半でまとめてお伝えしますね。では次に、この制度のいちばんのクセを見ていきましょう!
タイトルに【仕入控除税額報告】って付いていますけど、これ、補助金の申請なんですか?
いい質問です!ここが今回いちばんのポイント。このフォームは、補助金をもらったあとの仕入控除税額報告用なんです。jGrantsにも「本申請フォームは、仕入控除税額報告用です」とはっきり書かれています。
そうなんです。交付要綱の第11の7の(2)に、補助事業が完了したあと、消費税及び地方消費税の申告によって補助金に係る消費税仕入控除税額が確定したら、**消費税仕入控除額報告書(別記第3号様式)**で速やかに知事へ報告する、と定められています。
ええ。しかも、知事が仕入控除税額の全部または一部の納付を命じたときは、そのとおり納付しなければなりません。ここは見落とすと後で困るポイントです!
支店があるような大きい組織の場合はどうなるんですか?
交付要綱に書いてあります。全国的に事業を展開する組織の一支部、つまり一支社や一支所のような立場で、自ら消費税及び地方消費税の申告を行っていない場合は、本部の課税売上割合等の申告内容に基づいて報告します。
自分のところで申告していないなら、本部の数字を使うと。
そのとおりです。ここを間違えると報告がやり直しになるので注意してください。
では次、実際いくらもらえるのかを見ていきましょう!
で、いくらもらえるんですか? タイトルに「上限額なし」って書きましたけど。
jGrants上の補助上限額は「-」で、単純な上限額は示されていません。でも上限がないわけじゃなくて、病床数から計算する基準額で実質的に決まる仕組みなんです。
はい。交付要綱の算定方法では、病床機能報告で都に報告している最大使用病床数、ただし療養病床を除いた数、1床あたり133千円を標準単価として、その病床数を掛けた額が基準になります。
1床あたり13万3千円か。100床なら1,330万円ってことですね。
計算が早いですね(笑)。そこに補助率を掛けた実支出額と比べて、少ないほうが選ばれる。ここが大事です。さらに算出額に1,000円未満の端数が出たら切り捨てになります。
ここが面白いところで、資産の形成につながる費用は10分の9、それ以外の費用は10分の10です。設備のような資産になるものは9割、そうでないものはなんと10割です。
そう、10/10です。たとえば同じ1,000万円の支出でも、資産形成につながらない経費なら1,000万円ぶん、資産形成につながる経費なら900万円ぶんが対象額になります。
ですので、どの経費がどちらに入るかは最初に確認しておきましょう。ここで仕分けを誤ると金額がそのまま変わりますからね。
いいえ、特例があります。令和8年度までは、一定の要件を満たせば1床あたりの標準単価を266千円まで上げられます。
はい。その要件というのが、大学病院改革ガイドラインに基づいて大学病院改革プランを策定した大学病院本院であること、または医療機関勤務環境評価センターの評価を受審した特定地域医療提供医療機関・連携型特定地域医療提供医療機関であって、各年度の時間外・休日労働時間を超える36協定を締結する医師がいなかったこと、加えて面接指導養成講習を修了している人が3人以上、または特定対象医師10人あたり1人以上いることです。
令和6年度は1,860時間、令和7年度は1,785時間、令和8年度は1,710時間というのが、その基準の数字ですか?
そのとおり。年々ハードルが上がっていく設計なんです。さらに令和9年度以降は、令和8年度以降に医療機関勤務環境評価センターの評価を受けた医療機関であることが前提になってきます。まさに先を見据えた制度設計ですね!
さっき「266千円まで」と言いましたけど、ほかにも加算があるんですか?
あります。対象項目、つまり必須項目以外のうち一定の項目の達成数に応じて、最大で1床あたり93千円まで標準単価に加算できます。
もうひとつ、評価項目79〜81、いわゆるアウトカム項目の改善数に応じた加算もあります。1項目なら1床あたり13千円、2項目なら27千円、3項目以上なら40千円です。
数字が細かくて、頭がこんがらがってきました(笑)。
ですので表にまとめておきますね。ここは申請前に何度も見返すところです!
| 項目 | 内容 |
|---|
| 補助上限額 | 定められていない(jGrants上は「-」) |
| 補助率 | 10/10(資産形成経費は9/10) |
| 標準単価 | 最大使用病床数1床あたり133千円 |
| 令和8年度までの特例 | 要件を満たせば1床あたり266千円まで |
| 対象項目の達成による加算 | 最大1床あたり93千円 |
| アウトカム項目の改善による加算 | 1項目13千円/2項目27千円/3項目以上40千円 |
| 端数処理 | 算出額に1,000円未満の端数が生じたら切り捨て |
はい。まず大前提として都内の医療機関であること。そのうえで、病床あたりの医師数を一定数以上確保しているか、多領域の診療科を設置していることが必要で、病院としての指導体制を整え、基本的な診療能力に加えて最新の知見や技能、高度な技能を修得できるような医師を育成していることが求められます。
そして次のどちらかを満たす必要があります。1つめは、地域医療に特別な役割を担う医療機関のうち、基幹型臨床研修病院または基本19領域のいずれかの領域における専門研修基幹施設であって、一般病床の許可病床数100床あたりの常勤換算医師数が40人以上、かつ常勤換算医師数が40人以上の医療機関です。
100床あたり40人、しかも総数も40人以上。ダブルで見られるんですね。
2つめは、地域医療に特別な役割を担う医療機関のうち、基幹型臨床研修病院かつ基本19領域のうち10以上の領域で専門研修基幹施設である医療機関です。どちらかのルートを通れば対象になります。
そこも決まっています。1の常勤換算医師数は、病床機能報告により都へ報告している医師数を使います。非常勤医師数も含みます。
独自に数えるんじゃなくて、報告済みの数字を使うと。
そうです。だから日頃の病床機能報告がそのまま効いてきます。逆に言えば、ここがずれていると対象から外れてしまうので注意してください。
なお、申請手続きは対象施設宛てにメールで連絡が来る形です。事業計画がある場合は申請書類を提出してください。
対象事業は、医師の労働時間短縮に向けた取組として、医療機関が作成した医師労働時間短縮計画に基づく取組を総合的に実施する事業です。
ええ。たとえば勤怠管理システム等のICT機器、休憩室整備費用、改善支援アドバイス経費、短時間勤務要員の確保経費などが挙げられています。そして、医師労働時間短縮計画に基づいて実施する取組であれば、すべて補助対象になります。
そう。だから計画に書いていない取組は、いきなり出てきても説明できないんです。計画と支出をひも付けておくのが鉄則ですよ。
まず、国や地方公共団体などの他の補助金等を充当して実施する事業は対象外です。それから診療報酬の話もあって、医師事務作業補助体制加算と看護補助加算を取得している場合、その加算の対象範囲でさらに本事業の対象にすることはできません。
ただし、その加算を取得していない場合や、加算を取得していても加算対象にならない範囲であれば、本事業の対象にできるとされています。
そうなんです。ここは判断が分かれるところなので、迷ったら窓口に確認してください。自己判断で進めるのがいちばん危ないです!
はい。補助の対象とする事業の実施期間は、交付決定がなされた日が属する年度の4月1日から3月31日までです。
交付決定が遅れると、その分使える期間が短くなるんですね。
そういうことです。年度をまたがないので、そこは意識しておいてください。
交付要綱では4つ、全部を満たす必要があります。1つめは、勤務医の負担の軽減及び処遇の改善のため、勤務医の勤務状況の把握とその改善の必要性等について提言するための責任者を配置することです。
誰でもいいわけじゃなく、提言する役割を担う人を置くんですね。
そうです。名前だけ置けばいいというものではなく、勤務状況を把握して改善の必要性を提言する。その機能が回っているかが見られます。
少しややこしいです。年の時間外・休日労働が960時間を超える、または超えるおそれがある医師を雇用している医療機関で、36協定において全員または一部の医師の年の時間外・休日労働時間の上限が720時間を超えていること、が要件になります。
補足すると、「960時間を超えるおそれがある医師を雇用している医療機関」とは、「年の時間外・休日労働が720時間を超え、960時間以下の医師を雇用している医療機関」を指すと定義されています。
そういうことです。36協定の締結状況そのものが審査の対象になるので、ここは整えておきましょう!
医療機関内に多職種からなる役割分担推進のための委員会または会議を設置し、「医師労働時間短縮計画作成ガイドライン」に基づいて医師労働時間短縮計画を作成することです。そのうえで、特定労務管理対象機関ではG-MISへの登録も必要になります。
委員会を作って、計画を作って、G-MISに登録、と。
さらに、その委員会等は計画の達成状況を評価するときや、その他適宜必要に応じて開催していることが求められます。
医師労働時間短縮計画に基づく取組事項を、医療機関内に掲示するなどの方法で公開することです。
はい。職員が知らないまま進むと、せっかくの取組が回りませんからね。この4つはすべて満たす必要があるので、1つでも欠けると対象外になります。
まさに。では次は、申請から報告までの流れを見ていきましょう!
まず知事が指定する日までに、**地域医療勤務環境改善体制整備特別事業補助金交付申請書(別記第1号様式)**を知事に提出します。知事は申請書と関係書類を審査して、必要に応じて現地調査などを行い、適当と認めたら交付決定をして通知します。
あります。知事は適正な交付を行うため必要があるときは、申請に係る事項に修正を加えて交付決定をすることができます。
ちなみに交付決定後でも、経費の配分を変えたい、事業内容を変えたい、中止や廃止をしたいときは、あらかじめ書面で知事に提出して承認を受ける必要があります。軽微なものを除いて、です。
補助事業者は、補助事業完了後1か月以内、または交付決定に係る都の会計年度が終了したとき、のいずれか早い日までに、**実績報告書(別記第2号様式)**を知事に提出します。
そして完了後、消費税及び地方消費税の申告によって補助金に係る消費税仕入控除税額が確定したら、**消費税仕入控除額報告書(別記第3号様式)**で速やかに報告します。これがまさに今回のフォームです。
そうなんです。だからこのフォームは、これから申請する人にとっては「ゴールの手続き」なんですね。
申請から報告までの流れ- 1
対象施設への案内を確認
東京都から対象施設宛てにメールで連絡
- 2
医師労働時間短縮計画を作成
多職種の委員会で作成し院内に公開
- 3
- 4
- 5
事業を実施
交付決定日の属する年度の4月1日から3月31日まで
- 6
実績報告書を提出
完了後1か月以内か年度末の早い日まで
- 7
今回の募集期間は2025年10月29日から2026年10月2日までです。交付申請の締切は知事が指定する日なので、そこは公募要領で要確認です。
本当にそうで、年度の後半に交付決定が出ると、その年度の3月31日までという期間が短くなってしまいます。早めに動くのが得策です。
募集から報告までのスケジュール2025年10月29日
募集開始
jGrantsで受付開始
2026年10月2日
募集終了
募集期間の末日
交付決定日の属する年度
事業実施期間
4月1日から3月31日まで
完了後1か月以内
実績報告
または会計年度終了時のいずれか早い日
仕入控除税額が確定後
仕入控除税額報告
別記第3号様式で速やかに報告
1つめは医師労働時間短縮計画と支出のひも付けです。対象経費は計画に基づく取組に要する経費なので、計画にない支出は説明できません。
2つめは4つの交付要件を最初にチェックすること。責任者の配置、36協定、委員会と計画、院内公開。1つでも欠けると対象外です。
3つめは資産形成につながるかどうかの見極めです。補助率が10/10と9/10で分かれるので、経費の仕分けが金額に直結します。
この制度のメリットと注意点- 資産形成につながらない経費は補助率10/10
- 勤怠管理システムや休憩室整備など幅のある取組が対象
- 令和8年度までは標準単価266千円まで上げられる可能性
×デメリット
- 医師労働時間短縮計画がなければ支出を説明できない
- 4つの交付要件をすべて満たす必要がある
- 他の補助金等を充当する事業は対象外
経費の配分を変えたくなったときに、承認を受けずに進めてしまうケースです。配分変更、内容変更、中止・廃止は、あらかじめ書面で知事に提出して承認を受ける必要があります。
通らないですね。それから、事業が予定どおり完了しない、遂行が困難になったという場合も、速やかに理由と状況を書面で報告して知事の指示に従う必要があります。
それと契約手続きにも決まりがあります。保健医療局医療政策部医療施設等施設・設備整備費等補助金に係る契約手続基準を守ること、とされています。ここまで押さえておけば安心です!
まず「補助上限はあるの?」ですが、jGrants上は「-」で単純な上限額は示されていません。代わりに最大使用病床数1床あたり133千円の標準単価で計算する基準額と、実支出に補助率を掛けた額を比べて少ないほうが選ばれます。
資産の形成につながる費用が10分の9、それ以外は10分の10です。額が大きいほど仕分けの影響も大きくなります。
交付要綱では、知事が仕入控除税額の全部または一部の納付を命じたときは納付しなければならない、とされています。報告は忘れずに、が結論です。
医師の時間外・休日労働の上限規制を背景に、東京都が指導体制を整えた医療機関の勤務環境改善を後押しする補助金です。そして今回のフォームは、事業が終わったあとの仕入控除税額報告用だという点がポイントでした。
そうなんです。補助率は10/10、資産形成経費は9/10。標準単価は1床あたり133千円、令和8年度までは要件を満たせば266千円まで。この3つだけでも覚えて帰ってください!