室谷さん、群馬県の中小企業が特許や商標を海外で出願するときに使える補助金があるって聞いたんですけど、本当ですか?
ありますよ!「群馬県中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業)」です。群馬県内の中小企業が外国特許庁に出願するときの費用を最大で半額、しかも1社あたり300万円まで補助してくれる制度です。
しかも1案件だけじゃなく、複数案件の申請も可能なんです。特許なら1案件あたり150万円、実用新案・意匠・商標なら各60万円が上限で、これを組み合わせて1社300万円まで使えます。
複数件まとめて申請できるのはありがたいですね。窓口はどこなんですか?
公益財団法人群馬県産業支援機構(G-インフ)が窓口です。国の補助金プログラムを群馬県が県内企業向けに実施している形で、前橋市の群馬産業技術センター内に事務局があります。
補助金額一覧(1案件あたり上限)
「外国出願」って一口に言っても、いろんな種類があると思うんですけど、どれが対象になるんですか?
大きく分けて特許・実用新案・意匠・商標の4種類です。それから「抜け駆け対策商標」という特殊な枠もあります。
日本国内で出願・登録済みの商標が、海外で第三者に勝手に出願・登録されてしまうケースがあるんですよ。特にアジア圏で頻発していて、これを防ぐための海外商標出願が「抜け駆け対策商標」です。補助上限は1案件30万円と他より低いですが、ブランド保護の観点で重要な枠です。
なるほど、ブランド保護のためにも使えるんですね。具体的にどんな出願方法が対象になるんですか?
パリ条約に基づく優先権主張出願、PCT(特許協力条約)国際出願の各国移行、意匠のハーグ協定に基づく出願、商標のマドリッド議定書に基づく国際登録出願、これら全部が対象です。つまり、主要な外国出願ルートはほぼカバーされています。
かなり多くの出願ルートに対応しているんですね。ただ、申請段階でもう日本での出願が必要ってことでしょうか?
そうです。申請時点で既に日本国特許庁への出願が完了していることが大前提です。これから日本で出願する、というタイミングではまだ申請できません。PCTダイレクト出願の一部例外はありますが、基本的には「日本出願済み→外国出願の費用を補助してもらう」という流れです。
| 出願種別 | 1案件あたりの補助上限 | 補助率 |
|---|
| 特許 | 150万円 | 1/2 |
| 実用新案 | 60万円 | 1/2 |
| 意匠 | 60万円 | 1/2 |
| 商標 | 60万円 | 1/2 |
| 抜け駆け対策商標 | 30万円 | 1/2 |
| 1社あたりの合計上限 | 300万円 | - |
テーブルで見るとわかりやすいですね。補助率が全部1/2ということは、100万円かかったら50万円もらえる感じ?
その通りです。対象経費の半額が補助されます。ちなみに、千円未満の端数は切り捨てで計算されます。
3つです。①外国特許庁への出願手数料、②国内代理人・現地代理人費用、③翻訳費用。弁理士に翻訳を委託しない場合でも翻訳費用は対象になりますよ。
要注意なのが、①先行技術調査費用、②申請書作成の代理人費用、③消費税や海外付加価値税、④出願後の中間手続き費用(出願と同日でない審査請求料・登録料など)です。「出願と同日の手続きにかかる費用」が対象で、その後のフォローは自己負担になります。
以下は補助の対象になりません。
- 先行技術調査費用 — 出願前の調査費は自己負担
- 申請書作成の代理人費用 — 補助金申請書を書いてもらう費用は対象外
- 国内消費税・海外付加価値税 — 税金類は対象外
- 出願後の中間手続き費用 — 拒絶理由対応、登録料、維持年金など
- PCT国際段階の手数料 — 国際出願手数料・調査手数料など
- 日本国特許庁の印紙代 — 国内費用は対象外
まず群馬県内に主たる事業所があることが必須です。あとは中小企業者であること。個人事業主も対象に含まれます。ただし、「みなし大企業」は除外されます。
大企業に出資比率が高い企業のことです。具体的には、発行済株式の1/2以上を同一の大企業が保有している場合、または2/3以上を複数の大企業が保有している場合などが該当します。中小企業の規模であっても、実質的に大企業の傘下にある場合は対象外になります。
地域団体商標の外国出願の場合は、商工会議所・商工会・NPO法人等も対象になります。「ぐんまちゃん」みたいなブランドを海外で守りたい場合にも使えます。
以下を全て満たしていることを確認してください。
- 所在地 — 群馬県内に主たる事業所がある
- 企業規模 — 中小企業者(みなし大企業を除く)または個人事業主
- 出願状況 — 日本国特許庁への出願が申請段階で完了している
- 事業計画 — 外国で権利が成立した場合に「活用した事業展開を計画している」こと
- 財務能力 — 外国出願および権利維持に必要な財務状況・資金計画を有している
- 協力義務 — 採択後5年間の状況調査(フォローアップ)に協力できる
令和8年4月27日から5月29日17時までが受付期間です。書類を郵送かメールで提出します。jGrants(Jグランツ)でのオンライン申請も一部できますが、詳細書類は別途郵送またはメール提出が必要です。
そうなんです。jGrantsに入力しただけでは申請受付にならないと明記されています。必ず書類一式を郵送またはメールで提出してください。メール件名には
必ず【海外出願補助金】と入れることが指定されています。
申請から補助金交付までのフロー図
1日本国特許庁への出願完了 — 申請前に国内出願が必要(特許・実用新案・意匠・商標のいずれか)
2書類準備 — 交付申請書(様式1-1または1-2)、登記簿謄本、決算書2期分、先行技術調査結果、見積書など計15種類の書類を揃える
3申請書提出(5月29日17時必着) — 郵送(簡易書留推奨)またはメール(keieishien@g-inf.or.jp)で提出。メール送信後は電話で受取確認を忘れずに
4一次審査(6月中旬) — 書面審査。通過した案件がプレゼン審査に進む
5二次審査(7月3日予定) — プレゼンテーション審査。事業計画の実現可能性・財務状況などを審査
6交付決定(7月上旬) — 採択通知後、外国出願の実施が可能に
7外国出願・費用支払い完了(12月31日まで) — 交付決定日以降に出願・支払いを完了させること
8実績報告書提出 — 事業完了から30日以内、または令和9年1月19日のいずれか早い日まで
9補助金交付(令和9年3月末まで) — 実績確認後に補助金が振り込まれる
提出書類が多いですね。どんなものを準備すればいいんですか?
主要なものを挙げると、交付申請書(様式1-1か1-2)、代理人協力承諾書、経費の資金計画書、登記簿謄本(個人は住民票)、会社事業概要、役員等名簿、直近2期分の決算書、日本国特許庁への出願書類の写し、先行技術調査結果、費用の見積書などです。全部で15種類の書類が必要になります。
それは確かに時間かかりそうですね。早めに動いたほうがよさそう。
締め切り直前は相談が集中するので、事前に電話やメールで相談することを群馬県産業支援機構も強く推奨しています。電話は027-265-5012、受付は平日の9時〜12時と13時〜17時です。
審査はどういう観点で行われるんですか?採択されやすい申請と、そうでない申請があると思うんですが。
審査基準は4つあります。①外国での権利取得の可能性が高いこと、②出願予定国での事業展開計画が具体的で実現可能性が高いこと、③財務状況・経営資源が十分であること、④国内代理人等の協力を受けられること、です。
そうです。申請書の「10. 外国特許庁への出願動機・目的」から「13. 出願の新規性、進歩性、創作性等」は審査における最重要項目と明示されています。特に「その権利を活用して何をするか」が具体的かつ実現可能かどうかが審査員に刺さるポイントです。
以下を申請書で具体的に記述することが採択への近道です。
- 出願動機 — 「なぜその国・地域に出願するのか」を市場規模・競合状況・ビジネス展開計画とセットで説明
- 権利活用計画 — 権利が成立したら具体的にどの顧客・パートナーと取引するか、売上目標はいくらか
- 財務裏付け — 出願費用・権利維持費用を賄える資金計画(見積書と照合できる水準で)
- 新規性・進歩性 — 先行技術調査の結果を踏まえ、権利取得の可能性を客観的に示す
加点措置があるって聞きましたが、どんな条件があるんですか?
6種類の加点措置があります。①地域未来牽引企業、②「グローバルビジネス実践塾」受講者(群馬県・ジェトロ群馬主催、第1〜8期の最終まで参加した企業)、③「グローバルファーマー育成塾」受講者(群馬県主催、第1・2期の最終まで参加した事業者)、④賃上げを実施する企業(申請後1事業年度に給与総額が2.5%以上増加)、⑤ワークライフバランス推進企業(えるぼし・くるみん認定など)、⑥本補助金を利用したことがない企業(平成26年度以降)です。
そうなんです!「補助金を活用したことがない企業」が優遇されるというのは、使ったことのない中小企業にもチャンスを広げる意図があるんだと思います。また、賃上げを希望する場合は「従業員への賃金引上げ計画の表明書」を提出して、後日実績報告も必要なので注意してください。
- 賃上げ加点 — 申請後1事業年度に給与総額が2.5%未満だった場合は「理由書」提出が必要。未達の場合は補助金返還の可能性あり
- 過去のフォローアップ未回答 — 以前にこの補助金を利用し、直近のフォローアップ調査に未回答の企業は採択されない
- 他県との重複 — INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)の「海外権利化支援事業」と同一内容での重複申請は原則不可
- 採択後の公表 — 採択された場合、企業名・所在地・権利種別・交付決定金額などが公表される
過去にどんな企業が採択されているか、参考になりますよね。
令和7年度の採択企業が公開されています。6社が採択されました。
| 企業名 | 所在地 | 採択種別 |
|---|
| アイ・シー電子工業株式会社 | 伊勢崎市 | 特許1件 |
| 株式会社石川エナジーリサーチ | 太田市 | 特許1件 |
| 双子蒸留所株式会社 | 前橋市 | 商標2件 |
| 雪国アグリ株式会社 | 沼田市 | 特許1件 |
| 個人 | 太田市 | 意匠3件 |
| 個人 | 渋川市 | 商標1件 |
業種や企業規模を問わず、「海外で権利化して事業展開したい」という意欲があれば使える補助金ということがわかります。個人の方も採択されているのが印象的ですよね。
そうですね。これ、群馬県内の企業なら製造業でも農業でも食品でも使えるわけですね。
そうです。対象業種に制限はありません。日本国特許庁に出願済みのIPを持ち、海外展開を計画している群馬県内の中小企業・個人事業主であれば申請できます。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 群馬県中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業) |
| 補助率 | 1/2 |
| 補助上限(1社) | 300万円 |
| 補助上限(1案件) | 特許150万円、実用新案・意匠・商標各60万円、冒認対策商標30万円 |
| 受付期間 | 令和8年4月27日(月)〜5月29日(金)17時必着 |
| 対象者 | 群馬県内に主たる事業所を有する中小企業・個人事業主 |
| 対象経費 | 外国特許庁への出願手数料、代理人費用、翻訳費用 |
| 審査スケジュール | 一次審査6月中旬、二次審査7月3日(予定) |
| 補助金交付 | 令和9年3月末まで |
| 実施機関 | 公益財団法人群馬県産業支援機構 経営支援課 |
| 電話 | 027-265-5012 |
| メール | keieishien@g-inf.or.jp |
| 公式ページ | g-inf.or.jp |
申請を考えている方が疑問に思いそうなことをいくつか聞いてもいいですか?
できます。複数案件を申請する場合は、案件ごとに申請書を1セット提出してください。ただし、1社あたりの補助上限はまとめて300万円です。他県の同様の補助金で採択されている場合は、その合計額も含めて300万円が上限になります。
そうです。交付決定前に着手した経費は対象外です。採択決定を受けてから外国出願の手続きを開始してください。ただし、令和8年12月31日までに外国出願および全ての支払いを完了させる必要があります。
採択されたら企業名が公表されるというのが気になる方もいると思いますが。
企業名・所在地・権利種別・交付決定金額などが公表されます。補助金の使途の透明性を確保するための規定です。採択前から承諾しておく必要があります。
共同出願の場合は、出願に関する中小企業の持分比率に応じた経費のみが対象です。持分割合と費用負担割合のどちらか低い方の割合で補助が計算されます。
採択後に状況調査があると聞きましたが、どのくらい続くんですか?
事業完了後5年間はフォローアップ調査・ヒアリングへの協力が求められます。ちょっと長いように感じるかもしれませんが、「権利がちゃんと事業に活かされているか」を確認するためのものです。前回のフォローアップに回答していないと次回の採択ができないので要注意です。
なるほど。最後に、群馬県内で海外展開を考えている企業に向けてアドバイスをいただけますか?
締め切りが5月29日と迫っています。まず公式の募集案内PDFをダウンロードして、申請書の記入例を確認することをお勧めします。書類が多く複雑ですが、群馬県産業支援機構は事前相談を強く推奨しています。迷ったらまず電話してみてください。補助金申請のプロが対応してくれます。特に初めて海外出願を検討している企業には加点措置もあるので、チャレンジする価値は十分あります。
時間があまりありません。以下を今日中に確認してください。
- 公式ページで募集案内PDFをダウンロード — 群馬県産業支援機構
- 電話で事前相談 — 027-265-5012(平日9〜12時、13〜17時)
- GビズIDの取得 — 採択後に求められる可能性があるため、未取得の場合は準備を
- 決算書2期分の準備 — 個人事業主なら確定申告書控え2期分
- 日本国特許庁への出願状況確認 — 出願番号・出願日を手元に用意
群馬県以外にも、外国出願の費用を補助してくれる制度はあるんですか?
あります。国レベルの制度や他都道府県の類似制度も複数あるので、比較してみましょう。
INPITの補助金は国の制度なんですよね?群馬県の制度と同時に申請できないと聞きましたが。
その通りです。INPITの「海外権利化支援事業」と群馬県の本制度で、同一内容での重複申請は原則不可です。ただし、INPITが「中間手続補助」として補助する部分は群馬県制度の対象外経費なので、うまく使い分けることは可能です。まず群馬県産業支援機構に相談するのが近道です。
当サイトでも群馬県の補助金情報をまとめています。海外展開以外の設備投資・IT化・販路開拓向けの補助金も多数掲載しています。ぜひ
群馬県の補助金一覧もあわせてご確認ください。