室谷さん、「グリーンイノベーション基金事業」という補助金が追加公募されているんですけど、これって名前からして国の大型プロジェクトっぽいですよね。どんな制度なんですか?
そうなんです!(笑)これ、日本政府が2050年カーボンニュートラルの実現に向けて経済産業省主導で立ち上げた総額2兆円の超大型国家基金なんですよ。NEDOという国立研究開発法人に基金を造成して、研究開発から社会実装まで最長10年間、継続して企業を支援します。
2兆円!(笑)スケールが違いすぎてちょっと想像つかないです。
ざっくり言うと、これまで市場原理だけでは実現できなかった革新的なグリーン技術に対して、官民が野心的な目標を共有した上で国が大胆に先行投資する、という仕組みです。洋上風力、水素、次世代蓄電池など様々な分野がありますが、今回追加公募されたのは「次世代型太陽電池の開発」プロジェクトの中の「次世代型単接合太陽電池実証事業」という枠ですね。
「次世代型単接合太陽電池」って、つまりペロブスカイト太陽電池のことですよね?最近よく聞くやつ。
正解です!(笑)ペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン太陽電池には設置できなかった場所——耐荷重の小さい工場の屋根とかビルの壁面——にも取り付けられる軽量・柔軟な次世代の太陽電池なんです。日本が世界トップクラスの技術力を持っている分野なので、まさに日本が勝ちに行けるテーマです。
グリーンイノベーション基金事業の補助スキーム図
次世代型単接合太陽電池実証事業の全体予算上限が623億円という規模で、これは既契約分も含む事業全体の上限額です。プロジェクト全体(次世代型太陽電池の開発プロジェクト全体)でいうと予算上限800.5億円、CO2削減効果として約1億トン/年、経済波及効果として約1.25兆円が期待されています。
えっ、623億円!!いや、もうケタが違いすぎて(笑)。
そうなんです(笑)。補助率の仕組みも少し特殊で、交付決定から3年目の年度末まで(最初の2年間を含む年度)は開発総額の2/3を補助、その後ステージゲート審査を通過した翌年度からは開発総額の1/2を基本に補助、さらにインセンティブとして1/10上乗せされます。
3年目に進捗状況を厳正にチェックして、「の先も支援を続けるに値する成果が出ているか」を確認する審査です。通過すれば4年目・5年目の支援が継続されますが、技術レベル(TRL)に照らして補助率が厳正に確認されます。受託後は気を抜けないですね。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 事業期間 | 2026年度~2030年度(最長5年間) |
| 予算上限 | 623億円(既契約分含む事業全体) |
| 補助率(最初の3年) | 開発総額の2/3 |
| 補助率(ステージゲート後) | 開発総額の1/2 + インセンティブ1/10 |
| 3年目までの上限 | 562.0億円 |
| ステージゲート審査 | 3年目終了時(3年目から引き続き審査) |
大きく2つのことをやります。一つ目が量産化技術開発です。品質を安定させながら大量生産できる技術——例えばロール・ツー・ロール(R2R)方式という、フィルムを巻き取りながら連続的に太陽電池を製造する手法の開発などですね。高いスループット(処理速度)と高い歩留まりを実現するプロセス技術の確立が求められます。
フィールド実証事業です。実際に建物の壁面や屋根に設置して性能を検証します。公共施設・インフラ空間への設置実証が必須で、さらに欧米・豪・東南アジアを想定した海外での実証も必須条件として設けられています。
そうなんですよ。この事業の目標は、2030年度に発電コスト14円/kWh以下を実現可能にすることです。現在のシリコン太陽電池と同等のコスト競争力を持つペロブスカイト太陽電池を、量産レベルで達成するというかなり野心的な目標ですね。
| 目標指標 | 数値 |
|---|
| 発電コスト目標(2030年度) | 14円/kWh以下 |
| 中間目標(採択条件) | 20円/kWh達成見込みを示すこと |
| 量産化構想(2030年度) | 年間製造能力100MW以上 |
シリコン太陽電池では設置できなかった場所への展開が可能。軽量・柔軟性により工場屋根・ビル壁面・曲面への設置が実現する。日本はペロブスカイト太陽電池分野で世界トップクラスの技術力を有しており、量産競争を制することで国際市場の獲得を目指す。
誰でも応募できるんですか?かなり絞られそうですけど。
企業と大学・研究機関が対象で、単独または複数でのコンソーシアム提案が可能です。ただ、かなり厳しい条件がありまして。
まず「太陽電池メーカー企業」として幹事になるには3つの条件を満たす必要があります。一つ目はペロブスカイト太陽電池の実用サイズモジュール(30cm角以上)の軽量モジュール製造技術および製造実績を有すること。二つ目は実証に供するモジュールを供給できる製造設備またはその投資計画を有すること。三つ目は2030年度に年間製造能力100MW以上の事業化構想・投資構想・知的財産管理についてスケジュールを含めた方針を示すこと、です。
つまり、もうある程度技術を持っている企業じゃないと幹事になれないってことですね。
そうです。そして、太陽電池メーカー企業だけの提案はNGで、ユーザー企業等との連携提案が必須です。BIPVにおける建材企業やゼネコンなどと組む必要があります。さらに、代表取締役クラスが長期的な経営課題としてカーボンニュートラルへのコミットメントを明示した「事業戦略ビジョン」の提出も求められます。
代表取締役のコミットメントまで!本気度を問われているんですね。
それだけ国として「本気で産業を育てる」という意思の表れだと思います。ここ数年でシリコン太陽電池分野では量産競争に遅れをとって国際競争力を失った苦い経験がありますから、今度こそ早い段階から官民でしっかり仕込む、という強い意志を感じますよ。
国立研究開発法人から民間企業への委託または共同研究(資金の流れがあるもの)は、原則認められていない。大学・研究機関が参加する場合は企業の支出が過半を占める必要がある点にも注意。
ペロブスカイト太陽電池事業の申請フロー図
実際に申請したい場合、どのように進めればいいんですか?
まず最初に必ずGビズIDを取得してください。この申請はJグランツという電子申請システムを使うのですが、GビズIDのプライムアカウントまたはメンバーアカウントがないと申請できません。取得には2週間以上かかる場合があるので、すぐに動かないと締切に間に合わなくなります。
2026年6月3日が締切ですもんね。今すぐ動かないとまずい。
そうです!公募開始が2026年5月1日で締切が2026年6月3日正午なので、実質1ヶ月ちょっとしかありません。さらに、2026年5月13日(水)に公募説明会(オンライン)があります。参加は必須ではありませんが、強く推奨されています。参加申込の締切は2026年5月11日(月)17時までです。
主な提出書類だけでも10種類以上あります。事業戦略ビジョン、積算用総括表、主任研究者研究経歴書、提案者情報、GXリーグへの加入状況、発電コスト試算シート、実用化事業目標達成の検証、実証事業目標の設定、実証案件概要リスト、開発内容ごとの予算の年度推移——これらをPDFやZIPにまとめて提出します。
これだけ書類があると、どこに力を入れたら良いかわからなくなりそうです。
審査で特に重視されるポイントを絞ると3つですね。まず発電コスト試算シート(別添6)です。2030年度に発電コスト14円/kWhを達成するという目標に向けて、システム価格・変換効率・耐久性などの諸元を具体的に示す必要があります。第三者認証機関による検証も求められます。
そうです。次に実証案件概要リスト(別添9)。公共施設・インフラ空間への設置実証と海外実証の具体的な計画を示す必要があります。どこに、何枚、どのように設置するのか——実証の効果まで明確にしなければいけません。そして事業戦略ビジョン(別添1)。これは全ての実施主体者がそれぞれ作成する必要があり、代表取締役レベルのコミットメントが求められます。2030年度の年間製造能力100MW以上の事業化構想まで具体的に記載します。
- 発電コスト試算: 2030年度14円/kWh達成の具体的根拠を定量的に示す(第三者認証機関による変換効率検証が必須)
- 実証計画の具体性: 公共施設での国内実証 + 欧米・豪・東南アジアでの海外実証、両方の具体案件を提示
- 経営者コミットメント: 代表取締役による長期経営課題としてのカーボンニュートラル実現へのコミットメントを明示する
書類の中に「GXリーグへの加入状況」というのがあるんですけど、これって必須なんですか?
必須提出書類ではあるんですが、GXリーグ加入自体が採択条件というわけではないです。GX実行会議の方針として、GX経済移行債による支援(この基金もその財源を使っています)を受ける企業には、GXリーグへの参画等、GXに関する相応のコミットメントを求めるという趣旨で、書類として提出が求められています。
つまり「GX推進に本気ですよ」というアピール書類として出すんですね。
そういう理解で合っています。GXリーグに加入していなくても、温室効果ガス排出削減のための取組状況を代わりに示せばOKです。この点は過度に心配しなくて大丈夫ですよ。
ここまで聞いてきて、これは本当に大規模な研究開発プロジェクトへの参入チャンスですね。最後に基本情報と問い合わせ先を教えてください。
もちろんです。疑問点はNEDOの担当者に直接聞くのが一番確実です。Jグランツでの申請に技術的な問題が発生した場合も、必ず締切前にNEDO担当者に連絡することが大事です。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 公募期間 | 2026年5月1日~2026年6月3日正午 |
| 申請方法 | Jグランツによる電子申請のみ(持参・郵送・メール不可) |
| 説明会 | 2026年5月13日(水)オンライン(申込〆切: 5月11日17時) |
| 対象分野 | 太陽光発電(ペロブスカイト太陽電池) |
| 対象者 | 企業(団体等を含む)、大学等 |
| 実施機関 | 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) |
| 公式ページ | NEDO公募ページ |
| Jグランツ申請ページ | 申請URL |
- 部署: 再生可能エネルギー部 太陽光発電ユニット
- 担当者: 松原、山本、鈴木、宮川、大西
- E-mail: nedo-pvpj[アットマーク]ml.nedo.go.jp([*]を@に置き換えて使用)
この補助金と関連する他の補助金や、似たような制度ってありますか?
そうです。GビズIDさえ持っていれば、どのNEDO補助金もJグランツで申請できます。グリーンイノベーション基金全体ではNEDOが「グリーンイノベーション基金事業特設サイト」(green-innovation.nedo.go.jp)で情報をまとめて公開しているので、他のプロジェクトも興味があればチェックしてみてください。
地域ごとの補助金や中小企業向けの支援だと、
東京都の補助金や
神奈川県の補助金なども参考になりそうですね。こういった大型プロジェクトへの参入に向けて準備している企業が地方の補助金と組み合わせるケースもありますか?
ありますよ!ペロブスカイト太陽電池の研究開発では、まず都道府県や市区町村レベルの試験研究補助金を活用して要素技術を固め、それからこういった国家的な大型プロジェクトに応募するというステップを踏む企業も多いですね。
今回の公募に間に合わなかった場合は次の3点を今から準備しておきたい。まずGビズIDプライムアカウントの取得(取得に2週間以上かかる)。次に発電コスト14円/kWhに向けた技術ロードマップの整理(定量的な根拠が審査で最重視される)。そしてユーザー企業(建材メーカー・ゼネコン等)とのアライアンス交渉開始(単独提案はNGのため)。
最後に、申請を検討する人がよく持つ疑問を教えてもらえますか?
よく聞かれるのは「大学が代表として提案できますか?」という質問です。答えはNOで、プロジェクトの主たる実施者は企業等の収益事業の担い手であることが求められ、企業等の支出が過半を占める必要があります。大学が参加するとしても、あくまで企業が幹事となる必要があります。
「審査基準が不透明で怖い」という声ですね。NEDOはQ&Aを公式に公開していますので(公募要領のダウンロードページから「本公募に関するQ&A」が入手できます)、まずそれを読んでから応募判断するのをおすすめします。あとは公募説明会(2026年5月13日)に参加して、疑問を直接NEDOの担当者にぶつけるのが一番です。
確かに、せっかく説明会があるなら使わない手はないですよね。今日の話でこの補助金の全体像がよくわかりました!ペロブスカイト太陽電池の開発企業や関連する建材・ゼネコン各社には、ぜひ検討してほしい制度ですね。
623億円規模、最長5年という超大型プロジェクトです。日本のエネルギー産業の将来を左右するかもしれない事業なので、ぜひ積極的に挑戦してほしいですね!