室谷さん、今日はなんかすごい名前の補助金が出てきましたね。「スタートアップ等を活用した農林水産分野の課題解決事業補助金」。もうね、タイトルだけで息継ぎが必要ですよ(笑)。
確かに長い!(笑) でも中身はめちゃくちゃ面白いんです。東京都が今年度から新しく始めた事業で、東京の農林水産業が抱える課題を、スタートアップや中小企業の技術で解決しようっていう補助金です。
え、東京都の事業なのに、対象地域が「全国」って書いてあったんですけど、それってどういうことですか?
いいところに気づきましたね。確かに実施主体は東京都なんですが、応募自体は全国のスタートアップや中小企業が可能です。もちろん東京の農林水産分野の課題を解決するための技術開発が条件なので、実証実験のフィールドは東京になると思いますけど、会社の所在地は問われないんです。
なるほど! じゃあ例えば大阪のIT企業が「東京の農業用水の問題をIoTで解決します」って応募できるってことですね。
その通り! 実際に採択されると、お金の補助だけでなく、運営事務局によるメンタリングやハンズオン支援もついてくるんです。詳しく見ていきましょう。
この補助金の3つの特徴補助率2/3、上限年6,666万円
補助対象経費の3分の2、年間上限6,666万円(経費上限1億円)
運営事務局の手厚い支援
メンタリング・実証の場の提供・成果報告会あり
開発から実用化まで
製品を販売できる状態にするまでの経費が対象
でもなんで突然、農林水産業なんですか? 東京都って都会のイメージが強いんですけど。
実は東京にも農業や林業、漁業はあるんですよ。ただ、担い手不足とか生産性の課題が深刻で。そこで、従来の農林水産業の発想じゃなくて、スタートアップの持つ革新的な技術や発想力を活用しようと。
なるほどー。ITとかロボットとか、そういう分野の会社が農林水産業に入っていくってわけですね。
はい。だから対象業種にも情報通信業や学術研究、専門・技術サービス業が入ってるんです。製造業や電気・ガス・熱供給・水道業もOK。もちろん農業、林業、漁業の方も対象です。
一番気になるお金の話ですよ! どれくらいもらえるんですか?
これが結構太いんです。補助率は補助対象経費の 3分の2 で、 年間の補助対象経費の上限が1億円 、つまり補助額として年間最大 6,666万円 まで出ます。
えっ、6,666万円!? それ、毎年もらえるんですか?
補助対象期間は交付決定日から令和10年3月31日まで、つまり最大で複数年度にわたる可能性はありますが、あくまで1年あたりの上限です。詳細な期間は採択後の計画によりますね。
でも年間6,666万円って、スタートアップにとってはめちゃくちゃ大きいですよね。
そうですね。しかも補助率3分の2なので、自己負担は3分の1で済む。例えば総事業費1,500万円かけても、補助金で1,000万円出れば自己負担は500万円ですから。
| 総事業費(補助対象経費) | 補助額(2/3) | 自己負担額(1/3) |
|---|
| 300万円 | 200万円 | 100万円 |
| 1,500万円 | 1,000万円 | 500万円 |
| 1億円 | 6,666万円 | 3,334万円 |
ただし、上記の1億円が年間の補助対象経費の上限です。それを超える部分は補助対象外になるので注意してください。
上限ギリギリまで使うなら、1億円分の開発を計画しないといけないんですね。
そういうことです。ただ、必ずしも上限まで使わなきゃいけないわけじゃない。事業の規模に合わせて申請すればOKです。
対象者は「スタートアップ、中小企業」とありますが、具体的にどの範囲ですか?
jGrantsの概要では、業種として漁業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、農業、林業、学術研究・専門・技術サービス業が挙げられています。従業員数の制限は特にありません。
え、従業員数制限なし? 大きい会社でもいけるんですか?
よくある補助金だと「中小企業基本法」の定義に合わせて従業員数や資本金で線引きされるんですが、この補助金は明示的に制約がないんです。ただし「スタートアップ等」という趣旨から、大手企業ではなく革新的な技術を持つベンチャーや中小企業が想定されているとは思います。
できます。業種に「農業、林業」「漁業」が入っていますし、個人事業主であっても、スタートアップや中小企業に該当すればOKです。ただし、法人格がないと補助金の受領や手続きで面倒なこともあるので、事業計画をしっかり立ててください。
どんな費用に使えるんですか? 開発費って漠然としてますよね。
ここは重要です。公募要領に基づくと、主に次のような経費が対象になります。
対象になる経費・ならない経費のイメージ- 原材料・副資材費
- 機械装置・工具器具費
- 委託費(外部への開発委託)
- 産業財産権の出願・導入費
- 直接人件費(開発に関わる社員の人件費)
- 旅費交通費
- 展示会出展費
×デメリット
- 土地の購入費
- 建物の建設費
- 販売促進費(通常の広告費など)
- 食費や交際費
- 事務所の家賃や光熱費(間接経費)
- 補助事業と直接関係ない経費
直接人件費が入ってるのはありがたいですね。スタートアップにとって一番のコストって人件費ですから。
そうなんです。しかも「販売できる状態にするまで」の経費が対象なので、試作品の改良とか、量産前の最終調整にも使える。この辺りの柔軟さがスタートアップ向けって感じがしますね。
良い質問です。自社にない技術や設備を外部に委託する場合ですね。例えば、農業用ドローンを開発するのに、飛行制御ソフトの部分を専門のベンチャーに委託するとか。あとは産業財産権の出願・導入費も対象なので、特許を取得する費用も補助対象になり得ます。
特許費用まで出るのは大きい! でも「展示会出展費」ってあるけど、開発補助金なのに展示会に出る必要あるんですか?
実はこの補助金、単に開発するだけじゃなくて、実用化して販売するところまでをゴールにしているんです。だから成果を発表する展示会も開発プロセスの一部と見なせる。特に東京の農林水産業の課題を解決する製品なので、実際に農家さんや漁師さんとマッチングする場として展示会は重要ですね。
まず、汎用的な事務所の家賃や光熱費は対象外です。開発に直接使う実験設備のリース料などは対象になるケースもありますが、注意が必要。また、土地や建物の購入は当然対象外。開発そのものと関係ない経費は自己負担になります。
あ、後で「こんなはずじゃなかった」とならないように、申請前に公募要領をしっかり確認しておかないとですね。
そう! 特に「直接人件費」は、開発に従事した時間をきっちり記録する必要があります。タイムシートとかを残しておかないと、後で否認される可能性もある。
はい。まず大前提として、申請はJグランツ(電子申請システム)で行います。そのためにGビズIDというアカウントが必要です。これがないと始まらないので、まずはそこから。
補助金申請の流れ- 1
GビズIDを取得
事前にアカウントを発行。2週間程度かかることも
- 2
- 3
オンライン説明会に参加
7月21日(火)15時から。必須ではないが推奨
- 4
- 5
Jグランツで申請
期間内(7/14~8/20)に送信
- 6
- 7
- 8
GビズIDってよく聞くけど、実際どうやって取得するんですか?
基本的にはオンラインで申請できます。ただ、法人の場合は登記情報と突合するのに時間がかかって、取得までに2週間ほど見ておいたほうが安全です。個人事業主でも取得できますが、やはり手続きに数日かかります。
だから募集開始直前になって慌てるんじゃなくて、今から準備しておけと。
そう! この補助金の募集期間は令和8年7月14日(火)から8月20日(木)まで。意外と短いです。しかも一次審査は8月下旬なので、書類作成に十分な時間を確保したい。
申請書類って具体的にどんなものを提出するんですか?
Jグランツのページから申請様式(Excel)をダウンロードして、そこに事業計画や収支計画を記入します。特に重要なのは、東京の農林水産業の課題をどう解決するかというストーリー。単なる技術開発の提案じゃダメで、ちゃんと現場の課題と紐付いている必要があります。
はい、東京都のプレスリリースに「別紙(PDF:532KB)」として課題が公開されています。応募前に必ず確認しましょう。この課題に合致しているかどうかが審査のポイントになります。
審査ってどんな基準で行われるんですか? どうすれば採択確率が上がるか教えてください。
一次審査は書類審査、二次審査はプレゼンテーション、そして総合審査会で最終決定という3段階です。ここからは、私が考える攻略法も少し交えますが、基本は公募要領に書かれている「審査基準」に沿って対策するのが鉄則です。
二次審査はプレゼンなんですね。パワポで説明する感じですか?
おそらくそうでしょう。ここで大事なのは、聞き手が農林水産分野の専門家だけじゃないかもしれないということ。運営事務局や有識者も入るので、専門用語ばかり並べず、誰にでもわかる説明が必要です。
なるほど。技術のすごさだけじゃなくて、現場の課題にどうマッチするかを伝えろと。
その通り。成果報告会も予定されているので、プレゼン力そのものが採択後の評価にもつながるかもしれませんよ。
交付決定が9月下旬で、補助対象期間は交付決定日から令和10年3月31日まで。結構長いですね。
約1年半以上の期間があります。ただし、補助金は後払いです。事業が完了した後に実績報告して、検査を受けてからお金が振り込まれます。だから、最初のうちは自己資金で回す必要がある。
そこがスタートアップにとっては痛いところですね…。
そうなんです。でも、補助率が3分の2と高いので、自己負担が少ない分、まだマシとも言える。資金計画はしっかり立ててください。
全体スケジュール2026年7月14日~8月20日
申請受付
Jグランツで電子申請
2026年8月下旬
一次審査(書類)
書類選考。通過者のみ連絡
2026年9月上旬
二次審査(プレゼン)
プレゼンテーション審査
2026年9月中旬
総合審査会
最終決定
2026年9月下旬
交付決定
補助金交付決定通知
交付決定日~令和10年3月31日
事業実施期間
開発・実用化の期間
事業完了後
実績報告→検査→支払い
補助金は後払い
ここまで聞いて、だいぶイメージがつかめました。最後に、よくある質問と問い合わせ先を教えてください。
まず、一番多いのは「採択されなかった場合、また翌年再応募できるのか」というもの。
この事業自体が「新規事業」と東京都のプレスリリースにあるので、今年度限りかどうかは未定です。ただ、補助対象期間が令和10年までと長いので、複数年度事業として継続する可能性もあります。再応募については運営事務局に問い合わせてください。
原則として、同一の経費に対して複数の公的補助金を受けることはできません。ただし、別の開発テーマであれば併用可能なケースもあります。併用予定があるなら必ず事前に確認を。
最後に、「運営事務局の支援って具体的にどんなことをしてくれるの?」という疑問。
運営事務局は一般社団法人アグベンチャーラボが担当します。メンタリングでは、技術開発の方向性についてアドバイスをもらえたり、実証実験のフィールドを紹介してもらえたりする。さらに、開発した製品・サービスの実装や普及促進に向けたハンズオン支援も提供される。これはかなり心強いですね。
相談先としては、事業全般は東京都産業労働局農林水産部調整課(03-5320-4813)、補助金申請に関することは運営事務局(050-1802-1862)ですね。
その通りです。オンライン説明会も7月21日(火)15時からあるので、ぜひ参加してみてください。
室谷さん、ありがとうございました! これでこの補助金の全体像がつかめました。
いえいえ。スタートアップの皆さんが東京の農林水産業を変えるチャンスです。ぜひ積極的に応募してみてください!
面白そうな補助金だし、これから農業×ITに挑戦したい人には特に良さそうですね! それでは最後にもう一度、基本情報をおさらいしましょう。