室谷さん、今日は「廃業・再チャレンジ枠」っていう、ちょっと勇ましい名前の補助金について教えてください!そもそも、なんでこんな枠ができたんですか?
いい質問ですね、佐藤さん。ズバリ、M&A(事業の譲り渡し)に挑戦したけど、残念ながら成約に至らなかった中小企業の皆さんに、セカンドチャンスを提供するためです!
ああ、M&Aってうまくいかないことも多いんですよね。でも、そうなると事業はどうするんだ…ってなる。
そうです。そこで「廃業して、新たな事業に再チャレンジする」という選択肢を、国が費用面で後押ししてくれる。それがこの枠の肝なんです。
なるほどー。「生産性革命」って名前もついてますけど、ただ潰すんじゃなくて、次の挑戦につなげたいってことですね!
その通り!中小企業生産性革命推進事業全体の目的は、事業承継やM&Aを促進して日本経済を活性化すること。この枠はその一環として、廃業という決断をした事業者が、新たな一歩を踏み出すのを支えるんです。
でも、この補助金にもちゃんと応募資格があるんですよね?特にこの枠ならではの条件って何ですか?
一番の特徴は、2020年以降にM&A(事業の譲り渡し)に着手したけど、成約に至らなかったこと。これが大前提です。
へえ!じゃあ、M&Aを考えもしなかった人が「よし、思い切って廃業しよう!」って応募してもダメなんですね。
残念ながらダメです。しかも、単に「考えた」じゃダメで、実際に行動に移している証拠が必要です。例えば、事業承継・引継ぎ支援センターに相談した、M&A仲介会社と契約した、マッチングサイトに登録した――こういった客観的な事実が求められます。
厳しいですね…でも、ちゃんと道を模索した人への救済措置ってわけか。
そういう理解で合ってます。そしてもう一つ大事なのが、廃業後に再チャレンジする事業計画を作成し、認定支援機関の確認をもらうこと。ただやめるだけじゃなくて、「次はこうするんだ!」という青写真が必要なんです。
ここが一番気になるところです!お金の話、詳しく教えてください!
はい!補助額は上限300万円で、補助率は2/3以内です。つまり、かかった費用の3分の2まで国が面倒見てくれる、という計算ですね。
えっ、300万円!結構大きいですね!廃業費用っていうと、片付けや解体とか色々かかりそうですもんね。
おっしゃる通りです。この補助金は、廃業に伴う様々な経費を対象にしています。ただし、注意点があります。
実はこの「廃業・再チャレンジ枠」、単独で使うこともできますが、事業承継促進枠や専門家活用枠、PMI推進枠と併用して申請することも可能なんです。
え?併用できるんですか?じゃあ、たっぷりもらえそうですね!
ところが、そう単純じゃないんです。併用する場合は、この枠の補助上限が変わります。基本的には上限300万円ですが、併用する場合のルールが複雑でして。公募要領では「併用申請の場合150万円、300万円」と書かれていて、組み合わせによって上限が異なるんです。
詳しくは公募要領を確認していただくのが確実ですが、例えば事業承継促進枠と併用する場合は、この廃業・再チャレンジ枠の上限が150万円になるケースがあるんです。
マジですか!単独で使うより半額になっちゃう!それは注意しないとですね。
はい。だから「とりあえず併用すればお得」というわけではありません。ご自身の事業計画に合わせて、最適な組み合わせを検討する必要があります。
では次に、誰がこの補助金をもらえるのか、具体的な条件を教えてください。
まず大前提として、中小企業基本法で定義された中小企業者等であること。業種ごとに資本金と従業員数の基準が決まっています。
えーと、製造業は資本金3億円以下か従業員300人以下、みたいなやつですね。
その通りです!他の業種も細かく決まっています。卸売業は資本金1億円以下か従業員100人以下、小売業は資本金5千万円以下か従業員50人以下、サービス業は資本金5千万円以下か従業員100人以下です。
個人事業主も対象です!ただし、青色申告者であることが条件です。確定申告書Bと青色申告決算書が必要になります。
さっきも少し出ましたけど、この枠だけの特別な条件をもう一度しっかり聞きたいです。
1つ目は、M&Aに着手したけど成約しなかったこと。具体的には、事業承継・引継ぎ支援センターへの相談、M&A仲介会社との契約、マッチングサイトへの登録のいずれかですね。
そうです。そして、申請時点で着手から3ヶ月以上経過している必要があります。
なるほど。じゃあ、先月相談したばかりだとダメってことか。
そうなりますね。そして2つ目が、再チャレンジの事業計画を作って、認定支援機関の確認をもらうこと。
商工会議所や商工会、よろず支援拠点、金融機関、税理士・会計士などです。身近なところで相談できるといいですね。
対象になる人・ならない人のイメージ- M&Aにチャレンジしたが不成立だった
- 廃業後に再チャレンジする計画がある
- 中小企業の規模要件を満たしている
×デメリット
- M&Aを全く考えたことがない
- 廃業後の計画が漠然としている
- 大企業や資本金が大きすぎる会社
補助金で一番気になるのは、「何に使えるか」ですよね。廃業って言っても、いろいろお金がかかりそうですけど。
そうですね。主な対象経費として、廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、土壌汚染調査費などが挙げられます。
例えば、廃業に関する手続きを専門家に依頼する費用や、従業員への説明や退職手続きにかかるコンサルティング費用などです。M&Aが不成立になった後の、きれいな事業のたたみ方のノウハウが必要ですからね。
なるほど。解体費は、工場や倉庫を壊す費用ってことですよね?
その通りです。工場を閉鎖するときに、設備を撤去して建物を解体する。そういう物理的な作業にかかる費用が対象になります。在庫廃棄費は、売れ残った商品や原材料を処分する費用ですね。
一見使えそうだけど、実はダメってものもありますか?
あります。例えば、通常の事業活動に伴う経費や、補助事業と直接関係ない費用は対象外です。あと、補助金の申請自体にかかる費用も对象外です。
補助金申請のための書類作成代行とか、行政書士さんに頼む費用はどうなんですか?
そこは注意が必要です。補助金の申請を有償で第三者に依頼する場合、依頼できるのは行政書士または行政書士法人だけです。しかも、行政書士証憑と委任契約書の提出が必須になります。
へえ、そんな制限があるんですね。普通のコンサル会社には頼めないってことか。
そういうことです。公募要領をしっかり読んで、ルールを守って申請してくださいね。
実際にどうやって申請するのか、流れを教えてください。締切にも間に合わなきゃいけないし、準備が大変そうで…。
大丈夫です、ポイントを押さえれば怖くありません。今回は15次公募で、募集期間は2026年6月19日から7月24日までです。
まず最初にやるべきこと。それは「GビズIDプライムアカウント」の取得です。この補助金の申請は、すべて電子申請システム「Jグランツ」で行います。
ああ、よく聞くGビズIDですね。でも、これって取得に時間かかるって聞いたことあります!
そうなんです。すぐに発行されるわけではないので、申請を考えているなら今すぐ動き始めたほうがいいです。
なるほど。じゃあ、GビズIDを取ったら次は何をすればいいですか?
次に、公募要領をダウンロードして隅々まで読むこと。そして、必要な書類を準備します。例えば、認定支援機関の確認を受けた事業計画書や、M&Aに着手した証拠書類などです。
ここからが本当に重要です。事務局が推奨しているのが、申請期日の5営業日前、つまり2026年7月16日までに申請を完了させることです。
え?締切は7月24日ですよね?なんでそんなに早いんですか?
理由は、過去の公募で申請が締切直前に集中したからです。期日ギリギリに提出すると、もし書類に不備があっても、事務局から指摘を受けて修正する時間的余裕がありません。
なるほど。不備が解消できないと、不採択になっちゃう可能性があると。
その通りです。採択の可能性を高めるためにも、余裕を持って提出しましょう。
廃業・再チャレンジ枠 申請の流れ- 1
GビズIDプライムを取得
法人の代表者アカウントが必要
- 2
- 3
廃業・再チャレンジ計画を作成
認定支援機関の確認を受ける
- 4
- 5
せっかく申請するなら、ちゃんと通したいですよね。審査で見られるポイントを教えてください!
まず、基本的な要件を満たしているかが第一関門です。中小企業の規模要件、M&Aに着手した事実、再チャレンジ計画の有無などですね。
それはクリアして当然として、その先の加点要素とかはあるんですか?
審査では、地域経済への貢献も重要なポイントになります。例えば、地域の雇用を維持・創出しているか、地元の取引先から仕入れをしているか、地域の特産品や技術を活用しているかなどです。
なるほど。ただ廃業するだけじゃなくて、地域に対する思いも大事ってことですね。
そうです。補助金の目的の一つが「地域経済の活性化」ですからね。廃業した後に、新しい事業で地域にどう貢献するのか、そのストーリーが求められます。
もう一つ注意点があって、過去18ヶ月間に中小企業庁が所管する他の補助金を申請した場合、その内容について賃上げの要件などが未達成だと、大幅に減点される可能性があります。
はい。ものづくり補助金やIT導入補助金、持続化補助金など、多くの補助金が該当します。過去に受給した補助金で約束した賃上げを実行していないと、今回の申請に響く恐れがあります。
それは結構シビアですね。申請する前に、過去の実績を全部洗い出したほうが良さそうです。
先ほど、他の枠と併用できるって話がありましたけど、具体的にどういう戦略が考えられますか?
そうですね。この「廃業・再チャレンジ枠」は、M&Aが不成立になった事業者向けですが、実は事業承継促進枠などと同時に申請することが可能です。
でも、廃業する人がなんで他の枠と併用するんですか?M&Aが不成立になったんですよね?
そこがミソなんです。例えば、事業の一部だけなら売却できそうだとか、別の形で事業承継の可能性が残っている場合です。
ああ、なるほど。全部ダメだったわけじゃなくて、部分的に活路が見えるケースもあると。
そうです。廃業・再チャレンジで新しい事業を始めつつ、既存事業の一部を専門家活用枠で売却する準備を進める。そんな2足のわらじが可能なんです。
いや、そこが落とし穴です。先ほども言いましたが、併用する場合、廃業・再チャレンジ枠の補助上限は150万円に下がるケースがあります。
えー!単独で300万円もらえるのに、併用すると半分になっちゃうんですか!
はい。ただし、事業承継促進枠やPMI推進枠では、別途それぞれ上限がありますから、トータルでもらえる額が減るわけではありません。
なるほど。じゃあ、どっちが得かは、自分の事業計画と相談ってことですね。単独で廃業だけに集中するか、両方やるか。
その通りです。単純に「併用すればお得」ではなく、自分の状況に合わせた戦略が必要です。
ここまでいろいろ聞いてきましたが、実際に申請する人がつまずきやすいポイントを教えてください。
まず、圧倒的に多いのが「書類の不備」です。特に、M&Aに着手した証拠書類が不十分なケースが多いですね。
着手の証拠って、例えばどういうものが必要なんですか?
事業承継・引継ぎ支援センターへの相談記録、M&A仲介会社との契約書、マッチングサイトの登録画面のスクリーンショットなどです。
なるほど。口約束だけじゃダメで、ちゃんと書類に残っている必要があると。
そうです。そして、もう一つ多いのが「申請者自身でM&Aに着手した場合」です。これは対象外なので注意してください。
あと、この枠の特徴として、申請者がちょっと特殊なんです。
廃業する会社(対象会社)と、その会社の過半数の議決権を持つ株主(支配株主)が、共同で申請する必要があるんです。個人事業主の場合は、本人が単独で申請します。
え?株主と会社が一緒に申請するんですか?めんどくさそう…。
そうなんです。だから、事前に株主や会社の代表者としっかり話し合って、合意を得ておくことが大事です。
最後に、この補助金はどんな人に特におすすめですか?
ズバリ、M&Aに真剣に取り組んだけど、残念ながら成約に至らなかった中小企業の経営者です。
例えば、後継者が見つからず、事業承継・引継ぎ支援センターに相談したけど、マッチングしなかった。M&A仲介会社と契約したけど、買い手が見つからなかった――そんなケースです。
なるほど。一旦事業を畳んで、自分の経験やスキルを生かした新しい事業にチャレンジしたいという人には、心強い味方ですね。
そうです。ただし、補助金はあくまで「費用の一部をサポートするもの」です。廃業後の計画が具体的で、実現可能性が高いことが大前提です。
室谷さん、今日は本当に詳しく教えていただいてありがとうございました!申請を考えている方の参考になると思います!
どういたしまして!この補助金は、一度はM&Aに挑戦したけど叶わなかった事業者への、貴重なセカンドチャンスです。ぜひ、しっかり準備して、有効に活用してくださいね。
皆さんも、諦めずにチャレンジしてみてください!それではまた次回お会いしましょう!