室谷さん、今回のテーマは「排出削減が困難な産業におけるエネルギー・製造プロセス転換支援事業」ですよね。名前がすごく長いんですが(笑)。そもそも、なぜこんな制度ができたんでしょう?
そうですね。カーボンニュートラル、いわゆるCNに向けた動きが加速してるじゃないですか。でも、化学や紙パルプ、セメントといった産業は、どうしてもCO2を出さざるを得ない工程があるんです。そういう「排出削減が困難な産業」を支援するために、この補助金が作られました。
なるほど。つまり、普通の製造業向けとは違う特別枠ってことですか?
その通りです。鉄鋼や化学など、そもそも製造プロセスで大量のCO2が出る業種向けに、燃料転換や製造プロセス転換の設備投資を後押しする。これが目的です。
具体的にどんな業種が「困難」とされているんですか?
公式の案内では「化学、紙パルプ、セメント等」と書かれています。あと鉄鋼も含まれますね。要は、今の技術ではCO2排出をゼロにするのが極めて難しい分野です。
えっ、セメントってそんなにCO2出すんですか?コンクリートのイメージしかなかった(笑)。
セメントの製造過程で石灰石を加熱する時に大量のCO2が出るんです。昔から課題になっていて、この補助金はまさにその解決策の一つです。
「転換」って言葉がたくさん出てきますね。なぜ単なる省エネじゃダメなんですか?
省エネだけでは削減量が足りないからです。例えば、工場の自家発電設備を石炭から天然ガスに切り替えるとか、製造ラインそのものを電化するとか、抜本的な転換が必要なんです。
そこに国がお金を出す。なるほど、産業競争力強化も狙いだと書いてありましたね。
そうです。「脱炭素 = コスト増」になりがちですが、ここに出遅れると国際競争で負けてしまう。だから先行投資を支援するという位置づけです。
では、中身に入っていきましょう。この制度には「事業区分」が3つあるそうですね。教えてください!
はい。**「燃料転換」「製造プロセス転換」「構造転換」**の3つです。これによって補助率も変わってきます。
そうなんです。詳しくは後ほど補助率のところでお伝えしますが、それぞれの定義を押さえておきましょう。
まず「燃料転換」から。具体的にどういうことですか?
工場の自家発電設備やボイラーで使う燃料を、CO2排出の少ないものに切り替えることです。例えば、石炭から天然ガスへ、あるいは水素やアンモニアへの転換も想定されています。
あー、発電所の話ですね。工場で使う電気を自前で作ってるんですね。
多くの工場では、自家発電設備を持っていて、そこで石炭や重油を燃やしてるんです。その燃料を変えることで、大幅なCO2削減が期待できます。
製造の工程そのものを変えることです。例えば、鉄鋼業で高炉から電炉に切り替えるとか、化学プラントで原料を変えるなど、根本的なプロセス変更を指します。
かなり大掛かりな設備投資になりそうですね。補助金の対象になる経費も大きくなりそうです。
そうですね。この区分は設計費、建物等取得費、設備費、システム整備費が対象経費に含まれます。後で詳しく出しますが、ここが肝になります。
3つ目の「構造転換」。これは燃料転換やプロセス転換とどう違うんですか?
構造転換は、さらに踏み込んで、事業そのものの構造を変えるイメージです。具体的な例は公募要領で確認する必要がありますが、おそらく工場の集約や工程の統廃合なども含まれると推測されます。
そうです。補助率は原則1/3以内ですが、構造転換の場合は1/2以内と優遇されています。これは意欲的な転換を促すための設計です。
3つの事業区分の特徴燃料転換
自家発電設備等の燃料を低炭素燃料に切り替え。補助率1/3以内。
製造プロセス転換
製造工程そのものを電化・原料転換。補助率1/3以内。
構造転換
事業構造ごと再編・集約。補助率1/2以内。
実は、補助上限額の記載がありません。公募要領でも「-」と書かれているんです。
ただし、補助率は決まっています。原則1/3以内。構造転換の場合は1/2以内です。つまり、投資額の3分の1までは国が出してくれる可能性がある。
じゃあ、例えば3億円の設備投資なら1億円もらえる可能性があるってこと?
あくまで「上限1/3」であって、必ず1/3もらえるわけではありません。審査で認められた経費に対して、その範囲内で補助金が決まります。公募要領で要確認ですが、ざっくりそういう計算になります。
原則1/3以内というのは、どの区分でも同じですか?
燃料転換と製造プロセス転換は1/3以内です。ただし、上の図でも出ましたが、構造転換は1/2以内。つまり、半分まで国が面倒を見てくれる可能性がある。
半分!それは大きい。構造転換にチャレンジする価値がありそうですね。
ただ、構造転換は要件が厳しそうなので、まずは公募要領をしっかり読む必要があります。交付規程も確認した方がいいでしょう。
大きく4つあります。設計費、建物等取得費、設備費、システム整備費です。設備投資の基本セットですね。
設計費も入るのは嬉しい。専門業者に依頼する費用も補助対象になるんですね。
ただし、「間接補助事業に必要な」という条件があります。対象になるかどうかは個別に判断が必要なので、迷ったら問合せ先に確認しましょう。
対象経費と対象外の注意点- 設計費、建物等取得費、設備費、システム整備費が対象
- 構造転換で補助率1/2と優遇
- 上限額設定なし(大規模投資も可能性あり)
×デメリット
- 補助率はあくまで上限1/3(構造以外)
- 後払い方式の可能性あり(実績報告後に支払い)
- 対象外経費もあるので公募要領要確認
ここからは申請資格の話です。まず、対象になるのはどんな事業者ですか?
日本国内に登記された法人で、国内に事業実施場所があること。個人事業主は?というと、今回の制度は法人のみが対象です。
特に「化学、紙パルプ、セメント等」が明示されていますが、それ以外の製造業でも、排出削減が困難な産業なら対象になる可能性はあります。公募要領で詳しく確認する必要があります。
ここが一番ハードル高いかもしれない。2030年度のScope1・Scope2排出削減目標の設定や、第三者検証による毎年の実績報告が必要だと。
そうなんです。さらに、2026年度以降のGXフューチャー・リーグに参加し、排出量実績を報告することも要件になっています。
カーボンニュートラルに向けた企業連合のようなものです。GX = グリーントランスフォーメーション。この制度では、GXリーグに参加していないと応募できない可能性があります。
結構ハードル高いですね…。うちの会社、まだGXリーグに入ってないんですけど。
まだ間に合うかもしれません。2026年度以降の参加が要件なので、今から準備を始めるべきです。執行団体に問い合わせるのが確実です。
うちだけでは事業が成立しない場合、複数社で申請できるって聞きました。
はい。共同申請が可能です。例えば、メーカーと設備会社が組んで一つのプロジェクトにするなど。ただし、代表となる事業者が決まっていて、それぞれが要件を満たす必要があります。
なるほど。共同なら資金面や技術面で補完し合えますね。
ただ、温室効果ガス削減目標の設定は各社で必要です。あと、事業計画書も共同で作成することになります。
では、実際の申請手順を教えてください。何から始めればいいですか?
まず大前提として、電子申請のみです。Jグランツというシステムを使います。郵送や持参は受け付けてもらえません。
えっ、全部オンラインなんですね。GビズIDとか必要ですか?
必要です。GビズIDプライムという認証が必要。これがないとJグランツにログインできません。事前に取得しておきましょう。
GビズIDプライムってどうやって取得するんですか?
オンラインで申請できます。ただし、書類審査があるので2週間〜1ヶ月程度見ておいた方がいい。申請期間は令和8年6月9日~8月7日正午まで。なので、遅くとも5月には取得手続きを始めることをおすすめします。
そうなんです。この準備を怠ると、せっかく計画があっても応募できません。まずはGビズIDプライムの取得。これが第一歩です。
公募要領に詳細が載っていますが、事業計画書や収支計画、温室効果ガス削減計画などが必要です。特に2030年度のScope1・2削減目標を示す資料は必須。
そうです。目標に達しなかった場合、クレジットを購入して補うことをコミットする必要があります。これは結構厳しい条件ですが、その分、本気の事業者だけが残るという設計です。
申請の流れ(全体像)- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
必要書類をアップロード
PDF、Excel等の形式確認
- 6
Jグランツでの申請って、実際どんな感じなんですか?
まず、公式サイトからログインして、補助金一覧からこの制度を選びます。申請様式はチェックシートとExcelファイルが用意されています。それをダウンロードして記入。
そうです。添付書類と一緒にアップロード。ただし、ファイルサイズに制限があるかもしれないので、事前に確認を。メールやFAXは不可なので、必ずシステム上で完了させてください。
審査では何が見られるんですか?やっぱりCO2削減効果ですか?
それはもちろん大きいですが、コミットメントの確実性も重視されます。2030年度の目標に対して、本当に達成できる計画かどうか。
補助金をもらった後に「やっぱり無理でした」じゃダメってことですね。
そうです。モニタリングが行われるので、進捗報告も必要。執行団体からチェックが入ります。計画の実現性が鍵です。
具体的に、どんなコミットメントが求められるんですか?
まず、GXリーグへの参加が前提です。そして、毎年の排出量実績を報告すること。目標未達の場合は、クレジット調達で補う計画を示す必要があります。
市場で取引できますが、価格変動リスクもあります。そのリスクをどう管理するかも計画書に書く必要があるでしょう。事業者自身の責任で調達するという姿勢が問われます。
補助対象経費は「設計費、建物等取得費、設備費、システム整備費」ですが、すべての設備投資が認められるわけではないです。例えば、単なる修繕費や維持費は対象外。
じゃあ、新規の設備導入じゃないとダメってことですか?
基本的には新たな事業を行うための投資が対象です。既存設備の更新だけだと認められない可能性もあります。公募要領の対象経費リストをしっかり確認しましょう。
もう一度確認しますが、募集期間は令和8年6月9日~8月7日正午。間違えやすいポイントは?
正午締切です。午後5時とかではありません。Jグランツのシステムが12:00に閉まるので、それまでにアップロード完了が必要。ギリギリにやると回線が混む可能性もあるので、前日までに提出が理想です。
採択結果の発表は、おそらく申請期間終了後、数ヶ月後になるでしょう。その後、交付決定を受けてから事業開始です。設備投資は交付決定日以降に行わなければ補助対象にならないので注意。
事前に発注しちゃダメってことですね。気をつけます。
そうです。遡及適用は原則ありません。計画通りに進めましょう。
公式情報では、
問合せ先として平日の受付時間が案内されています。具体的な電話番号やメールアドレスは、公募要領や参照URL(
https://hta2026.jp )に記載があるはずです。
まずはそちらを確認しましょう。
最後に、この補助金を活用すべき事業者をズバリ教えてください。
化学、紙パルプ、セメント、鉄鋼など、排出削減が特に難しい製造業で、本気でカーボンニュートラルに取り組む覚悟がある企業です。GXリーグに参加する意思があり、10年後の目標を明確に立てられる事業者には大きなチャンスです。
補助上限額の設定がないのも魅力的ですね。大規模投資を考えている会社は要チェックですね。
ただし、補助率は原則1/3であること、後払いの可能性を考慮して資金計画を立てる必要があります。また、申請期限が令和8年8月7日正午と迫っているので、準備は早めに始めてください。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 正式名称 | 令和8年度排出削減が困難な産業におけるエネルギー・製造プロセス転換支援事業 |
| 補助上限額 | 記載なし(公募要領で要確認) |
| 補助率 | 原則1/3以内(構造転換は1/2以内) |
| 対象業種 | 製造業(化学、紙パルプ、セメント等) |
| 対象地域 | 全国 |
| 募集期間 | 令和8年6月9日~8月7日正午 |
| 申請方法 | Jグランツ電子申請のみ(GビズIDプライム必要) |
| 問合せ | 平日受付(詳細は公募要領または https://hta2026.jp を確認) |