室谷さん、今回のテーマは「令和8年度 ZEB実証事業(二次公募)」ですよね。上限7億円って聞いてビビってるんですけど、そもそもZEBって何ですか?
ZEBは「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」の略。建物で使うエネルギーを省エネで減らしつつ、太陽光発電などで創って、年間の一次エネルギー消費量を実質ゼロ以下にする建築物のことです。この補助金、すごく特徴的で、新築は延べ面積1万㎡以上、既存は2,000㎡以上の大規模建築物が対象なんですよ(笑)
えっ、そんなにデカいビル限定なんですか?!中小企業には縁遠い感じがするけど、対象業種を見たらめちゃくちゃ広いんですよね。農業や漁業も入ってるし。
そう!業種の制約がほぼないんです。農業、林業、漁業、建設、製造、情報通信、サービス業、医療福祉…20業種がズラリ。要は、その規模の建物を建てたり改修したりする主体なら誰でもチャンスがあるってことです。
でもなぜそんなにデカい建物に絞ってるんですか?普通のオフィスビルじゃダメなんですか?
それがこの事業のミソ。ZEB設計ノウハウが確立されていないのが、まさにこの規模なんです。10,000㎡超の新築だと再エネ設備の導入や搬送動力の低減が難しく、既存は改修の制約とコスト増がネック。テナントビルは入居者入れ替わりで設備容量の適正化が困難。だからこそ、ここを重点的に実証して設計ノウハウを蓄積・公開しよう、というのが経済産業省の狙いなんです。
なるほど!つまり「まだ誰も成功事例を量産できていない分野に、思い切って補助金をドンとつけて実証データを集めよう」ってわけか。カッコいいっすね!
その通りです。さらにWEBPRO未評価技術という、まだ評価手法が確立されていない新しい省エネ技術を導入することも必須条件の一つ。ここで得られたデータは公開されて、業界全体の底上げにつながるんです。
じゃあ気になるお金の話。上限70,000万円、つまり7億円ってめちゃくちゃデカいですけど、補助率は何%なんですか?
実はですね、公募要領には「補助率」の明記がないんです。jGrantsの公式ページにも「補助率:記載なし」としか書いてない。だから「補助率は○○%です」とは言えません。あくまで補助上限額が7億円で、それ以内で実際にかかった経費の一部が補助される形です。詳細は必ず公募要領を確認してください。
ええっ!補助率が書いてないんですか!それは珍しいパターンですね。でも7億円って上限だけで言えば破格ですよ。どんな経費が対象になるんですか?
主な使途は3つ。研究開発・実証事業、設備整備・IT導入、エコ・SDGs活動支援。具体的には高性能建材や高性能設備機器、蓄電システム、BEMS(エネルギー計測システム)など。あと、WEBPRO未評価技術を導入するための費用も対象です。
じゃあ例えば、太陽光パネル+蓄電池+高効率空調+最新の照明制御システム、みたいなフルセットで導入すれば、7億円近くまでいけるかも?
可能性はあります。ただし補助対象にならない経費もあるので要注意。例えば、工事に伴う仮設費や設計費の一部、既存設備の撤去費用などは対象外になるケースが多いです。公募要領の「補助対象経費の計算方法」で細かく確認してください。
補助対象経費と対象外経費のイメージ- 高性能建材・高性能設備機器の導入費用
- WEBPRO未評価技術の導入費用
- BEMSなどのエネルギー計測システム
- 蓄電システム(一定の要件あり)
- 実証に必要な工事費・機器購入費
×デメリット
- 既存設備の撤去費用(原則対象外)
- 設計費のうち一部(公募要領で確認)
- 補助事業決定前の発注分
- 不動産取得税などの公租公課
- 汎用的な什器・備品(実証と無関係なもの)
あ、ここ大事ですよね。「掛かり増し費用」って言葉が公募要領に出てくるんですけど、どういう意味ですか?
いい質問です。この事業は「ZEB化に伴う掛かり増し費用」を補助する仕組み。つまり、普通の省エネ基準の建物を建てる場合と比べて、ZEB化のために余計にかかったお金を補助対象にするんです。例えば、普通のエアコンじゃなくて超高効率の空調を入れたときの差額、みたいなイメージ。
なるほど!だから補助率が一律じゃないんですね。事業ごとに「掛かり増し」が変わるから、上限7億円の範囲内で実績に応じて決まるってことか。
そうです。だから見積もりをきっちり取って、通常仕様との差額を明確に説明できるようにしておくのが申請のポイントです。
それじゃあ申請できる人は?「建築主等(所有者)」って書いてあるけど、個人でもいいんですか?
はい、個人事業主でも申請可能です。対象業種に該当すればOK。具体的な補助対象事業者は4タイプ。建築主等(所有者)、ESCO事業者、リース事業者、アグリゲーター等。ESCOってのは省エネ改修の成果で費用回収するビジネスモデルの事業者、アグリゲーターは電力の需給調整を担う事業者ですね。
個人事業主で例えば「農業、林業」で大規模な倉庫や加工施設を建てる場合も対象になるんですか?
なります。ただし新築は10,000㎡以上という規模要件を満たす必要があります。農家さんの倉庫だとそこまで大きくないケースが多いかもしれませんが、例えば大規模な物流倉庫や食品加工工場なら該当する可能性はあります。
なるほど。じゃあもう一つ聞いておきたいのが従業員数の条件。スタートアップでも大丈夫ですか?
従業員数の制約は一切ありません。jGrantsの公式情報にも「従業員数の制約なし」と明記されています。つまり、従業員が数人のベンチャー企業でも、大企業でも、同じ条件で応募できます。
それは嬉しい!最近は脱炭素に積極的なスタートアップも多いですからね。でも、そういう会社が10,000㎡以上のビルを建てるって現実的かな…。
そこは確かに壁がありますね。ただ、ESCO事業者やリース事業者が事業主体になるケースもあります。例えば、リース会社が設備を導入して建築主に貸し出す形なら、中小の建築主でも間接的にこの補助金を活用できる可能性があります。
ここからが核心ですね。公募区分はA・B・Cの3つ。まずAの「ZEB化事業」から行きましょう。
Aは「ZEB化事業」。新築または既存建築物のZEB化を行うとともに、WEBPRO未評価技術を導入して実証する事業です。新築は10,000㎡以上、既存の増築・改築・設備改修等は2,000㎡以上が要件。高性能建材や高性能設備機器を導入して、ZEBを目指します。
未評価技術の導入が必須ってのがポイントですね。新築でゼロエネを狙いつつ、まだ評価手法が確立されてない先端技術も組み込んでデータを取る。まさに「実証事業」の名前通りだ。
Bは「既存テナント事業」。これはテナントビル限定なんですか?
そうです。延べ面積の過半がテナント貸出対象である既存建築物が対象。中長期のZEB化改修計画を持っていることが条件で、その計画の一部として一次的な設備改修を行う事業です。
テナントビルってオーナーとテナントの利害が一致しにくくて、省エネ改修が進まないって聞きます。この制度はそこを突破するための一手ってわけか。
その通り。部分的な改修でもOKというのがミソ。全面的なZEB改修はハードルが高いけど、まずは空調だけ、照明だけ、といった形で着手できる。そしてその成果をデータで示すことで、中長期計画の次のステップにつなげる狙いです。
Cは「未評価技術単独事業」。これは未評価技術だけを導入するんですか?
はい。WEBPRO未評価技術のうち、除外されている3つを除いた20項目程度の中から1項目以上導入し、実証を行う事業です。除外されているのは「①CO2濃度による外気量制御」「⑥照明のゾーニング制御」「⑭超高効率変圧器」の3つ。
これらは既に一定の評価手法が確立されていたり、他の制度でカバーされている可能性があります。詳細は公募要領で確認してください。とにかくCはこれから普及させたい新しい技術の効果検証に特化した区分だと理解すればOKです。
3つの公募区分のポイントA ZEB化事業
新築10,000㎡以上・既存2,000㎡以上。ZEB化+未評価技術導入が必須。最もオーソドックスな区分。
B 既存テナント事業
テナントビル限定。部分改修可。中長期のZEB化改修計画があることが条件。
C 未評価技術単独事業
除外3技術を除くWEBPRO未評価技術を1項目以上導入。新築・既存どちらでも可。
では実際に申請するにはどうすればいいんですか?スケジュールも含めて教えてください。
公募期間は2026年7月24日(金)13:00から8月17日(月)17:00まで。実質25日間ほどしかありません(笑)。書類準備には時間がかかるので、公募開始前に公募要領をダウンロードして準備を始めるのが鉄則です。
ぎゃっ、短い!7月24日はもう金曜日の昼からスタートで、8月17日まで。盆休みも挟むから実際はもっと短く感じますね。
そうなんです。しかも申請はJグランツ(電子申請)のみ。GビズIDの取得が必要です。GビズIDは取得に2週間ほどかかることもあるので、遅くとも7月上旬までには手続きを始めてください。
ZEB実証事業 申請の流れ- 1
GビズIDを取得
法人はgBizIDプライムが必要。個人事業主はgBizIDメンバーで可。取得に2週間程度。
- 2
公募要領を熟読
環境共創イニシアチブ(SII)のサイトから最新版をDL。必須書類を確認。
- 3
交付申請書作成
事業計画書、見積書、建築図面、エネルギー計算書など。未評価技術の選定も必要。
- 4
Jグランツから申請
令和8年度ZEB実証事業(二次公募)を検索。必須項目を入力し、添付ファイルをアップロード。
- 5
審査・採択
書類審査後、必要に応じてヒアリング。採択結果はSIIから通知。
- 6
交付決定・事業開始
交付決定後に事業着手。事前発注は不可。補助事業の完了後に実績報告。
特に大事なのが、交付決定前に発注や工事を始めると補助対象外になるという点。ちゃんと決定通知が来てから契約してください。
あ、それよくある落とし穴ですよね。「もう準備しちゃえ」で発注すると後で取り返しがつかない。注意します。
この事業、単年度だけじゃなくて複数年度にも対応してるんですか?
はい。公募要領には単年度事業のほか、2年度事業、3年度事業のスケジュール例が載っています。大規模建築物のZEB化は工事期間が長くなるので、複数年度にわたって事業を実施できるよう設計されています。
それは助かる。7億円の大規模工事を1年でやるのは現実的じゃないですからね。2~3年かけてじっくりやれるのはいい。
じゃあ最後に、審査で何が重視されるのか教えてください。どうやって差をつけるんですか?
公募要領に審査基準の詳細は明記されていますが、おおまかに言うと以下の要素が評価されます。
まず先進技術の組み合わせ。ただ省エネ設備を並べるのではなく、「この技術とこの技術を組み合わせることで、相乗効果が生まれる」というストーリーが必要です。次に実証計画の具体性。いつ、どこで、どんなデータを取って、どう分析し、どう公開するかまで具体的に書く。
データの公開って、競合にノウハウを見せるのが嫌がられることもありますよね。
そこはこの事業の本質。得られた知見は公開して業界全体で活用することが目的の一つです。採択された事業者は、ZEB PF(プラットフォーム)へのデータ報告や実施状況報告書の提出が義務付けられます。この「公開・活用」の部分をしっかり計画に盛り込むことが、審査の加点につながるでしょう。
一番多いのは書類不備。要求されている書類が揃っていない、様式が違う、署名・押印がないなど。公募要領のチェックリストを必ず使ってください。次にエネルギー計算の誤り。WEBプログラムによる計算結果が要件を満たしているか、第三者認証(BELSなど)の取得予定を明記する。
BELSってあの「建物の省エネ性能を星で評価するやつ」ですよね。この事業でも必要なんですか?
公募要領に「BELS等の第三者認証取得」の項目があります。補助事業の完了後、速やかに第三者認証を取得することが求められています。計画段階からどの認証を取るのか、どのタイミングで申請するのかを明記しておきましょう。
ありがとうございます!これで大体のイメージがつかめました。最後に、この補助金に興味を持った事業者に一言お願いします。
この事業は「まだ誰もやってない大規模ZEBの設計ノウハウを、国を挙げて作りたい」という熱い思いが詰まった制度です。上限7億円という大型補助金で、自社の建物をZEBにしながら業界の先駆者になれるチャンス。ただし公募期間が短いので、今すぐ公募要領をダウンロードして準備を始めてください。チャレンジする価値は十分にあります!