室谷さん、今日は「IP360 海外展開支援(ローカライズ支援)」をお願いします。名前からしてもう、規模が大きそうなんですけど!
そうなんですよ、佐藤さん。これは令和7年度補正コンテンツ産業成長投資支援事業、いわゆるIP360のメニュー8にあたる制度です。事務局は映像産業振興機構、VIPOの補助金事業部が担っています。
はい、IP360には複数の支援メニューがあって、その中でIPの海外展開のために行うローカライズ事業を支援するのがメニュー8です。目的は、海外向けコンテンツの供給量を増やして、外国のユーザーやファンを広げていくことですね。
なるほど。じゃあローカライズって、具体的には何を指すんですか?
字幕や吹き替え、それから文化に合わせた表現の調整などです。コンテンツIPの権利者が主体となって、個社で行うローカライズを支援する、というのがこの制度の立て付けになっています。
IP360って、360度の360ですよね? なんかマーケティング用語みたいな響きです。
経済産業省のページでは、日本発コンテンツの海外売上を2033年までに20兆円にする目標が掲げられています。IPをマンガからアニメ、ゲーム、実写、音楽、グッズまで多角的に展開して利益を最大化する。単体の魅力を足し算するんじゃなくて、掛け算で全体の魅力を高める、という考え方なんです。
その掛け算のイメージが360度というわけです。今回のメニュー8は、その中の海外展開支援のひとつという位置づけです。
メニュー8ということは、他にも海外展開支援があるんですか?
はい。経産省のページを見ると、メニュー7が海外展開支援のIPエコシステム世界展開支援、メニュー8が今回のローカライズ支援、メニュー9が海外展開支援のプロモーション支援、という並びになっています。ローカライズに特化しているのがメニュー8ですね。
そうですね。作品そのものを現地の言葉や文化に合わせるのがローカライズ、外に知らせていくのがプロモーション、という役割分担です。
ええ。そして、この制度には心強い特徴が3つあります。図で見ておきましょう。
IP360 ローカライズ支援の3つの特徴上限4,000万円の規模
コンテンツIPのローカライズに最大4,000万円。補助率は対象経費の2分の1です。
IPの権利者が申請主体
自らが全部または一部の権利を保有するIPをローカライズすることが求められます。
個社で行うローカライズ
コンテンツIPの権利者が主体となって、個社で実施するローカライズを支援します。
そこは次のセクションでじっくりやります。まずは金額の話に行きましょうか。
さっき4,000万円と聞いて腰が抜けそうになりました。詳しくお願いします!
補助上限は4,000万円、補助率は対象経費の2分の1です。ここは基本情報として明記されています。
2分の1か。ということは、上限いっぱいもらうには対象経費が8,000万円くらい必要になる?
そういう計算になりますね。ただ、これはあくまで上限の話です。実際にどこまで積めるかは、審査で認められた事業計画の範囲ということになります。
その理解でいてください。対象経費の2分の1、上限4,000万円。この2つだけは最初に頭に叩き込んでおきましょう。
では早見表です。ここは正確な数字で確認しておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 補助上限額 | 4,000万円 |
| 補助率 | 対象経費の2分の1 |
| 対象経費が2,000万円の場合 | 補助額1,000万円の計算 |
| 対象経費が4,000万円の場合 | 補助額2,000万円の計算 |
| 対象経費が8,000万円の場合 | 補助額4,000万円(上限に到達) |
| 対象地域 | 全国 |
| 従業員数の制約 | なし |
| 募集期間 | 2026年10月8日〜2026年10月29日 |
| 事業完了期限 | 2027年2月28日 |
| 複数申請 | 可 |
僕らの記事は表が命ですからね(笑)。対象経費が8,000万円のときに補助額が4,000万円で上限に到達、という感覚を持っておくと計画が立てやすいです。
複数申請は可能とされています。ただし、企業グループの扱いには注意が必要です。親会社が直接または間接的に議決権株式の過半数を有する企業群を企業グループといい、グループ内の各法人は同一の法人とみなされます。
はい。グループ内の複数の法人が同じ分野の事業で同一の支援メニューに申請した場合は、1つの法人が申請したものとみなします。ただし、グループ内の複数法人、または同一の法人が異なる分野の事業で同一メニューに申請する場合は、異なる法人として補助金上限額が設定されます。
分野が違えば別枠、と。ここは誤解しやすいポイントだ。
そうですね。グループで動いている会社は、申請前に社内で整理しておきましょう。
ここからは門戸の話ですね。読者さんは「自分でも出せるのか」が気になるところです。
まず大前提として、日本の法令に基づいて設立された法人であることが必要です。加えて、間接補助事業を円滑に遂行するために必要な組織人員等を有し、資金等について十分な管理能力を有していること、そして本補助金の交付を受けようとする法人であること。この3つを全て満たす必要があります。
対象は法人です。法人格を有さないコンソーシアム、製作委員会、実行委員会等は対象外とされています。ただし、組織を構成する法人の1つが、同法人の責任の下で申請することは可能です。
なるほど、委員会そのものは出せないけど、中の1社が責任を持って出す、と。
そうです。それと、審査基準のトップに「自らが全部又は一部の権利を保有するIPをローカライズすること」が来ています。権利を持っていないとそもそも土俵に立てない、と考えてください。
原則として、外国の法令に基づいて設立された法人は申請主体になれません。ただし例外があります。親会社たる国内法人が直接または間接的に議決権株式の過半数を有する海外現地法人子会社で、かつ親会社たる国内法人が連帯保証している場合、審査委員会が適切と認めた海外現地法人は、流通プラットフォーム拡大支援および海外展開支援に申請できます。
さらに、事務局との連絡は親会社である国内法人が日本語で担うこと、証憑類や証拠書類の検査は国内で実施されること、承認に際しては事務局が指定する書類に捺印して提出すること、国内親会社も基礎情報等に関する一部書類を提出すること、といった条件が付きます。
日本語で連絡、国内で検査。体制を組めるかどうかですね。
基本情報では対象業種として生活関連サービス業、娯楽業が挙げられています。使途としては、販路拡大・海外展開をしたい、イベント・事業運営支援がほしい、という方向けの制度です。
「コンテンツを作って海外に出したい人が対象」というイメージでいいですか?
そうですね。経産省のページでは、ゲーム、アニメ、マンガ、音楽、実写といった区分が各メニューに並んでいます。メニュー8にも同じ区分が付いています。
では、自分が申請できるかどうかをざっくり判定する図を見ておきましょう。
申請できるかどうかのざっくり判定日本の法令に基づく法人で、自らIPの権利を保有している?
はい申請主体になれる可能性が高い
IPの権利とローカライズ計画を整理しよう
いいえ法人格のない団体は対象外
構成法人の1つが責任を持って申請する道もある
ここが一番気になるところです。何に使えるんですか?
ローカライズに関する経費が中心です。代表的なのは翻訳・字幕制作費ですね。外国語字幕の制作・編集費用、翻訳者や翻訳会社への委託費、字幕タイミング調整費、現地アダプターへの委託費などが挙げられています。
吹き替え制作費として、外国語吹き替え台本の翻訳・執筆費、現地声優やナレーターへのギャラ、スタジオ使用料、音声録音・編集・マスタリング費、口パク合わせの調整費などが想定されています。
ほかにも文化適応の費用、技術・エンコードの費用、プロモーション素材のローカライズ費用といったカテゴリが示されています。
現地の規制や表現基準への対応修正費、グラフィック・テロップの現地語置き換え費、文化的センシティビティチェックの費用、現地市場向けのパッケージやアートワークの修正費などです。
入ります。技術・エンコードの側では、多言語対応のためのマスターデータ修正費、各国仕様への変換・エンコード費、品質検査の費用、字幕ファイル形式の変換費など。プロモーション素材のローカライズでは、予告編やキービジュアルのローカライズ費、現地SNS・広告向けのコンテンツ制作費、海外展示会・見本市への出展費用などが挙げられています。
そうなんです。だからこそ、まとめて図で整理しておきましょう。
対象経費と対象外経費のイメージ- 外国語字幕の制作・編集費
- 翻訳者・翻訳会社への委託費
- 吹き替え台本の翻訳・執筆費
- 現地声優へのギャラ・スタジオ使用料
- 文化適応のための修正費
- 多言語向けのマスターデータ修正費
- 品質検査(QC)・エンコード費
- 海外向けプロモーション素材のローカライズ費
×デメリット
- ローカライズではない新規制作費
- 役員・従業員の通常業務の人件費
- 国内向けのみの改修・制作費
- 不動産取得費・建物改修費
- 汎用的なソフト・ハードの購入費
- 補助事業期間外に発生した経費
- 他の補助金で既に補助を受けた重複分
- 消費税(課税事業者の場合)
まず、ローカライズではなく新規制作に該当するコンテンツのオリジナル制作費は対象外です。それから申請法人の役員・従業員の通常業務に係る人件費、国内向けのみの改修・制作費用、不動産取得費や建物改修費、汎用的なソフトウェア・ハードウェアの購入費も外れます。
そうなんです。あと、補助事業期間外に発生した経費、他の補助金・助成金で既に補助を受けた経費の重複申請分、課税事業者の消費税も対象外とされています。
ここは落ち着いて、公募要領の最新版を確認しながら積み上げていくのが安全です。
まずは事業期間とスケジュールを押さえましょう。この補助金の実施期間は2026年3月10日から2027年3月31日までです。そして第3回公募の受付は2026年10月8日から10月29日の17時までです。
はい。締切日の17時を過ぎての応募は受理されません。しかも、添付資料のアップロードに時間がかかったり、締切日は回線が混み合う可能性があるので、なるべく早い時間に応募してください、と注意喚起されています。
事業完了期限は2027年2月28日とされています。逆算すると、採択後の実務期間はかなりタイトです。
流れはこのとおりです。まず公募要領と申請様式の入手から始まります。
IP360 ローカライズ支援の申請手順- 1
公募要領と申請様式を入手
経産省HPのコンテンツ産業支援メニューからメニュー8の申請書類一式をダウンロード
- 2
要件と対象経費を確認
法人要件・IPの権利・企業グループの扱いをチェック
- 3
事業計画を固める
ローカライズするIPの数、作品×言語の数、想定海外購買者数や年間海外売上高を整理
- 4
必要書類をそろえる
申請書類一式に沿って作成し、権利関係の資料も準備
- 5
余裕をもって提出
締切は2026年10月29日17時。混雑を避けて早めの応募を
- 6
採択・不採択の通知
2026年11月下旬頃に通知予定
なるほど、流れは見えました。で、書類はどこから取るんですか?
経済産業省のHP内、メニュー8の海外展開支援(ローカライズ支援)の申請書類一式からダウンロードしてください。
はい、こちらです。締切のあとの動きまで含めて眺めておきましょう。
第3回公募のスケジュール2026年3月10日
事業実施期間の開始
この補助金の実施期間は2027年3月31日まで
2026年10月8日
第3回公募の受付開始
メニュー8の第3回公募がスタート
2026年10月29日 17時
応募締切
17時を過ぎると受理されません
2026年11月下旬頃
採択・不採択通知
経産省ページで案内
2027年2月28日
事業完了期限
補助事業を終える期限
2027年3月31日
実施期間の終了
補助金事業としての期間の締め
10月29日から逆算すると、準備期間はけっこう短いですね。
そうなんですよ。公募期間そのものが約3週間です。海外展開の計画がすでに社内にある会社は動きやすいですが、ゼロからだと厳しい。日頃からの準備が効いてきます。
公表されている審査基準は大きく3つです。1つ目が権利で、自らが全部または一部の権利を保有するIPをローカライズすること。2つ目がローカライズ量で、ローカライズするIPの数、そしてローカライズする作品×言語の数。3つ目が海外展開で、想定海外購買者数と想定年間海外売上高です。
それに加えて、質的な側面は事業計画書から審査されます。数字だけじゃなくて中身も見られる、ということですね。
審査基準の一番最初に来ていますから、ここがクリアできていないと話になりません。自らが全部または一部の権利を保有していること。そして、製作委員会形式の場合は権利関係の整理が重要になります。
法人格のない製作委員会そのものは対象外ですが、組織を構成する法人の1つが、同法人の責任の下で申請することは可能とされています。どの法人がどの権利を持っているかの整理が欠かせません。
なるほど、そこを曖昧にしたまま出すのは危ないですね。
ええ。権利関係が複雑な場合は、関係者間の合意を整えたうえで申請してください。
ローカライズ量って、どう見せるのがいいんでしょう?
基準に「ローカライズするIPの数」と「ローカライズする作品×言語の数」が並んでいます。たとえば1つの作品を何言語に展開するのか、その掛け算の規模が問われる、という整理です。
作品が3本で5言語なら15、みたいな数え方ですね。
そういう捉え方です。海外展開の側では想定海外購買者数と想定年間海外売上高を出す必要があるので、市場ごとの見通しを数字で用意しておきましょう。
ここは事業計画書の腕の見せどころです。要点を図にまとめておきますね。
まず大原則として、同一経費への重複補助は禁止されています。ここは絶対に押さえてください。
同じローカライズ費用を2つの補助金で二重に取る、はダメと。
そのとおりです。経済産業省・中小企業庁系の補助金とは、対象経費の種類が異なれば、別々の事業として整理すれば原則として併用可能とされています。ただし同一のローカライズ費用を二重申請することは認められません。
海外展開支援の補助対象が重複する可能性があります。特に海外展示会出展費や市場調査費については、どちらで計上するかを明確に整理する必要があります。
同じコンテンツIPの同一年度のローカライズ費用を両方に申請することは認められない可能性が高い、とされています。事前にVIPOおよび文化庁へ確認することをおすすめします。
税制優遇措置は性質が異なるため基本的に併用可能とされていますが、補助金収入は雑収入として益金算入されるので、税務は税理士に確認してください。
弊社の関連データベースから近いものを並べると、こんな比較になります。
関連する補助金との比較| 項目 | IP360 海外展開支援(ローカライズ支援) | 小規模事業者持続化補助金<創業型> |
|---|
| 補助上限 | 4,000万円 | 200万円 |
| 補助率 | 対象経費の2分の1 | 公募要領で要確認 |
| 対象 | 日本の法令に基づく法人など | 公募要領で要確認 |
| 海外展開 | IPのローカライズを支援 | 公募要領で要確認 |
上限が4,000万円と200万円だと、もう使い道がまったく違いますね。
そうですね。小規模事業者持続化補助金<創業型>は上限200万円の制度です。今回のIP360は海外展開、とくにローカライズに特化した規模の大きい支援だという違いがあります。あわせて
小規模事業者持続化補助金<創業型>も確認してみてください。
目的が違うので、自社のフェーズに合うほうを選ぶのが基本です。
まず「個人でアニメや漫画を作っている場合、申請できますか?」。これは対象が法人ですから、個人事業主は対象外です。まず法人化と権利関係の整理が前提になります。
次に「製作委員会形式で制作したコンテンツの場合、誰が申請できますか?」。法人格のない製作委員会は対象外ですが、組織を構成する法人の1つが同法人の責任の下で申請することは可能とされています。権利関係が複雑な場合は、関係者間の合意を整えたうえで申請してください。
なお、補助率については公募要領の最新版で確認するのが基本ですが、今回の制度では対象経費の2分の1と示されています。
一番ありがちなのが締切間際の提出です。締切日の17時を過ぎると受理されません。添付のアップロードに時間がかかることもありますし、締切日は回線が混み合う可能性があります。早い時間の応募が推奨されています。
それと、問い合わせ先を押さえておきましょう。特定非営利活動法人映像産業振興機構、VIPO。住所は東京都中央区築地4-1-1 東劇ビル2F、IP360補助金(海外展開支援・開発プラットフォーム構築支援)事務局で、メールアドレスは
question@ip360.vipo.or.jp です。
経産省のコンテンツ産業支援メニューのページから、メニュー8の申請書類一式をダウンロードしてください。あわせて、よくある質問も経産省のページで公開されています。詳細は最新版の公募要領を見てください、と案内されています。
そろそろまとめに入りましょう。今日のポイントを整理してください!
はい。まず補助上限は4,000万円、補助率は対象経費の2分の1。第3回公募の受付は2026年10月8日から10月29日17時まで、事業完了期限は2027年2月28日です。
申請できるのは日本の法令に基づく法人で、自らが全部または一部の権利を保有するIPをローカライズすること。審査は権利・ローカライズ量・海外展開の3本柱です。
対象経費は翻訳・字幕、吹き替え、文化適応、技術・エンコード、プロモーション素材のローカライズなど。新規制作費や通常業務の人件費、消費税などは対象外です。同一経費への重複補助は禁止なので、併用は慎重に検討してください。