室谷さん、熊本県で海外出願の補助金が出るって聞いて飛びついたんですけど、これってどんな制度なんですか?
おお、佐藤さん、いいところに目をつけましたね!これはですね、熊本県の中小企業が外国で特許や商標を取る費用の半分を県が助けてくれる、めっちゃありがたい制度なんですよ。
半分も!?マジですか。でも、そもそも海外で権利を取るっていう発想がうちにはなくて…。
いやいや、今や海外展開って大企業だけの話じゃないですよ。熊本から世界に打って出る中小企業が増えてますからね。この補助金は外国出願にかかる費用の1/2、最大300万円まで補助してくれるんです(笑)。
300万!それはでかい。でも、どんな企業が対象なんですか?うち、製造業なんですけど。
バッチリです!対象業種はめちゃくちゃ広くて、製造業はもちろん、農業、漁業、建設業、情報通信業、サービス業…ざっと20業種くらいカバーされてます。具体的には公募要領で確認してほしいんですが、まず中小企業ならほとんど該当すると思っていいですよ。
なるほど。でも、海外出願って結構ハードル高いイメージがあります。特許事務所に頼んだり、翻訳したり…費用も時間もかかりそうで。
そのイメージ、正解です。でもこの補助金は、まさにその「高いハードル」を下げるためにあるんです。戦略的な外国出願を促進するっていう国の方針があって、熊本県もそれに乗っかってる形ですね。
実は特許庁が各都道府県の支援センターを通じて実施している事業なんです。熊本県の場合は一般社団法人くまもとデザイン協議会が窓口になってます。つまり、国の予算を使って熊本の中小企業を支援する、おいしい制度ってわけですよ。
なるほど!じゃあ、国の制度だから安心感ありますね。でも、応募資格って細かくないですか?
そこが大事なところです。次のセクションでしっかり見ていきましょう!
まずはお金の話から教えてください。上限300万円って聞いたけど、どういう計算なんですか?
はい、基本はこうです。補助対象経費の1/2以内、そして1企業あたりの上限は300万円。さらに案件ごとにも上限が決まってるんですよ。表で見てもらいましょう。
補助額のしくみ案件ごと上限
特許:150万円 / 実用新案・意匠・商標:各60万円 / 抜け駆け対策商標:30万円
おお!特許が150万円ってけっこう大きいですね。でも「案件」って何ですか?
例えば、同じ会社が「アメリカで特許出願」と「EUで商標出願」を同時にする場合、それぞれ別案件として扱えます。ただし、合計で300万円、そして案件ごとの上限を超えないっていうルールです。
特許150万円、実用新案・意匠・商標が各60万円、抜け駆け対策商標が30万円…この「抜け駆け対策」って何ですか?
いい質問!抜け駆け商標っていうのは、日本の会社が日本で出願・登録した商標を、海外の第三者が勝手に先に出願しちゃう悪質なケースのことです。それに対抗するための出願に特化した区分ですね。
ああ、よく聞く話ですね。中国なんかでよくあるって。
そうです。もし自社の商標が海外で勝手に登録されそうなら、この30万円枠を使って対策出願ができるんです。ただし、この枠を使うには「抜け駆け対策の意思がある」ことを証明する必要があります。公募要領で要件を確認してくださいね。
なるほど、ちゃんと目的に合った使い方が求められるわけですね。
そうです。なお、補助対象経費は具体的に3つ。①外国特許庁への出願手数料、②国内・現地代理人費用、③翻訳費用。この3つが1/2になるんです。
翻訳費用も入るのはありがたい!英語の特許明細書ってめちゃくちゃ高いですからね。
そうなんです。でも、対象外の経費もあるので注意が必要です。例えば、出願前の先行技術調査費用や、権利化後の維持年金なんかは対象外です。
具体的にいくらもらえるか、シミュレーションしてみたいです。
じゃあ、簡単な例を挙げましょう。ある熊本の製造業の会社が、新製品の特許をアメリカで出願するとします。外国特許庁手数料+代理人費用+翻訳費用の合計が200万円かかったとしましょう。
200万円の半分で100万円。特許の案件上限150万円以内だから、全額補助対象ってことですね。
その通り!補助額は100万円になります。もし同じ会社がもう一件、別の製品の実用新案を出願して総額120万円かかったら、実用新案の上限60万円を超えるので、補助額は60万円が上限になります。
なるほど。合計で160万円。でも企業上限300万円以内だからOKですね。
完璧な理解です!ただ、複数案件を申請する場合は、案件ごとに別々の申請書が必要です。公募要領で「複数案件申請される場合は、案件の数だけお申し込みください」って書いてありますからね。
次は対象者です。うちは従業員20人の製造業なんですが、中小企業に該当しますか?
はい、中小企業者の定義は法律で決まっていて、製造業なら資本金3億円以下または従業員300人以下。佐藤さんの会社なら当然該当します。さらに、中小企業者で構成されるグループも申請できます。ただし、構成員のうち中小企業者が2/3以上占める必要があります。
例えば、熊本県内の工務店が数社集まって「熊本木工グループ」みたいな任意団体を作って、共同で海外出願するケースですね。ただし、グループの代表者が窓口になります。
はい、個人事業主も対象です。農業、漁業、サービス業など、業種はかなり広いですからね。ただし、みなし大企業には該当しないことが条件です。
これは次のセクションでしっかり解説しますが、簡単に言うと「実質的に大企業と見なされる中小企業」は対象外ってことです。資本関係や役員の兼務で判断されます。
商工会議所とかNPOも申請できるって書いてありましたけど。
よく見つけましたね!地域団体商標の外国出願については、商工会議所、商工会、NPO法人等も対象になります。例えば「くまもとスイカ」とか「天草の焼き物」みたいな地域ブランドを海外で保護したい場合、商工会議所が主体になって申請できるんです。
なるほど。地域の産品を海外に広げたいときに使えるんですね。
公式サイトには従業員数300名以下と書いてありますね。ただし、これは中小企業の定義と一致しているので、実質的には中小企業なら問題ないです。資本金や出資金の条件も確認しておきましょう。製造業以外の業種では基準が異なるので、自分の業種で調べてください。
さっき出てきた「みなし大企業」、具体的にどんなケースが該当するんですか?
結構厳しい条件が5つあります。順に見ていきましょう。
まず(ア)発行済株式の総数の半分以上を同一の大企業が所有している場合。例えば、大企業が50%以上出資している子会社は対象外です。
じゃあ、資本関係でアウトになる可能性があるんですね。
そうです。次に(イ)複数の大企業が合計で3分の2以上を所有している場合もダメ。(ウ)大企業の役員や職員を兼ねている人が役員総数の半分以上を占める場合も対象外です。
そうなんです。例えば、大企業の部長が中小企業の社長を兼ねているケースで、他の役員も大企業出身だと該当する可能性があります。
(エ)資本金が5億円以上の法人に100%株式を保有される中小企業。(オ)直近3年の課税所得の年平均が15億円を超える中小企業。これらに該当すると「みなし大企業」と見なされ、補助金を受けられません。
ウチは大丈夫そうだけど、資本関係が複雑な会社は要注意ですね。
そうですね。もし該当しそうなら、事前に相談することをおすすめします。問い合わせ先は一般社団法人くまもとデザイン協議会です。
主に3つです。①外国特許庁への出願手数料、②国内・現地代理人費用、③翻訳費用。この3つが1/2補助の対象です。
そうです。日本の特許事務所(国内代理人)と、出願国の現地代理人(外国の特許事務所)の両方を含みます。特許出願には現地代理人が必須の国も多いので、これはありがたいですね。
翻訳費用も大きい。英語だけでなく、中国語やタイ語などの翻訳も対象ですか?
対象です!出願先の国の言語に翻訳する費用が含まれます。ただし、出願前の調査費用や、権利化後の年金維持費用は対象外ですのでご注意を。
代表的なものは、先行技術調査費用(特許が通るかどうかを事前に調べる費用)、出願後の拒絶理由対応費用(特許庁から拒絶理由が来たときの応答費用)、権利維持のための年金、そして国内出願費用(日本特許庁への出願は対象外)です。
なるほど。あくまで「外国出願」に特化した補助金なんですね。
その通りです。ただし、日本で既に出願済みであることが前提です。応募資格の(1)に「応募時に既に日本国特許庁に対して特許等を出願済み」とあります。
対象経費 vs 対象外経費- 外国特許庁への出願手数料
- 国内代理人・現地代理人費用
- 翻訳費用
×デメリット
- 国内出願費用
- 先行技術調査費用
- 拒絶理由対応費用
- 権利維持年金
- 出願前のアイデア整理費用
これでだいぶイメージがつきました。じゃあ、日本で出願してから外国出願するまでの期間の制限はあるんですか?
実は、優先権主張のルールがあります。日本出願から1年以内(特許・実用新案の場合)に外国出願しないと優先権が失われます。この補助金を申請するなら、日本出願後すぐに準備を始めるのがポイントです。
申請の具体的な手順を教えてください。まず何から始めればいいですか?
申請の流れ- 1
日本出願を済ませる
応募時点で日本特許庁に出願済みであること
- 2
公募要領を確認
一般社団法人くまもとデザイン協議会のHPで様式を入手
- 3
jGrantsに登録・申請
電子申請システムにログイン、入力
- 4
書類を郵送・メール送付
交付申請書と添付書類を7月31日17時必着で郵送、Word版をメール
- 5
採択後の手続き
採択後、外国出願を年度内に実施、完了後実績報告
思ったより手順が多いですね。特にjGrantsって初めて聞きました。
jGrantsはデジタル庁が運営する補助金申請システムです。まずはGビズID(法人用の共通ID)を取得する必要があります。これがないと始まらないので、今すぐ取得しておきましょう。取得には数日かかることもあります。
GビズIDの公式サイトから申請します。法人の場合は法人用のGビズID(利用者登録) が必要です。代表者情報、会社の登記情報、メールアドレスなどを入力して、書類を郵送すると、後日IDが発行されます。
そうなんです。最短でも1週間程度見ておいたほうがいい。募集開始は7月6日ですが、GビズIDは今のうちに取っておくのが鉄則です。
書類の提出は、jGrantsの電子申請だけじゃダメなんですか?
ここが重要なポイントです!jGrants上に入力しただけでは申請受付になりません。交付申請書と添付書類を必ず郵送で提出する必要があります。しかも7月31日(金)17時必着。さらに、交付申請書のWord版を電子メールでも送付するという、トリプル提出が必要です。
えっ!?郵送とメールと電子申請の3つ!?それは忘れそう。
だから注意してくださいね。
郵送先は一般社団法人くまもとデザイン協議会(熊本市中央区上通町5-1 4階)。担当は古家さん・神村さんです。メールアドレスは
office@kd21.or.jp。
採択されたら、年度内に外国出願を実施します。そして出願後、実績報告を提出して、補助金が確定します。注意点として、採択された企業名・所在地は公表されます。また、事業完了後5年間は状況調査(フォローアップ調査、ヒアリング) が行われます。
5年も追跡されるんですね。海外展開の成果を聞かれるってことか。
そうです。補助金を出したらその後の効果を確認するのが普通ですからね。海外で権利を取得した後、どう事業展開するかまで計画しておくことが重要です。
公式には明確な審査基準は示されていませんが、応募資格の(1)~(4)を満たしているかが基本です。特に重要なのは次の3点です。
一つ目は、外国での権利取得可能性です。(2)にある「先行技術調査等の結果からみて、外国での権利取得の可能性が明らかに否定されないこと」という要件。つまり、特許になる見込みがない出願は対象外ということです。
じゃあ、先行技術調査をちゃんとやって、可能性があることを示さないといけないんですね。
そういうことです。二つ目は、事業計画の具体性。(3)の「外国で権利が成立した場合等において、当該権利を活用した事業展開を計画している」こと。ただ出願するだけでなく、どうビジネスに活かすかまで説明できる必要があります。
例えば、申請書に「この特許を使って、熊本の製品をASEAN諸国に輸出する計画です」と具体的に書く。市場規模や販売チャネルまで書ければなお良しです。
資金計画の確実性です。(4)の「外国出願に必要な資金能力及び資金計画を有していること」。つまり、補助金がなくても出願できる体力があるかを問われます。補助金は後払いなので、一時的に自己資金で支払う必要がありますからね。
これでかなりイメージがつきました。特に事業計画の具体性がカギなんですね。
そうです。単なる「海外に出たい」ではなく、「いつ、どこで、どう売る」まで考えて書くのが合格のコツです。
募集期間は2026年7月6日から7月31日まで、とありますが、逆算するとかなりタイトですね。
そうなんです。日本出願は当然済ませておく必要があります。仮に今から日本出願をしても、外国出願の準備は優先権期間(1年)内に行えば間に合いますが、書類作成や先行技術調査には時間がかかります。
じゃあ、今(2025年とか)から準備しないと間に合わない?
募集は令和8年度(2026年度)なので、今すぐ日本出願をして、並行して先行技術調査をしておくのがベストです。特に、外国出願に必要な明細書の翻訳は時間とお金がかかりますからね。
申請までのタイムライン(例)2025年11月
日本出願
日本特許庁に特許・商標等を出願
2026年4月
先行技術調査
外国での権利取得可能性を確認
2026年6月
公募要領の確認
一般社団法人くまもとデザイン協議会のHPで様式入手
2026年7月6日
申請受付開始
jGrantsで電子申請開始
2026年7月31日
申請締切
郵送必着、メール送付も同日中
2026年8月〜
審査・採択
採択通知後、外国出願を年度内に実施
7月6日から31日までが申請期間で、郵送の締切は7月31日17時必着。ギリギリにならないように準備しないと。
そうですね。特に郵送は余裕をもって。熊本市中央区のくまもとデザイン協議会まで確実に届くように、早めに送りましょう。
この点については、公募要領で確認する必要がありますが、基本的に同一経費に対する二重補助は禁止です。例えば、同じ出願費用を国と県の両方から補助してもらうことはできません。
なるほど。でも、異なる経費なら併用できる可能性はありますね。
その通りです。もし併用を検討するなら、事前に問い合わせることをおすすめします。
いくつかあります。まず、商標出願については優先権がない外国出願も可とされていますが、特許や実用新案は原則として優先権主張が必要です。また、PCT出願(国際特許出願) については、日本への国内移行予定のものに限られます。
専門用語が多くて大変ですが、しっかり理解しないと。
そうですね。わからないことは一般社団法人くまもとデザイン協議会(電話:096-277-1569、担当:古家・神村)に遠慮なく聞いてください。親切に教えてくれますよ。
最後に、採択された後のフォローアップってどういうものですか?
事業完了後5年間、状況調査が行われます。具体的には、年1回程度のアンケートやヒアリングがあり、権利の活用状況や事業展開の進捗を報告する必要があります。
でも、補助金をもらった以上は当然の義務です。逆に言えば、しっかり計画を立てて申請すれば、5年間のフォローアップが事業の進捗管理にも役立つとも言えますね。
それでは最後に、この補助金のポイントをまとめてください。
室谷さん、ありがとうございました!これで熊本の中小企業の皆さんも、海外出願にチャレンジしやすくなりますね。
ぜひ活用してください!でも、締切は7月31日17時必着ですから、今から準備を始めてくださいね。