室谷さん、今回は「東京都正規雇用転換安定化支援助成金」ですよね。名前が長くて、パッと見ただけではどんな制度なのか分からないんですが……。
確かに名前が長いですよね(笑)。一言で言うと、パートや契約社員、派遣社員などの非正規雇用の方を正規雇用に転換したあと、その方が安心して働き続けられるように労働環境を整えた会社に、東京都がお金をくれる助成金です!
お、力強い!転換した「あと」に会社が頑張ったらお金がもらえるんですね。でも、それって結構ハードルが高そうな気もしますが……。
実はそこがこの制度のミソでして。国がやっているキャリアアップ助成金(正社員化コース)と連携しているんです。まず国から「正社員化コース」の支給決定を受けて、そのうえで東京都がさらに上乗せで支援する。そんな2段構えの制度なんですよ。
2段構え、ということは、受けられる条件がけっこう限られてくるんですか?
そうですね。まず東京労働局管内に雇用保険適用事業所がある中小企業事業主であること。そして東京労働局からキャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給決定を受けていることが前提になります。この入口をまず確認してほしいです。
つまり、東京都が単独でやっているわけではなくて、国の支給決定が前提になっているんですね。
はい。目的のところにも「国が実施するキャリアアップ助成金(正社員化コース)と連携し」と明記されています。計画的な育成計画の策定や、退職金制度、結婚・育児支援制度、介護支援制度など、正規雇用転換後も安心して働き続けられる労働環境整備や賃上げを行った事業主に対して交付されます。
なるほど。つまり「正社員にした!」で終わるのではなく、その後の定着まで見据えた取組を評価してくれる制度なんですね。
まさにそれ。「質の良い転換等の促進及び労働者の雇用安定を図る」というのが制度の目的です。せっかく正社員にしたのに、すぐ辞められちゃったら会社も本人も不幸ですからね。
この制度の3つの特徴国と連携した東京都の制度
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給決定が前提
正規転換後の定着を支援
育成計画・メンター指導・研修が必須の3点セット
加算で最大190万円
退職金・結婚育児・介護・賃上げの加算を組み合わせられる
金額の話、行きましょう!上限は190万円、補助率は100%と書いてありましたけど、まず基本部分はどうなってるんですか?
基本は対象労働者の数で決まります。1人なら20万円、2人なら40万円、3人なら60万円、4人なら80万円、5人なら100万円。1年度につき1つの雇用保険適用事業所で5人まで申請できます。
1人20万円を5人分で、基本は最大100万円。これは分かりやすいですね!ちなみに、これは「かかった経費を払い戻す」タイプですか?
そこが大事なポイントで、この助成金は経費の実費精算ではありません。条件を満たしたら定額がもらえるタイプです。基本情報には「補助率100%」とありますが、実際は領収書を積み上げて精算する形ではないので、そこは誤解しないでくださいね。
補助率100%って書いてあると、つい「経費が全部戻ってくるの?」と思っちゃいますよね。
そうなんですよ。通常の補助金は「かかった経費の何割を補助します」という形が多いんですが、この助成金は違います。公式ページにも「支援事業を行った対象労働者数に応じ、下記に定める金額を事業主に交付します」とあって、金額が定額で決まっています。
あー、なるほど。だから「補助率100%」と言っても、経費に対しての割合ではないんですね。
その通り。たとえば研修に50万円かかったから50万円もらえる、という計算ではありません。あくまで「対象労働者を正社員に転換して、支援事業をやりました」という実績に対して定額が支払われる。この違いはしっかり頭に入れておいてください。
じゃあ、その定額に加算がのっかるわけですね。どんな加算があるんですか?
4つあります。退職金制度整備加算が10万円、結婚・育児支援制度整備加算が10万円、介護支援制度整備加算が10万円。そして賃上げ加算は、対象労働者の時間単価を60円以上上げると1人あたり12万円。5人分なら60万円になります。
退職金と結婚・育児と介護はそれぞれ10万円で、これは会社単位で1回だけですよね?
そうです。それぞれ「1事業主あたり1回のみの申請」と決められています。一方、賃上げ加算は人数に応じて金額が伸びるので、5人まとめて賃上げすると大きいですね。
ということは……基本100万円+退職金10万円+結婚・育児10万円+介護10万円+賃上げ60万円。全部合わせると190万円!これが上限の正体ですね!
その通りです(笑)。対象労働者5人分の基本100万円に、3つの制度整備加算で30万円、賃上げ加算で60万円。合計190万円です。この内訳を頭に入れておくと、自社の場合はいくらになるかイメージしやすいですよ。
| 項目 | 金額 |
|---|
| 基本:対象労働者1人あたり | 20万円(5人で100万円) |
| 退職金制度整備加算 | 10万円(事業主あたり1回) |
| 結婚・育児支援制度整備加算 | 10万円(事業主あたり1回) |
| 介護支援制度整備加算 | 10万円(事業主あたり1回) |
| 賃上げ加算(60円以上アップ) | 1人あたり12万円(5人で60万円) |
| 上限合計 | 190万円 |
おー、表にすると一目瞭然ですね!でも、この助成金は令和8年度に第1回から第6回まで受付があるんですよね。今回はそのうちの「第4回」ってことで合ってます?
合ってます。第4回の交付申請受付期間は令和8年8月1日8時30分から8月31日17時15分まで。支援期間は令和8年10月1日から12月31日まで、実績報告は令和9年1月1日から1月25日までです。
じゃあ、うちの会社は対象になるのか。事業主側の要件を教えてください。
大きく3つです。1つ目は中小企業事業主であること。2つ目は東京労働局管内に雇用保険適用事業所があること。3つ目は東京労働局からキャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給決定を受けていること。この3つがセットで必須です。
対象地域が東京都ですから、都内に事業所がある会社じゃないとダメ、と。これは分かりやすいですね。
ええ。「東京労働局管内」という表現ですが、要は都内にある雇用保険適用事業所が対象になります。あと、令和5年4月1日以降に交付対象労働者を転換等して、東京労働局長の交付決定を受けていることも必要です。
中小企業事業主といっても、資本金や従業員数の条件ってあるんでしょうか?
ここは気になるところですよね。公式の要件には「中小企業事業主であること」とありますが、具体的な資本金や従業員数の基準については、申請の手引きで確認する必要があります。
なるほど。つまり「うちは中小企業だから大丈夫」と自己判断せずに、手引きできちんと確認しろ、と。
そうですね。この助成金はキャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給決定が前提なので、そこで中小企業と認められているかもあわせて確認するのが確実です。
会社側だけでなく、対象になる労働者の条件もあるんですよね?
あります。1つ目はキャリアアップ助成金(正社員化コース)の交付対象になった労働者であること。2つ目は令和5年4月1日以降に都内の事務所で正規雇用に転換されたこと。3つ目は転換時から支援期間終了日まで、同じ事業主との間で雇用区分が継続して、都内で働き続けていること。4つ目に、支援期間の終了日において有期雇用労働者でないことです。
なるほど。支援期間の終わりにまだ有期契約のまま、という状態はアウトなんですね。
そう。「転換して終わり」ではなく、その後の定着まで見届けるのがこの制度の特徴です。転換したあとに別の会社へ行ってしまったら対象外になりますし、支援期間中に退職してしまっても対象にならないので注意が必要です。
業種の制限はありますか?ウチは製造業なんですけど……。
製造業はもちろん対象です。農業・林業、漁業、鉱業・採石業・砂利採取業、建設業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸業・郵便業、卸売業・小売業、金融業・保険業、不動産業・物品賃貸業、学術研究・専門技術サービス業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉、複合サービス事業、サービス業(他に分類されないもの)。ほぼ全業種と言っていいですよ。
ほんとだ、まるごと載ってますね!(笑)飲食店でも医療機関でも対象になる可能性がある。これはかなり使いやすいのでは?
ただ、業種があっていれば必ず通るわけではありません。あくまで先ほどの事業主要件や労働者要件を満たすことが前提です。そこは忘れずに。
この助成金のメリットと注意点- 国と連携しているので審査の流れが分かりやすい
- 基本は定額支給で、5人分までまとめて申請できる
- 加算を組み合わせると最大190万円になる
×デメリット
- キャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給決定が前提
- 支援期間内に支援事業と実績報告を完了する必要がある
- 電子申請にはGビズIDプライムの取得が必要
助成金をもらうには、転換した労働者に対して何か「支援事業」をやらないといけないんですよね。具体的にはどんなことをやるんですか?
3つセットで実施する必要があります。1つ目は、3年間の指導育成計画を策定すること。2つ目は、指導育成者、いわゆるメンターを選任して、そのメンターによる3回・3日以上の指導を行うこと。3つ目は、その指導育成計画に基づく研修を実施することです。
3年間の計画!? けっこうガッツリした書類を作らないといけない感じですか(笑)。
そうですね。ただ、様式は用意されていて、指導育成計画書やメンター選任・指導報告書、研修実施報告書といった書類があります。自社の人事評価や育成の仕組みと重ねながら作ると、無理なくまとめられると思います。
加算の方はどうですか?退職金制度を「新たに」作れば10万円ですよね。
その通りです。退職金制度整備加算は、支援期間中に新たに退職金制度を整備して、就業規則(退職金規程を含む)を労働基準監督署へ届け出た場合、または新たに中退共制度に事業主として加入した場合に10万円です。
中退共っていう選択肢もあるんですね。結婚・育児の方は?
結婚・育児支援制度整備加算は、結婚、妊娠・出産、育児に関する休暇や一時金制度を新たに整備して、就業規則等を労働基準監督署へ届け出た場合に10万円。介護支援制度整備加算は、介護に関する休暇制度を新たに整備して、就業規則等を労働基準監督署へ届け出た場合に10万円です。
3つとも「新たに」がキーワードなんですね。すでに制度がある会社は対象にならない可能性が高いと。
そう読むのが自然です。あと賃上げ加算は、支援期間中に対象労働者の時間単価を60円以上上げることが条件。さらに賃上げ後の時間当たりの賃金額が、東京都の最低賃金を60円以上上回っている必要があります。
実績報告のときには、どんな書類を出せばいいんですか?
実績報告時には、実績報告書に加えて、指導育成計画書、メンター選任・指導報告書、研修実施報告書が必要です。結婚・育児支援制度を整備した場合は結婚・育児支援制度整備確認票、介護支援制度を整備した場合は介護支援制度整備確認票、賃上げした場合は賃金支払実績確認表を提出します。
意外と書類が多いですね。賃金支払実績確認表は、月給制・日給制・時給制・出来高払制で分かれてるんですか?
そうです。それぞれ「賃金支払実績確認表(月給制)」「同(日給制)」「同(時給制)」「同(出来高払制)」という様式があります。賃上げ加算を申請する場合は、対象労働者全員分が必要になるので、給与担当の方としっかり連携してくださいね。
申請方法はどんな感じですか?書類を出せばいいんでしょうか?
電子申請と郵送申請の2通りがあります。電子申請をするなら、まずGビズIDプライムのアカウントを取得する必要があります。これは法人の代表者アカウントですね。発行までに時間がかかるので、申請を考えているなら早めに準備しましょう。
GビズIDって、他の補助金の電子申請でも使うやつですよね。
そうです。Jグランツという電子申請システムを利用するための基盤です。GビズIDプライムを取得してログインできる状態にしておけば、Jグランツ上で交付申請ができます。申請後はマイページから状況も確認できますよ。
郵送でも申請できるんですね。どっちがおすすめですか?
どちらでもいいですが、注意点があります。電子申請で交付申請書を出した場合、その後の実績報告書や撤回届、中止申請書、再提出書類はすべて電子申請で提出します。逆に郵送で出した場合は、実績報告書などを電子申請で提出することはできません。つまり、最初に選んだ方法で最後まで通す必要があります。
なるほど、途中で切り替えられないんですね。郵送の場合の注意点は?
郵送はレターパックなど送達記録が残る方法で送ります。信書の送付が禁止されているメール便や宅配便は使えません。あとFAXやメールでの申請受付には一切対応していないので、そこも注意してください。
じゃあ、今回の第4回のスケジュールを整理してください。
交付申請の受付期間は令和8年8月1日8時30分から8月31日17時15分まで。支援期間は令和8年10月1日から12月31日まで。実績報告の受付期間は令和9年1月1日8時30分から1月25日17時15分までです。
あれ?基本情報の募集期間は2026年7月31日から8月31日って書いてありましたけど?
そこは表記に揺れがあるので注意してください。Jグランツの一覧では7月31日からと表示されていますが、公式の制度詳細では交付申請受付期間は8月1日8時30分から。システム上の掲載開始日と実際の受付開始日の違いかもしれないので、申請の際は必ず最新の手引きで確認してください。受付は予算の範囲を超えたら年度途中で終了することもあります。
助成金申請の流れ- 1
GビズIDプライムを取得
電子申請をするなら事前に取得。発行に時間がかかるので早めに
- 2
キャリアアップ助成金で交付決定を受ける
東京労働局からの支給決定が前提になります
- 3
交付申請書を提出
電子申請または郵送。受付期間内に提出します
- 4
支援事業を実施
3か月間の支援期間内に育成計画・メンター指導・研修を完了
- 5
実績報告を提出
支援期間終了後の受付期間内に実績報告書類を提出
- 6
なるほど。流れが分かりました。ちなみに支援期間中に支援が実施できなかったらどうなるんですか?
交付は受けられません。各回に設定されている支援期間に支援を実施できない場合や、実績報告期間に実績報告の提出がない場合は、この助成金の交付は受けられないと明記されています。あと、撤回届提出期限より後は対象労働者の変更や追加はできません。
令和8年度第4回のスケジュール2026年7月31日
Jグランツで募集開始表示
基本情報上の掲載は7月31日から
2026年8月1日
交付申請受付開始
8時30分から受付開始
2026年8月31日
交付申請受付締切
17時15分まで
2026年10月1日
支援期間スタート
12月31日までの3か月間
2027年1月1日
実績報告受付開始
8時30分から受付開始
2027年1月25日
実績報告受付締切
17時15分まで
せっかく申請するなら、通りやすい申請にしたいですよね。審査のポイントはどこですか?
まず、この助成金はキャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給決定が前提なので、そちらとの整合性がズレないことが大事です。対象労働者が誰なのか、転換日はいつなのか。ここがぶれると書類上で引っかかります。
なるほど。国に提出した内容と東京都に提出する内容がズレてるとダメだと。
そう。さらに東京都の手引きでは、交付申請時にセルフチェックリストを提出することになっています。ここで自分の申請内容を点検してから出す習慣をつけると、書類不備を減らせますよ。
時間です。第4回の支援期間は令和8年10月1日から12月31日まで。この3か月の間に、メンターによる3回・3日以上の指導と研修を全部終えている必要があります。12月ギリギリにやろうとすると、研修の日程が確保できずに終わらない、というパターンが怖いです。
メンターって社内の誰かを指名するんですよね?その人のスケジュール調整も必要ですね。
そうです。だから申請が通ったら、まずカレンダーに支援期間の予定をブロックしてしまうのがおすすめです。特に12月は予定が埋まりやすいので、10月か11月のうちに3回の指導を終えてしまうのが賢いやり方です。
よくある質問をいくつか確認させてください。この助成金は複数回申請できますか?
1年度につき1つの雇用保険適用事業所で申請できる対象労働者数は5人が限度とされています。撤回届提出期限後に事業計画を中止した場合は、年度内の申請回数にカウントされて、交付したものとみなされます。
えっ、中止しても回数にカウントされちゃうんですか?
そうなんです。「申請したけどやっぱやめました」では済まず、年度内の申請回数に数えられてしまいます。だから申請する前に、支援期間内にちゃんと遂行できるかどうかを見極めるのが大事です。
この手の助成金って、予算が尽きたら受付終了になるとかありますよね。
あります。公式ページにも「予算の範囲を超えた場合は、年度途中であっても申請受付を終了することがあります」と明記されています。受付終了時にはTOKYOはたらくネットで案内されるので、申請を考えているならこまめにチェックしてください。
それは怖いですね。期限は8月31日でも、その前に締切になる可能性があると。
そうです。だから「まだ8月だし余裕でしょ」ではなく、できるだけ早く申請書類を整えて提出するのが正解です!
TOKYOはたらくネットのページからダウンロードできます。交付申請時には、事業実施計画書兼交付申請書、誓約書、支払金口座振替依頼書などが必要です。電子申請用と郵送用でセルフチェックリストも分かれています。
セルフチェックリストまで提出するんですね。意外と手間がかかるのかな?
書類不備を防ぐためのリストなので、面倒がらずに使いましょう。あと、令和7年度以前の様式は使えません。必ず最新の様式を使ってください。問い合わせ先は東京都正規雇用化推進窓口、電話番号は03-6205-6730。受付時間は平日の8時30分から17時15分までです。
〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町2-42-10、ハローワーク新宿5階です。申請書類の提出窓口でもあります。ただ、持参する場合は受付時間内に提出してくださいね。書類不備・不足や受付期間外の申請は受理されません。
最後に、この制度を検討している事業者に向けて、確認ポイントをまとめてください!
まず1つ目は、キャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給決定を先に受けているかどうか。これが入口です。2つ目は、対象労働者5人まで申請できるので、どの従業員を対象にするかを早めに固めること。3つ目は、第4回の申請受付は令和8年8月31日17時15分締切なので、スケジュールを逆算して動くこと。この3つです!
特にGビズIDプライムの発行には時間がかかるって話でしたから、まずはそこから始めるのが良さそうですね!
そうですね。電子申請を考えているなら、なおさらです。申請の手引きはTOKYOはたらくネットからダウンロードできますし、様式もそろっています。ぜひ最新版を確認して、良い申請にしてください!