室谷さん、最近うちの会社でも外国人スタッフを採用し始めたんですが、やっぱり言葉の壁って大きくて。日本語教育に費用をかけたいけど、なかなか予算が……という話をよく聞きます。
えっ、それ知らないまま自己負担してる会社、めちゃくちゃ多いですよ!東京都に「中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金(一般コース) 」っていう制度があって、日本語教育にかかる費用の半額を、最大25万円まで助成してくれるんです。
ほんとですか!それは聞いたことなかった。東京都の制度なんですね。
そうなんです。東京都産業労働局が運営していて、令和8年度(2026年度)の募集がすでに始まってます。申請期間は令和8年4月9日から令和9年1月14日まで。今まさに動けるタイミングですよ!
令和9年1月14日まで!結構余裕があるんですね。でも、どんな研修が対象になるんですか?全部の日本語教室が使えるわけじゃないですよね?
鋭い。対象になる研修は4種類に限定されていて、①日本語教員による日本語教育、②日本語教材の作成、③ビジネスマナー講座、④異文化理解に係る講座です。ポイントは③と④は単体ではダメで、必ず①か②と組み合わせて実施する必要があること。
なるほど、日本語教育が軸で、それにプラスアルファで追加できるって感じか。
そうそう。日本語教育を核に置いて、ビジネスマナーや文化理解を補う、という設計が求められるんですよね。外国人従業員の定着が目的だから、単発のマナー研修じゃなくて、ちゃんと日本語力を育てることがベースになってるんです。
一般コース 助成額比較表
助成額が最大25万円ってことでしたが、プランが2種類あるって聞きました。短時間プランっていうのは?
一般コースには「標準プラン」と「短時間プラン」の2つがあります。研修時間の要件と助成上限額が違うんです。まとめるとこんな感じですね。
プラン名 必要な研修時間 助成率 助成上限額 標準プラン 50時間以上 1/2 最大25万円 短時間プラン 30時間以上 1/2 最大15万円
標準プランで最大25万円、短時間プランで最大15万円か。助成率はどちらも半額なんですね。
そうです。かかった費用の半分を都が出してくれる、という仕組みです。25万円の助成を受けるには50万円以上の研修費用がかかっている必要がありますね。日本語学校の受講料、講師料、教材費、研修会場費など、幅広い経費が対象になりますよ。
50万円の研修費……ちょっと大きいなとも思うけど、それで25万円戻ってくるなら実質半分で済むか。
しかも、消費税も助成対象に含まれるんですよ。申請書類は税込金額で作成してOKです。これはなかなか太っ腹な制度ですよ!
標準プラン(50時間以上・最大25万円) : 日本語力を本格的に伸ばしたい場合。N4→N3レベルを目指すなど、じっくり取り組む企業向け
短時間プラン(30時間以上・最大15万円) : 繁忙期がある業種や多忙な従業員向け。ある程度の日本語力がある人のスキルアップにも最適
どちらのプランでも、日本語教育(①)を選んだ場合、日本語教育だけで規定時間を満たす 必要がある点に注意!
じゃあ、誰でも使えるわけじゃないですよね。どんな企業が対象なんですか?
まず企業側の要件は「都内に本社または主たる事業所がある中小企業等」であることです。東京都の制度なので、東京に拠点があることが条件ですね。
東京に本社がある中小企業ならほとんど使えそう。外国人従業員の要件は?
従業員側には3つの要件があります。①対象となる在留資格を有していること、②常時勤務する事業所が都内にあること、③日本語能力が概ねN2レベル以下であること。この3つを全部満たしている方が対象です。
N2以下というのは、日本語能力試験のN2ってことですよね。かなり広い範囲をカバーしてますね。
そうです。N2は「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる」レベルです。N3、N4、N5の人はもちろん、N2でも「概ね」という表現なので、ビジネス日本語にはまだ不安のある方なら対象になります。日本語能力試験の公式認定がなくても、概ねN2レベル以下と判断できれば申請できますよ。
なるほど!それは幅が広い。在留資格についてはどんな種類が対象?
就労可能な在留資格を持っている方が基本的に対象です。「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」などの一般的な就労系在留資格はほぼカバーされます。ただし、「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」などの一部の高度人材系在留資格は対象外になっているので、詳細は公式の募集要項で確認してください。
都外の事業所のみに勤務している外国人従業員
日本語能力試験N1レベル相当の従業員(N2以上は対象外)
派遣社員など直接雇用でない従業員
「高度専門職」「経営・管理」など一部の在留資格を持つ方
交付決定前に研修を開始してしまった場合
助成対象の研修内容をもう少し詳しく教えてください。日本語学校に通うのと社内研修とどちらでも使えますか?
どちらでも使えます!日本語学校への通学でも、日本語教員を会社に招いて行う社内研修でも、オンラインレッスンでも対応OKです。働き方に合わせて柔軟に設計できるのが、この助成金の大きなメリットですよ。
ただ、1つ重要な条件があって、「日本語教員の資格」が必要です。文化庁が定める「日本語教育機関の告示基準」に記載の教員要件を満たす方でないと対象外です。どの日本語学校や講師を使うか、事前にしっかり確認することが大事ですね。
経費カテゴリ 具体的な内容 日本語教育費 日本語教員の講師料・授業料、日本語学校の受講料 教材作成費 日本語教員が作成する教材の制作費、印刷費 ビジネスマナー講座費 講師料、受講料、テキスト費 異文化理解講座費 講師料、受講料、資料費 研修運営費 会場レンタル費、オンライン研修ツール利用料
会場費やオンラインツールの利用料まで含まれるんですか!これは手厚い。
逆に対象にならないものも覚えておきましょう。研修中の人件費(給与)は対象外。あと、日本語教員の資格がない自社従業員が講師になる場合も対象外。振込手数料や消費税以外の税金も出ません。
人件費が出ないのは知らないと誤って計算しちゃいそう。でも逆に言うと、純粋に「外の専門家・機関に払うお金」が対象になるってことか。
そのとおりです。プロに頼んだ分がきちんと返ってくる仕組みなんです。だから日本語学校との契約や、外部講師への支払いが核になります。
申請から入金まで5ステップ フロー図
実際に申請するにはどんな手順を踏めばいいんですか?
大きく5つのステップです。ただ、最大の注意点は「交付決定が出る前に研修を始めてはいけない 」こと。これを守らないと、いくら研修をやっても助成対象外になります。
5ステップで見るとわかりやすい!「交付決定前に研修を始めたらアウト」というのは特に気をつけなきゃですね。
ほんとに、これが一番多い失敗パターンです。「もう研修始めちゃいましたけど遡及適用できますか?」って相談を受けることがありますが、原則できないんです。研修の準備をしながら申請作業を進めて、交付決定を待ってから研修をスタートする、この順番が絶対です。
申請はJグランツ(電子申請)でできるんですね。郵送もOKと。
そうです。Jグランツから申請する場合は、GビズIDが必要になります。GビズIDをまだ持っていない方は、取得まで2〜3週間かかることがあるので早めに準備しましょう。郵送の場合は東京都産業労働局雇用就業部就業推進課に送付します。
申請したら必ず通るわけじゃないですよね。審査で見られるポイントは何ですか?
この助成金は書類審査ベースで、大きく「要件を満たしているか」と「研修計画の具体性」がポイントになります。要件の確認は前提として、研修計画がきちんと具体的に書けているかが実際の成否を分けます。
業務直結型の研修設計 : 「飲食業→接客敬語」「製造業→安全用語」「IT業→技術文書の読み書き」など、職種に応じた具体的なカリキュラムを日本語教員と相談して設計する。汎用的な日本語教育より業務に直結した内容の方が説得力が高い
受講時間数の確実な管理計画 : 50時間(または30時間)を確実に消化できるスケジュールを、余裕を持って設計する。途中欠席した場合の補講計画なども含めると審査官に安心感を与える
証拠書類の収集体制を最初から整備する : 出席記録、カリキュラム、領収書、研修の写真記録などを、研修開始前から計画的に収集できる体制を説明できるとよい
業種に合わせた研修設計か。飲食店と製造業では必要な日本語って全然違いますもんね。
そうなんですよ。「日本語能力試験N3を取らせます」より「接客で使う敬語と注文確認フレーズを習得させ、クレーム対応ができるようにします」の方が、審査官の目に具体的に映ります。目的と効果を明確に書くことが大事ですね。
従業員のモチベーション維持も大事そう。30〜50時間って結構な量ですよね。
従業員にとっても大きな負担なので、研修時間を業務時間内に設定したり、上達の成果を定期的にフィードバックしたりして、前向きに取り組める環境を作ることが長続きの秘訣です。途中で研修を中断すると時間数が不足して助成対象外になる可能性もありますから。
具体的にどんな会社がこの助成金を使っているか、イメージが湧く例を教えてもらえますか?
業種 課題 活用方法 効果 飲食・宿泊業 接客敬語やオーダー確認の日本語ミスによるクレーム 標準プラン50時間で接客日本語+ビジネスマナー講座を組み合わせ クレーム激減、従業員の自信向上、離職意向がなくなる 製造業 安全指示・注意書きが正確に理解できずヒヤリハットが発生 標準プラン50時間で安全用語特化の日本語教育+工場向けオリジナル教材作成 ヒヤリハット報告が正確に、日本人従業員とのコミュニケーション改善 IT・情報通信業 技術文書の日本語作成や打ち合わせへの単独参加が難しい 短時間プラン30時間でIT専門用語・技術文書+異文化理解講座を組み合わせ 技術文書を日本語で作成可能になり、翻訳作業が月10時間削減
これ、業種ごとに具体的な使い方があるんですね。製造業の安全用語の話は、労災リスクの観点からも重要だな。
安全に関わる言葉の理解不足は、本人にも会社にも大きなリスクですからね。それが日本語教育によって解消できて、なおかつ助成金で費用の半分が戻ってくる。やらない理由がない、というレベルの話です。
外国人従業員が定着すると、採用コストの削減にもつながりますしね。
まさに!外国人材の採用コストって1人あたり数十万円かかることもざらです。定着率が上がれば採用コストが大幅に下がる。そのための研修費用の半分が返ってくるなら、投資対効果は非常に高い制度だと思います。
この助成金と似たような制度もあるんですか?他の補助金と組み合わせられたりする?
比較項目 一般コース(今回の制度) ウクライナ避難民コース 対象企業 都内中小企業等 都内中堅企業または中小企業等 助成率 1/2 10/10(全額) 標準プラン上限 最大25万円 最大50万円 短時間プラン上限 最大15万円 最大30万円
国の制度では「人材開発支援助成金」(厚生労働省)があります。中でも「人材育成支援コース」は、OFF-JT(外部研修)に対する経費助成と、研修期間中の賃金助成が受けられます。東京都の今回の制度では研修費用を、厚生労働省の制度では研修中の賃金を対象とするなど、経費を明確に区分すれば同一の外国人従業員への両立適用も可能 です。
資格取得サポート系の助成金と組み合わせたりもできます?
東京都には
令和8年度資格取得サポート助成金 も別途あります。業務に必要な資格の取得費用を助成する制度で、日本語能力試験(JLPT)の受験費用なども対象になる可能性があります。研修と並行して資格取得を目指す外国人従業員がいれば、こちらも確認する価値がありますよ。
同一経費に対する二重受給は認められていない
各制度の募集要項で「他の補助金との併用制限」を必ず確認すること
不明点は東京都産業労働局(03-5320-4628)または各制度の担当機関に事前相談を
項目 内容 制度名 中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金(一般コース) 実施機関 東京都産業労働局 雇用就業部 就業推進課 対象地域 東京都 助成率 1/2(かかった費用の半額) 助成上限 標準プラン 最大25万円 / 短時間プラン 最大15万円 申請受付期間 令和8年4月9日(木)から令和9年1月14日(木)まで 助成対象期間 交付決定の日から令和9年3月31日(水)まで 申請方法 Jグランツ(電子申請)または郵送 問い合わせ先 東京都産業労働局 雇用就業部 就業推進課 人材確保推進担当 TEL 03-5320-4628(月〜金 9時〜12時・13時〜17時、祝日・年末年始除く) 公式ページ TOKYOはたらくネット
都内に本社・主たる事業所がありますか? : ✅必須
対象の外国人従業員を直接雇用していますか? : ✅必須
対象従業員は都内の事業所に常時勤務していますか? : ✅必須
対象従業員は対象となる在留資格を有していますか? : ✅必須
対象従業員の日本語能力は概ねN2レベル以下ですか? : ✅必須
日本語教員の資格を持つ講師を確保できますか? : ✅必須
標準プラン(50時間以上)または短時間プランの研修計画を立てましたか? : ✅必須
GビズIDを取得していますか?(電子申請の場合) : ✅推奨
まとまった情報で全体像がはっきりしました!要件確認して、すぐ動けそうな内容ですね。
申請から交付決定まで1か月かかるので、研修をいつから始めたいかを逆算して申請タイミングを計算してください。令和9年1月14日が申請締め切りですが、助成対象期間は令和9年3月31日までなので、遅くとも12月には申請を終えておかないと研修期間が短くなってしまいます。今から動くのがベストです!
外国人従業員を採用しているすべての都内中小企業にとって、使わない手はない制度だと思いました。ぜひ詳細を確認してみてください。
東京都の外国人従業員支援制度は他にも色々あるんですよね?
あります。東京都に拠点のある企業なら、
東京の補助金・助成金一覧 からまとめて探すこともできますよ。人材育成系の制度は外国人向けだけじゃなく、一般の従業員向けも複数あるので、外国人スタッフの研修と合わせて活用を検討してみてください。
最後に、申請前に疑問に思いそうなことをまとめてもらえますか?
まず、日本語学校の受講料って全額対象になりますか?
日本語教員による日本語教育の一環であれば、日本語学校の受講料も対象です。ただし、日本語学校が「日本語教育機関の告示基準」の教員要件を満たす教員を配置しているかを事前に確認してください。要件を満たさない講師による指導は対象外となるので、契約前の確認が重要です。標準プランなら50時間以上の受講が条件です。
できません!ビジネスマナー講座(③)と異文化理解講座(④)は、日本語教育(①)または日本語教材の作成(②)と組み合わせることが必須です。単独での実施は助成対象外になります。この制度の主目的は日本語教育を通じた定着促進なので、日本語教育が必ず核にある必要があるんです。
研修期間やペースによって変わりますが、概ね6か月〜1年程度を見込んでください。交付申請から交付決定まで約1か月、その後50時間(または30時間)の研修を実施して、実績報告書を出して、審査が通ったら振り込みという流れです。研修を密度高くやれば半年で完了することもありますが、週1〜2回のペースなら年単位になることも。余裕あるスケジュール設計を強くお勧めします。
複数の対象従業員に対して一度に申請することは可能です。ただし、助成対象経費は各従業員の研修にかかった経費の合計となり、上限額は一般コースの場合、標準プランで最大25万円、短時間プランで最大15万円です。従業員の人数が増えても上限は変わらないので、費用効率の高い研修設計を心がけてください。
ウクライナコースと一般コースは同時に申請できますか?
ウクライナ避難民採用企業コースと一般コースは、経費の区分が明確であれば同時申請(併給)が可能です。ただし、同一の外国人従業員に対して両コースを同時に適用することはできません。例えば、ウクライナ避難民の従業員には避難民コース、他国籍の従業員には一般コースという使い方はOKです。