室谷さん、今日は熊本県の「【熊本県2次】令和8年度_中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業)」について教えてください! 名前がすごく長くて、いきなり混乱してます(笑)。
確かに長いですよね(笑)。略せば「海外出願支援事業」、jGrantsのページではキャッチコピーとして「【熊本県】外国出願補助金」と掲載されています。外国への事業展開を計画している中小企業等に、外国出願の費用の半額を助成する制度です。
外国出願の費用の半額! それは心強いですね。でも、なぜ国や県がそこを支援するんですか?
知的財産権は国ごとに独立していますから、日本で特許を取っても外国では権利として成立しないんです。海外で事業をするなら、進出先の国でも特許権や商標権を取る必要がある。でも外国出願は費用が高額で、中小企業には負担が大きい。そこを後押しするのがこの補助金です。
なるほど。海外に出る前に「向こうで権利を取りに行くお金」を助けてくれるわけですね。
しかも技術やブランドを守るだけでなく、模倣被害の防止や、商標を第三者に先取りされて自社ブランドが使えなくなるリスクの回避にも役立ちます。海外展開を本気で考えるなら、知っておいて損はない制度ですよ。
ますます興味が湧いてきました。今日はこの制度を隅々まで聞いちゃいます!
令和8年8月31日(月)から9月25日(金)17時00分までです。令和8年度、つまり2026年度の「熊本県2次」として受け付けています。
9月25日の17時が締め切り。この「17時」が後々すごく大事になってくるんですよね?
鋭い! この制度は書類の郵送が必須で、締切は9月25日17時00分が「必着」です。ポータルに入力しただけでは受付にならないという、ちょっとややこしい仕組みなので、後で詳しく説明しますね。
書類必着か……。これはギリギリを狙うと痛い目を見そうだ。
対象地域は熊本県です。窓口になるのは一般社団法人くまもとデザイン協議会で、熊本市中央区上通町にあります。細かい所在地の条件などは公募要領で確認してください。
jGrantsの分類では「新たな事業を行いたい」「販路拡大・海外展開をしたい」「研究開発・実証事業を行いたい」「資金繰りを改善したい」「まちづくり・地域振興支援がほしい」といったニーズが並んでいます。
海外展開以外に、まちづくりや地域振興まで入ってるんですね。意外です!
後ほど説明しますが、地域団体商標の外国出願に限っては商工会議所や商工会、NPO法人なども対象になり得ます。地域の産品やブランドを海外で守りたいというケースを想定しているんでしょうね。
なるほど。会社の規模や目的によって、いろんな使い方が考えられる制度なんですね。
海外出願支援補助金の3つの特徴外国出願の費用を半額助成
補助率は補助対象経費の2分の1以内
1企業あたり上限300万円
複数案件の場合。案件別の上限も設定
熊本県の中小企業等が対象
令和8年度(2026年度)の2次募集
じゃあ次は、一番気になる金額です! 補助率はどのくらいなんですか?
補助対象経費の2分の1以内です。「かかった費用の半分が戻ってくる」のが基本イメージですね。最大で300万円と聞くと大きいですが、実は上限の仕組みが2段構えになっています。
1企業あたりの上限額が300万円です。ただし、これは「複数案件の場合」の金額だと明記されています。特許と商標など、複数の案件をまとめて申請するときに、企業トータルで300万円まで、というイメージですね。
ざっくり言うと、1社で複数案件出せば、多いときで300万円までいける可能性があると。
そうです。ただし、案件単位の上限も別に設けられているので、「特許1件で300万円」というわけにはいきません。次の表で整理しましょう。
| 区分 | 上限額 |
|---|
| 1企業あたり(複数案件の場合) | 300万円 |
| 特許(1案件) | 150万円 |
| 実用新案・意匠・商標(それぞれ1案件) | 60万円 |
| 抜け駆け対策商標(1案件) | 30万円 |
| 補助率 | 補助対象経費の2分の1以内 |
案件ごとに上限が違うんですね。特許がいちばん大きい?
特許は1案件150万円、実用新案・意匠・商標はそれぞれ1案件60万円です。そして「抜け駆け対策商標」だけ、1案件30万円という別枠になっています。ここをうっかり忘れると、見込み違いになりますよ。
抜け駆け対策商標って、ちょっと聞きなれない言葉ですが……。
日本で既に出願・登録済みの商標が、海外で第三者によって無断で出願・登録されてしまった「抜け駆け商標」。その対策として海外へ商標出願するときに使う枠です。自社ブランドを海外で勝手に押さえられてしまうリスクへの備えですね。
商標って、日本で登録して終わりじゃないんですね……。知らないと怖い世界だ。
だからこそ、海外展開をするなら「権利は向こうで取り直す」という発想が欠かせません。この補助金はそのための費用を半分持ってくれるわけです。
計算例を出してもらえますか? 例えば特許の外国出願で400万円かかったら、半額で200万円ですよね。
ええ、そこに案件上限の150万円がかかります。つまり、もらえるのは150万円まで。400万円の半額だから200万円、とはならないんですね。
なるほど。「費用の半額」と「案件上限」と「企業上限」をすべて照らし合わせて、いちばん小さい数字が支給額になると。
その理解で大丈夫です。逆に言えば、特許で150万円いっぱいまで使うには対象経費が300万円以上必要。実用新案・意匠・商標なら120万円の費用で上限60万円にちょうど届きます。
つまり上限額の2倍の費用がかかって初めて上限に達するわけか。結構大きな出願を考えてる事業者向けなんですね。
少額の出願でも半額は半額ですから、対象になるなら使う価値はありますよ。ただ、事前に「いくら戻ってくるか」を計算して資金計画を立てることが大事です。
では、肝心の申請資格です。どんな事業者が対象になるんですか?
基本は「中小企業者」または「中小企業者で構成されるグループ」です。グループの場合は、構成員のうち中小企業者が3分の2以上を占めている必要があります。
中小企業者かどうかは、どうやって判断するんですか?
jGrantsの情報欄には「従業員数の上限は300名以下」と記載があります。加えて対象業種が、農業・林業、建設業、製造業、情報通信業、卸売業・小売業、宿泊業・飲食サービス業、医療・福祉など、非常に幅広く設定されています。
漁業や鉱業、電気・ガス・熱供給・水道業、金融・保険業、不動産業などまで並んでいます。海外で特許や商標を取りたい中小企業を、業種を問わず広く応援しようという姿勢ですね。
じゃあ、うちは製造業じゃないからダメ、みたいなことはなさそうだ。
ただ、資本金などの要件で中小企業者に該当するかは確認が必要です。応募を検討するなら、公募要領に書かれた中小企業者の定義を必ず確認してくださいね。
中小企業なら誰でもいいわけじゃないんですよね。「みなし大企業」という言葉が気になりました。
中小企業の形をしていても、実質的に大企業の支配下にある会社は「みなし大企業」として対象から外されます。典型例が、発行済み株式の総数の2分の1以上を同一の大企業に所有されているケースです。
半分以上持たれていたらアウトなんですね。子会社じゃなくても?
複数の大企業に3分の2以上所有される場合もアウトです。大企業の役員や職員が役員総数の2分の1以上を占めている会社も対象外。資本金5億円以上の法人に直接・間接に100%株式を保有されるケースも除外されます。
さらに、確定申告済みの直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者もみなし大企業とされます。自社が当てはまるか不安な場合は、公募要領を確認するか、窓口に問い合わせるのが確実です。
地域団体商標の外国出願については、商工会議所、商工会、NPO法人なども対象になる、と明記されています。地域のブランドを海外で守りたいとき、組合や協議会が窓口になれるケースですね。
なるほど。例えば熊本の特産品を地域ブランドとして海外登録したい、みたいな話ですか。
そういう使い方を想定しているようです。地域団体商標ならではの細かい要件があるかどうかは公募要領で確認してください。聞くだけでも価値があると思いますよ。
もうひとつ、応募資格には「4つの要件」があると聞きました。
1つ目は、応募時点で既に日本国特許庁に対して特許・実用新案・意匠・商標のいずれかを出願済みであること。そして採択後に、その出願を基礎に優先権主張をして外国出願を年度内に行う予定であることです。
あれ? 補助金に応募する前に、もう日本で出願してないといけないんですか?
そうです! ここがこの制度の大きなポイントです。「これから出願したい」ではなく、まず日本出願が先にあって、そこから外国へ広げていく案件が対象になります。順番を間違えると応募できません。
それは盲点でした。応募を考えたら、まず日本出願を急がないとですね。
商標出願だけは優先権がない外国出願も可とされています。ただ、日本の出願を基礎にしないPCT出願は日本への国内移行予定のものに限られるなど、細かい条件はありますよ。
PCT出願やハーグ出願……。専門用語がもうたくさん出てきました(笑)。
ですから、知財の専門家と相談しながら進めるのが現実的です。特許事務所の先生に「この補助金を使いたい」と伝えるところから始めてみてください。
(2)先行技術調査などの結果から見て、外国での権利取得の可能性が明らかに否定されないこと。(3)外国で権利が成立した場合に、その権利を活用した事業展開を計画していること。商標なら抜け駆け商標出願対策の意思があること、です。
「明らかに否定されない」という言い回しが独特ですね。
簡単に言えば、最初から権利化が難しそうな出願にはお金を出せないよ、という当然の線引きです。そして(4)は外国出願に必要な資金能力と資金計画を有していること。半額は後から戻るにしても、出願費用をいったん自分で支払えるかが問われます。
3つに整理されます。1つ目は外国特許庁への出願手数料、2つ目はそれに要する国内代理人・現地代理人の費用、3つ目は翻訳費用です。
出願手数料は分かるとして、代理人費用まで対象になるのは大きいですね。
海外出願は国の制度ごとに書式や手続きが違うので、現地代理人を通すのが一般的です。国内の代理人と現地の代理人、両方の費用が対象になるのは心強いですね。
翻訳費用も対象ですから、英語圏以外の国へ出す場合も安心です。
外国特許庁に出す以上、明細書や書類の翻訳が必要です。技術的な内容になればなるほど翻訳費用も膨らみますから、その半分を持ってくれるのは本当に助かりますよ。
出願言語によっては、数十万円単位で変わってきそうですもんね。
ええ。海外出願の費用は「出願する国が増えるほど」「言語が増えるほど」かさむ傾向があります。だからこそ、どの国に出願するのかを最初に絞り込む戦略が大事です。
助成対象経費として明記されているのはこの3分類です。逆に言えば、これ以外の費用をどう扱うかは、公募要領や交付要綱できちんと確認する必要があります。
「明記されていないから絶対にダメ」と自己判断するのも怖いですよね。
そうですね。疑問があれば、問い合わせ先の一般社団法人くまもとデザイン協議会に聞くのが一番です。メールは
office@kd21.or.jp、電話は096-277-1569。担当は古家さん・神村さんと案内されています。
相談先が明確で安心ですね。締切直前より、早い段階で聞くのが良さそうです。
では、申請の手順を詳しく聞かせてください。まず何から始めればいいですか?
まずは公募要領を読むことです。一般社団法人くまもとデザイン協議会のホームページに、公募要領や申請様式が掲載されています。応募資格や書類のリストは、ここで確認できますよ。
受付期間は令和8年8月31日から9月25日でしたね。
締切は9月25日(金)17時00分、しかも書類の「必着」です。さらに、電子メールの送付も同じタイミングで求められます。書類に不備があったら終わりですから、遅くとも9月中旬には動き始めたいですね。
夏休みと重なる時期ですし、計画的に動かないと間に合わなくなりそうだ。
そうなんです。出願の内容を固めて、代理人に見積もりを依頼して、翻訳の準備をして……と考えると、8月の応募開始を待っていては慌てます。
申請方法の「3点セット」という話がありました。詳しく教えてください!
まず1点目は、jGrantsのポータルサイト上で申請内容を入力することです。ただし、これだけでは申請受付になりません。ここがこの制度の要注意ポイントです。
えっ、入力しただけじゃダメなんですか? それは知らないと危ない!
2点目に、交付申請書(Word版)を電子メールで送付します。3点目に、交付申請書と添付書類を郵送で提出します。この3つがそろって、ようやく受付です。締切はすべて9月25日17時00分必着です。
入力・メール・郵送の3つとも期限を守らないといけないんですね。うっかり入力だけで満足する人がいそうだ。
多いでしょうね(笑)。jGrants上の操作が完了すると、なんとなく「申請した」気分になりますから。でも、この制度は書類の郵送が命です。
補助金申請の流れ- 1
応募要件を確認
日本出願済みか、中小企業者か、公募要領で確認
- 2
- 3
jGrantsで入力
ポータルサイト上で申請内容を登録
- 4
Word版をメール送付
office@kd21.or.jp宛てに送信
- 5
- 6
採択後に外国出願
年度内に出願を実施し状況調査に協力
特許と商標の2件を申請したい場合は、どうすればいいですか?
複数案件を申請する場合は、案件の数だけお申し込みください、と明記されています。つまり、特許1件と商標1件なら、それぞれ申請書類を用意して、別々に応募するのが基本です。
まとめて1枚の申請書で「特許と商標です」とはいかないんですね。
その通りです。案件ごとに上限額も違いますし、審査の対象も案件単位になります。書類の準備が2倍になることを見越して、スケジュールを組んでください。
一般社団法人くまもとデザイン協議会です。〒860-0845、熊本県熊本市中央区上通町5-1、4階。電話096-277-1569、メールアドレスは
office@kd21.or.jpです。
採択されたら、補助金をもらって終わり……ではないんですよね?
2つの注意点があります。1つは、採択された場合に企業名・所在地などが公表されること。もう1つは、事業完了後5年間の状況調査が行われることです。
企業名や所在地が公表されるのは、やはり補助金なので仕方ないですかね。
公的資金を受けている以上、透明性が求められるのは当然です。「こっそり補助金をもらう」ことはできませんから、その前提で応募してください。
その気持ちは分かります。ただ、海外出願に積極的だという姿勢は、取引先や金融機関からの評価につながる可能性もあります。マイナス面ばかりではないと思いますよ。
もう1つの注意点、5年間の状況調査って具体的に何をするんですか?
フォローアップ調査やヒアリングなどが行われると明記されています。せっかく国が費用を出したのですから、その出願がどう活用されたかを追跡するわけですね。
なので「海外出願して終わり」ではなく、その後どう事業展開するかを考えておかないといけません。外国で権利が成立したときに、その権利をどう使うのか。計画の質が問われる理由がここにあります。
応募の時点で5年後まで見据えた事業構想が必要なんですね。
補助金はゴールではなく、海外展開のスタート地点です。この制度をうまく使って、熊本の中小企業が世界で戦えるようになるといいですね。
申請を検討している事業者に向けて、最後に大事なポイントをまとめてください!
いちばん大事なのは「日本出願が先」という順序です。まだ日本で出願していない案件があるなら、まず日本国特許庁への出願を済ませてから、この補助金のスケジュールに合わせて動きましょう。
出願の順序以外に、気をつけるスケジュール感はありますか?
補助金の締切は2026年9月25日ですが、その前に発明や商標の内容を固め、出願先の国を選び、見積もりを取り、翻訳の準備をする必要があります。受付開始の8月31日を待っていたら、間違いなく慌てますよ。
そうですね。公募要領を読んで、要件に合いそうなら早めに問い合わせる。ここまでできれば、申請準備としてはかなり有利です。
書類の締切は9月25日17時必着。ここを絶対に外さないようにしたいですね。
郵送は配達記録が残る方法が安心です。余裕をもって、遅くとも締切の数日前には投函してくださいね。
こんな感じです。制度名が長いので、メモするときは「海外出願支援事業(熊本県2次)」で十分伝わると思いますよ。
分かりやすい! この制度をひとことで表すと、どうなりますか?
「海外に権利を取りに行く中小企業の背中を、費用の半分という形で押してくれる補助金」です。海外展開を本気で考えている熊本の事業者には、ぜひチャンスを逃さず動いてほしいですね。
本日はありがとうございました! この記事を見た皆さんが、海外出願の一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです!