室谷さん、今日は「海外出願支援事業」という補助金を教えてください。名前からして、特許とか商標の話ですよね?
そのとおりです。中小企業が海外で特許や商標を取ろうとすると、お金がかなりかかるんですよ。その外国出願にかかる費用の2分の1を助成してくれるのが、この中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業)です。
2分の1! それは大きいですね。上限はいくらなんですか?
1企業あたり300万円です。ただしこれは複数案件をまとめた場合の上限で、案件ごとにも上限があります。今回の募集は福岡県の3次募集で、締切は令和8年10月9日(金)の17時00分。しかも郵送必着です。
はい、ここが今回いちばんの落とし穴なので、後半でしっかりお話ししますね。
そもそも、なぜ海外出願に補助金が出るんですか? 日本で特許を取れば十分な気もするんですけど。
そこがポイントで、知的財産権は国ごとに独立しているんです。日本で特許を取っても、外国では権利として成立しない。進出先の国ごとに取得が必要なんですよ。
えっ、そうなんだ。日本で取ったら世界中で守られるわけじゃないんですね。
そうなんです。海外に事業展開しようとすると、国ごとに特許権や商標権を取る必要が出てくる。しかも外国出願の費用は高額で、中小企業にとっては大きな負担になります。そこで、外国への事業展開等を計画している中小企業等に対して、費用の半額を助成しているわけです。
商標のほうには別の事情もあって、日本で使っている商標が海外で第三者に無断で出願・登録されてしまう「抜け駆け商標」というリスクがあるんですよ。この対策にも使えます。
それは怖い話ですね。知らないうちに自分のブランドが使えなくなるなんて。
海外出願支援事業のここがポイント補助率は2分の1
外国出願にかかる対象経費の半額を助成
1企業あたり上限300万円
複数案件を申請する場合の上限
案件ごとの上限あり
特許150万円、実用新案・意匠・商標はそれぞれ60万円、抜け駆け対策商標は30万円
福岡県内の中小企業等が対象
みなし大企業を除く。地域団体商標は商工会議所・商工会・NPO法人等も対象
タイトルに「福岡県3次」とありますが、これはどういう意味なんですか?
この補助金は全国共通の仕組みで、窓口になっている都道府県等の中小企業支援センターごとに募集が行われます。福岡県では公益財団法人福岡県中小企業振興センターの知的財産支援センターが窓口で、今回が3回目の募集という意味です。
全国共通の事業を、各県が窓口になって実施しているわけですね。
そうです。福岡県の事業として対象になるのは福岡県内の事業者で、募集期間も福岡県の窓口が定めた日程になっています。
そこは注意点です。締切は窓口ごとに違います。福岡県は令和8年9月18日から10月9日(金)17時00分必着。自分の感覚ではなく、必ず福岡県の窓口の日程を見てください。
わかりました! 最初に締切をカレンダーに書き込みます。
金額をもう少し詳しくお願いします。300万円と聞くと、けっこう大きいですよね。
大きいです。ただ、これは1企業としての上限で、複数案件を申請した場合の合計上限なんです。1件ずつの上限が別に決まっています。
まず基本になるのは補助率です。補助対象経費の2分の1以内。ここが出発点になります。
2分の1以内、つまり半分まで出る可能性があるということですね。
そうです。そして1企業に対する上限が300万円。これは複数案件の場合の上限なので、何件出しても企業として300万円までということになります。
なるほど! じゃあ案件ごとの上限も見ないといけないんですね。
そう、そちらが本題です。特許は1案件あたり150万円、実用新案・意匠・商標はそれぞれ60万円、そして抜け駆け対策商標は30万円。これが案件ごとの上限です。
| 項目 | 上限額 |
|---|
| 1企業あたり(複数案件の場合) | 300万円 |
| 特許(1案件あたり) | 150万円 |
| 実用新案(1案件あたり) | 60万円 |
| 意匠(1案件あたり) | 60万円 |
| 商標(1案件あたり) | 60万円 |
| 抜け駆け対策商標(1案件あたり) | 30万円 |
こうなります。補助率はどれも2分の1なので、たとえば特許で案件上限の150万円を受け取るには、対象経費が300万円かかる計算になります。
なるほど、経費が300万円で補助が150万円。ぴったり上限ですね。
そういうことです。ただ、実際の経費は案件によって違うので、いくらになるかは公募要領と自分の出願内容を照らし合わせて確認してください。計算が不安なら窓口に相談するのがいちばん早いです。
次は対象者を教えてください。中小企業向けの制度ですよね?
はい、中小企業者、または中小企業者で構成されるグループが対象です。グループの場合は、構成員のうち中小企業者が3分の2以上を占めている必要があります。
それから、地域団体商標の外国出願については、商工会議所、商工会、NPO法人等も対象になります。ここは通常の中小企業とは別枠の考え方です。
地域団体商標というのは、地域の名前を入れた商標のことですよね。
はい、地域の産品やサービスを守るための商標です。これの外国出願は団体が動くケースが多いので、対象が広がっているわけですね。
なるほど! では中小企業者かどうかの判断はどこで見るんですか?
そこで出てくるのが「みなし大企業」という考え方です。中小企業者に見えても、実質的に大企業に支配されているような会社は除かれます。ここで引っかかると応募できません。
みなし大企業って、具体的にはどんなケースなんですか?
まず、発行済株式の総数または出資価格の総額の2分の1以上を、同一の大企業が所有している中小企業者等です。
次に、発行済株式の総数または出資価格の総額の3分の2以上を、複数の大企業が所有している中小企業者等。それから、大企業の役員または職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者等です。
役員の兼任でも該当するんですね。知らないと危ないなあ。
さらに、資本金または出資の総額が5億円以上の法人に、直接または間接に100%の株式を保有される中小企業者等も該当します。
100%子会社のケースですね。あともう一つありましたよね?
はい、間接補助金申請時において、確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者等です。所得が大きい場合もみなし大企業として扱われます。
すごく細かい! これは早めにチェックしないと申請書を書く前に終わってしまいますね。
応募できるかざっくりチェック中小企業者(みなし大企業を除く)に該当しますか?
はい日本国特許庁への出願済みか確認
優先権主張で外国出願する予定か確認
資金能力と資金計画を用意
いいえ地域団体商標の出願なら商工会議所・商工会・NPO法人等が対象
詳細な要件は公募要領で要確認
4つの要件があります。1つ目は、応募した時点で既に日本国特許庁に対して特許、実用新案、意匠または商標の出願を済ませていて、採択後にその出願を基礎に優先権を主張して外国出願を年度内に行う予定であることです。
そうです。ただし例外があります。商標出願については、優先権がない外国出願も認められています。それから、日本の特許出願を優先権主張の基礎にしないPCT出願(ダイレクトPCT出願を含む)については、日本への国内移行予定のものに限ります。優先権がないハーグ出願については、出願時に日本国を指定締約国に含むものに限ります。
PCTとかハーグとか、ここはかなり専門的ですね…。
ここは代理人と相談する場面です。2つ目の要件は、先行技術調査などの結果から見て、外国での権利取得の可能性が明らかに否定されないこと。3つ目は、外国で権利が成立した場合などに、その権利を活用した事業展開を計画している、または商標出願に関して外国での抜け駆け商標出願対策の意思を持っていることです。
権利を取ったあとにどう使うか、という視点なんですね。
そうなんです。そして4つ目が、外国出願に必要な資金能力および資金計画を持っていること。この4つをすべて満たす必要があります。
業種の縛りはあるんですか? うちみたいな業種でも大丈夫かなと心配で。
心配しなくて大丈夫そうなくらい、対象業種が細かく挙がっています。ここは安心材料ですよ。
まず農業、林業、漁業、鉱業・採石業・砂利採取業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業があります。ここだけでも相当な数ですよね。
製造業や建設業だけでなく、農林漁業まで入っているんですね。
さらに運輸業・郵便業、卸売業・小売業、金融業・保険業、不動産業・物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉、複合サービス事業、サービス業(他に分類されないもの)、公務(他に分類されるものを除く)、分類不能の産業まで、対象として挙がっています。
えっ、こんなにたくさん! ほぼどこでも候補になるじゃないですか。
そうなんです。だからこそ、業種で悩むより先に確認してほしいものがあります。
みなし大企業に該当しないか、そして出願の4つの要件を満たしているかです。業種は門前の話で、そのあとの関門のほうが厳しいんですよ。
はい。あと、使途として想定されているのは、新たな事業を行いたい、販路拡大・海外展開をしたい、研究開発・実証事業を行いたい、資金繰りを改善したい、まちづくり・地域振興支援がほしい、といった幅を持った目的です。外国出願は海外展開の入口なので、こうした目的と自然につながります。
うちはまさに海外に売り込みたいところなので、相性がよさそうです。
経費の話を詳しくお願いします。何が対象になるんですか?
対象経費は3つです。外国特許庁への出願手数料、それにかかる国内代理人・現地代理人の費用、そして同じくそれにかかる翻訳費用です。
そうなんです。この3つが柱です。それ以外の経費がどう扱われるかは、公募要領で確認してください。
出願手数料、代理人費用、翻訳費用。翻訳というのは現地の言葉に訳す費用ですよね?
はい、外国の特許庁に出すわけですから、その国の言語にする必要があります。だから翻訳費用もかかる。代理人も、国内と現地の両方が関わります。
そうですね。国内代理人が日本の出願をベースに手続きを進めて、現地代理人がその国の手続きを担当する。その両方の費用が見られているわけです。
助成対象になる経費と注意点- 外国特許庁への出願手数料
- 国内代理人・現地代理人の費用
- 翻訳費用
×デメリット
- 上記3つ以外の経費の扱いは公募要領で要確認
- 外国出願に必要な資金能力・資金計画が要件
- 採択されると企業名・所在地等が公表される
- 事業完了後5年間の状況調査がある
経費と補助額の関係をもう一度お願いします。頭の中でごちゃごちゃになりそうで。
補助率は補助対象経費の2分の1以内です。たとえば特許の場合、案件ごとの上限が150万円なので、対象経費が仮に300万円だと補助額は150万円で上限に到達します。それ以上経費がかかっても、そこから先は対象になりません。
商標や意匠、実用新案なら案件上限がそれぞれ60万円なので、対象経費が仮に120万円で上限に届く計算です。抜け駆け対策商標は上限30万円なので、対象経費が仮に60万円で到達します。
案件の種類によって到達点が違うんですね。整理するとそういうことか。
そして複数案件を申請する場合は、企業としての上限300万円も意識してください。案件ごとの上限を足し合わせても、企業として300万円を超える部分は対象になりません。
なるほど! 複数出すなら300万円の壁を先に考えるわけですね。優先順位づけが大事だ。
ここからは手続きの話を。締切が10月9日というのは聞きましたが、何をどう出せばいいんですか?
ここが今回いちばんの落とし穴です。jGrants上に入力しただけでは、申請受付になりません。
えっ、そうなの!? 電子申請で完結すると思っていました。
そうなんです。jGrantsでの入力に加えて、交付申請書および添付書類を必ず郵送で提出する必要があります。しかも10月9日(金)17時00分必着です。
必着です。さらに、交付申請書のWord版を電子メールで送付することも求められています。jGrantsの入力、郵送、メール。この3つがそろって初めて申請になります。
だからこそ早めに動いてください。書類をそろえるにも時間がかかりますし、郵送は日数もかかります。
公益財団法人福岡県中小企業振興センターの知的財産支援センターです。住所は福岡市博多区吉塚本町9番15号、福岡県中小企業振興センタービル6階。電話番号は092-622-0035、メールは
ipc@joho-fukuoka.or.jp、担当は井手さんと梅崎さんです。
そうですね。要件や申請様式は、公募要領と公益財団法人福岡県中小企業振興センター(福岡県知的財産支援センター)のホームページで確認するよう案内されています。そして、複数案件を申請する場合は、案件の数だけ申し込みが必要です。
まとめて1回じゃなくて、案件ごとに申し込むんですね。ここも見落としそう。
はい、忘れずに。jGrantsに入力しただけでは受付にならない、という点と合わせて、今回の最重要ポイントです。
申請の流れ- 1
- 2
公募要領と申請様式を確認
福岡県知的財産支援センターのページも確認
- 3
交付申請書と添付書類を用意
複数案件は案件の数だけ申請
- 4
jGrantsで電子申請を入力
入力だけでは受付にならない
- 5
交付申請書と添付書類を郵送
10月9日17時00分必着
- 6
交付申請書のWord版をメール送付
郵送とメールの両方が必要
令和8年度 福岡県3次のスケジュール2026年9月18日(金)
募集開始
交付申請書の受付がスタート
2026年10月9日(金)17時00分
応募締切
郵送必着。Word版のメール送付も必要
採択後
企業名・所在地等を公表
採択された場合は公表される
事業完了後5年間
状況調査
フォローアップ調査やヒアリング等が行われる
審査で見られるポイントを教えてください。ただ出願すればいいわけではないんですよね?
はい。要件がそのまま審査の軸になります。特に資金計画と、権利をどう活用するかという部分は丁寧に準備したほうがいいです。
外国での権利取得の可能性が明らかに否定されないこと、権利を活用した事業展開の計画があること、または抜け駆け商標出願対策の意思があること、そして資金能力と資金計画があること。このあたりは書類で示していくことになります。
そうなんです。せっかく取った権利をどう使うのか、という視点が問われます。海外展開の計画があるなら、その内容を具体的に伝えられるようにしておくと安心です。
なるほど! 事業計画の準備が大事だと。早めに社内で練ります。
採択された場合は、企業名や所在地等が公表されます。これは事前に承知しておく必要があります。
社名が出るのは覚悟がいるなあ。でも支援を受ける以上は仕方ないですね。
それから、事業完了後5年間の状況調査があります。フォローアップ調査やヒアリング等が行われるとされています。
長いですが、その分、権利をどう活かしていくかを考え続ける制度とも言えます。申請の時点で事業展開を計画していることが要件になっているので、自然な流れですね。
案件の数だけ申し込みが必要です。1件にまとめるのではなく、それぞれ申請してください。ここは間違えやすいところです。
どの案件を選ぶかで悩みそうです。予算には限りがありますし。
企業としての上限が300万円、案件ごとの上限は特許150万円、実用新案・意匠・商標はそれぞれ60万円、抜け駆け対策商標は30万円ですから、組み合わせを考える必要がありますね。
それがいちばん確実です。公募要領に当たって、自分の出願予定と照らし合わせてみてください。
公益財団法人福岡県中小企業振興センターの知的財産支援センターです。電話092-622-0035、メール
ipc@joho-fukuoka.or.jp、担当は井手さんと梅崎さん。所在地は福岡市博多区吉塚本町9番15号、福岡県中小企業振興センタービル6階です。
要件や申請様式の細かいところは、公募要領と福岡県知的財産支援センターのホームページで確認してください。jGrantsのページも必ず見ておきましょう。
わかりました。まず要領をダウンロードして、出願の状況と突き合わせます!
今日の話を振り返ると、補助率2分の1、上限は企業で300万円。でも郵送必着というのが最大の注意点でしたね。
そのとおりです。締切は令和8年10月9日(金)17時00分必着。郵送とメール、そしてjGrantsの入力をそろえる。ここを外すと申請が成立しません。
出願の要件も、みなし大企業の確認も、とにかく早めに動くのが大事ですね。
そうですね。海外展開を考えている福岡県の事業者にとって、外国出願の負担を軽くしてくれる制度です。まずは窓口に相談してみてください。担当の方も待ってくれていますよ。
はい! 今日の話を社内に持ち帰ります。ありがとうございました!