今回取り上げるのは「令和8年度 酒類業振興支援事業費補助金(第6期)」ですね。名前からしてお酒に関わる事業者向けの制度ですよね?
そのとおりです。実施するのは国税庁で、日本産酒類のブランディングや、インバウンドによる海外需要の開拓といった海外展開に向けた取組、それから国内外の新市場開拓などの意欲的な取組を支援します。狙いは日本産酒類の輸出拡大、酒類業の経営改革・構造転換、そして酒類業の健全な発達の促進です。
なるほど、単に売上を伸ばすためだけじゃなくて、業界の構造を変えていく色合いがあるんですね。
「第6期」と書いてありますけど、これは繰り返し募集がかかっている制度なんですか?
はい、期を分けて公募が行われていて、今回は第6期です。だからこそ国税庁のページには、過去の採択結果や、酒類事業者向け補助金を活用した取組事例集も公開されています。令和6年3月版と令和8年3月版の事例集が載っているので、どんな取組が採択されてきたのかを眺めておくだけでも、計画書の解像度が上がりますよ。
それは助かる! でも事例集を見る前に、まず締切を確認しないとですね。
そう、そこが最優先です。受付期間は令和8年10月8日から10月28日の12時まで。期間が短いので、まず手帳に書き込んでください。しかも初めての方はGビズIDの取得が先に必要で、場合によっては1〜2週間かかります。準備が間に合わなかったから期限を延ばす、という救済はありません。
補助対象者は、酒類事業者(製造業者、卸売業者、小売業者)、または酒類事業者を1者以上含むグループです。つまり製造・卸・小売のどこでも入り口はありますし、酒類事業者が1者入っていればグループでも応募できます。
ほんとに? じゃあ旅行会社と蔵元が組んで酒蔵ツーリズムをやる、なんていう形も考えられるわけですね。
そうした組み合わせが想定されているメニューも、ちゃんと用意されています。では金額の話に移りましょう。ここが今回いちばん皆さんが知りたいところだと思います。
この制度全体としては上限1,500万円、補助率は1/2又は2/3と案内されています。ただしこれは「枠」によって中身が違います。ここを混ぜたまま申請書を書き始めると、あとで金額が合わなくなります。
酒類業振興支援事業費補助金の特徴国税庁が実施
問い合わせ先は各国税局。沖縄県は沖縄国税事務所
酒類事業者またはグループ
酒類事業者を1者以上含むグループでも応募できる
2つの支援枠
海外展開支援枠と新市場開拓支援枠に分かれる
全国が対象
対象地域は全国。従業員数の上限による制約はなし
枠で違うんですね。海外展開のほうから教えてください。
海外展開支援枠は、補助率が補助対象経費の1/2、補助金額は1件当たり1,000万円上限、50万円下限です。ただし、複数の酒類事業者が集まって取組を推進する場合は上限額が増えて、最大1,500万円になります。その最大額になるのは6者以上の場合と明記されています。
えっ、1者でやるのと6者で集まるのとで、500万円も差が出るんですか!
出ます。しかも補助率は1/2のままなので、集まるほど計画の規模を大きくできる設計ですね。注意したいのは下限の50万円。これ未満の小さな計画では出せません。
こちらは500万円上限、50万円下限で、補助率は1/2又は2/3です。2/3が適用されるのは、従業員数が20人以下(卸売業・小売業は5人以下)の小規模な酒類事業者の場合。ここは大きな分かれ目になります。
小さい事業者のほうが手厚いんですね。でも卸と小売は5人以下って、なかなか厳しい線ですよ。
そうなんです。業種で線引きが変わるので、自分の会社がどちらに当たるか、従業員数の数え方も含めて公募要領で確認しておいてください。ここを勘違いしたまま1/2で組むと、自己負担が増えてしまいます。
頭がこんがらがってきました。表にしてもらえますか?
もちろんです。まず数字の表、そのあと図でも並べますね。
| 項目 | 海外展開支援枠 | 新市場開拓支援枠 |
|---|
| 補助率 | 補助対象経費の1/2 | 1/2又は2/3(従業員20人以下、卸・小売業は5人以下の小規模酒類事業者) |
| 補助金額 | 1件当たり1,000万円上限、50万円下限 | 1件当たり500万円上限、50万円下限 |
| 複数事業者での上限 | 最大1,500万円(6者以上の場合) | 公募要領で要確認 |
なるほど! 海外を狙うなら大きく、国内の新市場なら500万円が基本、と覚えればいいんですね。
まずはそう掴んでください。細かい経費の扱いは公募要領に載っているので、そこは必ず原文で確認を。では次、「自分はそもそも応募できるのか」を見ていきましょう。
海外展開支援枠と新市場開拓支援枠の比較| 項目 | 海外展開支援枠 | 新市場開拓支援枠 |
|---|
| 補助率 | 補助対象経費の1/2 | 1/2又は2/3(小規模事業者) |
| 補助上限 | 1,000万円 | 500万円 |
| 補助下限 | 50万円 | 50万円 |
| 複数事業者 | 最大1,500万円(6者以上) | 公募要領で要確認 |
| 複数の酒類事業者 | 集まるほど上限が増加 | 公募要領で要確認 |
酒類事業者、つまり製造業者・卸売業者・小売業者です。業種の区分でいうと製造業、卸売業・小売業、それから分類不能の産業が対象に入っています。対象地域は全国で、従業員数の上限による制約もありません。
グループで出す場合、リーダーは誰でもいいんですか?
要件は「酒類事業者を1者以上含むグループ」であることです。酒類事業者だけで組んでもいいし、酒類事業者1者と別業種の事業者で組んでも、要件上は成り立ちます。
えっ、そうなんですか。じゃあ観光事業者と組んで酒蔵ツーリズム、みたいな形も射程に入りますね。
想定されている取組の中身と噛み合っていれば、そうした組み合わせも考えられます。ただし誰が申請者になるか、経費を誰が支払うかで見え方が変わってきます。ここは公募要領を読んだうえで、必要なら所轄の国税局の酒類業調整官に相談するのが一番早いです。
さっきの20人以下、5人以下という線引きは、やっぱり重要ですよね?
非常に重要です。新市場開拓支援枠で2/3を使えるかどうかが変わるので、ここを取り違えると自己負担が増えます。卸売業・小売業は5人以下という狭い線なので、該当するかどうかは早めに確定させてください。
申請できるかどうかの分岐酒類事業者(製造・卸・小売)ですか?
はい単独で申請できる
海外展開支援枠は1,000万円上限
いいえ酒類事業者を1者以上含むグループか確認
該当すればグループで申請できる
ざっくりこの流れで、自分がどちらの枠を狙うか、補助率はどちらになるかを決めていきます。では次は日程です。いつまでに何をするのかを時系列で追いかけましょう。
締切は10月28日ですよね。そのあとどうなるんですか?
まず受付が令和8年10月8日から10月28日の12時まで。ここで気をつけたいのが、締切が「12時」だという点です。当日の午後に駆け込んでも間に合いません。
採択されたら、いつまでに事業を終えればいいんですか?
補助事業期間は交付決定日から令和9年2月28日までで、同日までに支払が完了している必要があります。つまり、事業そのものだけでなく支払まで終わっていないといけないんです。
うわ、意外と短い! 設備を入れるにしても、発注や納品のリードタイムが効いてきますね。
そうなんです。だから申請の時点で、いつ何が納品され、いつ支払うのかまで描いておく必要があります。逆に言えば、そこまで詰められている計画は強い、ということです。
審査結果は後日、国税庁から申請者あてに通知されます。採択された事業者には別途、補助金に関する交付要綱等が通知され、それに沿って交付手続きを進めます。そのときに、計上した補助対象経費について、内容や信憑性を確認できる書類の提出を求められます。
見積書だけじゃなくて、カタログや仕様書も出すんですね。ふだんから整理しておかないと危ないな。
さらに、採択された場合でも、予算の都合等により希望金額から減額される場合があります。ここは織り込んでおいてください。では、どんな取組が対象になるのかを見ていきます。
第6期のスケジュール令和8年10月8日
受付開始
Jグランツで電子申請
令和8年10月28日12時
受付締切
12時厳守。午後は間に合わない
交付決定後
事業スタート
交付決定日から事業期間が始まる
令和9年2月28日
事業期間終了
同日までに支払完了が必要
具体的に何をやれば対象になるのか、ここが知りたいです。
大きく分けて海外展開支援枠と新市場開拓支援枠があり、それぞれに取組メニューが並んでいます。まずは海外展開のほうから見ていきましょう。
1つめが、日本産酒類の海外販路拡大や商品等の高付加価値化に関する取組。2つめが、酒蔵の観光化や、地域における酒蔵ツーリズムプラン策定の取組。3つめが、酒類事業者による酒米産地との連携を活かした新たな取組で、こちらは海外展開またはインバウンド向けのものが対象です。
インバウンドを呼び込む側も「海外展開」に入るんですね。蔵を開くだけでも立派な対象なんだ。
そういうことです。では続いて、新市場開拓支援枠。こちらは4つのメニューです。
商品の差別化による新たなニーズの獲得、販売手法の多様化による新たなニーズの獲得、ICT技術を活用した製造・流通の高度化・効率化、そして酒類事業者による酒米産地との連携を活かした新たな取組です。
4つめは海外展開枠にもありましたね。両方に置かれているということは、軸になるテーマなんでしょうね。
そう読めます。酒米の産地との連携は、枠をまたいで重視されているテーマです。なお、経費の細かいルールは申請区分によって変わります。対象経費の一覧は公募要領に載っているので、そこは必ず原文を確認してください。
具体的な対象経費の品目は公募要領で要確認ですが、ひとつ明確な線があります。補助事業により取得した機械等の財産、または効用の増加した財産のうち、取得価格または効用の増加価格が単価50万円(消費税及び地方消費税相当額を含まない)以上の機械・器具・備品等は、処分制限財産として扱われます。
処分制限って、勝手に売ったりできないということですか?
原則として国税庁長官の承認なく処分できません。処分して収入が出た場合はその一部を国に納付し、納付額はその財産に係る補助金額が上限です。ただし、本事業における試作開発の成果を活用して実施する事業に使うために転用する場合、事前承認を得れば納付義務が免除される道もあります。
なるほど、買って終わりじゃないんですね。次は審査の話を聞きたいです。
同じ予算なら、通るかどうかはどこで決まるんでしょう?
公募要領には「評価基準」の基礎項目というものがあって、そこを満たしていないと認められた場合は、補助金の交付決定後であっても取り消されることがあります。まずはそこが土台になります。
あります。まず、酒類製造における原料用米、いわゆる酒米の価格高騰等の影響を受けた場合、または受ける見込みを含めて、その影響を踏まえて行う取組で、補助事業計画書等に記載された内容が当該影響への対応として関連性を有すると認められれば、優先採択の対象になります。
えっ、そんな具体的な条件があるんですか。該当するなら絶対に書いたほうがいいですね。
もうひとつあります。米国関税措置による影響を受けた場合、こちらも受ける見込みを含めて、その対応として関連性が認められる取組が優先採択の対象です。
あります。事業の経費が全て設備投資で、かつ設備の導入のみで完結する事業は、審査に当たって評価が劣後します。設備を入れる場合でも、補助事業の一環として設備導入以外の取組を行うなら、経費が発生するかどうかにかかわらず、その取組を確実に補助事業計画書に記載してください。
それと、補助事業期間中にテスト販売を除き、成果物の販売および販売につながる営業行為が行われる事業も、評価が劣後します。ここは見落としやすいので注意してください。
審査で有利になる要素と不利になる要素- 酒米の価格高騰等の影響を踏まえた取組は優先採択
- 米国関税措置の影響への対応は優先採択
- 設備導入以外の取組も計画書に記載すると評価につながる
×デメリット
- 経費が全て設備投資で、設備導入のみで完結する事業は評価が劣後
- テスト販売を除く成果物の販売・販売につながる営業行為は評価が劣後
- 書類の不備や不足は不採択
うわ、普通に営業しちゃいそうだな……。計画書の書き方が勝負ですね。
まさにそこです。さらに、迷ったときの相談先も公募要領に示されています。該当するかどうか判断に迷うなら、所轄の国税局の酒類業調整官に聞いてください。では次の章、実際の申請手続きに移りましょう。
令和7年1月以降の公募開始分から、申請書などの提出方法が、デジタル庁が運用する補助金申請システム「Jグランツ」による電子申請に変更されています。今回はまさにその方式です。
Jグランツを利用するには、法人・個人事業主向けの政府共通認証システム、GビズIDの取得が必要です。郵送申請の場合は1〜2週間かかりますので、公募申請期限に間に合うように準備してください。GビズIDの準備が間に合わないことによる申請期限の猶予はありません。
マジですか。締切の3週間前に気づいた時点で、もうかなり危ない?
実際、そこが最初の関門です。Jグランツの操作方法については電子申請マニュアル、制度の疑問についてはQ&Aが国税庁のページに用意されています。初めての人は、この2つを先に読むところから始めるのがおすすめです。
申請書の申請先は、国内における主たる事業実施場所を所轄する国税局です。沖縄県の場合は沖縄国税事務所になります。必ず申請先に誤りがないか確認したうえで、Jグランツにより申請してください。
申請前に、書類に不備や不足がないことを必ず確認してください。不備等がある場合は不採択となります。さらに、補助金交付候補者の採択結果についての異議申し立ては一切受け付けていません。出す前のチェックがすべてです。
補助金申請の流れ- 1
GビズIDを取得
郵送申請の場合1〜2週間。期限の猶予はなし
- 2
- 3
実施場所を所轄する国税局を確認
沖縄県は沖縄国税事務所
- 4
Jグランツで電子申請
令和8年10月28日12時まで
- 5
- 6
なるほど、流れが見えました。次は採択されたあとに気をつけることを教えてください。
そんなことはありません。特に新市場開拓支援枠には特有の条件があります。給与支給の増加計画を達成できない等の場合、補助金額の一部を返還することになります。
給与の目標って、具体的にどこまで求められるんですか?
新市場開拓支援枠の申請要件として、3〜5年の事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる事業計画を策定していること。かつ、売上額または付加価値額を年率平均3%以上増加させる事業計画を策定していることが求められます。
けっこうハードル高い! 人を増やすか、給与を上げるか、どちらかが要るわけですね。
未達だったときの返還額は、導入した設備等の簿価または時価のいずれか低い方の額のうち、補助金額に対応する分です。ただし、給与支給総額の年率増加率平均が「売上額または付加価値額の年率増加率平均÷2」を超えている場合や、天災など事業者の責めに帰することができない理由がある場合は、この一部返還は求めません。
売上が伸びなかったから給与も上がらなかった、という場合にまで返せと言われると厳しいですもんね。救済があるのは助かる。
とはいえ、目標を書いて出す以上、達成に向けて動く前提です。次は不正や財産の扱いです。
虚偽の内容による申請、補助金の目的外利用、補助金額を不当に釣り上げるといった不正な行為が行われた場合は、補助金適正化法および交付要綱に基づき、交付決定の取消となります。すでに交付済みなら、年10.95%の加算金を賦課したうえで返還を求めます。
さらに、不正の内容や事業者名の公表、警察への通報等を行うことがあります。偽りその他不正の手段により交付を受けた者は、5年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、またはこれを併科の対象になります。名義貸しなど、実質的に事業を行っていないと認められる場合も、交付決定後であっても取り消されることがあります。
徹底してますね……。逆に言えば、まじめに出せば怖くない、ということですね。
そうです。それから、補助事業を完了した事業者には事業化状況報告書の提出が求められます。国税庁のページには提出期限として令和8年9月27日が示されていますので、採択されたら早めに資料を整えてください。最後に全体を振り返りましょう。
まず金額です。海外展開支援枠は1,000万円上限で、6者以上なら最大1,500万円、補助率は1/2。新市場開拓支援枠は500万円上限で、小規模事業者なら2/3、両方とも下限は50万円です。
あらためて、いちばん大事なことを挙げるなら何ですか?
締切の早さです。受付は令和8年10月8日から10月28日の12時まで。Jグランツ申請にはGビズIDが必要で、準備に1〜2週間かかることもある。ここを甘く見ると、実力以前に土俵に上がれません。
そして2つめが、給与支給総額と売上額・付加価値額の計画です。新市場開拓支援枠では3〜5年の事業計画を書く必要があり、ここは数字を作り込むので時間がかかります。
優先採択の話もありましたよね。自分が該当するかわからないときは?
事業実施場所を所轄する国税局の酒類業調整官に相談してください。問い合わせ先は各国税局、沖縄県においては沖縄国税事務所です。
ありがとうございます! これは、お酒に関わる事業者さんにとって間違いなく価値のある情報ですね。
そう思います。詳細は公募要領とQ&Aで必ず確認してください。計画を立てる時間も含めて、今日から動き出しましょう。