室谷さん、今日のテーマは青森県の「海外出願支援事業」の2次公募ですよね。名前からすると、海外で特許を取る費用の話ですか?
そのとおりです。外国への事業展開等を計画している中小企業等に対して、外国出願にかかる費用の半額を助成する制度です。ねらいは、中小企業の戦略的な外国出願を促進すること。海外出願の費用が重くて踏み出せない会社を後押しする仕組みですね。
半分! それは大きい。出願費用って高いイメージがありますもんね。
まさにそこです。特許庁の案内でも、外国出願費用をはじめとする海外での知的財産活動費は高額で、資力に乏しい中小企業にとっては大きな負担になると書かれています。だからこの補助があるわけです。
しかも今回は2次公募で、募集期間は2026年9月7日から10月5日まで。まだ動けるタイミングなのが大きいですね。
基本から教えてください。知的財産権って、日本で取れば海外でも守られるわけじゃないんですよね?
そこが出発点です。知的財産権は国ごとに独立していて、日本で特許を取得したり商標を登録したりしても、外国では権利として成立しません。進出先でも国ごとに取得が必要なんです。
えっ、そうなんだ。じゃあ展開する国が増えるほど、費用も増えていく。
そういうことです。でも、進出先で特許権や商標権を持っていると、自社の技術力やブランドの裏付けになって海外での事業展開を進めやすい。模倣被害への対策にも有効ですし、商標を他社に先取りされて自社ブランドが使えなくなるリスクも回避できます。
守りであり、攻めでもあるわけですね。その費用を半分見てくれると。
はい。だから「権利は欲しいけど費用が……」と止まっていた会社に向いた制度です。
枠組みとしては特許庁の「令和8年度中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業)」で、各都道府県等の中小企業支援センター等が窓口になって、全国の中小企業が支援を受けられる仕組みです。青森県の窓口は一般社団法人青森県発明協会。東北経済産業局が東北各県の公募情報を順次お知らせしています。
へえ、全国共通の枠組みに、青森県の窓口が乗っている感じか。
そうですね。全国を対象にした公募は独立行政法人工業所有権情報・研修館、いわゆるINPITで申請を受け付けています。ただ、今回の2次公募は青森県の窓口経由の募集なので、青森県内に本社または事業所があることが地理条件になります。
ええ。だから近くの窓口に相談しながら進められるのが、この形のいいところです。
海外出願支援事業の特徴補助率は1/2以内
外国出願にかかる対象経費の半額を助成
1企業あたり上限300万円
複数案件を出願する場合は企業単位の上限が適用
案件ごとの上限あり
特許150万円、実用新案・意匠・商標60万円、抜け駆け対策商標30万円
青森県内の中小企業等が対象
本社または事業所が青森県内にあること
日本出願済みが前提
優先権主張をして年度内に外国出願する予定の案件
全体像が見えてきました。そろそろ金額を細かく知りたいです。
助成対象経費の1/2以内です。半分以内、と覚えてください。そして1企業に対する助成金の上限額が300万円です。
300万円! それは大きい。でも、案件ごとにも上限があるんですよね?
よくご存じで。1申請案件あたりだと、特許が150万円、実用新案・意匠・商標はそれぞれ60万円、そして抜け駆け対策商標は30万円です。
そうなんです。だから「1企業300万円」は、複数案件を出すときの企業トータルの天井だと考えると分かりやすいです。
表にしてもらえますか。頭がこんがらがってきました。
はい、こちらです。ここは申請前に必ず確認してください。
| 区分 | 金額 |
|---|
| 助成率 | 助成対象経費の1/2以内 |
| 1企業に対する助成金の上限額 | 300万円 |
| 1申請案件あたり:特許 | 150万円 |
| 1申請案件あたり:実用新案・意匠・商標 | それぞれ60万円 |
| 1申請案件あたり:抜け駆け対策商標 | 30万円 |
なるほど。で、実際にいくら出るかは、かかった費用の半分と、この案件上限の小さいほうになるわけですね。
その理解で合っています。たとえば特許出願の対象経費が400万円なら、半分は200万円ですが、特許の案件上限が150万円なので助成は150万円で頭打ちです。
半分で50万円。商標の案件上限60万円以内なので、そのまま50万円ですね。
特許150万円と商標50万円で、企業トータル200万円。300万円の天井にはまだ余裕がある。
そういうことです。複数案件を出すと企業上限に近づくので、どの案件をいつ出すかは戦略次第になります。
特許、実用新案・意匠・商標、抜け駆け対策商標。この3グループの違いをもう一度。
特許は発明の権利化、実用新案・意匠・商標はそれぞれの出願、抜け駆け対策商標は第三者による先取り出願への対策を目的とした商標出願です。
同じ商標でも、通常の商標出願と抜け駆け対策で上限が違うんですね。
そこが間違えやすいポイントです。30万円と60万円、どちらの枠で申請するのかを意識してください。
案件の種類ごとの上限を比較| 項目 | 特許 | 実用新案・意匠・商標 | 抜け駆け対策商標 |
|---|
| 1案件あたりの上限額 | 150万円 | それぞれ60万円 | 30万円 |
| 対象となる出願 | 特許出願 | 実用新案・意匠・商標の出願 | 商標出願 |
| 優先権の扱い | 日本出願を基礎に優先権主張 | 商標は優先権なしの外国出願も可 | 商標出願が対象 |
| 活用のねらい | 発明を海外で守る | 権利やブランドを海外で守る | 第三者による先取り出願への対策 |
対象は「中小企業者」ですよね。個人事業主はどうなんですか?
対象です。東北経済産業局の案内では、中小企業者には法人資格を有しない個人で事業を営んでいる方、つまり個人事業主も含むとされています。
それから、中小企業者で構成されるグループも対象です。ただし、構成員のうち中小企業者が2/3以上を占める必要があります。
グループで申請するケースもあるんだ。でも、まず確認すべきは「みなし大企業」でしたよね。
そう、そこが関門です。次で詳しく見ていきましょう。
資本関係で弾かれるやつですね。具体的にはどういう基準なんですか?
5つの類型があります。まず、発行済株式の総数または出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している場合。次に、3分の2以上を複数の大企業が所有している場合です。
親会社が巨大だと、ここで引っかかる可能性があると。
そうですね。加えて、大企業の役員または職員を兼ねている人が役員総数の2分の1以上を占めている場合、資本金または出資の総額が5億円以上の法人に直接または間接に100%の株式を保有される場合も該当します。
100%子会社もダメなのか。あと、所得の条件もありましたよね?
はい。間接補助金申請時において、確定している直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える場合も、みなし大企業に該当します。
| みなし大企業の類型 | 内容 |
|---|
| ア | 発行済株式の総数または出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業者等 |
| イ | 発行済株式の総数または出資価格の総額の3分の2以上を複数の大企業が所有している中小企業者等 |
| ウ | 大企業の役員または職員を兼ねている者が、役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者等 |
| エ | 資本金または出資の総額が5億円以上の法人に直接または間接に100%の株式を保有される中小企業者等 |
| オ | 確定している直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者等 |
地域団体商標の外国出願については、商工会議所、商工会、NPO法人等が対象です。特許庁のページでは、事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合、商工会、商工会議所およびNPO法人も応募できると案内されています。
地域のブランドを守るための出願も、この補助の射程に入っているわけですね。
ええ。法人でも個人でも、まずは自分の立場がどこに当たるかを窓口で確認するのが早いです。
出願の中身にも条件がありましたよね。順番に教えてください。
1つ目は、応募時に既に日本国特許庁に対して特許・実用新案・意匠・商標のいずれかを出願済みで、採択後にその出願を基礎に優先権主張をして、外国出願を年度内に行う予定であることです。
先に日本で出願しておくのが前提なんだ。間に合ってないと、そもそも応募できないと。
そうなんです。ここは時間がかかるので、早めの確認が命です。
はい、商標出願については優先権がない外国出願も可能です。それから、日本の特許出願を優先権主張の基礎にしないPCT出願、ダイレクトPCT出願を含みますが、これは日本への国内移行予定のものに限られます。優先権がないハーグ出願は、出願時に日本国を指定締約国に含むものに限ります。
細かい……ここは公募要領を熟読するしかないですね。
2つ目は、先行技術調査等の結果からみて、外国での権利取得の可能性が明らかに否定されないこと。3つ目は、外国で権利が成立した場合等において、当該権利を活用した事業展開を計画している、または商標出願に関して外国における抜け駆け商標出願対策の意思を有していることです。
権利を取って終わりじゃなくて、その先の事業を語れと。
そこが大事なところです。4つ目は、外国出願に必要な資金能力および資金計画を有していること。あわせて、経済産業省におけるEBPMに関する取組に協力することも求められます。
EBPMって、証拠に基づく政策立案のことですよね。
よくご存じで。限られた予算と資源のもと、各種の統計を正確に分析して効果的な政策を選んでいく取り組みです。それと、採択されると企業名・所在地等が公表されること、事業完了後5年間の状況調査が行われることも覚えておいてください。
対象は大きく3つです。外国特許庁への出願手数料、それに要する国内代理人・現地代理人費用、そしてそれに要する翻訳費用です。
特許庁のページでは「外国特許庁への出願手数料、国内・現地代理人費用、翻訳費用 等」と案内されています。細かい範囲は公募要領で確認してください。
「等」の部分は、自分で判断せずに窓口に聞くのがよさそうですね。
対象外の範囲は、この情報だけでは判断できません。公募要領で要確認です。ただ、この制度のメリットと注意点ははっきりしています。
まず、jGrants上に入力しただけでは申請受付になりません。交付申請書と添付書類を、必ずメールまたは郵送で提出する必要があります。それと、本公募や本事業における各種申請について、その作成等を行政書士または行政書士法人以外の者が、他人の依頼を受けて報酬を得て代理することは、行政書士法第19条によりできません。
えっ、そこは知らないとまずい。自分で書くか、行政書士に頼むか。
そうですね。採択後の公表や5年間の状況調査も含めて、応募前に理解しておくべきポイントです。
この補助金のメリットと注意点- 外国特許庁への出願手数料が対象になる
- 国内代理人・現地代理人費用が対象になる
- 翻訳費用が対象になる
- 助成率は対象経費の1/2以内、1企業あたり上限300万円
×デメリット
- jGrantsへの入力だけでは申請受付にならない
- 交付申請書と添付書類はメールまたは郵送での提出が必要
- 代理して作成できるのは行政書士または行政書士法人に限られる
- 採択されると企業名・所在地等が公表される
- 事業完了後5年間の状況調査がある
ここで最初の落とし穴があります。jGrants上に入力しただけでは申請受付になりません。交付申請書および添付書類を、必ずメールまたは郵送にて提出する必要があります。
マジですか! ポータルに入力して完了だと思っていました。
これ、見落とすと本当に終わってしまうところなので、スケジュールには余裕を持ってください。要件の詳細は公募要領に載っています。
jGrantsを使うには、何か事前準備が要りますか?
jGrantsのポータルではGビズIDの案内が出ています。取得に時間がかかることがあるので、公募期間が始まってから慌てないように先に準備しておきましょう。
メンテナンスの時間帯に当たると、それだけで焦りますもんね。
実際、jGrantsのポータルではGビズIDのメンテナンスのお知らせも出ています。期間が決まっているものなので、時間帯も意識しておくといいですね。手順の細部は公募要領と窓口の案内に従ってください。
申請までの流れ- 1
GビズIDを準備
jGrantsの入力に必要。取得に時間がかかる場合がある
- 2
公募要領で要件を確認
対象経費・応募資格・出願要件をチェック
- 3
日本国特許庁への出願状況を確認
応募時に日本への出願済みであることが前提
- 4
jGrantsに入力
ただし入力しただけでは申請受付にならない
- 5
交付申請書と添付書類を提出
必ずメールまたは郵送にて提出
- 6
採択後の公表と状況調査
企業名等が公表され、事業完了後5年間の調査がある
流れが見えたら、次は「どう通すか」が気になってきます。
要件そのものが審査の観点になります。とくに3つ目の要件、「当該権利を活用した事業展開を計画している」または「商標出願に関し、外国における抜け駆け商標出願対策の意思を有している」ことは、書類で説明が必要です。
権利を取ること自体じゃなくて、取ったあとの絵を描けと。
そういうことです。抜け駆け商標というのは、日本国において既に出願または登録済みの商標が、海外において第三者によって無断で出願・登録された商標のこと。それを防ぐための出願にも助成が出ます。
まさに。だから「対策の意思がある」ことを示す必要があります。資金能力と資金計画も同じで、出願費用を払える裏付けを準備してください。
まず、日本への出願がまだ済んでいないケース。応募時点で日本国特許庁への出願済みが前提なので、これから出願して間に合わせるのは難しいです。
次に、出願の種類によって優先権の扱いが違う点。商標は優先権がない外国出願も可能ですが、特許で日本の出願を基礎にしないPCT出願は日本への国内移行予定のものに限られます。ハーグ出願にも条件があります。
自分がどのパターンに当てはまるか、早めに確認したほうがよさそうですね。
そして3つ目が提出方法。jGrantsへの入力で満足してしまうパターンです。これは本当にもったいないですよ。
2次公募は2026年9月7日から2026年10月5日まで。東北経済産業局の案内では10月5日17時00分必着とされています。
必着! 消印有効じゃないんですね。郵送だと逆算が怖いな。
そこは特に注意してください。メールまたは郵送での提出なので、郵送なら早めに送るのが安全です。
青森県の第1回公募は2026年5月25日から6月29日17時00分必着で、すでに終了しています。今回が2次公募です。
じゃあ、これが今年最後のチャンス……と言い切れるものなんですか?
追加の公募があるかどうかは、この情報では分かりません。ですから、準備が整っている人はこの期間で動くのが現実的です。
令和8年度(2026年度)のスケジュール2026年5月25日〜6月29日
青森県 第1回公募
6月29日17時00分必着(終了)
2026年9月7日
第2回公募 開始
募集スタート
2026年10月5日
第2回公募 締切
17時00分必着。メールまたは郵送で書類を提出
ここまでの内容を、最後にひとつの表にまとめてください。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 【青森県】令和8年度中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業)2次公募 |
| 実施機関/事業名 | 中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業) |
| 補助金額 | 上限300万円 / 補助率 1/2 |
| 募集期間 | 2026年9月7日〜2026年10月5日 |
| 対象地域 | 青森県 |
| 対象業種 | 漁業/建設業/製造業/電気・ガス・熱供給・水道業/情報通信業/複合サービス事業/サービス業(他に分類されないもの)/公務(他に分類されるものを除く)/分類不能の産業/農業、林業/鉱業、採石業、砂利採取業/運輸業、郵便業/卸売業、小売業/金融業、保険業/不動産業、物品賃貸業/学術研究、専門・技術サービス業/宿泊業、飲食サービス業/生活関連サービス業、娯楽業/教育、学習支援業/医療、福祉 |
| 使途 | 販路拡大・海外展開をしたい |
| 地理条件 | 青森県内に本社または事業所があること |
| 公式URL | https://www.jgrants-portal.go.jp/subsidy/a0WfQ000003I7irUAC |
それだけ多くの業種が対象に含まれているということです。自分の業種が入っているか、まずここを確認してください。
一般社団法人青森県発明協会です。住所は〒030-8570 青森市長島一丁目1番1号、青森県庁北棟1階。電話は017-762-7351です。当事業の詳細は協会のホームページでも案内されています。
要件の詳細は公募要領に委ねられている部分が多いので、書類を組み立てる前に一度電話で確認するのが安全ですよ。
結局、うちの会社が使えるかどうかは、どう見極めればいいですか?
確認するのは3つです。青森県内に本社または事業所があるか。中小企業者に当たり、みなし大企業に該当しないか。そして、日本国特許庁への出願済み案件があって、年度内に外国出願する予定があるかです。
そうです。どれか1つでも欠けると、残念ながら応募できません。
逆に言えば、そろっているなら、あとは書類と提出方法だけ。
そこまで来たら、あとは締切までの段取りです。10月5日17時00分必着、提出はメールまたは郵送。jGrantsへの入力で終わらせないことだけ、忘れないでくださいね。
応募できるかチェック青森県内に本社または事業所がある?
はい日本国特許庁へ出願済みで、年度内に外国出願する予定があるか確認
みなし大企業に該当しないか確認
すべて満たせば応募できる
今日は金額も要件も提出方法も、全部聞けました。ありがとうございました!
出願は時間がかかる手続きなので、気になった時点で動くのがいちばん。窓口の電話番号は017-762-7351です。迷ったら聞いてみてください。