室谷さん、今日は事業承継・M&A補助金の16次公募、PMI推進枠の「事業統合投資類型」を教えてもらえるんですよね。名前が長すぎて、正直どこから読めばいいのか分からないんですけど……。
そうなんですよ、名前だけ聞くと「PMI? 事業統合?」ってなりますよね(笑)。ひと言でいうと、M&Aで経営資源を譲り受けたあとに、その事業を一つにまとめていくための投資を後押しするお金です。
なるほど! M&Aの「あと」なんですね。買収資金が出るわけじゃない、と。
そこが大事なポイントです。中小企業庁の公募ページには、PMI推進枠は「M&Aに伴い経営資源を譲り受ける予定の中小企業等に係るPMIの取組」を対象にして、事業統合投資類型では設備投資に係る費用を補助すると書かれています。
ほんとだ。じゃあ「買って終わり」じゃなくて「買ったあとどうするか」を見ている制度なんですね。
まさに。まずこの立ち位置を押さえておくと、あとの説明がすっと入りますよ。
M&Aで事業を譲り受けて、これから設備を入れ替えたり、生産をまとめたりする場面です。主な対象者として「M&A後の経営統合、事業統合を考えている方」が挙げられています。
そうですね。譲り受けた側が動く、というのがこの類型の性格です。使途の欄にも「事業を引き継ぎたい」と書かれています。
ふむふむ。逆に、譲る側の費用はここでは扱わないんですね。
はい。今回の事業統合投資類型は譲り受ける側のための類型です。制度の目的は、事業承継・事業再編・事業統合を契機とした新たな取組の経費の一部を補助して、生産性向上による経済の活性化を図ること。根拠法令は、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律、中小企業基本法、商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律です。
目的がはっきりしていると、申請書の書き方も変わってきそうですね。
そうなんです。そこがぶれると審査で刺さらないので、最初に押さえておきましょう。
事業統合投資類型の特徴譲り受けた側の統合投資を後押し
M&A後の経営統合・事業統合のための設備投資が対象
補助上限は最大1,000万円
一定の賃上げを実施する場合、800万円から1,000万円に引き上げ
小規模事業者なら補助率2/3
中小企業者等のうち小規模事業者に該当する場合
廃業・再チャレンジ枠と併用可
併用時はPMI推進枠事業統合投資類型として申請する
でも、廃業・再チャレンジ枠と併用できるって聞いた気がするんですよ。
はい、中小企業庁の公募ページに「廃業・再チャレンジ枠は、事業承継促進枠・専門家活用枠、PMI推進枠と併用申請できます」と明記されています。
ただし、jGrants側の注意点に「廃業・再チャレンジ枠と併用にて申請する場合は、PMI推進枠事業統合投資類型として申請すること」とあります。ここを間違えると形式でつまずきます。
そうなんですよ。申請フォームの選び方は最初に決まるので、この一文は真っ先に確認しておきましょう。
はい。次は金額の話ですよね。「いくらもらえるの?」が一番気になります。
jGrantsの掲載では補助上限が1,000万円、補助率が2/3以内 又は 1/2以内とされています。中小企業庁の公募ページでは事業統合投資類型の補助上限を800万円〜1,000万円、補助率を1/2・2/3と案内しています。
800万円と1,000万円、どっちが本当なんですか?
条件によって変わります。一定の賃上げを実施する場合、補助上限が800万円から1,000万円に引き上げられる、という整理です。
はい。ただし賃上げの具体的な水準や判定方法は公募要領で要確認です。自分のケースに当てはめて確認してください。
その「一定の賃上げ」って、どこで判定されるんですか?
具体的な水準は公募要領で要確認です。この記事では断定できません。ただ、賃上げを実施すると上限が1,000万円に上がる、という構造は中小企業庁の公募ページに示されています。
中小企業者等のうち、小規模事業者に該当する場合は2/3。それ以外は1/2という整理です。
そうなんです。だからこそ、自分が「小規模事業者等」に当てはまるかを先に確認するのが大事です。
「小規模事業者等」って、どうやって判定するんですか?
商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律第2条に準じた定義が公募要領にあります。製造業その他は従業員20人以下、商業・サービス業は5人以下、サービス業のうち宿泊業・娯楽業は20人以下です。
はい、ここでいう「商業」は卸売業と小売業を指します。そして資本金や従業員数の「中小企業者等」の定義も別にあります。二段構えなので順番に確認しましょう。
じゃあ計算例も知りたいです。たとえば補助対象経費が600万円だったら?
補助率1/2なら300万円、小規模事業者で2/3なら400万円。どちらも上限1,000万円の範囲内です。あくまで計算のイメージですが、感覚をつかむにはいいですよ。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 補助上限 | 800万円〜1,000万円(一定の賃上げを実施する場合、800万円から1,000万円に引き上げ) |
| 補助率 | 2/3以内 又は 1/2以内 |
| 補助率の分かれ目 | 中小企業者等のうち小規模事業者に該当する場合:2/3 |
| jGrants掲載値 | 補助上限額 10,000,000円/補助率 2/3以内 又は 1/2以内 |
けっこう広いです。jGrantsの掲載では建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、複合サービス事業、サービス業、公務、分類不能の産業、鉱業・採石業・砂利採取業、運輸業・郵便業、卸売業・小売業、金融業・保険業、不動産業・物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉が挙げられています。
そうですね(笑)。ただ業種が合っていても、ほかにたくさんの要件があります。そこを一個ずつ見ていきましょう。
中小企業基本法第2条に準じた定義が公募要領にあります。製造業その他は資本金3億円以下、または常時使用する従業員300人以下。卸売業は1億円以下または100人以下。小売業は5千万円以下または50人以下。サービス業は5千万円以下または100人以下です。
はい、その「または」の読み方が大事です。あと注記もあって、ゴム製品製造業の一部は資本金3億円以下または従業員900人以下、ソフトウエア業・情報処理サービス業は3億円以下または300人以下、旅館業は5千万円以下または200人以下とされています。
そうなんです。医者(個人開業医)や農家も、資本金または従業員の基準を満たせば中小企業者等に含まれます。ただし対象事業に留意する必要があるので、該当する場合は公募要領の事業統合投資の要件を確認してくださいね。
| 業種分類 | 定義 |
|---|
| 製造業その他 | 資本金3億円以下、又は従業員300人以下 |
| 卸売業 | 資本金1億円以下、又は従業員100人以下 |
| 小売業 | 資本金5千万円以下、又は従業員50人以下 |
| サービス業 | 資本金5千万円以下、又は従業員100人以下 |
| 小規模事業者等(製造業その他) | 従業員20人以下 |
| 小規模事業者等(商業・サービス業) | 従業員5人以下 |
| 小規模事業者等(宿泊業・娯楽業) | 従業員20人以下 |
対象です。公募要領の定義でも「会社及び個人事業主」と書かれています。ただし条件が厳しめで、「個人事業の開業届出書」と「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出した日から5年が経過していること、確定申告書Bと所得税青色申告決算書の写しを提出できることが求められます。
そうなんです。電子申告の場合は受付が確認できるメール詳細や受信通知の追加提出、それがなければ納税証明書〔その2〕や課税証明書の追加提出も必要とされています。
そうですね。あと外国籍の方は、住民票に「国籍・地域」「在留期間等」「在留資格」「在留期間等の満了の日」「30条45規定区分」が明記されたものを添付する必要があります。
申請時点で設立登記および3期分の決算及び申告が完了していることが必要です。
そうですね。設立して間もない法人は、今回のタイミングでは出せない可能性が高いです。
逆に、要件さえ満たせば業歴の長い会社は有利なんですね。
そういう見方もできます。まずは自社が応募資格を満たすか、チェックリストで潰していきましょう。次は経費の話に移ります。
中小企業庁の公募ページでは、PMI推進枠の補助対象経費として設備費、外注費、委託費などが挙げられ、事業統合投資類型では設備投資に係る費用を補助すると説明されています。
ただ、細かい対象・対象外の区分は公募要領で要確認です。この記事では、公的情報に書かれている以上のことは言えません。
はい。公募要領の経費一覧と、自分の計画を必ず突き合わせてください。
「設備投資」って、たとえばどういうものが想定されるんですか?
具体的な品目リストは、この記事の根拠には入っていません。公募要領の経費区分を確認するのが確実です。代わりに押さえてほしいのは「M&A後の統合に必要な投資かどうか」という見方です。
そうです。単なる設備更新なのか、譲り受けた事業の統合に必要な投資なのか。ここが計画書の説得力になります。
まさに。次の章では、申請までの流れを整理します。ここが一番実務的ですよ。
事業統合投資類型のメリットと注意点- 補助上限は最大1,000万円
- 小規模事業者に該当すると補助率2/3
- 廃業・再チャレンジ枠と併用できる場合がある
- M&A後の経営統合・事業統合を後押しする制度
×デメリット
- 補助対象経費の細目は公募要領で要確認
- 申請はJグランツの電子申請のみ
- GビズIDプライムの取得に2〜3週間程度かかる
- 期日間際の申請は不備の修正差戻しができない可能性
- 有償の作成代行は行政書士に限られる
まず大前提として、申請は電子申請(Jグランツ)のみの受付です。紙で出す方法はありません。
はい、Jグランツの申請にはGビズIDプライムアカウントが必要です。そして取得には2〜3週間程度かかるとされています。
2〜3週間! 締切直前に気づいたら終わりですね……。
そうならないように、まずそこから動いてください。公募締め切りに余裕をもって手続を進める、と中小企業庁のページにも書かれています。
公募申請受付期間は令和8年10月2日(金)から令和8年11月6日(金)17時00分まで(予定)です。jGrants側の募集期間の表記も2026年10月2日〜2026年11月6日となっています。
短いです。ですからGビズIDの2〜3週間を逆算すると、公募が始まる前から動いておくのが安全です。
なるほど。今日からやらないと間に合わないかもしれない。
申請までの流れ- 1
GビズIDプライムを取得
取得に2〜3週間程度かかるため最優先で着手
- 2
公募要領で要件と経費を確認
応募資格と補助対象経費の細目を突き合わせる
- 3
事業計画と申請内容を作成
有償で第三者に依頼する場合は行政書士に限られる
- 4
- 5
事務局の不備指摘に対応
Jグランツを通じて連絡が来る
- 6
採択結果の通知を確認
マイページと登録メールを適宜チェック
あります。jGrantsの注意点には、期日間際の申請だと事務局での複数回の不備指摘や修正差戻しができず、不備が解消しない場合は不採択となる可能性がある、と書かれています。
なので、申請内容の不備指摘や修正差戻しを希望する場合は、申請期日の5営業日前、2026年10月29日までの提出が検討されています。
実質の締切は10月29日ってことですね。覚えます。
はい。締切の2週間前が本当の勝負どころです。スケジュールを時系列で見ておきましょう。
16次公募のスケジュール2026年9月4日
公募要領を公表
事業承継・M&A補助金Webサイトで確認
2026年10月2日
公募申請受付を開始
電子申請(Jグランツ)のみの受付
2026年10月29日
申請期日の5営業日前
不備の修正差戻しを希望する場合はこの日までの提出を検討
2026年11月6日
公募申請受付を終了
17時00分まで(予定)
まず、提出した申請に不備や確認事項があると、事務局からJグランツを通じて連絡が来ます。そして採択結果の通知まで、Jグランツのマイページや登録したメールアドレスへの連絡を適宜確認すること、と備考に書かれています。
そうならないように、定期的にチェックしましょう。あと、事務局から質問や追加資料の依頼があった場合は適切に対応することも要件です。
あります。応募資格の(13)に、申請時点から過去18ヵ月の間に中小企業庁が所管する補助金に申請した内容について、賃上げ加点の要件等が未達成の場合、正当な理由が認められない限り大幅に減点される、とあります。
過去の申請が影響するんだ……。対象になる補助金は決まっているんですか?
令和8年9月時点では、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、サービス等生産性向上IT導入支援事業、小規模事業者持続化補助金、事業承継・引継ぎ補助金、事業承継・M&A補助金、成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)、事業再構築補助金、新事業進出補助金、中小企業省力化投資補助事業が含まれるとされています。
けっこう広い……。心当たりがある人は要注意ですね。
そうですね。過去に申請した補助金の賃上げ条件がどうだったか、一度振り返っておくといいですよ。
有償で申請内容の作成を第三者へ依頼する場合は、行政書士(又は行政書士法人)に限られ、行政書士証憑と委任契約書の提出が必須です。詳細は「公募申請の手引き」を確認してください。
ここは誤解しやすいところです。依頼前に必ず確認しましょう。あわせて、採択に近づくポイントを図にまとめますね。
公募要領には(1)から(15)までの要件があります。日本国内に拠点又は居住地を置き、国内で事業を営むこと、地域経済に貢献していること、反社会的勢力でないこと、法令遵守上の問題を抱えていないこと、事業化状況報告等を期限までに提出すること、などです。
そうですね。ほかにも、公募要領等に違反しないこと、事務局の質問や追加資料の依頼に適切に対応すること、事務局が必要と認めるときは採否などの通知に修正を加えることに同意すること、返還等の事由が発生した際の各種費用を事務局が負担しないことに同意すること、といった項目が並びます。
加えて、経済産業省や独立行政法人中小企業基盤整備機構から補助金交付等停止措置や指名停止措置が講じられていないことも要件です。さらに、申請時などに提供した情報が事業実施や政策立案、経営支援のために事務局から国や機構に提供されること、中小企業庁所管の他補助金事務局と情報共有されることに同意すること、交付後に法人名や代表者名などが公表されることに同意することも含まれます。
はい。ここは読み飛ばしがちなので、申請前に一度目を通しておきましょう。
公募要領には例が示されています。地域の雇用の維持・創出、域内仕入が多い、地域の強み(技術、特産品、観光、スポーツ等)の活用、域外販売が多い、新事業等に挑戦して地域経済に貢献するプロジェクトで中心的な役割を担う、などです。
そのほか、企業の成長が地域経済に波及効果をもたらし活性化につながる取組も挙げられています。自社のどこが当てはまるか、先に洗い出しておくと書きやすくなります。
昔、事業承継・引継ぎ補助金をもらったことがある人は?
応募資格の(15)です。過去の「経営資源引継ぎ補助金」又は「事業承継・引継ぎ補助金」の受給者は、期日までに事業化状況報告を適切に実施していることが必要です。実施義務があるのに提出していない場合は対象外とされています。
報告をサボっていたら申請できない……。冷や汗ものです。
そうなんですよ(笑)。あと、事業承継・引継ぎ支援センター、よろず支援拠点、中小企業活性化協議会(旧・中小企業再生支援協議会)の利用状況について、申請時にアンケートを実施します。ただし回答内容が採択に影響することはない、と明記されています。
はい、正直に答えて大丈夫です。次は基本情報をまとめます。
制度名は「中小企業生産性革命推進事業_事業承継・M&A補助金(16次公募)_PMI推進枠(事業統合投資類型)」、実施機関・事業名は「中小企業生産性革命推進事業_事業承継・M&A事業補助金(16次公募)」です。
そうですね。補助上限は1,000万円、補助率は2/3以内 又は 1/2以内、募集期間は2026年10月2日〜2026年11月6日、対象地域は全国(地理条件なし)です。
事業承継・M&A補助金事務局(PMI推進)で、電話番号は050-3192-6228。受付時間は平日9時30分〜12時00分、13時00分〜17時00分で、土・日・祝日を除きます。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 中小企業生産性革命推進事業_事業承継・M&A補助金(16次公募)_PMI推進枠(事業統合投資類型) |
| 実施機関/事業名 | 中小企業生産性革命推進事業_事業承継・M&A事業補助金(16次公募) |
| 補助上限 | 1,000万円(一定の賃上げを実施する場合、800万円から1,000万円に引き上げ) |
| 補助率 | 2/3以内 又は 1/2以内(小規模事業者に該当する場合は2/3) |
| 募集期間 | 2026年10月2日〜2026年11月6日(17時00分まで・予定) |
| 推奨提出日 | 2026年10月29日(申請期日の5営業日前) |
| 対象地域 | 全国(地理条件なし) |
| 対象業種 | 建設業、製造業、情報通信業、卸売業・小売業、医療・福祉など多数 |
| 使途 | 事業を引き継ぎたい |
| 問い合わせ先 | 事業承継・M&A補助金事務局(PMI推進)050-3192-6228 |
| 受付時間 | 平日9時30分〜12時00分、13時00分〜17時00分(土・日・祝日を除く) |
| 公式URL | https://www.jgrants-portal.go.jp/subsidy/a0WfQ000003N1RYUA0 |
できます。ただし開業届出書と青色申告承認申請書の提出から5年が経過していることなど、要件があります。
公募申請受付期間は令和8年11月6日(金)17時00分まで(予定)です。ただし不備の修正差戻しを希望するなら2026年10月29日までの提出が検討されています。
廃業・再チャレンジ枠と併用する場合は、PMI推進枠事業統合投資類型として申請してください。
行政書士(又は行政書士法人)に限られ、行政書士証憑と委任契約書の提出が必須です。
M&Aで譲り受けたあとの統合投資を支える枠で、上限は最大1,000万円、小規模事業者なら補助率2/3。締切が短く、GビズIDに2〜3週間かかるので、今日から動くのが正解です。