室谷さん、「海外出願補助金」って最近よく見かけるんですけど、これって鳥取県の中小企業でも使えるんですか?
使えますよ!正式名称は「令和8年度 中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業)」という国・鳥取県が連携した補助金で、特許や商標を海外に出願するときのコストを最大300万円まで半額補助してくれる制度です。
えっ、300万円!それは相当大きいですね。特許を海外に出すって、具体的にどれくらいお金がかかるんですか?
国によってかなりバラつきがありますが、たとえば米国への特許出願だと翻訳費用や代理人費用込みで1案件あたり150万〜200万円くらいかかることが多いんです。欧州特許庁(EPO)経由だと複数カ国一括ですが、それでも翻訳コストが高い。で、この補助金があれば実質半額になるわけです。
なるほど!それで「半額補助」がどのくらいの範囲まで使えるか、もっと詳しく教えてもらえますか?
補助上限額の早見表(特許150万円・意匠・実用新案・商標60万円・抜け駆け対策商標30万円・1社合計300万円)
そうなんです。出願の種類によって1案件あたりの上限額が決まっています。
| 出願種別 | 1案件あたり上限額 | 補助率 |
|---|
| 特許 | 150万円 | 1/2以内 |
| 実用新案登録出願 | 60万円 | 1/2以内 |
| 意匠登録出願 | 60万円 | 1/2以内 |
| 商標登録出願 | 60万円 | 1/2以内 |
| 抜け駆け対策商標 | 30万円 | 1/2以内 |
| 1社合計(上限) | 300万円 | — |
「抜け駆け対策商標」ってなんですか?初めて聞きました。
これ、意外と知られてないんですよね。日本で既に出願・登録している商標が、海外で第三者に無断で登録されてしまうことがあるんです。それを「抜け駆け商標」と呼ぶんですが、特に中国で日本企業のブランドが先取りされてビジネスに支障が出るケースが後を絶ちません。その防止のための外国商標出願が「抜け駆け対策商標」で、30万円まで補助されます。
そういうことか!商標を守るための出願にも使えるんですね。あと、1社合計300万円ということは、複数の国や複数の知財を一度に申請できるんですか?
できます。たとえば特許で1件(上限150万円分)+商標で2件(それぞれ60万円分)を申請した場合、合計270万円分の経費に補助が出る計算になりますね。ただ1社の年間合計が300万円を超えることはないので、案件が多い場合は優先順位をつけることが大切です。
わかりました。では実際に「どんな費用」が対象になるのか教えてください。
- 外国特許庁への出願手数料: 各国の特許庁・商標庁に支払う出願費用
- 代理人費用: 国内代理人(弁理士)および現地代理人への費用
- 翻訳費用: 明細書・クレームなどの翻訳に要する費用
- その他: 外国特許庁への出願に関連する通信費・振込手数料等
翻訳費用も出るんですね。これ、結構かかりますよね。
翻訳費用がまた高くて(笑)、技術的な文書だと専門用語も多いですし、1万ワードで30〜50万円くらいかかることも珍しくないです。それが半額になるのは大きい。
ありますよ。国内での審査費用や、外国での特許権が成立した後にかかる登録・維持費用などは対象外です。あくまで「外国出願に要した費用」が対象なので、事前に担当窓口(公益財団法人鳥取県産業振興機構)に確認しておくのが無難です。
了解です。では次に、誰が申請できるかを聞かせてください。
基本的には鳥取県内に本社・事務所・工場等を持つ中小企業者なら申請できます。個人事業主や農林水産業者、協同組合も含まれるので、かなり間口は広いですよ。
えっ、農林水産業者も!製造業だけじゃないんですね。
そうです。県内で事業をしていれば業種を問いません。ただし「みなし大企業」は除外されます。大企業の子会社や関連会社でも中小企業の規模だと「中小企業者」とみなされることがありますが、実態として大企業の影響下にある場合は要注意です。
| みなし大企業の判定基準 | 内容 |
|---|
| パターン① | 発行済株式の1/2以上を同一の大企業が所有 |
| パターン② | 発行済株式の2/3以上を複数の大企業が所有 |
| パターン③ | 大企業役員・職員が役員総数の1/2以上を占める |
| パターン④ | 資本金5億円以上の法人に100%株式を保有される |
| パターン⑤ | 直近3年の課税所得年平均が15億円超 |
こういうケースに当てはまる会社は対象外なんですね。あと「日本で特許を出願済み」であることも条件でしたよね?
そうです。これは重要なポイントで、応募時点で既に日本国特許庁に出願済みであることが原則として求められます。採択後に、その出願を基礎に優先権を主張して海外出願を年度内に行う予定である、というスケジュールが前提です。
日本での出願日から12ヶ月以内であれば、「日本で先に出願した」という日付を主張して外国でも同じ発明・商標を守れる制度です。これがあるから日本で出願してから余裕をもって海外出願を準備できるんです。商標は6ヶ月以内が優先権主張の期限になります。
なるほど、日本での出願が起点になるんですね。では地域団体商標は別のルールがあると書いてありましたが?
はい。地域団体商標(「○○温泉」とか「○○漆器」のような地域ブランドの商標)の外国出願については、商工会議所、商工会、NPO法人等も申請主体として認められています。これは地域産品の海外展開を支援するための特例ですね。
幅広い組織に対応しているんですね。では申請に向けて実際どんな準備が必要か聞かせてください。
申請フローチャート(事前相談→jGrants登録→書類準備→申請書提出(郵送・持参)→審査委員会→採択→事業実施→実績報告→補助金振込)
申請の手順を教えてください。オンラインだけで完結しますか?
ここが大きなポイントなんですが、jGrants(Jグランツ)への入力だけでは申請受付になりません。必ず交付申請書と添付書類を、公益財団法人鳥取県産業振興機構に持参または郵送で提出する必要があります。電子申請だけで終わったと思っていると審査が通らないので注意が必要です!
えっ、それは大事な注意点ですね。GビズIDも必要なんですか?
jGrants上で申請を登録するためにGビズIDが必要になります。まだ持っていない場合は事前に取得しておきましょう。
ステップ7の「採択決定前に出願してはいけない」って重要ですね。うっかりやってしまいそう。
そうなんです。これが一番の落とし穴で、採択前に出願してしまうと補助対象外になってしまいます。「早く出願しないと優先権期限が切れる」と焦る気持ちはわかりますが、採択タイミングと優先権期限の兼ね合いを担当者に事前確認してください。
採択(交付決定)が確認できてから外国出願を行うこと。交付決定前の出願は全額自己負担になる。優先権主張の12ヶ月期限が迫っている場合は、早めに担当窓口に相談すること。
ありがとうございます。書類はどこに提出するんでしたっけ?
公益財団法人鳥取県産業振興機構 経営支援部 知的所有権センター(担当: 浦坂・西谷)宛てに持参または郵送です。住所は〒689-1112 鳥取市若葉台南7丁目5番1号。電話は0857-52-6722。メールを送る場合は浦坂さんと西谷さん両名への同時送信が必要なので注意してください。
- 機関名: 公益財団法人鳥取県産業振興機構 経営支援部 知的所有権センター
- 担当者: 浦坂・西谷(メール問い合わせは両名に同時送信)
- 住所: 〒689-1112 鳥取市若葉台南7丁目5番1号
- 電話: 0857-52-6722
- 公式サイト: 鳥取県産業振興機構
両名へのメール同時送信が必要というのも独特のルールですね(笑)。では審査を通過するポイントも教えてください。
大きく分けて3つです。まず「外国での権利取得の可能性」、次に「権利を活用した事業展開計画の具体性」、そして「賃上げ実施による加点」ですね。
- 先行技術調査の充実: 外国での特許等の取得可能性を客観的に示す。先行技術調査の結果が明確であるほど審査委員会での評価が高まる
- 事業展開計画の具体性: 「外国で権利が成立した場合にどう使うか」を具体的に記載。売上目標・販路・パートナー企業名なども書けると強い
- 賃上げ加点の活用: 令和8年度から賃上げ実施企業に対する加点措置がある。別紙1「従業員への賃金引上げ計画の表明書」を提出することで審査加点が得られる
詳細は申請書類(別紙1)に記載されていますが、従業員への賃金引上げを計画・表明することで審査上の加点が得られます。2026年度は賃上げ関連の加点制度が多くの補助金に導入されているので、取り組んでいる企業は積極的に活用すべきですね。
なるほど。「先行技術調査の充実」は自分でやるんですか?
自社で特許調査をするのが難しければ、弁理士や特許調査会社に依頼できます。また、独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT)の各都道府県窓口に「知財総合支援窓口」があって、無料で先行技術調査のサポートを受けられるんです。鳥取県の場合は鳥取県産業振興機構の知的所有権センターが窓口になっているので、申請前にぜひ相談してみてください。
無料でサポートが受けられるなら、まず相談するのが正解ですね。次に、今回の補助金を最大限活用するコツを教えてください。
jGrantsの補助金(国の補助事業)以外に、鳥取県独自の制度もあると聞きましたが?
そうなんです。これが鳥取ならではの強みで、鳥取県産業振興機構は国の補助事業(最大300万円)に加えて、県独自のPCT・マドプロ出願支援(最大30万円)も同時運営しています。
PCTは「特許協力条約」に基づく出願で、1回の手続きで152カ国以上に国際出願できる制度です。個別に各国に出願するよりコストと手間が大幅に削減できます。マドプロは商標の国際登録制度で、日本国特許庁を経由して1回の手続きで複数国に商標を登録できます。
じゃあPCTで国際出願するときのコストも補助されるんですか?
国の補助事業の対象は外国特許庁への直接出願が基本ですが、県独自の制度でPCT出願・マドプロ出願の国内特許庁費用・国内代理人費用が別途補助されます。ざっくり最大30万円の上乗せです。両方うまく組み合わせると実質負担がかなり減りますよ。
| 補助事業 | 対象 | 補助率 | 上限額 |
|---|
| 国の補助事業(本件) | 外国出願費用全般 | 1/2 | 1社300万円 |
| 県独自PCT・マドプロ補助 | 国内出願手数料・国内代理人費用 | 1/2 | 1社30万円 |
合わせると最大330万円相当の補助になるわけですね(笑)。知財戦略をしっかり考えている企業には大きいですね。申請期限はいつまでですか?
今回の公募スケジュールをもとう一度教えてください。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 公募開始 | 令和8年(2026年)5月11日(月) |
| 公募締切 | 令和8年(2026年)6月12日(金)17時必着 |
| 実施機関 | 公益財団法人鳥取県産業振興機構 経営支援部 知的所有権センター |
| 対象地域 | 鳥取県内に本社・事務所・工場等を持つ事業者 |
| 補助率 | 1/2以内 |
| 1社最大補助額 | 300万円 |
| 特許1案件上限 | 150万円 |
| 意匠・実用新案・商標1案件上限 | 60万円 |
| 抜け駆け対策商標1案件上限 | 30万円 |
| 問い合わせ先電話 | 0857-52-6722 |
| 公式ページ | 鳥取県産業振興機構 |
6月12日が締切なので、もう動き出さないといけないですね!
そうです。事前相談→GビズID取得→書類準備という流れを考えると、今からでも余裕はあるとはいえないので、まず電話で相談するのが一番です。
わかりました。では、もし今年度(令和8年度)の申請に間に合わなかった場合はどうなりますか?
「審査・採択結果により、追加募集を実施する場合があります」と公式に明記されているので、第1次公募で採択枠に余りが出た場合は追加募集の可能性があります。また、この補助事業は毎年度実施されているので、令和9年度の公募に備えることも重要です。
- GビズIDの取得: 今すぐ申請しておけば次回公募開始と同時に動ける
- 日本国特許庁への出願: 海外展開を考えている技術・商標はまず国内で出願しておく。12ヶ月の優先権期間を有効活用するために早めの行動が重要
- 先行技術調査の実施: INPIT知財総合支援窓口(鳥取県産業振興機構)への無料相談で外国での権利取得可能性を把握しておく
- 賃上げ計画の検討: 賃上げ加点があるため、賃金引上げ計画を策定しておくと次回公募で有利になる
- 事業展開計画の作成: 外国で権利が成立した場合の活用計画を事前に具体化しておく
まず、「複数の出願を同時に申請できる」と聞きましたが、何件でも申請できるんですか?
件数制限自体は明示されていませんが、1社合計300万円が上限なので、実質的に申請できる件数は補助額の合計で決まります。たとえば特許2件(合計最大300万円)など複数案件を同時に申請する場合、案件ごとに申し込みが必要です(jGrantsでの手続きも件数分必要)。
jGrants登録は必須ですか?書類だけではダメ?
jGrants上での登録は必須です。ただし、jGrants登録だけで申請が完了するわけではなく、必ず書類の紙提出(持参または郵送)も行ってください。この二段階の手続きが必要な点が最も混乱しやすいポイントです。
計画変更(等)承認申請書(様式第3)を提出して手続きを行う必要があります。やむを得ない事情で外国出願ができなくなった場合は、早めに担当窓口に相談することが大切です。
採択後5年間のフォローアップというのも気になっています。どんな内容ですか?
採択・補助金交付後5年間、状況調査(フォローアップ調査やヒアリング)が実施されます。「外国で権利が成立したか」「その権利を事業にどう活用しているか」などが確認される内容です。また採択された場合、企業名・所在地が公表されることも覚えておいてください。
なるほど。では最後に、経済産業省のEBPM協力が条件というのはどういう意味ですか?
EBPM(Evidence-Based Policy Making、証拠に基づく政策立案)という取り組みで、政府が補助金の効果を客観的なデータで検証するために、申請者にデータの提供・分析協力を求めるものです。申請・利用・報告等を行うことで、データ利活用への協力に同意したとみなされます。実務的には申請者が特別な作業をするわけではなく、提出した書類やフォローアップデータが分析に使われるイメージです。
同じ「海外出願補助金」が他の都道府県にもあるそうですが、内容は一緒ですか?
国の制度をベースにした同じ補助事業なので、補助率1/2・上限額(特許150万・商標60万等)は全国共通です。違いは実施機関(各都道府県の公益財団法人や産業支援機構)や地域加算、そして鳥取県のような県独自のPCT・マドプロ補助の有無ですね。
同じ制度が全国にあるんですね。鳥取県の企業なら迷わず鳥取県の窓口に相談するのが一番ですね。
そうです。各都道府県の窓口がそれぞれ一次審査的な役割を持っているので、自分の事業者所在地の機関に相談するのが原則です。鳥取県の場合は公益財団法人鳥取県産業振興機構の知的所有権センターが頼もしい相談窓口になっています。
わかりました!まず電話で相談ですね。最後に、申請を迷っている鳥取県の中小企業の経営者へメッセージをお願いします。
海外出願って「うちには関係ない」と思っている経営者も多いんですが、実は鳥取県には農業・漁業・製造業など独自技術を持つ中小企業がたくさんいます。技術は出願しないと保護されません。海外展開を考えている、あるいは将来的に考えたいという段階であれば、まず相談するだけでも価値があります。補助金は申請した企業だけが受け取れる制度ですから、動かないとゼロですよ。
力強いメッセージをありがとうございます!鳥取県の中小企業の皆さん、ぜひ活用してください。
- jGrants登録だけでは申請完了にならない(書類の紙提出も必須)
- 採択前の外国出願は補助対象外
- 申請書類の提出は令和8年6月12日17時必着(郵送の場合は必着に注意)
- メール問い合わせ時は浦坂・西谷両名へ同時送信
- 採択後は企業名・所在地等が公表される
鳥取県内の中小企業向け補助金一覧は
鳥取県の補助金・助成金一覧からご確認ください。海外展開支援以外にも設備投資・人材育成・IT導入など多数の補助金があります。