室谷さん、岐阜県が中小企業向けに外国出願の費用を半額補助してくれる制度があるって聞いたんですが、これって本当ですか?
本当ですよ(笑)。「中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業)」ですね。岐阜県内の中小企業が海外に特許や商標を出願するとき、その費用の最大半額、1企業あたり年間300万円まで補助してもらえる制度です。令和8年度(2026年度)も絶賛募集中で、申請期間は令和8年5月11日(月)から6月30日(火)の17時までです。
そうなんです。ただ、申請書類については締切の1週間前までに電子メールで事前確認を行う必要があるので、実質的には6月23日ごろまでには書類を整えておくのが安心です。
事前確認が必要なんですね。知らなかったです。どんな企業が対象なんですか?
まず基本的な要件として、岐阜県内に事業所を有する中小企業者であることが必要です。グループ申請の場合は、構成員の3分の2以上が中小企業者であれば対象になります。個人事業主の方も、事業を営んでいることが確認できれば交付の対象になりますよ。
残念ながらそうです。ただし、地域団体商標の外国出願については商工会議所・商工会・NPO法人等も対象になるので、岐阜県内に拠点があれば、より多くの組織が申請の対象になります。
みなし大企業ってよく耳にしますけど、これは除かれるんですか?
そうなんです。「みなし大企業」には要注意で、大企業に株式の2分の1以上を保有されている企業や、大企業の役員が役員総数の2分の1以上を占める企業は対象外です。資本関係や役員構成を事前に確認しておくといいですよ。
補助金の案件ごとの上限額
300万円が上限ってことは、複数の出願案件をまとめて申請できるんですか?
そうですよ!これが実はすごく使いやすいポイントで、1企業あたり年間300万円の枠内であれば、複数案件を同時に申請できます。ただし、案件ごとに上限額が設定されているんです。
案件ごとに上限が違うんですか?それは知らなかった。
| 出願タイプ | 補助率 | 案件ごとの上限額 |
|---|
| 特許 | 対象経費の1/2以内 | 150万円 |
| 実用新案 | 対象経費の1/2以内 | 60万円 |
| 意匠 | 対象経費の1/2以内 | 60万円 |
| 商標 | 対象経費の1/2以内 | 60万円 |
| 抜け駆け対策商標 | 対象経費の1/2以内 | 30万円 |
| 1企業あたり年間合計 | — | 300万円 |
なるほど、特許が一番補助額が大きいんですね。特許出願って費用が高いから、150万円まで補助してもらえるのはありがたいですね。
そうなんです!特許の海外出願って、翻訳費用や現地代理人への費用を含めると、1件で200万円以上になるケースもざらにあります。それが実質半額になるのは大きいですよ。
「抜け駆け対策商標」って何ですか?聞き慣れない言葉ですね。
ほんとに?(笑) これ、知っておくと重要なんですよ。抜け駆け商標とは、日本国内で出願・登録済みの商標が、海外で第三者に無断で出願・登録されてしまうことです。特にアジア圏では問題になることが多くて、先に登録されてしまうと、現地でブランドを守れなくなる。それを防ぐための商標出願を支援するのが抜け駆け対策商標の区分です。
それは怖いですね…。海外展開を考えている企業は要注意ですね。
まさに。商標の抜け駆け被害は後から取り返すのが非常に大変なので、海外事業を計画している段階から商標登録を先手で進めるのが正解です。この補助金でその費用を半額カバーできるのは大きいと思いますよ。
費用の半額を補助してもらえるとなると、どの費用が対象になるんですか?
- 出願手数料: 外国特許庁に支払う出願手数料
- 代理人費用: 出願に必要な国内代理人(弁理士等)・現地代理人への費用
- 翻訳費用: 出願書類の翻訳に要する費用
弁理士への費用も含まれるんですね。それは大きい!翻訳費用って意外とかかりますもんね。
そうなんですよ。特に欧米や複数国へのPCT出願だと、翻訳だけで数十万円かかることも珍しくないです。それが補助対象に入っているのはありがたい。
注意が必要なのは日本国特許庁に支払う印紙代と先行技術調査に関わる費用は対象外という点です。あくまで「外国への出願にかかるコスト」が対象で、日本国内の費用は対象外と覚えておくと良いですよ。
これは絶対に注意してください!交付決定日より前に支出が完了した経費は補助対象外です。逆に言うと、採択・交付決定後に出願を実行して費用を支払う必要があります。「先に出願して後から申請」というパターンは補助金をもらえないので、必ず採択を待ってから出願の手続きを進めてください。
補助対象経費は「交付決定日から令和9年2月12日までに支出が完了した経費」に限られます。採択連絡を受ける前に外国出願の手続きを完了させてしまうと、その費用は一切補助されません。申請後は採択通知を待ってから出願を実行することが鉄則です。
申請に必要な条件って、岐阜県内の中小企業であること以外に何かありますか?
いくつか重要な要件があります。一番大事なのが応募時点で既に日本国特許庁に対して出願済みであることです。外国出願の補助なので、その前提として国内出願が済んでいる必要があります。
なるほど、いきなり海外だけに出願しようとしても対象外になるんですね。
基本的にはそうです。ただし商標については、優先権のない外国出願(日本での出願を基礎にしない出願)も対象になります。PCT出願の場合は日本への国内移行予定のものに限る、ハーグ出願の場合は日本国を指定締約国に含むものに限るといった例外もあります。
そうなんです!これも重要で、外国での権利取得の可能性が明らかに否定されないことが要件になっています。先行技術調査の結果があると審査でも有利になります。事前相談の際に担当者から具体的な指示をもらえるので、まずは相談することをおすすめします。
| 書類名 | 形式 | 備考 |
|---|
| 様式第1-1 交付申請書 | Word | 特許・実用新案・意匠・商標用 |
| 様式第1-2 交付申請書 | Word | 抜け駆け対策商標用(別様式) |
| 外国特許庁への出願に要する経費に関する資金計画 | Excel | 費用見積もりが必要 |
| 先行技術調査結果 | PDF | 弁理士等が作成したもの |
| 必要な添付書類一覧記載の各書類 | PDF | 事業計画書・登記簿謄本等 |
| 様式第9 従業員への賃金引上げ計画の表明書 | Word | 賃上げ加点措置を希望する場合のみ |
資金計画書っていうのも必要なんですね。費用の見積もりを事前に取っておく必要がある?
そうです。弁理士さんに相談して、外国出願にかかる費用の概算を事前に把握しておく必要があります。費用が確定しないと資金計画書が書けないので、まず弁理士に相談というのが現実的な流れですね。
申請から補助金受取までの流れ
2先行技術調査・弁理士への相談
弁理士に相談し、外国での権利取得の可能性を確認。外国出願にかかる費用の見積もりも取得しておく。
3申請書類の準備
公式サイトから申請様式をダウンロードし、必要事項を記入。先行技術調査結果、費用の資金計画書等の添付書類も準備する。
4事前確認の電子メール提出(締切1週間前まで)
申請書(Word形式)と添付書類一式(PDF形式)を締切1週間前(令和8年6月23日ごろ)までにメール(fund-k@gpc-gifu.or.jp)で提出し、事前確認を受ける。
5正式申請(令和8年6月30日17時まで)
事前確認後、正式に申請書を提出。jGrants(電子申請)との併用も可能だが、機密書類があるため必ず電子メールとの併用が必要(電子申請単独不可)。
6審査・採択通知の受領
審査委員会で選考。賃上げ実施企業・ワーク・ライフバランス推進企業には加点措置あり。
7外国出願の実施(令和9年2月12日まで)
採択・交付決定後に外国特許庁へ出願。この日付までに出願を完了させること。
8実績報告・補助金の交付
出願完了後に実績報告書を提出。審査を経て補助金が交付される。
jGrantsは使えるけど単独ではダメなんですね。機密書類の扱いに気をつけないといけない。
そうです。jGrantsと電子メールを必ず併用してください。電子申請のみでは受理されないのでご注意を。
審査って具体的に何を見るんですか?通りやすくするコツはあります?
- 外国での権利取得の可能性: 先行技術調査等の結果から、明らかに否定されないこと。しっかりとした先行技術調査が必要
- 事業展開計画の具体性: 権利取得後に「どう事業展開するか」の計画が明確であること
- 資金能力と資金計画: 外国出願に必要な資金が確保できていること
2種類あります。1つ目は賃上げを実施する企業への加点で、申請後の1事業年度または1年間で給与総額(または一人あたり平均受給額)が2.5%以上増加した場合に有効です。2つ目はワーク・ライフバランス推進企業への加点で、えるぼし認定・くるみん認定・ユースエール認定などを取得している企業が対象です。
えるぼしとかくるみんって取得してる中小企業もあるんですね。
意外と取得している企業はあります。これらの認定を既に持っているなら、申請書に認定証の写しを添付するだけで加点になるのでぜひ活用すべきですよ!採択の競争が激しい場合に差がつきます。
先行技術調査が不十分なケース、事業展開計画が抽象的なケースは落ちやすいです。「外国で権利を取ったら海外に売りたい」という曖昧な書き方ではなく、「〇〇の技術を△△国市場に展開し、現地代理店と連携して年間□□万円の売上を目指す」くらいの具体的な計画があると審査員の印象が全然違います。
- 先行技術調査がない・不十分: 外国での権利取得可能性の確認が要件。弁理士に依頼して調査結果を書面で取得すること
- 交付決定前に出願を実行: 補助対象外になる最大のトラブル。採択通知まで外国出願の手続きを止めておくこと
- 電子申請のみで提出: jGrantsのみの提出は受理されない。必ず電子メールとの併用が必要
- 事前確認なしで締切ギリギリに申請: 書類不備が見つかると間に合わない。締切1週間前の事前確認を必ず活用すること
全体像がわかってきました。最後に基本情報をまとめてもらえますか?
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業) |
| 実施機関 | 公益財団法人 岐阜県産業経済振興センター |
| 対象地域 | 岐阜県内に事業所を有する中小企業者等 |
| 申請期間 | 令和8年5月11日(月)〜令和8年6月30日(火)17時まで |
| 補助率 | 補助対象経費の1/2以内 |
| 補助上限 | 1企業あたり年間300万円(特許1件あたり上限150万円) |
| 申請方法 | 電子メールにて申請(jGrantsとの併用も可) |
| 問い合わせ先 | 岐阜県産業経済振興センター 取引推進課 TEL: 058-277-1083 |
| 公式サイト | gpc-gifu.or.jp |
はい、知財・外国出願に関する補助金は複数あります。岐阜県の本制度と比較するとこんな感じです。
岐阜県の制度って、複数の出願タイプをカバーしているのが強みですね。
そうなんです。特許・実用新案・意匠・商標を1つの制度でまとめてカバーできるのが岐阜県の特徴です。商標だけなら全国対象の制度を活用するという選択肢もありますが、特許と商標を同時に海外展開したいなら岐阜県の本制度が使いやすいですね。
同じ出願案件に対して複数の補助金を受け取ることは基本的にできませんが、案件ごとに異なる補助金を使うことは可能です。例えば特許は岐阜県の制度で、別の商標出願は東京都の商標専用補助金で申請するといった使い方ですね。ただし詳細は各窓口に確認を。
公開されている詳細なスケジュールはないのですが、審査委員会での選考後に採択通知が届く流れです。事前確認から正式申請、そして外国出願の締切が令和9年2月12日と決まっているので、採択通知後に余裕を持って出願できるよう早めに申請するのが安全です。
対応しています!ただし条件があって、日本の特許出願を優先権主張の基礎にしないダイレクトPCT出願の場合は、日本への国内移行予定のものに限るという要件があります。PCT出願を検討している場合は担当者に事前確認するのが確実です。
はい、採択された場合は企業名・所在地等が公表されます。また、事業完了後5年間のフォローアップ調査(ヒアリング等)に協力する必要があります。補助金を受けた後も継続的に状況報告が求められるので覚えておいてください。
賃上げの加点を受けたけど実際には賃上げできなかった場合は?
これは注意が必要で、表明した賃上げが実行されなかった場合、補助金の交付決定取消しや補助金返還になる可能性があります。加点を目的に無理な賃上げ表明をするのはリスクがあるので、実際に実施できる範囲で表明することが大切です。
この補助金、結構使いやすそうですね。どんな企業に特におすすめですか?
海外展開を計画している岐阜県内の製造業・技術系中小企業には特に相性が良い制度です。岐阜県は精密機械、刃物、木工、セラミックスなど全国有数の技術産業が集積していますから、独自技術を海外でも権利化したいというニーズは高いはずです。
外国出願って怖いイメージがあったんですが、半額補助があれば踏み切りやすくなりますね。
そうなんですよ。海外の知的財産保護って「費用が高い」「手続きが複雑」ってイメージで後回しにされがちですが、放置していると抜け駆け商標や技術の模倣被害が実際に起きます。岐阜県の本制度を使えば費用のハードルが半分になるので、今がまさにチャンスです。申請期間は令和8年6月30日まで。まず岐阜県産業経済振興センターに相談してみてください。