室谷さん、「海外商標冒認」って言葉、最近よく聞くんですけど、具体的にどういう状況のことを指すんですか?
ざっくり言うと、自社ブランドを海外に持っていこうとしたら「その名前、もうウチが商標登録してるから使うな」って現地の別会社に言われる、っていう状況ですね!
ほんとに悪質ですよね。特に中国や東南アジアでは頻発していて、日本企業が海外展開を発表した途端、現地の業者が先回りして商標を登録してしまうケースがあるんですよ。自社ブランドで売れるのに、商標の障壁があって身動きが取れなくなる。
そういう状況に直面した企業って、どうすればいいんですか?
基本的には3つのルートがあります。行政手続き(取消審判・無効審判・異議申立て)、行政訴訟、そして示談交渉ですね。いずれにせよ現地の弁護士・弁理士費用がかかって、総額で数百万〜1,000万円超えることも珍しくない。
そんなにかかるんですか!中小企業には厳しいですね。
そこで東京都が出している助成金が「海外商標対策支援助成事業」です!
上限500万円、補助率1/2という、東京都の知財助成の中でも最高クラスの支援制度ですよ。
海外商標冒認の概要と助成制度の仕組みを示す図解
具体的にどんな費用が助成されるのか、教えてもらえますか?
大きく5つのカテゴリーで費用をカバーしています。まず行政手続き関連、次に弁護士・弁理士費用、そして行政訴訟関連、示談・和解関連、翻訳・調査費用ですね。
えっ、示談交渉の弁護士費用まで対象になるんですか?
そうなんですよ!これ、意外と知られていないポイントなんですけど、行政手続きだけでなく、相手と交渉して示談や和解で解決する場合の弁護士費用も助成対象なんです。早期解決を図る手段として非常に使えます。
| 助成対象経費カテゴリー | 具体的な内容 |
|---|
| 行政手続き費用 | 取消審判申立て費用、無効審判申立て費用、異議申立て費用、行政機関への手数料 |
| 弁護士・弁理士費用 | 現地弁護士の着手金・成功報酬、現地弁理士の手続代理費用、日本側弁理士の連絡調整費用 |
| 行政訴訟費用 | 行政訴訟の提起費用、訴訟関連の弁護士費用、裁判所への印紙代 |
| 示談・和解費用 | 示談交渉に関する弁護士費用、和解契約書の作成費用 |
| 翻訳・調査費用 | 証拠書類の翻訳費用、商標の使用状況調査費用 |
はい、絶対に間違えないでほしいのですが、民事訴訟の費用は対象外です。損害賠償請求訴訟などは含まれません。また、商標権そのものの「買い取り費用」、新規の商標出願・登録費用、自社社員の人件費や渡航費も対象外ですね。
- 民事訴訟(損害賠償請求等)に係る費用
- 商標の新規出願・登録に係る費用
- 商標権の譲渡対価(買取費用)
- 自社社員の人件費・渡航費
- 消費税及び地方消費税
- 他の助成金で支援を受けている経費
わかりました。じゃあ次は申請資格について教えてください!
この助成金って、どんな企業が対象になるんでしょう?
基本的には東京都内に主たる事業所を置く中小企業者です。会社だけでなく、個人事業者、中小企業団体、一般社団法人・財団法人も対象になりますよ。
中小企業基本法の定義に沿っています。業種によって違いますが、製造業なら資本金3億円以下または従業員300名以下、小売業なら5,000万円以下または50名以下、といった感じです。
- 東京都内: 主たる事業所が東京都内にあること
- 中小企業規模: 中小企業基本法上の中小企業に該当すること
- 海外展開意向: 自社ブランドによる海外販路拡大を目指していること
- 商標障害の存在: 進出先で第三者の商標がビジネスの障害となっていること
- 申請前相談必須: 申請日以前にTOKYO IPの知財相談を受けていること
- 年間制限: 1年度につき1社1案件に限る
「申請前相談必須」ってあるんですけど、これって絶対なんですか?
絶対です!これを忘れると、他の書類がどれだけ揃っていても申請が受理されません。まず東京都知的財産総合センター(TOKYO IP)に知財相談の予約を入れることが最初のステップです。
過去に他の知財助成金をもらったことがある場合はどうなりますか?
過去の助成金で「活用状況報告書」等の提出義務がある場合は、その提出を期日までに完了していることが条件になります。これを忘れると今回の申請ができなくなるので注意が必要ですね。
なるほど、まずは事前相談が最優先ということですね。申請の実際の流れも教えてください!
具体的にどんな手順で申請すればいいか、教えてもらえますか?
この助成金、特徴的なのが「jGrantsでの電子申請」と「書類の郵送提出」の両方が必要なことなんですよ。どちらか一方だけでは受理されません!
TOKYO IPに知財相談を予約・実施(申請の絶対条件)
対象の冒認商標を特定し、現地代理人(弁護士・弁理士)に費用見積もりを取得
GビズIDプライムアカウントを発行(未取得の場合、約2〜3週間かかる)
jGrantsの「海外商標対策支援助成事業 交付申請フォーム」から電子申請
申請書類一式を作成(募集要項の「巻末1 申請時に提出する書類」を確認)
申請書類を簡易書留・レターパック等で郵送(持参・メール・FAX不可)
GビズIDの発行に2〜3週間かかるっていうのは、知らなかったです!
これ、よく引っかかる落とし穴ですね。GビズIDプライムアカウントは法人印鑑証明書を使って発行するんですけど、申請から発行まで時間がかかります。最終期限の2026年12月1日ギリギリに動くと間に合わない可能性がありますよ!
なるほど、早め早めの準備が大事なんですね。書類の郵送って、どこに送るんですか?
送付先は公益財団法人東京都中小企業振興公社 東京都知的財産総合センター(〒110-0016 東京都台東区台東1-3-5 反町商事ビル1階)です。封筒には「海外商標対策支援助成金申請書類在中」と書くのを忘れずに!
申請の流れが分かりました。次は実際に審査に通るためのポイントを教えてください!
申請すれば全部通るわけじゃないですよね。どんな点が審査で見られるんでしょう?
一番重要なのは「なぜその商標が自社のビジネスの障害になっているか」を具体的に説明できるかどうかです!
- 障害商標の特定: 取消・無効化したい商標を番号含めて明確に特定できること
- 海外展開計画の具体性: 「いつか海外に行きたい」では不十分。具体的な販売計画や事業計画が必要
- 法的根拠の明確化: 冒認出願の根拠(先使用権、著名性など)の証拠収集が肝心
- 費用見積もりの妥当性: 現地代理人からの正式な見積書が必要。概算では不十分
- 現地代理人の信頼性: 対象国の商標制度に精通した代理人を選定していること
「先使用権の証拠」って、具体的にどんなものが使えますか?
展示会の出展記録、海外バイヤーとの商談記録、SNSの投稿履歴(タイムスタンプ付き)、EC販売の注文記録、輸出実績のある貿易書類なんかが強力ですね。タイムスタンプが付いていて、自社ブランドを海外で使っていたことが証明できるものが理想的です!
そうです。あと、対策の優先順位も大事ですよ。複数の国で冒認されている場合、1年度1案件という制限があるので、事業インパクトが最大の国から着手する計画を示すことが重要です。
非常に有効ですね。行政手続きで解決しようとすると1〜3年かかることも多い。でも示談なら3〜6ヶ月で決着がつくことも。本助成金は示談の弁護士費用も対象なので、並行して複数の解決手段を検討しておくことをお勧めします。
わかりました!次に助成金の基本情報を整理してもらえますか?
申請前に確認しておくべき基本情報を整理してもらえますか?
ちょっとここでまとめましょう。助成条件の全体像をテーブルで確認しておきましょうね!
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 令和8年度海外商標対策支援助成事業 |
| 実施機関 | 公益財団法人東京都中小企業振興公社 東京都知的財産総合センター(TOKYO IP) |
| 助成率 | 1/2以内 |
| 助成限度額 | 500万円 |
| 助成対象期間 | 令和8年4月1日〜令和10年12月31日(2年9か月) |
| 申請受付期間 | 随時(最終受付期限: 令和8年12月1日(火)17時まで) |
| 対象地域 | 東京都内に主たる事業所を有する中小企業者等 |
| 申請方法 | jGrants電子申請 + 書類郵送(両方必須) |
| 1年度当たりの申請制限 | 1社1案件 |
なるほど、申請期限が令和8年12月1日ということは、2026年内に動けば間に合うんですね!
そうです。ただ、GビズIDの発行、知財相談の予約・実施、現地代理人への見積もり依頼など、準備に時間がかかる工程が多いので、できれば3〜4ヶ月前から動き始めるのがベストですよ。
問い合わせは東京都知的財産総合センター(TOKYO IP)までどうぞ。
ありがとうございます!次は、他の助成金との活用の組み合わせも教えてください!
せっかくなら他の制度と組み合わせて使いたいんですが、どうすればいいですか?
二段階で使うのが王道ですね。まず
外国侵害調査費用助成事業で「どの国でどんな侵害があるか」を調べて、その結果をもとに本助成金で無効化手続きに進む、という流れです!
それ、理想的な流れですね!外国侵害調査の方はいくら出るんですか?
あちらも補助率1/2で、上限200万円です。調査費用に特化した制度ですね。本助成金の上限500万円と合わせると、理論上は最大700万円分の支援を活用できることになります。
| 比較項目 | 本助成金(海外商標対策支援) | 外国侵害調査費用助成 |
|---|
| 制度ID | 101040 | 101042 |
| 用途 | 商標の取消・無効化手続きの実行 | 侵害の実態調査 |
| 上限額 | 500万円 | 200万円 |
| 補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 |
| 推奨する使うタイミング | 侵害を特定した後 | 商標侵害が疑われる段階 |
JETROの「中小企業等海外侵害対策支援事業」(冒認商標無効・取消係争支援)とは、対象経費が一部重複する可能性があります。同一経費に対して複数の助成金を使うことはできないので、どちらの制度を使うか、あるいは経費をどう分けるか、事前に両機関に確認することをお勧めします!
なるほど。他にも組み合わせられる制度はありますか?
商標の無効化に成功した後、現地に自社商標を登録したい場合は、東京都の外国特許出願費用助成事業や特許庁・JETROの海外商標出願支援制度が使えます。冒認対策 → 自社商標登録 → ブランド保護確立、という3ステップで知財戦略を組み立てるイメージですね!
段階的に制度を使っていくのがスマートですね。次は、実際のケース別にどう使えばいいか教えてもらえますか?
この助成金がとくに刺さる業種や状況って、どんなケースですか?
商標冒認被害が多い業種がはっきりしているんですよ。アパレル・ファッション、食品・飲料、化粧品・美容、キャラクター・コンテンツ、製造業の消費財分野、工芸品・伝統産業あたりですね!
ほんとに?キャラクターコンテンツは確かによく聞きますね。
日本のアニメ・ゲームのキャラクターを無断で商標登録されたというケースは多いです。また、「日本産」という信頼性のブランド価値が高い農産物・食品でも冒認は頻発しています。
例えば、キッチン用品メーカーが中国市場に本格参入しようとしたら、現地で自社ブランド名が第三者に商標登録されていたケース。本助成金を使って現地の不使用取消審判を申し立て、商標の取消が認容されて中国での自社ブランド販売が実現できた、という活用事例が典型的です。
東南アジアに複数国で冒認されているケースはどうすればいいですか?
1年度1案件という制限があるので、事業インパクトが最大の国を最優先にして申請します。残りの国については次年度に再申請するという計画を立てると現実的です。また、示談で早期解決できる国があれば、本助成金の示談費用助成を活用して並行進行させることも考えられます。
業種別・商標冒認被害の多い国と対策ルート比較図
まだ海外展開を始めていない段階でも申請できますか?
「自社ブランドで海外販路拡大を目指している」段階であれば申請可能です。ただ、「いつか海外に行きたい」という漠然とした段階では難しい。具体的な事業計画書レベルで海外展開の計画を示せて、かつ冒認商標がその計画の障害になっていることが説明できれば要件を満たします。
わかりました。じゃあ、よくある質問コーナーに移りましょうか!
この助成金についてよくある疑問を一気に解消していきましょう!まず、商標権の「買い取り」費用も助成対象になりますか?
残念ながら、商標権の譲渡対価(買い取り費用)は対象外です!本助成金は商標の「取消・無効化」に要する行政手続き費用や弁護士・弁理士費用を助成する制度です。ただし、取消手続き等に伴う示談交渉として商標権の譲渡を受ける場合、その示談交渉に係る弁護士費用は助成対象となります。商標権自体の購入費用とは区別されます!
はい、中国を含むすべての国・地域での商標冒認対策に使えます!中国商標法に基づく取消審判(不使用取消、無効審判等)の費用、現地弁理士費用、関連する行政訴訟費用がすべて助成対象です。中国は日本企業の商標冒認被害が最多の国の一つなので、本助成金の主要な活用先ですよ。
手続きが長期化して年度をまたいだ場合はどうなりますか?
商標の取消・無効化手続きは各国の制度により審理期間が長期化することがありますよね。年度をまたぐ場合の取り扱いについては、申請前にTOKYO IPに確認することをお勧めします。計画段階から手続きの見通し期間を考慮して、助成対象期間(2026年4月1日〜2028年12月31日)内で完了可能な範囲で経費を計上する方法もあります!
複数の国で同じ商標が冒認されている場合、まとめて申請できますか?
1年度1案件の制限はありますが、複数国にまたがる冒認問題を1つの案件として申請することは可能です。ただし、上限500万円の枠内で対応する必要があるため、対策の優先順位を付けて最も事業インパクトの大きい国から着手することをお勧めします。次年度に別の国を対象として再申請することもできます!
ありがとうございます!この助成金の全体像がよくわかりました。
- TOKYO IP知財相談: 申請前に必ず受けること(必須要件)
- GビズIDプライム取得: 未取得なら早めに(発行に約2〜3週間)
- 障害商標の特定: 商標番号・国名・登録者を明確に
- 現地代理人の確保: 対象国の商標制度に精通した代理人
- 証拠の収集・保全: 自社の先使用を示す証拠(展示会記録、EC販売履歴など)
- 費用見積もりの取得: 現地代理人からの正式な見積書
- jGrantsアカウント確認: GビズIDと紐付けできているか
- 書類郵送の準備: 申請書は簡易書留・レターパック等(持参・メール不可)
審査に通った後、実際に手続きを進めるうえでの実務的なポイントも教えてもらえますか?
一番大事なのが「現地代理人の選定」です。商標の取消・無効化手続きは各国の法制度に基づいて行われるので、対象国の商標制度に精通した弁護士・弁理士が不可欠なんですよ!
主に3つのルートがあります。1つ目は日本の弁理士事務所が持っている海外ネットワークを活用する方法。2つ目はJETROの海外事務所に現地代理人の紹介を依頼する方法。3つ目はTOKYO IPの知財相談で紹介してもらう方法ですね。TOKYO IPには海外商標の専門家が在籍しているので、信頼できる代理人を紹介してもらえることが多いですよ!
早ければ早いほどいいです!特に証拠は時間の経過とともに散逸してしまうリスクがある。今すぐ以下のような証拠を整理・保全しておくことをお勧めします。
| 証拠の種類 | 具体例 | 有効な場面 |
|---|
| タイムスタンプ付きSNS投稿 | 海外でのブランド紹介Instagram、X(旧Twitter) | 先使用権の主張 |
| 展示会・商談記録 | 出展証明書、バイヤーとのメール | 著名性の証明 |
| EC販売・輸出記録 | Amazon、アリババ等の注文履歴 | 使用実績の証明 |
| 輸出関連書類 | 貿易書類、インボイス | 海外取引の証明 |
| 海外メディア掲載 | 雑誌・ウェブ記事のスクリーンショット | 著名性・認知度の証明 |
こういう記録って普段から保管しておかないといけないですね。
まさにそうです!ブランドを持っている企業は、日常的にこういった証拠を蓄積しておくのが知財戦略の基本です。冒認されてから慌てて探しても遅い場合があります。
中国の商標制度はかなり複雑で、不使用取消審判と無効審判で手続きが異なります。取消審判の審理期間は6ヶ月〜1年以上かかることも。ただ、2023年以降、冒認商標への対応が中国当局でも厳しくなっており、以前より成功率は上がっています。TOKYO IPで中国専門の知財相談を受けることをお勧めします!
なるほど、やっぱり専門家に相談するのが近道ですね!
何より「一人で抱え込まない」ことが大事です。TOKYO IPへの事前相談は義務でもありますが、それ自体が専門家サポートの始まりなんですよ。無料で相談できるので、まず電話してみることをお勧めします。
わかりました。全体像がつかめてきたところで、まとめましょうか!
今回の話を聞いて、東京都ってかなり手厚い知財支援があるんだなと思いました!
東京都は知的財産保護の分野では全国でも先進的で、TOKYO IPという専門組織が複数の助成制度を運営しています。海外商標対策支援(500万円)と外国侵害調査(200万円)は特に双璧を成す制度で、合わせて活用するのが知財戦略の王道ですね。
まず
公式ページで制度を確認して、TOKYO IPへの知財相談から始めてみてください。電話番号は03-3832-3656です。GビズIDの発行に2〜3週間かかることも忘れずに!