今日は「外国侵害調査費用助成事業」という、ちょっと聞き慣れない助成金を取り上げます。室谷さん、これはどんな企業が対象なんですか?
ざっくり言うと、海外で自社製品や技術が模倣されている、もしくは権利侵害を受けている東京都内の中小企業 が対象です。たとえば「中国のECサイトで自社製品のコピーが売られている」「海外の工場が無断でうちの特許技術を使ってる」みたいなケース、意外と多いんですよ。
めちゃくちゃ起きてます!(笑)特に製造業やアパレル、IT企業では珍しくない話で。問題は、こういった侵害の実態を調査するのにすごくお金がかかる点なんです。現地調査員の派遣費用、侵害品のサンプル購入費用、専門機関への委託費用……全部合わせると数百万円規模になることもある。
だから東京都が助成してくれるんです。
調査費用の1/2、最大200万円まで が助成対象になります。400万円規模の本格調査も、自己負担は200万円で済む計算になりますね。
外国侵害調査費用助成事業 概要インフォグラフィック
まず基本的なところを教えてください。この助成金、正式な名称と実施している機関は?
正式名称は「令和8年度外国侵害調査費用助成事業」で、公益財団法人東京都中小企業振興公社の東京都知的財産総合センター(通称TOKYO IP) が実施しています。
東京都知的財産総合センターって、初めて聞く人も多そうですね。
そうですね。台東区台東1丁目、反町商事ビルの1階にあります。知的財産に関する相談や助成金を専門で扱っている機関で、セミナー、相談、助成金と、知財サポートをワンストップで提供しています。
項目 内容 正式名称 令和8年度外国侵害調査費用助成事業 実施機関 東京都知的財産総合センター(TOKYO IP) 助成上限額 200万円 補助率 対象経費の1/2以内 申請期間 随時(令和8年4月10日から令和8年10月1日17時00分まで) 対象地域 東京都内に主たる事業所を有する中小企業 助成対象期間 令和8年4月1日から令和9年11月30日まで(1年8か月) 電話 TEL 03-3832-3656 公式ページ 東京都知的財産総合センター
「随時受付」ってことは、締切までいつでも申請できるってことですか?
その通りです。ただし令和8年10月1日17時00分が最終受付期限 なので、そこだけは絶対に守らないといけません。それと、予算の範囲内での受付なので、枠がなくなったら終わります。だから早めに動いた方がいいですよ。
申請できる企業の条件を教えてください。「東京都内の中小企業」というのは、具体的にはどういう企業ですか?
まず事業所の所在地。東京都内に主たる事業所を有していること が大前提です。本店登記だけでなく、実質的な事業活動の拠点が東京にあることを指します。
中小企業基本法上の中小企業であることが必要です。製造業なら資本金3億円以下または従業員300名以下、サービス業なら資本金5,000万円以下または従業員100名以下が目安ですね。会社・個人事業者のほか、中小企業団体、一般社団法人・財団法人も申請できます。
あります!ここが重要で。外国で自社の産業財産権等を保有していること(実施権被許諾を含む) が基本的な要件です。具体的には特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権などですね。ただし、税関での輸入差止め費用(水際対策)については、外国での権利取得は必須ではありません。
あ、それは知らなかったです。水際対策は国内の関税当局が動いてくれるから、外国権利がなくても使えるってことですか?
正確にはそういう整理になっています。実際の要件は細かいので、申請前に必ずTOKYO IPに相談してください。
立地 : 東京都内に主たる事業所がある
規模 : 中小企業基本法の中小企業(会社・個人事業者・団体・一般社団財団も可)
知財 : 外国で侵害されている自社の産業財産権等を保有している(または実施権を持つ)
侵害 : 外国で模倣品被害または権利侵害が発生している(または疑いがある)
申請制限 : 1年度1社1案件に限る
事前相談 : 申請日以前にTOKYO IPの知財相談を受けていること
そうですね。最も重要な侵害案件に絞る必要があります。複数の侵害が疑われる場合は、売上への影響が最も大きい案件を優先しましょう。
大きく4種類です。まず侵害調査費用 。侵害の事実確認、製造場所や流通経路を特定するための調査費用で、侵害品のサンプル購入も含まれます。
含まれます!証拠保全のために模倣品を実際に買うことがあるんですよ。次に侵害品の鑑定費用 。弁理士や弁護士に、権利が有効かどうか、対象物が侵害しているかを判断してもらう費用です。
侵害先への警告費用 と税関での輸入差止費用 です。警告は弁護士などが相手方へ内容証明郵便等で行うもの。税関差止めは、海外で製造された模倣品が日本に入ってくるのを水際でブロックするための費用ですね。
対象経費カテゴリ 具体的な費用例 侵害調査費用 専門調査機関への委託費、現地調査員派遣費、侵害品サンプル購入費 侵害品の鑑定費用 弁理士・弁護士への鑑定依頼費、専門家による権利侵害の法的分析費 侵害先への警告費用 弁護士等による内容証明郵便送付費用、翻訳・通訳費用の一部 税関での輸入差止費用 税関への申立費用、証拠資料作成費用
いくつかあります。訴訟費用は完全に対象外 。調査して証拠を集めた後に訴訟を起こすとしても、その費用は本事業ではカバーできません。あとは商標・特許の出願・登録に係る費用、自社従業員の人件費、消費税、日常的な事業運営費なども対象外です。
訴訟費用 : 調査結果を使って訴訟提起する場合の費用は対象外
知財の出願・登録費用 : 特許・商標の取得費用は別制度を利用
従業員人件費 : 自社社員を調査に投入した場合の人件費は不可
消費税・地方消費税 : 助成対象経費には含まれない
重複受給 : 同一経費について他の助成金との重複はNG
なるほど。調査までの費用だけが対象で、その後の法的手続きは別途対応が必要ということですね。じゃあ実際の申請の流れを教えてください。
外国侵害調査費用助成事業 申請フロー
この助成金の申請は少し特殊で、jGrantsでの電子申請と書類の郵送提出の両方が必要 です。どちらか一方だけでは受理されません。手順を順番に説明しますね。
TOKYO IPへの事前相談(必須)
東京都知的財産総合センター(TOKYO IP)に連絡し、侵害の状況と調査計画について相談します。電話はTEL 03-3832-3656(平日9時から17時まで)。これは申請要件なので、相談なしでは申請できません。専門相談員が侵害状況を整理し、本助成金の活用可否についてアドバイスをくれます。
GビズIDプライムアカウントの取得
jGrantsを使うには「GビズIDプライムアカウント」が必須です。GビズID公式サイトから申請できますが、発行まで約2〜3週間かかります。まだ持っていない方は今すぐ申請を始めてください。
jGrantsでの電子申請
GビズIDを取得したら、jGrantsの申請フォームから交付申請手続きを行います。TOKYO IPの公式ページから「電子申請マニュアル」をダウンロードして手順を確認しましょう。
申請書類の準備と郵送
TOKYO IPの公式ページから募集要項と助成金申請書をダウンロードし、必要事項を記載。「巻末1 申請時に提出する書類」に記載された書類一式を揃えて、簡易書留・レターパック・宅配便(信書用)等で郵送します。普通郵便・FAX・メールによる提出は不可です。封筒表面に「外国侵害調査費用助成金申請書類在中」と記載するのを忘れずに。
交付決定後に調査実施
審査を経て交付決定通知が届いたら、計画に沿って調査を実施します。調査完了後に実績報告書を提出し、審査を経て助成金が支給されます。
GビズIDの取得に2〜3週間かかるのは見落としがちですね!!
これ、かなり重要なポイントです。締切直前に慌ててGビズIDを申請し始めて間に合わなかった、という失敗談を聞くことがあります。申請を検討し始めた段階でGビズIDの取得手続きを開始する こと、これが鉄則です。
申請書類の郵送について、注意点はほかにありますか?
書類は3部提出する場合があります。A4サイズ・片面印刷でクリップ止めし、3部は1組にまとめて3つの束に分けてください。ホチキス止めは不可です。申請後の書類の加筆・修正はできないので、提出前に必ず控えを取っておいてください。
せっかく申請するなら採択されたいですよね。室谷さん、合格するためのコツを教えてください!
一番大事なのはTOKYO IPの事前相談を最大限に活用する ことです。ただ「相談した」という実績を作るだけでなく、専門家に調査計画の妥当性を確認してもらい、必要書類の整理まで相談するのがポイント。申請書の完成度が大幅に上がります。
めちゃくちゃ重要です!海外の知財侵害調査は専門性が高くて、調査機関の能力が結果を左右します。実績のある国際調査会社や現地の弁理士事務所を選び、過去の調査実績と対象国でのネットワークを確認してください。TOKYO IPから調査機関の紹介を受けることも可能です。
事前相談を徹底活用 : TOKYO IPの専門家に侵害状況の整理から調査計画の策定まで相談し、申請書の質を上げる
調査対象を明確化 : 侵害品の種類・国・規模を具体的に特定し、自社知財権との関係を明確にする
調査後の活用計画を描く : 調査結果を使って何をするか(警告書送付・行政摘発・訴訟提起など)を事前に想定し、調査の目的を明示する
複数の侵害案件がある場合、どれを優先すべきですか?
売上への影響額と侵害の拡大リスク を基準に優先順位を決めましょう。1年度1案件という制限があるので、最も緊急性・重要性が高いものに集中するのが正解です。模倣品は放置するほど市場に広がってしまいます。早期に動くほど被害を最小化できます。
実際にどんな侵害が対象になるのか、具体的に教えてもらえますか?
対象となる知的財産権はたくさんあって、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、そして不正競争行為(営業秘密の不正取得等)も含まれます。
侵害の種類 対象権利 具体例 技術の無断使用 特許権・実用新案権 海外メーカーが自社特許技術を使った製品を製造・販売 デザインの模倣 意匠権 自社製品のデザインをコピーした商品の海外販売 ブランドの無断使用 商標権 自社ブランドロゴを使った偽物が海外ECで販売 著作物の無断複製 著作権 自社ソフトウェア・コンテンツの不正コピー・配布 営業秘密の流出 不正競争防止法 元従業員による技術情報の海外競合への持ち出し
はい!AmazonやAlibabaなどのECプラットフォーム上での模倣品販売の調査も完全に対象です。オンライン上の侵害品の出品者特定、販売実態の調査、侵害品のサンプル購入などの費用が助成されます。近年はEC経由の模倣品被害が急増していて、この制度を使ったオンライン調査の申請も増えています。
「まだ侵害と確定していない疑いの段階でも申請できる」というのは本当ですか?
本当です!本助成金の目的は侵害の実態を調査することにあるので、侵害の「疑い」の段階でも申請できます 。ただし、調査対象となる自社の知的財産権が明確に特定できていることが条件。どの権利が侵害されているのか(疑われているのか)を明示できる必要があります。
調査が終わった後の話も聞かせてください。調査結果があっても、次の対策費用もかかりますよね?
そこが重要なポイントで、本事業は「調査」に特化した制度なんです。調査後の対策(訴訟・警告交渉・行政申立て等)は別の制度との組み合わせが必要 です。
東京都の助成金として、
令和8年度海外商標対策支援助成事業 があります。侵害商標の取消・無効化に要する費用を最大500万円助成する制度で、本事業での調査→商標対策助成での対策実行という二段階活用が理想的なパターンです!
ただし両方の制度で同一経費の二重受給はできません。「調査フェーズは本助成金、対策フェーズは海外商標対策支援助成事業」というようにフェーズを分けて使うのが有効です。国の制度ではJETRO(日本貿易振興機構)の「中小企業等海外侵害対策支援事業」も活用できる場合がありますよ。
第1段階(調査) : 本助成金(外国侵害調査費用助成事業)で上限200万円、費用の1/2をカバー
第2段階(対策) : 令和8年度海外商標対策支援助成事業 で上限500万円の助成(商標の取消・無効化)
国の制度 : JETRO「中小企業等海外侵害対策支援事業」の活用も検討
無料相談 : 特許庁の「海外知的財産プロデューサー」による無料相談で最適な組み合わせを確認
読者の方がよく疑問に思うことをまとめて聞かせてください。まず「どの国での侵害が対象になりますか?」という質問。
特定の国に限定されていないので、どの国・地域での侵害も対象です。中国、東南アジア、欧米など、侵害が発生している国であればOK。複数国にまたがる侵害がある場合は、最も被害が大きい国に集中した調査計画を策定することをお勧めします。
「過去に同じ助成金を受給したことがある場合も申請できますか?」という質問はどうですか?
年度が異なれば再申請可能です。ただし1年度1案件なので、同一年度の複数申請はNG。また、過去と同一の案件(同じ侵害事案)での再申請は認められない場合があるので、新たな侵害事案または異なる国での調査であること を明確にしてください。
「国内での模倣品対策は対象になりますか?」という素朴な疑問も出てきそうですね。
国内での侵害は完全に対象外です!「外国」侵害調査費用助成事業なので、あくまで海外での侵害が対象です。国内での対策をしたい場合は、別の制度を探す必要があります。
おおむね6か月〜10か月程度です。申請後の審査・交付決定に1〜2か月、調査の実施に2〜4か月、実績報告・精算に1〜2か月。海外での調査は現地の状況により長期化することもある ので、余裕を持ったスケジュールで計画することが重要ですよ。
最後に、申請にあたって最低限準備すべきことを教えてください。
3つです。1つ目、GビズIDプライムアカウントを今すぐ申請する 。2〜3週間かかるので、締切ギリギリだと間に合いません。2つ目、TOKYO IPに知財相談の予約を入れる 。これは申請要件なので省略不可。3つ目、侵害の証拠(写真・購入サイトのスクリーンショット等)を収集しておく 。調査計画を立てるための基礎情報になります。
どんな業種の企業が実際にこの助成金を活用しているんですか?
一番多いのは製造業 です。精密機器、電子部品、化学製品などのメーカーが、海外での模倣品製造・販売の実態調査に活用しています。次いで多いのがアパレル・繊維業と玩具・キャラクター業。ブランドロゴや商品デザインの模倣は深刻で、東南アジアや中国市場で特に多い。
IT・情報通信業もニーズが高い業種です。ソフトウェアの不正コピー、APIの無断使用、技術仕様の模倣などで活用される例があります。デジタルフォレンジックに強い調査機関を使って、不正コピーの配布元と規模を調査するケースも増えています。
業種 主な侵害パターン 活用適合度 製造業 製品の模倣品製造・販売 非常に高い アパレル・繊維業 ブランドロゴ・デザインの模倣 非常に高い 玩具・キャラクター業 キャラクターIPの無断使用 非常に高い IT・情報通信業 ソフトウェアの不正コピー・技術流用 高い 化粧品・日用品業 模倣品による品質リスク・ブランド毀損 高い 食品・飲料業 商標模倣・パッケージ類似品 中程度
ECサイトが絡む場合の具体的な調査のイメージを教えてください。
たとえば中国のAlibabaや東南アジアのShopeeで自社製品の模倣品が販売されている場合、調査機関が侵害品の出品者情報を特定し、販売規模・流通ルートを調査します。侵害品のサンプルを実際に購入して証拠保全も行います。こういったオンライン調査から現地での証拠収集まで 、一連の費用が助成対象になります。
項目 内容 制度名 令和8年度外国侵害調査費用助成事業 助成上限額 200万円 補助率 対象経費の1/2以内 申請受付開始 令和8年4月10日 最終申請期限 令和8年10月1日 17時00分 助成対象期間 令和8年4月1日から令和9年11月30日まで 申請制限 1年度1社1案件 申請方法 jGrantsでの電子申請+書類郵送(両方必須) 問い合わせ TEL 03-3832-3656(平日9時〜17時) 公式URL www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/josei/shingai/
今日はわかりやすく教えていただき、ありがとうございました。海外で模倣品被害に悩む東京の中小企業の方、ぜひ活用してみてください!
侵害調査は早ければ早いほど効果的です。「うちの製品、どこかでコピーされてるかも?」と感じたら、まずTOKYO IPに相談してみてください。事前相談は無料ですし、そこから助成金の活用も含めて最適な対策を一緒に考えてもらえますよ。