室谷さん、「原子力産業基盤強化事業補助金」って聞いたことありますか?ちょっとマニアックな名前ですよね。
ありますよ!経済産業省が令和8年度(2026年度)から新たに公募を開始した補助金で、原子力関連の機器・サービスの安全性や信頼性を高める取り組みに対して補助率1/2・上限2億円を支援する制度です。かなり規模の大きい補助金ですよ。
えっ、2億円!?なかなかすごいですね。でもそもそも、なぜ今こういう補助金が必要なんですか?
エネルギー基本計画(令和7年2月閣議決定)の話から始まると分かりやすいんですが、政府が「日本の原子力産業・人材基盤は高い国産化率と技術を誇っており、既設炉の再稼働や次世代革新炉の開発に不可欠だ」と明確に位置づけたんです。つまり原子力を安定したエネルギー源として活用するために、サプライヤーが持つ技術を守り育てる仕組みが必要になったということですね。
なるほど!原子力産業を下支えしているメーカーや技術企業を守るための補助金ってことか。
そうです。世界トップクラスの技術力・経験を持つ国内サプライヤーが、安全性・信頼性向上の技術開発をしたり、廃業を余儀なくされる事業を後継者に引き継いだり、製造プロセスのデジタル化を進めるための費用を補助するんです。
原子力産業基盤強化事業補助金 事業スキーム図
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 令和8年度「原子力産業基盤強化事業補助金」 |
| 実施機関 | 特定非営利活動法人 地球と未来の環境基金(EFF) |
| 上位機関 | 経済産業省 |
| 補助率 | 1/2以内 |
| 補助上限額 | 単年度 / 2億円(事業総額4億円) |
| 複数年度上限 | 令和8年度分 2億円、令和9年度分 5,000万円 |
| 事業期間 | 単年度 / 交付決定日〜令和9年2月12日(金) |
| 公募締切 | 令和8年5月27日(水)正午必着 |
| 申請方法 | jGrants(電子申請) |
| 対象地域 | 全国 |
そうなんです。最大2年度にわたる事業として申請できます。ただし2年度で申請しても、審査の結果として単年度採択になる場合もあるので注意が必要ですよ。
どんな会社が申請できるのか、もう少し詳しく聞かせてください。
応募資格の要件は5つあります。日本国内に拠点(法人)があること、事業を遂行できる組織・人員があること、安定した経営基盤と資金管理能力があることが基本です。
正確には「原子力産業基盤の維持・強化に向けて主体的に取り組む姿勢がある」こと、つまり関連製造業や技術サービス企業であれば多くの場合対象になります。コンソーシアム(複数企業の共同体)での申請も可能で、その場合は幹事者を決めて提案書を提出する形になります。
コンソーシアムで申請できるんですね。中小の技術会社でも複数社で組めばチャンスがあるってことか。
まさにそうです。ただし幹事者が業務の全てを他者に委託することはできません。幹事者自身が実際に事業を担う体制が必要です。
- 要件1: 日本に拠点(法人)があること(コンソーシアムは幹事者が日本拠点を持つこと)
- 要件2: 本事業を的確に遂行する組織・人員があること
- 要件3: 円滑に遂行できる経営基盤と資金管理能力があること
- 要件4: 経済産業省からの補助金交付等停止措置・指名停止措置を受けていないこと
- 要件5: 原子力産業基盤の維持・強化に向け、事業活動を通じて主体的に取り組む姿勢があること
7つの要件のいずれかを満たす取り組みが対象です。列挙しますね。
まず「原子力関連機器・サービスの安全性や信頼性向上に資する技術開発」。これが一番の本丸です。次に「事業撤退を余儀なくされる事業の継承」つまり廃業する技術を別の企業が引き継ぐためのコスト支援。
そうなんです。原子力産業は一度技術が失われると再建が難しいので、事業承継の支援が重要視されています。さらに「製造プロセスのデジタル化促進」「技能伝承や代替サプライヤーへの承継・海外規格への対応」「機器・部素材の供給途絶対策」「現場技術者の技能向上や原子力人材育成」、そして「原子力産業基盤・サプライチェーン全体の維持・強化に資する内容」と続きます。
例えば特定の部品や材料が海外からしか入手できない状況を改善するための、国内代替供給ルートの開拓などですね。昨今の地政学リスクを踏まえると、非常に重要な取り組みです。
- ① 原子力関連機器・サービスの安全性・信頼性向上のための技術開発
- ② 事業撤退を余儀なくされる事業の継承(事業承継支援)
- ③ 製造プロセスにおけるデジタル化の促進
- ④ 技能伝承・代替サプライヤーへの承継、海外規格への対応
- ⑤ 機器・部素材の供給途絶対策
- ⑥ 現場技術者の技能向上・対応能力強化、原子力人材の育成
- ⑦ 原子力産業基盤・サプライチェーン全体の維持・強化
先ほど「上限2億円」と言いましたが、補助率や上限額の詳細をもう少し教えてください。
補助率は一律1/2以内(2分の1)です。つまり事業費の半分を国が支援するイメージです。
単年度事業の場合、令和8年度分で補助金2億円・事業総額4億円が上限です。複数年度(2年度)事業の場合は令和8年度が2億円・事業総額4億円、令和9年度分が追加で5,000万円・事業総額1億円という構成になります。
| 申請形態 | 年度 | 補助上限額 | 事業総額 |
|---|
| 単年度事業 | 令和8年度 | 2億円 | 4億円 |
| 複数年度事業(初年度) | 令和8年度 | 2億円 | 4億円 |
| 複数年度事業(2年目) | 令和9年度 | 5,000万円 | 1億円 |
複数年度事業の場合、2年合計で最大2億5,000万円の補助が受けられるってことですか?
そうです。ただし、2年度事業として申請しても単年度での採択になる場合があることと、各年度の補助金上限額はあくまで交付申請書に記載された申請額が基準になることは覚えておいてください。
原則として補助対象経費から消費税は除いて申請することになっています。ただし免税事業者や簡易課税事業者など一定の条件に当てはまる場合は消費税込みで算定できる例外もあります。
大きく「人件費」と「事業費」の2区分に分かれています。人件費は事業に直接従事する方の直接作業時間に対する人件費。事業費はさらに10項目に細分化されています。
対象経費カテゴリ一覧
| 費目 | 内容 |
|---|
| 旅費 | 国内・海外出張に係る交通費・宿泊費 |
| 会場費 | 会議・講演会・シンポジウム等の会場借料、機材借料、茶菓料 |
| 謝金 | 外部専門家・講演者への謝金、研究協力謝金 |
| 備品費 | 1年以上使用し、当該事業専用の物品購入・製造費 |
| 借料及び損料 | 機械器具等のリース・レンタル費用 |
| 消耗品費 | 備品費に該当しない消耗品(事業専用のもの) |
| 外注費 | 外部委託費(請負契約・成果物引渡し) |
| 印刷製本費 | パンフレット・事業成果報告書等の印刷製本 |
| 補助員人件費 | アルバイト等補助スタッフの人件費 |
| 委託費 | 外部委託費(委任・準委任契約) |
外注費は「請負契約」、委託費は「委任・準委任契約」という法的な区分の違いです。請負は成果物(完成品)を引き渡すことが前提で、委任は業務の遂行プロセス自体が対象です。例えば「システム開発(完成品)」は外注費、「コンサルティング業務」は委託費という感じですね。
なるほど、実務的には最初から担当の事務局(EFF)に相談した方が良さそうですね。
そうですね。不明点はメールで問い合わせを受け付けています。ただし質問の締切は令和8年5月20日(水)正午までなので早めに動くことが重要です。
実際に申請するとなったら何から始めればいいんですか?
まず最初にGビズIDプライムアカウントの取得から始めてください。取得に2週間程度かかるので、本当に早めの動き出しが必要です。
必須書類は4種類です。申請書(様式1)、提案書(様式2)、事業概要説明書(様式3)、実施体制図(様式4)。これに加えて任意で提案書補足説明資料、会社概要(パンフレット等)、直近の財務諸表等を提出します。
そうです。電子的に読み取り可能なPDF形式が必須で、パスワード保護や印刷禁止設定はNGです。また採択後に記載内容を大幅変更した場合、交付決定が行われないケースもあるので、実現可能な内容のみを提案書に記載することが重要ですよ。
審査はどんな基準で行われるんですか?採択率とか分かりますか?
採択率の公表データは現在見当たりませんが、審査基準は公募要領に明示されています。大きく「基本的事項」と「人材確保の取組(加点項目)」の2段階です。
提案内容が本事業の目的に合致しているか、独自性・新規性・他社優位性を持っているか、原子力産業基盤強化に向けた課題・ニーズを想定した事業計画があるか、遂行する知見と実施体制があるか、資力・資金調達能力があるか、現実的なスケジュールか、適正な経費積算がされているか、といった点が審査されます。
- 加点1「賃上げ計画」: 大企業は対前年比3%以上、中小企業等は1.5%以上の賃上げを予定し、従業員に表明していること
- 加点2「積極的な賃上げへの取組」: 具体的な賃上げ手段を明示して人材確保に取り組んでいること
- 加点3「ワーク・ライフ・バランス推進」: 女性活躍推進・次世代育成支援・青少年雇用促進の取組、または関連認定(くるみん・えるぼし等)の取得
そうです。政府の賃上げ政策と連動した設計になっています。賃上げ計画があればきちんと提案書に盛り込むことが採択率向上につながります。
- 交付決定前の発注は補助対象外: 採択決定を受け取っても、正式な「交付決定通知書」が届くまでは経費の発注・支出をしないこと
- 不正受給のリスク: 虚偽申請があった場合、補助金返還に加え年10.95%の加算金、新規補助金停止、名称公表等の厳しい措置がある
- 財産処分制限: 補助金で取得した財産は処分制限期間内に無断処分(譲渡・担保供与等)ができない
- 会計検査院の検査: 事業終了後に会計検査院が実地検査に入ることがある
採択されてから実際に補助金を受け取るまでのスケジュールを教えてもらえますか?
単年度事業の流れを整理しますね。審査・採択決定が2026年6月上旬〜中旬頃、交付決定が2026年6月中旬以降の予定です。
| マイルストーン | 時期 |
|---|
| 審査・採択決定 | 2026年6月上旬〜中旬頃 |
| 間接補助事業交付決定 | 2026年6月中旬以降(予定) |
| 事業開始 | 交付決定日以降 |
| 中間検査 | 2026年12月上旬〜2027年1月中旬頃 |
| 間接補助事業終了期限 | 2027年2月12日(金) |
| 実績報告書提出期限 | 2027年2月22日(月) |
| 最終報告会(書面またはWeb会議) | 2027年2月下旬頃 |
| 確定検査 | 2027年3月上旬〜中旬頃 |
| 補助金支払 | 2027年3月下旬頃 |
補助金が実際に入るのは2027年3月末ごろなんですね。かなり先ですね。
そうなんです。事業終了後の精算払いが基本ですから、それまでの期間は自社資金で立て替える必要があります。資金繰りが厳しい場合は概算払い制度も利用できるので、事務局に相談してみてください。
事業完了前に補助金の一部を前払いで受け取れる制度です。別途必要な書類がありますが、キャッシュフロー対策として有効です。なお補助金の支払い確定後に「額の確定通知書」が発行され、その後に精算払請求書を提出することで最終的な補助金が振り込まれます。
特定非営利活動法人 地球と未来の環境基金(EFF)
担当: 稲垣、金坂
メール: grants@eco-future.net
※件名は必ず「原子力産業基盤強化事業補助金に関する質問」(他の件名では回答不可)
※本文に所属組織名・氏名(ふりがな)・所属(部署名)・電話番号・メールアドレスを明記
質問締切: 令和8年5月20日(水)正午まで
※電話での問い合わせは受け付けていません
メールだけなんですね。件名が決まっているのも厳しい。
問い合わせ件数が多いんでしょうね。件名や本文の形式を守らないと回答してもらえないので必ず守ってください。
同じ経済産業省関係でいくつか比較してみましょう。例えば
ものづくり補助金(19次締切)は中小企業向けで補助率1/2〜2/3、上限1,250万円程度と対象が幅広いのに対し、今回の原子力産業基盤強化補助金は
原子力産業特化・2億円という圧倒的な規模が特徴です。
事業再構築補助金(第13回)は新分野展開や業態転換が対象で補助率最大2/3、上限1〜1.5億円(一部の枠でそれ以上)ですが、対象業種は幅広い一方で「新規事業」が条件です。原子力補助金は既存の技術・設備の維持・強化も対象なので、技術継承や既存プロセスの改善にも使えるのが大きな違いです。
| 比較項目 | 原子力産業基盤強化補助金 | ものづくり補助金 | 事業再構築補助金 |
|---|
| 補助上限額 | 2億円 | 最大1,250万円〜5億円 | 最大1〜7,000万円(枠による) |
| 補助率 | 1/2以内 | 1/2〜2/3 | 1/2〜2/3 |
| 対象業種 | 原子力関連に特化 | 製造業・サービス業等 | ほぼ全業種 |
| 事業類型 | 技術開発・継承・DX等 | 革新的製品・サービス開発 | 新分野展開・業態転換等 |
ものづくり補助金や事業再構築補助金との併用はできますか?
同一経費への重複申請は不可ですが、異なる事業・経費であれば他の補助金と組み合わせることは制度上可能です。ただし個別の判断が必要なので、事務局に必ず確認してください。
では最後によくある疑問をまとめて聞かせてください!
GビズIDを持っていない場合、今から間に合いますか?
締切が令和8年5月27日正午で、GビズID取得に2週間程度かかります。この記事を読んでいる今(2026年5月7日)から申請するとギリギリ間に合う可能性がありますが、今日中に手続きを開始することが必須です。
GビズIDの申請ページに今すぐアクセスしてください。
やむを得ない事由がある場合、事業全体の補助金上限額の範囲内であれば一部変更が可能です。ただし変更前に必ず事務局に連絡が必要です。また採択後の大幅変更は交付決定が行われない場合もあるので、最初から実現可能な計画を立てることが重要です。
共同申請(コンソーシアム)の場合、何社でも参加できますか?
会社数に上限は定められていません。ただし幹事者が業務の全てを他社に委託することはできないため、幹事者が実際に事業の中核を担う体制が必要です。
採択されなかった場合、不採択理由は教えてもらえますか?
審査は非公開で行われ、審査の経過等に関する問い合わせには応じないとされています。不採択通知後に再公募があれば再チャレンジできますが、今のところ次回公募の予定は発表されていません。
jGrantsのシステム上、締切時刻を1分でも過ぎると受付されません。余裕を持って5月26日(火)までに申請完了することを強く推奨します。また質問の締切はさらに早く5月20日(水)正午なので、不明点があれば今週中に問い合わせを済ませてください。
都道府県ごとにも補助金の情報を調べられるんですか?
はい。国の補助金に加えて都道府県・市区町村独自の製造業・技術開発支援補助金もあります。自社の所在地に合わせて確認してみてください。例えば
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大阪府の補助金一覧では、製造業支援や技術開発関連の都道府県補助金も検索できます。全国の補助金は
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