室谷さん、今日は「外国商標出願費用助成事業」を取り上げるんですが、まずざっくりどんな制度なのか教えてもらえますか?
はい!一言でいうと、東京都内の中小企業が海外で商標を出願するときの費用を、最大60万円・費用の半額まで助成してくれる制度です。東京都中小企業振興公社の東京都知的財産総合センターが運営してます。
海外で商標出願ってどういうことですか?日本で取った商標じゃダメなんですか?
実はこれ、すごく重要なポイントで。商標は各国ごとに独立しているんですよ。日本で「〇〇」って商標を取っても、中国では中国で別に出願しないと保護されない。しかも中国は「先願主義」といって、先に出願した人が権利を取得する仕組みです。
えっ、じゃあ自分のブランドを先に中国の別の誰かに登録されちゃうことがあるんですか!?
あります、普通に。それを「商標スクワッティング」っていうんですが、日本で知名度が出てきたブランドが中国で先取りされるケース、毎年起きてますよ。取り戻しに数百万円かかることもあります。だから海外展開を検討し始めたら、商標出願は早めが絶対正解なんです。
なるほど、怖いですね。でも60万円の助成を受けながら対策できるわけか。申請資格はどんな感じなんですか?
基本は東京都内に本店を持つ中小企業者です。会社と個人事業者の両方OK。あと中小企業団体や一般社団法人・一般財団法人も対象になります。ただし1年度につき1社1出願までという制限があります。
そうです。業種ごとに基準が違うので確認が必要です。
| 業種 | 資本金 | 従業員数 |
|---|
| 製造業・その他 | 3億円以下 | 300名以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100名以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50名以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100名以下 |
ほとんどの中小企業は入りそうですね。あと何か条件はありますか?
「識別力のある商標を有していること」と「海外で広く活用する意思があること」という要件もあります。つまり単なる一般名称みたいな商標じゃなくて、ちゃんと自社のブランドとして機能する商標を持っていることが前提です。
たとえばラーメン屋が「ラーメン」って商標を出願しても、それは一般的な名称だから識別力がないと判断されます。自社独自のブランド名とかロゴが対象ですね。過去に助成を受けた企業は「活用状況報告書」の提出が必要という条件もあるので注意してください。
申請要件はわかりました。じゃあ実際にどんな費用を助成してもらえるんですか?
外国商標出願費用の助成あり・なし比較
| 項目 | 内容 |
|---|
| 助成率 | 費用の1/2以内 |
| 助成限度額 | 60万円 |
| 助成対象期間 | 令和8年4月1日〜令和9年9月30日(1年6か月) |
| 制限 | 1年度1社1出願 |
| 対象経費の種類 | 具体的な内容 |
|---|
| 外国出願手数料 | 各国特許庁やWIPOへの出願手数料 |
| 代理人費用 | 国内弁理士・現地代理人(外国弁理士)の費用 |
| 翻訳料 | 出願書類の翻訳費用 |
| 先行商標調査費用 | 出願先国での先行商標調査費用 |
先行商標調査も対象なんですね!調査だけでも結構お金かかるイメージですが。
そうなんですよ。1カ国の調査で3万〜10万円くらいかかることも。複数国に出願するなら調査費だけで20万円超えることもある。それが助成対象に入っているのは大きいですよ。
助成対象にならないのは主に以下です。国内での商標出願費用、商標のデザインやロゴの制作費用、出願に直接関係のないコンサルティング費用、交通費・通信費などの間接経費、助成対象期間外に発生した費用、すでに他の公的助成を受けている経費です。
特に「他の公的助成を受けている経費」は注意が必要そうですね。では肝心の申請期間と手続きを教えてください。
外国商標出願費用助成事業の申請フロー
| 回 | 申請受付期間 |
|---|
| 第1回 | 令和8年4月22日(水)〜令和8年5月14日(木)17時まで |
| 第2回 | 令和8年9月2日(水)〜令和8年9月25日(金)17時まで |
各回3週間ちょっとしかないんですか!結構短いですね。
そう!だから準備は早めに始めないといけない。しかもこの助成金の申請はjGrantsでの電子申請と申請書類の郵送、両方を期間内に完了させる必要があるんです。
はい、これが最大の注意点!どちらか片方だけでは正式に受理されません。
jGrantsでの電子申請だけでは不十分!申請書類の郵送(簡易書留・レターパック等)も期間内に完了すること。持参・普通郵便・FAX・メールは不可。
1弁理士に相談・出願先国の選定。まず海外で守りたいブランドと出願先を決める。マドリッドプロトコルを使うか各国直接出願にするかも検討する。
2先行商標調査・見積もりの取得。出願先国での先行調査を弁理士事務所に依頼する。費用の見積もりも取得しておく。
3GビズIDプライムアカウントの取得(申請期間の約2〜3週間前に完了必須)。取得していない場合はデジタル庁のGビズIDサイトから申請する。
4jGrantsでの交付申請。申請受付期間内にjGrantsの外国商標出願費用助成事業フォームから申請する。
5助成金申請書類の作成・郵送。募集要項に基づいて申請書類を作成し、簡易書留等の記録が残る方法で送付先に郵送する(封筒に「外国商標出願費用助成金申請書類在中」と記載必須)。
6審査・交付決定の通知受領。申請内容が審査され、交付決定通知が届く。
7出願手続きの実施。助成対象期間(令和8年4月1日〜令和9年9月30日)内に外国商標出願を行う。
8実績報告書の提出。出願完了後、所定の様式で実績報告書を提出し、助成金を受領する。
そこが一番の落とし穴ですね。GビズIDプライムアカウントの発行には2〜3週間かかるので、申請期間の1か月前には取得手続きを開始しないと間に合わない。あと申請書類の郵送は「発送前に必ず控えを取っておくこと」、これも大事です。提出書類の返却には対応してもらえません。
審査はどんな観点で見られるんですか?実際に採択されるためのコツを教えてください!
審査通過のために、どんなことに気をつければいいですか?
審査で重視されるのは大きく3つです。商標の識別力、海外展開計画の具体性、そして出願先国の選定根拠です。
- 出願先国の優先順位付け: 全世界への出願は現実的ではない。主要市場・模倣品リスクが高い地域を理由とともに明記する
- 海外展開計画の具体性: 「いつ、どの市場で、どんな商品・サービスを売るか」を具体的に
- 商標の識別力の事前確認: 弁理士に識別力の見通しを確認し、出願前に強い商標に整備する
事業戦略に基づいた優先順位が大事ですね。アジア向けに輸出するなら中国・韓国・台湾・東南アジア。米国や欧州に展開するなら米国・EU。和食・コンテンツ系なら東南アジアや台湾も重要です。なんとなく「有名な国」に出願するより、自社の事業計画と連動した出願先を選ぶこと、これが採択のポイントです。
マドリッドプロトコルを使うのとしないのでは何が違うんですか?
マドリッドプロトコル(国際商標登録制度)はWIPOを通じて一度の出願で複数国に登録を求められる仕組みです。費用面でお得になる場合もあるけど、日本での出願・登録が前提となります。個別に各国に直接出願するより手続きが簡略化できるメリットがある反面、指定国ごとの実体審査は各国の基準で行われます。どちらが良いかは出願先や商標の内容によるので、弁理士と一緒に最適ルートを選んでください。
なるほど、専門家との連携が大切なんですね。他にもこの助成金と組み合わせて使える制度はありますか?
知的財産の海外保護に使える他の制度もあるんですか?
同じ東京都中小企業振興公社で、商標と並行して使いやすい制度があります。
はい!それぞれ別制度なので、同一年度に両方申請できます。海外展開の際にはブランド名やロゴを商標で保護し、製品デザインを意匠で保護するという両面作戦が理想的です。化粧品メーカーなら商標+意匠、製造業なら商標+特許のセットが多いですね。
JETROの「中小企業等海外出願・侵害対策支援事業」(外国出願補助金)も上限300万円・補助率1/2の制度があります。対象経費が重複する場合は本助成金との併用はできませんが、出願先国を分けたり、INPITの外国出願補助金(上限50万円・中間手続対応)と組み合わせるなど、工夫次第で複数活用も可能です。
INPIT外国出願補助金(中間手続補助)も合わせてチェックしてみてください。
ブランドと技術の両面から知財を守るのが大事なんですね。最後に問い合わせ先と基本情報をまとめてもらえますか?
- 実施機関: 公益財団法人 東京都中小企業振興公社 東京都知的財産総合センター
- 助成率: 1/2以内
- 助成限度額: 60万円
- 助成対象期間: 令和8年4月1日〜令和9年9月30日(1年6か月)
- 対象地域: 東京都内に本店を有する事業者
- 申請回数: 1年度1社1出願まで
- GビズIDプライムアカウント: 発行に2〜3週間かかるため、申請期間の1か月前に取得開始
- 申請書類の控え: 提出後の返却に応じてもらえないため、必ず事前にコピーを取る
- 書類不備への対応: 知財センターから修正依頼が来た場合、期限を過ぎると審査不通過になる可能性あり
- 過去の助成金受給者: 活用状況報告書の提出が必要
本当にやることが多いですね!第2回は9月締め切りだから、第1回を逃した方は今から準備して第2回に備えるのが良さそうですね。
そうですね。第2回の申請受付は令和8年9月2日から始まります。今からGビズIDを取得して弁理士に相談を始めておけば、十分間に合います。海外展開のブランド保護は、早ければ早いほど安いし確実です。ぜひ活用してください!
マドリッドプロトコルで複数国に一括出願しても1件とカウントされるんですか?
基本的には1件の出願として扱われます(1年度1社1出願の制限における「1出願」)。マドリッドプロトコルは一度の国際出願で複数国への商標登録を求める仕組みなので、国際出願1件として申請できます。ただし詳細な適用については申請時に知財センターに確認してください。
直接各国へ出願する場合は、日本での登録がなくても外国出願は可能です。ただしマドリッドプロトコルを利用する場合は日本での出願または登録が前提となります。どちらのルートで進めるかは弁理士に相談してください。
出願したけど審査で拒絶された場合も助成金はもらえますか?
助成金は出願手続きに要した費用を対象としているため、その後の拒絶によって助成金交付が取り消されることは一般的にはありません。ただし助成要件の詳細は東京都知的財産総合センターに直接確認することをおすすめします。
ロゴと文字商標を別々に出願したい場合、両方対象になりますか?
1年度につき1社1出願の制限があるため、同一年度内はどちらか一方のみが対象となります。ロゴと文字商標を同一出願にまとめるか、翌年度に分けて申請するかを弁理士と相談してください。
東京都内で海外展開を考えているなら、ブランドの商標保護は最優先の経営課題です。東京都の他の補助金・助成金一覧もあわせてチェックして、自社に合った支援制度を組み合わせて活用してください。