室谷さん、この「TOKYO戦略的イノベーション促進事業」、まず上限金額にびっくりしたんですよ。最大8,000万円って、ホントに出るんですか!
室谷: 出ますよ、条件を満たせばですけどね(笑)。しかも助成対象期間は最長3年間です。令和9年3月1日から令和12年2月28日まで、じっくり技術開発に取り組める。都内中小企業向けとしては、かなり太っ腹な制度です!
佐藤: えっ、3年間も!補助金って1年とか2年のイメージがあったので、その時点で意外でした。
室谷: この事業は、都内中小企業が「イノベーションマップ」に基づいて、自社のコア技術を基盤に、他企業や大学などの知見・ノウハウを活用して事業化を目指す技術・製品開発を支援するのが目的。1年で結果を出すのは難しいテーマですから、長期で見る設計なんですね。
佐藤: なるほど。となると、ちゃんとした研究開発の計画を求められそうですね。
「ハンズオン支援」っていう言葉も気になります。お金以外のサポートもあるんですか?
室谷: ありますよ。東京都のプレスリリースによると、支援内容は「助成金交付」と「助成事業の実施に対する助言等」。さらに、必要に応じて助成事業完了後も最長1年間ハンズオン支援を継続するとなっています。
佐藤: 事業が終わった後も見てもらえるのは心強い!具体的にどんな助言がもらえるんでしょう?
室谷: そこは公募要領で要確認ですね。ただ、研究開発を進めるうえでの進捗相談や、事業化に向けた壁打ち相手がいるのは大きいはずです。3年という長期プロジェクトですから、途中で軌道修正が必要になる場面も出てきますよ。
佐藤: マジですか。お金だけでなく、伴走してくれる存在がいるのはありがたいですね。
この事業の成り立ちも教えてください。いつから始まったんですか?
室谷: 東京都の報道発表では、令和3年度から実施していると記載されています。「2050東京戦略」などで掲げる目指す東京の姿を実現するため、成長産業分野の都市課題と技術・製品開発動向を示した「イノベーションマップ」を策定し、そのマップに沿った開発を支援する枠組みです。
佐藤: つまり、東京が抱える課題をビジネスチャンスに変えるための後押し、ということですね。
室谷: そのとおり。だからこそ、開発テーマが9つの分野に整理されているんです。次のセクションで詳しく見ていきましょう。
TOKYO戦略的イノベーション促進事業の特徴最大8,000万円
助成限度額8,000万円・申請下限額1,500万円
9つの開発支援テーマ
防災・医療・環境などイノベーションマップに沿う
最長3年の長期支援
令和9年3月1日〜令和12年2月28日
ハンズオン支援
必要な場合、完了後も最長1年サポート
金額の話を深掘りします。助成限度額が8,000万円で、申請下限額が1,500万円。この2つの意味を教えてください。
室谷: 助成限度額は、この制度でもらえる助成金の上限が8,000万円であるということ。もう一方の申請下限額は、助成金の申請額が1,500万円以上でないと受け付けない、という意味です。
佐藤: つまり、少額の研究開発には使えないけど、それだけ大きな開発を想定している、と。
室谷: そのとおり。しかも助成率は2/3以内なので、総事業費が大きいほど助成額も大きくなります。上限8,000万円を目指すなら、総事業費は1億2,000万円規模が必要になる計算です。
佐藤: 1億超えのプロジェクトを計画している企業でないと、フルには使えないわけですね。
助成率2/3のイメージをもう少し具体的に聞かせてください。たとえば1年で1,000万円の研究開発費がかかる場合、いくらもらえるんですか?
室谷: 助成対象と認められる経費の2/3以内ですから、最大666万円程度です。ただし、あくまで「助成対象と認められる経費」がベース。全額が認められるとは限らないので、そこは注意してください。
佐藤: なるほど。対象経費の範囲をちゃんと把握しておかないと、思ったより少なくなる可能性もあるんですね。
室谷: そうなんです。だからこそ、経費の計画を丁寧に立てることが大事。どんな費用が対象になるかは、後ほど詳しく解説しますね。
助成対象期間は令和9年3月1日から令和12年2月28日まで。つまり最長3年間ですね。長期で見ると、会社にとってかなり大きな戦力になりそうです。
室谷: そうですね。3年間の開発計画を立てられるのは、この制度の大きな魅力です。短期的な成果が求められる通常の補助金とは、少し毛色が違いますからね。
助成対象期間のイメージ令和9年3月1日
助成スタート
研究開発・実証事業を開始
令和12年2月28日
助成終了
最長3年間の開発期間
申請資格を整理しましょう。まず「都内の本店又は支店で実質的な事業活動を行っている中小企業者」ですよね。会社だけでなく個人事業者も含むとのことですが。
室谷: そのとおり。会社と個人事業者が対象です。さらに「都内での創業を具体的に計画している個人」も対象になっています。
佐藤: 創業予定者にまで門戸が開かれているんですね。これは意外でした!
室谷: ただ、あくまで「具体的に計画している」ことが条件です。何も決まっていない段階で申請するのは難しいでしょう。事業計画や開発テーマが明確になっている必要があります。
対象業種が広いのも特徴ですよね。建設、製造、情報通信、運輸、卸売・小売、金融・保険、不動産、教育、医療・福祉まで。
室谷: ええ、電気・ガス・熱供給・水道業、複合サービス事業、サービス業、学術研究・専門技術サービス業、生活関連サービス業・娯楽業も入っています。これだけ並ぶと、都内で事業をしている中小企業の多くが対象になり得ますね。
佐藤: ただし、業種が広いからといって何でも通るわけではない、と。
室谷: そのとおり。対象になるのは、あくまで「イノベーションマップ」の開発支援テーマに適合する研究開発です。業種うんぬんよりも、開発内容の方がずっと重要ですね。
従業員数の上限とかは設定されているんですか?
室谷: jGrantsの公表情報では「従業員数の制約なし」とあります。ですから、従業員数で申請できないということはなさそうです。
佐藤: それは意外。中小企業っていうから、人数で線引きされると思ってました。
室谷: ただ、あくまで「中小企業者」であることは前提です。中小企業者の定義に該当するかどうかは、募集要項で確認するのが確実です。ここは自己判断せず、しっかり確認してください。
申請対象かどうかの大まかな確認フロー都内で事業活動をしていますか?
はい中小企業者(会社・個人事業者)
イノベーションマップのテーマに合う開発がある
社外の知見を活用した計画になっている
申請対象の可能性が高い
いいえ創業を具体的に計画中の個人か確認
それでも該当しない場合は対象外
申請するうえで絶対に外せないのが「イノベーションマップ」ですよね。これについて教えてください。
室谷: 東京都の説明では、東京が抱える課題を解決するため、成長産業分野における開発支援テーマと技術・製品開発動向等を示したものです。簡単に言えば「東京が今、どんな技術を求めているかの地図」ですね。
佐藤: この地図に載っているテーマに沿った開発なら、助成対象になり得る、と。
室谷: そのとおり。具体的には9つの開発支援テーマがあります。防災・減災・災害復旧、インフラメンテナンス、安全・安心の確保、スポーツ振興・障害者スポーツ、子育て・高齢者・障害者等の支援、医療・健康、環境・エネルギー・節電、国際的な観光・金融都市の実現、交通・物流・サプライチェーン。この9つです。
9つもあると、自分の開発がどこに当てはまるか迷いそうですね。
室谷: テーマごとに例示が用意されています。たとえば防災・減災・災害復旧なら、安否確認システム、災害情報収集・自動処理・配信システム、避難生活に関する技術、3Dマッピング、災害予測技術など。インフラメンテナンスなら、点検・診断技術やモニタリング技術、自己修復材料などの新素材が並んでいます。
佐藤: 医療・健康も幅広いですね。生体現象計測・監視技術、画像診断、オンライン診療など。
室谷: そう。環境・エネルギー・節電には、エネルギーマネジメントシステムや蓄電池、水素利用、リサイクル技術なども含まれます。国際的な観光・金融都市の実現には、メタバース・AR・VR技術やブロックチェーン、サービスロボットも例示されています。
佐藤: かなり先端分野が多い印象です。ただし、これらはあくまで例示であって、ここに無い技術でもテーマに合えば対象になり得るんですね。
室谷: そのとおり。「例示はあくまで一例であり、開発支援テーマに即した内容であれば対象となります」とされています。自分の技術をどのテーマに紐づけるか、じっくり考える必要がありますね。
テーマに合っていればそれでOK、ではないですよね?
室谷: 助成事業の要件は3つあります。①イノベーションマップにある開発支援テーマに適合していること、②社外の知見やノウハウを活用すること、③早期に事業化を目指す研究開発であること。この3つを満たす必要があります。
佐藤: 特に②の「社外の知見」がポイントになりそうです。自社だけで完結する開発は対象にならないんでしょうか?
室谷: 東京都のプレスリリースには「他企業・大学・公設試験研究機関等との連携(外注・委託、共同研究によるノウハウの活用)が含まれていることが条件」と明記されています。つまり、社外との連携は必須条件なんです。
佐藤: そうだったんですね。自社の強みに加えて、パートナーとの協力関係を示す必要があるわけだ。
助成対象になるための3要件- イノベーションマップの開発支援テーマに適合
- 社外の知見・ノウハウを活用している
- 早期に事業化を目指す研究開発である
×デメリット
- 自社だけで完結する開発は対象外の可能性
- 医薬品・医薬部外品は原則対象外
せっかくお金をもらっても、使途が限られていたら意味がないですよね。どんな費用が助成対象になるんでしょうか?
室谷: 東京都の報道発表に、助成対象経費として9区分が示されています。原材料・副資材費、機械装置・工具器具費、委託・外注費、専門家指導費、直接人件費、規格等認証・登録費、産業財産権出願・導入費、展示会等参加費、広告費。この9つです。
佐藤: 直接人件費が入っているのは大きいですね。研究者や技術者の人件費に使えるなら、3年間の開発体制を組みやすくなります。
室谷: そうなんです。長期開発には欠かせない区分ですね。委託・外注費も、外部連携が必須のこの制度では重要な使途になるでしょう。
佐藤: 特許関連の費用や展示会の参加費まで含まれているのは、事業化を強く意識した設計ですね。
表にまとめてもらえますか?後で見返したいので。
室谷: では、こういう表になります。
| 助成対象経費 | イメージ |
|---|
| 原材料・副資材費 | 試作品・試作機の材料費 |
| 機械装置・工具器具費 | 研究開発用の設備・工具類 |
| 委託・外注費 | 外部機関への委託・外注 |
| 専門家指導費 | 専門家の指導を受ける費用 |
| 直接人件費 | 開発に直接従事する人件費 |
| 規格等認証・登録費 | 規格認証・登録に要する費用 |
| 産業財産権出願・導入費 | 特許などの出願・導入 |
| 展示会等参加費 | 展示会への出展費用 |
| 広告費 | 技術・製品の広報費 |
ただし、これはあくまで区分の一覧です。各経費の算定方法や助成対象の範囲は、募集要項で必ず確認してくださいね。
佐藤: うん、ここは絶対に確認が必要なところですね。
逆に、これは対象外だよ、という費用もありますか?
室谷: 公式情報には対象外経費の詳細なリストは明記されていません。ですから、ここで具体的に「これが対象外」と断言するのは避けます。気になる費用がある場合は、公募要領で確認するのが確実です。
佐藤: なるほど。経費の線引きは自己判断せず、しっかり調べる、と。
室谷: そうですね。しかも、この手の助成金は「これは対象になるんじゃないか?」と思った費用が、実は対象外というケースも珍しくありません。問い合わせ先も公開されているので、迷ったら聞いてみるのが一番です。
申請の流れを教えてください。最初にやることは何ですか?
室谷: 最初のステップは「GビズIDプライム」の取得です。Jグランツでの電子申請に必要で、アカウント作成には審査で原則2週間程度かかるとされています。つまり、申請を考え始めたら、まずこれを取りに行くのが鉄則です!
佐藤: 2週間もかかるんですか!それは締切を知ってからだと、間に合わない恐れがありますね。
室谷: まさにそこが落とし穴です。公社のページでも「GビズIDプライムアカウント作成には、審査で原則2週間程度かかるとされていますので、ご注意ください」と注意喚起しています。
GビズIDを取得したら、次は何をするんですか?
室谷: 次は「申請エントリー」です。令和8年7月9日(木)から8月12日(水)17時00分までに、公社の入力フォームでエントリーします。ここを忘れると、申請書類を提出しても受け付けてもらえません。
佐藤: えっ、エントリーしないと書類すら出せないんですか!
室谷: そうです。「申請エントリーされていない場合、申請書類を受け付けることができません」と明記されています。そして、申請書類の提出期間は令和8年8月14日(金)から9月3日(木)17時00分まで。Jグランツによる電子申請です。
佐藤: エントリーと書類提出の期限が別々にあるんですね。これはカレンダーにしっかりマークしておかないと!
提出は電子申請のみなんですか?
室谷: はい。持参、郵便、宅急便、FAX、電子メール等による提出は受け付けていません。完全にJグランツでの電子申請のみです。
佐藤: なるほど。じゃあ、窓口に行く手間はないですね。
室谷: ただし、注意点があります。電子申請のアクセスが集中した場合、システム障害により申請手続きが滞る可能性があります。公式ページにも「十分な余裕をもって申請手続きをしてください」とあるので、締切当日ギリギリに出すのは危険です。
佐藤: それは怖い。システムトラブルで申請できませんでした、じゃ済まないですからね。余裕を持って提出しましょう。
申請の流れ- 1
GビズIDプライムを取得
審査に原則2週間。早めに行動
- 2
- 3
- 4
- 5
Jグランツで電子申請
令和8年8月14日〜9月3日17時
令和8年度の申請スケジュール令和8年7月9日
申請エントリー開始
公社ホームページの入力フォームから
令和8年8月12日
申請エントリー締切
17時00分厳守
令和8年8月14日
申請書類受付開始
Jグランツで電子申請
令和8年9月3日
申請書類締切
17時00分。余裕を持って提出
申請書類を提出した後の流れも気になります。どんな審査があるんでしょうか?
室谷: 東京都の報道発表では、一次審査(書類)が9月上旬から12月上旬、二次審査(面接)が1月上旬、助成対象者決定が3月上旬、というスケジュールが示されていました。ただしこれは令和7年度の例です。令和8年度の正確な日程は、公募要領で確認してください。
佐藤: 面接審査まであるんですね。書類を出せば終わりではないと。
室谷: そうですね。面接では、技術の優位性や事業化への熱意を直接伝える場になります。書類だけでは伝わらない部分を、しっかりアピールしたいところです。
審査のポイントで特に重要なのは何でしょう?
室谷: とにかく「社外の知見やノウハウを活用しているか」です。この制度の柱は、他企業や大学などの知見を活用して事業化を目指すこと。ですから、連携先との役割分担や、連携によって何が変わるのかを明確に書く必要があります。
佐藤: つまり、連携は「あります」と言うだけではダメで、中身が問われる、と。
室谷: そのとおりです。具体的にどの機関と、どんな内容で、どのような成果を見込むのか。このあたりを丁寧に説明できるかどうかが、審査を左右すると言っても過言ではないでしょう。
申請書の書き方で、事前に押さえておくべきコツはありますか?
室谷: まず、開発支援テーマとの適合性を分かりやすく示すことです。9つのテーマのどれに対応するのか、そのテーマが解決しようとしている課題に、自社の技術がどう応えるのか。この文脈が明確だと、審査側もイメージしやすいです。
佐藤: 技術の専門用語ばかり並べるより、課題と解決策のストーリーで書く方が伝わりやすい、と。
室谷: まさにそのとおり。あとは助成対象経費の積算根拠ですね。なぜその金額が必要なのか、説得力のある説明が求められます。見積書や過去の実績を根拠に、無理のない金額設定を心がけましょう。
佐藤: 具体的な採択基準は公表されていないと思いますが、やはり要件に忠実に書くのが一番なんですね。
申請を検討するにあたって、説明会とかセミナーは開催されるんですか?
室谷: 東京都の報道発表では、申請エントリーされた方を対象に、イノベーションマップセミナーと助成事業説明会がオンラインで開催されるとのことでした。ただし、開催日時は年度によって変わります。令和8年度の開催情報は公社のホームページで確認してください。
佐藤: 申請書の書き方も説明してもらえるなら、参加した方が良さそうですね!
室谷: はい。ただし、未参加でも応募は可能とされています。あくまで任意のイベントなので、その点は安心してください。
疑問が湧いたときの問い合わせ先を教えてください。
室谷: 助成事業に関することは、公益財団法人東京都中小企業振興公社 企画管理部 助成課の「TOKYO戦略的イノベーション促進事業担当」です。電話は03-3251-7894、メールは
josei@tokyo-kosha.or.jp。住所は東京都千代区神田練塀町3-3大東ビル4階です。
佐藤: Jグランツの操作やGビズIDのトラブルは、別の窓口になるんですよね?
室谷: そのとおりです。Jグランツの申請方法や技術トラブル、GビズIDに関する質問は、GビズIDヘルプデスク(電話0570-023-797)へ問い合わせすることになっています。
最後に、基本情報を表でまとめてください。
室谷: では、こちらです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
室谷: この制度は、単なる研究開発費の助成ではなく、東京の未来をつくる開発を後押しする大型プロジェクトです。最大8,000万円、最長3年という規模は、都内中小企業にとって大きなチャンスです!
佐藤: ただし、GビズIDの取得に2週間かかる、エントリーと書類提出が2段構え、社外連携が必須…。準備すべきことは多いですよね。
室谷: だからこそ、情報収集は早めに始めたほうがいい。まずは公式の公募要領を読んで、自社の開発が9つのテーマのどこに当てはまるかを考えてみてください。そこから具体的な準備が始まります。
佐藤: 令和8年度の申請を考えている事業者の皆さんは、ぜひ早めに動き始めましょう!本日はありがとうございました。
室谷: ありがとうございました!