室谷さん、いきなりですが「酒類業振興支援事業費補助金」って名前だけでお腹いっぱいになりそうです(笑)。
わかります(笑)。でも中身は案外シンプルで、酒類事業者が海外展開や新しい市場に挑む取組を支援する補助金です。正式名称は「令和8年度酒類業振興支援事業費補助金(第5期)」ですね。
はい。国税庁が実施する「酒類業振興支援事業」の一環です。日本産酒類のブランディング、インバウンドによる海外需要の開拓、国内外の新市場開拓といった取組を支援して、輸出拡大や酒類業の経営改革・構造転換を図るのが目的です。
輸出やインバウンドだけじゃなく、国内の新しい市場も対象なんですね。
そうなんです。そこがこの補助金のポイントです。海外に売り込みたい酒蔵も、国内で新商品を仕掛けたい酒販店も、どちらも視野に入っています。
「海外展開支援枠」と「新市場開拓支援枠」の2本立てです。海外展開支援枠は海外販路拡大や酒蔵ツーリズム、新市場開拓支援枠は商品の差別化や販売手法の多様化などが対象です。
よく見てますね。海外展開支援枠と新市場開拓支援枠の両方に、「酒類事業者による酒米産地との連携を活かした新たな取組」があります。
なるほど。じゃあ最初に全体像を図で見せてもらえますか?
この補助金の全体像海外展開支援枠
日本産酒類の海外販路拡大、商品等の高付加価値化、酒蔵ツーリズム、酒米産地と連携した新たな取組
新市場開拓支援枠
商品の差別化、販売手法の多様化、ICT活用による製造・流通の高度化、酒米産地との連携
対象者
酒類事業者(製造・卸売・小売)または酒類事業者を1者以上含むグループ
気になるのは金額です。まず海外展開支援枠はいくらまで?
1件あたり上限1,000万円、下限50万円です。補助率は補助対象経費の1/2です。
つまり、かかった経費の半分を国が見てくれるってこと?マジですか!
はい。600万円の取組なら、ざっくり300万円が補助対象になるイメージです。もちろん上限まで、という話ですよ。
それでも大きいですね。ただし下限50万円には注意が必要ですね。
そうですね。50万円未満の計画は対象外ですから、計画を作る段階で意識しておきましょう。
上限1,000万円って聞きましたけど、全体の補助上限は1,500万円とありました。
そう。海外展開支援枠では、複数の酒類事業者が集まって取組を推進する場合、上限が増加します。6者以上いれば最大1,500万円です。
1,000万円が1,500万円に跳ね上がるんですね!
ただし、補助率はあくまで1/2です。上限が上がるだけで、経費の半分を補助する仕組みは変わりません。
グループならお得になるケースがある、と。代表の事務負担とかはありそうですが、まずは公募要領ですね。
そうですね。グループの構成や役割分担も、必ず公募要領で確認してください。
1件あたり上限500万円、下限50万円です。補助率は1/2ですが、従業員数が20人以下(卸・小売業は5人以下)の小規模酒類事業者なら2/3まで上がります。
ただし、海外展開支援枠にはこの2/3の記載がありません。小規模だからといってすべての枠で2/3になるわけではないので、注意してください。
なるほど。申請する枠によって補助率が違うんですね。
そこは肝心です。あと新市場開拓支援枠には「給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる」など事業計画の要件があります。詳しくは後で説明しますね。
数字がたくさん出てきたので、表で整理してもらえますか?
| 項目 | 海外展開支援枠 | 新市場開拓支援枠 |
|---|
| 補助率 | 補助対象経費の1/2 | 補助対象経費の1/2 ※小規模酒類事業者なら2/3 |
| 補助金額 | 上限1,000万円・下限50万円 ※複数の酒類事業者が集まる場合は上限増加・最大1,500万円(6者以上) | 上限500万円・下限50万円 |
| 主な対象 | 海外販路拡大、高付加価値化、酒蔵ツーリズム、酒米産地連携 | 商品差別化、販売手法多様化、ICT活用、酒米産地連携 |
| 申請要件 | 公募要領で確認 | 3~5年の計画期間で給与支給総額の年率平均1.5%以上増加、売上額または付加価値額の年率平均3%以上増加の計画を策定 |
いえ、制度の対象は「酒類事業者」です。製造業者、卸売業者、小売業者が想定されていて、法人と個人事業主を区別する記載はありません。
はい。GビズIDは法人・個人事業主向けに取得できるので、酒類事業者として申請を検討できると思います。ただ、資格の詳細は公募要領で確認してくださいね。
わかりました。まずは自分が対象かどうかを確認するのが大事ですね。
はい。「酒類事業者を1者以上含むグループ」なら申請できます。複数の酒類事業者が集まって海外展開に取り組むケースが想定されています。
例えば、複数の酒蔵が集まって海外向けのプロモーションをする、みたいな?
そういう取組は海外展開支援枠に合いやすいと思います。酒米産地との連携も、海外展開支援枠・新市場開拓支援枠の両方で対象になっています。
グループだと上限も上がるし、メリットがありそうですね。
その代わり、誰が申請代表者になるのか、役割分担や経費の管理をどうするかは、事前にしっかり決めておきたいです。
Jグランツの情報では「従業員数の制約なし」と出ています。ただし、新市場開拓支援枠の補助率2/3は、従業員数が20人以下(卸・小売業は5人以下)の小規模酒類事業者という条件があります。
制約なし、というのはあくまで申請資格の話で、補助率には影響するんですね。
その理解で大丈夫です。「従業員数の制約なし」=全員が2/3になるわけではない、という点は押さえておいてください。
まずは酒類事業者かどうか。そして、酒類事業者を含むグループかどうか。そこから確認しましょう。
申請対象かどうかのざっくり判定酒類事業者(製造・卸売・小売)または酒類事業者を1者以上含むグループですか?
はい海外展開支援枠か新市場開拓支援枠かを確認
公募要領で要件や経費の範囲をチェック
いいえ単独申請は対象外になる可能性が高い
関連する別の制度がないか情報収集
海外展開支援枠では、どんなことが対象になるんですか?
3つあります。1つ目は日本産酒類の海外販路拡大や商品等の高付加価値化に関する取組。2つ目は酒蔵の観光化や地域における酒蔵ツーリズムプラン策定の取組。3つ目は酒類事業者による酒米産地との連携を活かした新たな取組(海外展開またはインバウンド向け)です。
海外に輸出するだけじゃなく、酒蔵を観光資源にするのも対象なんですね。
インバウンド需要の開拓が目的の1つですから、酒蔵ツーリズムはまさにフィットしやすいテーマです。
4つあります。商品の差別化による新たなニーズの獲得、販売手法の多様化による新たなニーズの獲得、ICT技術を活用した製造・流通の高度化・効率化、酒類事業者による酒米産地との連携を活かした新たな取組です。
海外というより、国内で新しい顧客をつかむイメージですね。
そうですね。商品や販売方法に新しい付加価値を加えて、新市場を開拓する計画が求められます。
酒米の価格高騰や米国関税措置の影響を受けた取組は優先採択の対象にもなります。関係しそうなら、計画に関連性を持たせるとよいでしょう。
具体的な経費の品目は公募要領に定めがあります。ここで注意したいのは、「設備の導入だけで完結する事業」は審査で評価が劣後する点です。
そうです。設備投資以外の取組を計画に組み込んで、補助事業計画書にきちんと記載しましょう。経費の発生がなくても、取組として書いておくのがポイントです。
なるほど。あと、テスト販売を除いて成果物の販売や営業行為をする事業も評価が劣後するとか。
よく調べましたね。補助事業期間中に販売や営業行為まで行ってしまうと、審査で評価が劣後します。計画の組み立て方が大事です。
経費の考え方(方向性)- 補助事業計画に直結する取組の経費
- 設備導入以外の取組を組み合わせた計画
- 計画どおりに支出・報告できる経費
×デメリット
- 設備導入だけで完結する事業構成
- テスト販売を除いて販売・営業行為を行う計画
- 新市場開拓支援枠で給与増加目標を達成できない場合の返還リスク
デジタル庁が運用する補助金申請システム「Jグランツ」から電子申請します。この第5期も、申請書類はJグランツで提出する形です。
電子申請が基本です。Jグランツのページには「代理申請 不可」とあるので、ご自身のアカウントでログインして申請するのを想定しておきましょう。
はい。だからこそ、GビズIDの準備が最初の関門です。
法人・個人事業主向けの共通認証システムです。Jグランツを利用するには、このGビズIDが必要になります。
公募要領には「郵送申請の場合、1~2週間かかります」とあります。準備が間に合わなくても申請期限は延びないので、早めに手続きしましょう。
締切直前になってからあわてる、というのは避けたいですね。
まさにそこが落とし穴になりがちです。GビズIDをまだ持っていないなら、今すぐ動くのが正解です。
公募申請書の申請先は、国内における主たる事業実施場所を所轄する国税局です。沖縄県の場合は沖縄国税事務所になります。
自分がどこを担当するか、最初に確認しないといけないんですね。
そうです。申請先を間違えると受理されない可能性がありますから、必ず確認してください。
不備や不足があると不採択になる、と公募要領にあります。提出前にチェックリストを見直すくらいの慎重さが欲しいです。
申請までの流れ- 1
GビズIDを取得
郵送だと1〜2週間かかる場合も。余裕をもって準備
- 2
- 3
- 4
Jグランツで申請
所轄国税局宛てに電子申請。締切は正午12時
- 5
採択・交付決定
交付決定日から事業開始。事業期間は令和9年2月28日まで
- 6
新市場開拓支援枠には、特別な申請要件があるんですよね。
はい。3~5年の事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる計画と、売上額または付加価値額を年率平均3%以上増加させる計画を策定していることが要件です。
売上を伸ばすだけじゃなく、給与も増やさないといけないんですね。
給与支給総額の増加が計画に組み込まれているかがポイントです。この目標を達成できないと、補助金額の一部を返還する可能性があります。
だからこそ、無理のない計画を立てることが大事です。
酒米の価格高騰等の影響を受けた場合(受ける見込みを含む)、または米国関税措置の影響を受けた場合で、その影響への対応として関連性のある取組は優先採択の対象となります。
ですから、該当しそうな場合は、補助事業計画書に対応策としての関連性を書くとよいと思います。不明点があれば、事業実施場所を所轄する国税局の酒類業調整官に相談するのがおすすめです。
間違っても「優先されるから適当に書く」ではなく、計画との整合性を説明できるようにしてくださいね(笑)。
審査で「これは避けたほうがいい」という構成はありますか?
経費が全て設備投資で、設備の導入のみで完結する事業は、審査で評価が劣後します。設備を導入するだけの計画は不利だと思っていいでしょう。
じゃあ、設備を買うなら何か別の取組もセットにしないといけない?
そうです。設備の導入以外の取組を、経費の発生有無にかかわらず補助事業計画書に確実に記載してください。あと、テスト販売を除いて成果物の販売や営業行為を事業期間中に行う計画も評価が劣後します。
販売してはいけない期間がある、という理解でいいですか?
テスト販売を除いて、です。成果物をいきなり売り切りたい気持ちはわかりますが、補助事業の枠組みに合わせた計画にしましょう。
令和8年10月7日(水)正午12時までです。受付開始は令和8年8月18日(火)から。ちなみに、この記事で解説しているのは第5期ですね。
2026年8月18日から10月7日まで、ということですね。
はい。Jグランツの情報では募集期間が2026-08-18〜2026-10-07と出ています。締切は正午12時なので、夕方まで大丈夫、と思わないでくださいね。
しかも、GビズIDの準備が間に合わなくても期限は延期されないんですよね。
そのとおりです。書類をそろえる時間も含めて、逆算で動くのが鉄則です。
採択されたら、いつまでに事業を終わらせればいいんですか?
交付決定日から**令和9年2月28日(日)**までです。しかも、同日までに支払が完了していること、と公募要領にあります。
つまり、支払いまで終わらせないといけない。かなりタイトですね。
採択された後のスケジュールまで見通して計画を立てないと、あとでバタバタします。
まさに。公募要領を見た段階で、いつ何を発注するかまで想像しておくと動きやすいですよ(笑)。
第5期のスケジュール令和8年7月
公募要領公表
国税庁・Jグランツで公募要領を確認
令和8年8月18日
第5期受付開始
Jグランツで申請受け付け
令和8年10月7日
第5期締切
正午12時まで。時間厳守
交付決定日から
補助事業期間
令和9年2月28日までに支払いを完了
令和9年2月28日
事業期間終了
同日までに支払いが完了していること
新市場開拓支援枠では、給与支給総額の増加目標が達成できていない場合、導入した設備等の簿価または時価のいずれか低い方の額のうち、補助金額に対応する分の返還を求められます。
事業計画終了時点で、年率平均1.5%以上の増加目標を達成できていないケースが該当します。計算式も含めて、公募要領で必ず確認してください。
計画は楽観的すぎず、でも採択される意欲も見せないといけない、難しいですね。
だからこそ、給与や売上の根拠を用意した計画づくりが欠かせません。
補助事業で取得した機械や備品は、補助金の目的に従って管理する必要があります。特に、単価50万円以上の機械・器具・備品等を処分する場合は、事前承認などが必要になるケースがあります。
そうです。処分した収入がある場合は、その一部を国に納付しなければならない場合もあります。詳細は公募要領を確認してください。
そこまで見越して管理できるかどうかも、申請前に確認しておきたいポイントです。
かなり厳しいです。虚偽申請や目的外利用、補助金額を不当に釣り上げる行為があれば、交付決定取消し・返還・加算金・事業者名の公表・警察通報の対象になり得ます。
補助金適正化法に基づき、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(併科も可能)です。事業者名が公表されるのも大きなダメージですよね。
そのとおりです。あと、採択結果に対する異議申し立ては一切受け付けていません。だからこそ、申請前に徹底的に確認して臨みましょう。
最後に、疑問点が出たときの相談先を教えてください。
**各国税局(沖縄県においては沖縄国税事務所)**です。申請先も、国内における主たる事業実施場所を所轄する国税局になります。
国税局の担当窓口で直接話を聞けるのは心強いですね。
公募要領に問い合わせ先が載っています。まずはそちらを確認して、早めに相談するのがおすすめです。
公募要領とQ&Aを確認してください。Jグランツの公式ページから公募要領PDFや申請様式がダウンロードできます。
この対談はざっくり枠組みを頭に入れるためのもの。実際の申請は、必ず公募要領の最新版で確認してくださいね。