室谷さん、今日は「INPIT外国出願補助金」について教えてください。名前からして、海外に特許とかを出すときの補助金ですよね?
そうですね。外国で発明や商標などの権利を取ろうとするとき、その出願にかかるお金の一部を国が助けてくれる制度です。ざっくり言うと、海外展開を本気で考えている中小企業にとっては、かなり心強い味方になりますよ。
なるほど。でも、海外で特許を取るって、なんだかハードルが高そうなイメージがあります。実際、どんな人が対象なんですか?
まず、この補助金の実施主体はINPIT=独立行政法人工業所有権情報・研修館です。特許庁の関連団体ですね。対象は「中小企業者」と「試験研究機関等」。つまり、中小企業やスタートアップ、大学なんかも対象になってきます。漁業や建設業、製造業、情報通信業、サービス業など、業種の幅はすごく広いんですよ。
え、うちみたいな飲食店でもいいんですか? と思ったら、対象業種に「宿泊業、飲食サービス業」も入っていますね。意外と広い。
そうなんです。飲食店でも、海外で店舗展開するならロゴや店名を商標登録したいですよね。あれって国ごとに出願が必要なんですが、その費用を助けてくれるのがこの補助金なんです。
それはありがたい。でも、補助金って書類が大変だったり、条件が細かかったりするイメージがあって……。今日はしっかり仕組みを理解したいです。
いいですね。それじゃあ、ラジオ感覚でゆったりいきましょう。最初に大枠をつかんで、そのあと細かい条件を一緒に確認していきましょう。
まず、この補助金の特徴を3つくらいに絞って言うなら、どんな感じですか?
1つ目は、海外での特許・実用新案・意匠・商標の出願費用が補助対象になること。2つ目は、補助率が2分の1、つまり出費の半分が戻ってくること。3つ目は、1社につき上限300万円まで、という規模感ですね。
上限300万円は大きいですね。具体的な仕組みを図で見せてもらえますか?
INPIT外国出願補助金の特徴海外の権利取得を支援
特許・実用新案・意匠・商標を外国で出願する費用が対象
中小企業と試験研究機関
幅広い業種の中小企業や大学などが申請可能
しかも、この補助金の面白いところは「PCT国際出願」や「マドプロ」「ハーグ」といった国際的な出願ルートにも対応しているんです。
PCTって何だっけ? と、頭が止まりそうになりました(笑)。やさしく教えてもらえますか?
かんたんに言うと、特許をまとめて世界中に出願できる「入り口」みたいな制度です。いっぺんに複数の国を指定しておくと、あとから「どの国で本格的に権利化するか」を決められる。マドプロは商標、ハーグは意匠の国際出願システムです。
つまり、国ごとにバラバラに出願するより、まとめて手続きする方法もあるんですね。
そうです。もちろん、国ごとに直接出願する「パリルート」でも対象になります。要するに「海外で権利を取りに行く」という行為そのものを支援してくれるわけです。
じゃあ、ここからはお金の話を詳しくお願いします。まずは基本の金額から。
基本は3点セットで覚えてください。補助率は2分の1、年間の上限は300万円、そして1回の公募で1社1申請まで。この3つが柱になります。
補助率2分の1はうれしいけど、上限300万円ということは、全部で600万円分の出願費用がかかれば上限に達する計算ですね。
そのとおりです。ただし、出願の種類によって「1出願あたりの上限額」が細かく決められているんです。そこを表にしてみました。
1出願あたりの上限もあるんですね。これを表で見せてください。
| 出願の種類 | 1出願あたりの補助上限額 |
|---|
| 特許出願 | 150万円以内 |
| 実用新案出願・意匠出願・商標出願 | 60万円以内 |
| 商標の冒認対策出願 | 30万円以内 |
なるほど。特許は150万円まで。では、複数国に出願したらどうなるんですか?
良い質問です。ここ、ちょっとトリッキーなんですが、特許の場合は「1出願」という考え方があって、複数の国・地域に出願する場合も「1出願」としてカウントされます。
ただし、金額の計算が特殊で、特許の場合は「150万円×指定国数」と、出願にかかった実費のどちらか低い方が上限になります。だから、たくさん国を指定して出願するなら、それだけ金額の枠が広がっていくイメージです。
なるほど。「1出願の括り」と「指定国数を掛けた上限」の組み合わせなんですね。ややこしいけど、多国出願する人には有利な仕組みですね。
一方、実用新案・意匠・商標の場合は、1出願あたり60万円という枠が基本です。商標の冒認対策出願は30万円までと、さらに細かいルールがあります。
商標の冒認対策出願。これ、どういう場面で使うんですか?
自分の会社の商標を海外で勝手に先に登録されてしまう「冒認出願」を防ぐための出願です。知らない間に現地の業者に名前を取られてしまうケースがあるんですよ。そういうトラブル対策もこの補助金の対象になるんですね。
そういえば、調べていたら「中間手続補助」という言葉も出てきたんですが、これは何ですか?
出願した後の話です。外国で特許を出願すると、現地の特許庁から「ここが違いますよ」と拒絶理由通知が来ることがあります。それに対して反論したり、出願審査請求をしたりする手続きの費用を補助するのが「中間手続補助」です。
出願だけじゃなくて、その後の手続きも見てくれるんですね。
ええ。令和8年度(2026年度)から、この中間手続補助が用意されているんです。出願手続補助の採択を受けた事業者が対象になるので、まずは出願手続の補助に応募するのが入口になります。
なるほど。じゃあ、この補助金に採択されて出願して、それから拒絶理由通知が来たら、中間手続補助に進めるわけですね。
その流れでOKです。中間手続補助の交付申請受付期間は、令和8年(2026年)4月1日10時から12月14日17時まで。出願手続補助とは別のスケジュールになっていますから、頭の片隅に入れておいてください。
ここで確認ですが、「年間上限300万円」というのは、たとえば第4回だけで使えるんですか?
そこが重要なポイントで、1年度の間に複数回公募がありますが、トータルでの上限が300万円です。たとえば第1回で200万円の補助を受けたら、同じ年度の第4回では残り100万円まで、ということになります。
ああ、なるほど。年間で300万円の枠なんですね。1回で全部使わなくても、何回かに分けて戦略的に使うこともできると。
そうですね。ただ、1社(者)1申請というルールがありますから、同じ回に複数の案件を出したい場合は、まとめて1つの申請にしなくちゃいけません。ここはよく注意してください。
まとめて申請すれば、複数案件分を1回で申請できるんですね。
そうです。複数案件を申請したいなら、申請フォームで案件をまとめる必要があります。ぱらぱらと別々に出そうとするとNGです。
次は対象者の条件です。さっき「中小企業者と試験研究機関等」と聞きましたが、具体的にどんな人が当てはまるんですか?
これはね、公式には「中小企業者及び試験研究機関等」としか書かれていないんですが、詳しい要件は公募要領に載っています。ただ、一般的な中小企業の枠組みから言うと、まずは資本金と従業員数の基準をチェックするのが基本です。
やっぱり資本金と従業員数の縛りがあるんですね。具体的な数字を教えてください。
代表的なところで言うと、製造業、建設業、運輸業は資本金3億円以下かつ従業員300人以下。卸売業は資本金1億円以下かつ従業員100人以下。小売業は資本金5,000万円以下かつ従業員50人以下という基準です。
うちは製造業で従業員80人くらいだから、余裕で中小企業の範囲ですね。
そうですね。サービス業でも、ソフトウェア業や情報処理サービス業は資本金3億円以下かつ従業員300人以下と比較的幅が広いです。ただ、その他のサービス業だと資本金5,000万円以下かつ従業員100人以下という基準になる場合もありますから、自社の業種区分をしっかり確認しましょう。
自分がどの業種区分に当てはまるか、ちゃんと調べないといけないんですね。
中小企業者の枠組みには個人事業主も含まれます。開業届を出している個人事業主であれば、対象になるかどうかを検討できると思います。ただ、詳しい確認は公募要領を見てください。
ここは面白いところで、通常の中小企業の資本金基準とは別に「創業特定法人」という枠があります。資本金3億円以下の法人で、設立から10年を経過していない法人がこの枠に該当します。つまり、設立間もないベンチャー企業でも、資本金が大きいからといって諦めなくていいわけです。
なるほど。 VCからたくさん資金調達していて資本金が大きいスタートアップでも、創業10年以内なら対象になる可能性がある。いい話ですね。
ええ。あと大学の研究職員や高等専門学校、独立行政法人など、試験研究機関等も対象です。さらに「実施権者等」という枠もあって、中小企業や試験研究機関の出願人から実施権の設定を受けて、出願経費の一部または全部を負担する人も対象になります。
大事なのが「みなし大企業」です。中小企業でも、発行済み株式の総数の2分の1以上を同じ大企業が所有している場合、あるいは3分の2以上を複数の大企業が所有している場合は、実質的に大企業とみなされて対象外になります。
あー、親会社が大企業だと、子会社は中小企業でも対象外になっちゃうんですね。
そうです。これはほかの補助金でもよくあるルールですが、頭に入れておいて損はないです。もし自分の会社がこの「みなし大企業」に当たるかどうか微妙だったら、事務局に問い合わせるのが確実です。
補助金で一番気になるのは、どのお金が対象になるかですよね。外国出願って、どんな費用がかかるんですか?
大きく分けると、外国特許庁に払うお金、弁理士さんに払うお金、翻訳会社に払うお金、銀行の送金手数料、このあたりが柱になります。
補助対象経費と対象外経費- 外国特許庁等への庁費用(出願、国内移行手続、審査請求など)
- 国内代理人(弁理士)費用と現地代理人費用
- 出願書類の翻訳費用
- 銀行振込手数料・送金手数料(按分も可)
×デメリット
- 補助金の申請書類・報告書類の作成費用
- 印紙税や海外のVAT・サービス税
- 日本国特許庁に納める費用
- 先行技術調査費用
- 登録料・登録税
- 消費税(補助対象経費から除外して算定)
補助金の申請書類を作るための費用は対象外なんですね。そこは自己負担になるわけか。
そうですね。あと、気をつけたいのが「消費税」です。補助対象経費から消費税はあらかじめ除外して算定するのがルールですから、見積もりを組むときに税抜き金額で考える必要があります。
税抜きで考えるのはいつもの補助金と一緒ですね。外貨で支払う場合はどうなるんですか?
外貨の場合は、支払日における市場レートで円に換算して計算します。為替のタイミングによって実質の金額が動く可能性があるので、その点も頭に入れておいてくださいね。
登録料が対象外なのはなぜですか? 権利を取るための費用なのに、ちょっと意外でした。
この補助金はあくまで「外国における権利化に要する経費の一部」を支援するもの。ただ、実際の公募要領では、登録料や登録税は補助対象外とされています。つまり「権利を登録して終わり」ではなく、出願段階の活動を重点的に後押しする設計になっているんですね。
なるほど。出願した後の登録費用は、自分で持ってください、ということか。これは重要ポイントですね。
あと、日本国特許庁に納める費用も対象外です。マドプロの本国官庁費用や優先権証明書の発行料などは含まれないので、注意してください。
なるほど。国際出願でも、日本側でかかるお金は対象外なんですね。
対象経費の一覧に「出願コメント費用」という見慣れない項目があったんですが、これは何ですか?
海外の特許事務所に出す「コメント」みたいな書類の作成費用のことですね。PCT出願のときに、出願人の意見をまとめたコメントを提出することがあります。その作成にかかる費用を指しているケースが多いです。
弁理士さんが書類を準備するのに必要な費用ということですね。
そう捉えておいてOKです。手続補正書の庁費用や出願審査請求に必要な庁費用も対象になりますから、出願から審査までの一連の流れでかかる費用が幅広く対象になる、というのがこの補助金の特徴と言えます。
じゃあ、ここからは実際にどうやって申請するのかを教えてください。まず、申請方法は何ですか?
政府補助金電子申請システム「jGrants」による電子申請のみです。書類を郵送したり窓口に持っていったりするのではなく、オンラインで完結します。
電子申請ですか。最近の補助金はだいたいそうですよね。まず何から始めればいいですか?
最初の関門が、GビズIDプライムアカウントの取得です。これは国が運営する法人向けのIDで、取得に約1〜2週間かかるんですね。だから、公募が始まってからあわてても遅い。締切の2〜3週間前にはアカウントを用意しておきたいところです。
えっ、1〜2週間もかかるんですか。それは本当に要注意ですね。
そうなんです。しかも、取得するだけじゃなくて、電子証明書を登録するなどの手続きもあります。慣れていないと時間がかかるので、早めに準備するのが鉄則です。
補助金申請の流れ- 1
GビズIDプライムを取得
約1〜2週間かかるので早めに準備
- 2
公募要領と様式を確認
INPITのHPで第4回の要領を入手
- 3
申請書類を作成
出願予定の内容・経費・スケジュールを整理
- 4
jGrantsで電子申請
9月28日17時までに提出
- 5
書類審査・採否決定
事務局が必要書類の修正等を依頼することも
- 6
- 7
- 8
申請して終わりじゃなくて、採択後に出願して、実績を報告して、お金を受け取る、という流れなんですね。
そう、ここも大切な点で、この補助金は基本的に「後払い」です。自分でいったん出願費用を支払って、そのあとで実績報告をして、補助金を受け取る。だから一時的な資金の立て替えが必要になります。
あと、これは本当に重要な注意点なんですが、応募申請した後、事務局が提出書類を確認して、「ここが足りないので直してください」という連絡をすることがあるんです。
そうなんです。不備や不足書類の修正・追加提出をお願いされることがあります。そして、公募期間が終了する直前だと、修正に対応する時間が十分に確保できない恐れがあります。
つまり、締切ギリギリに出すと、直してくださいと言われても直す時間がない、と。
そのとおり。だからこそ、早めの応募申請が強く推奨されているんです。INPITの公式サイトにも、早目の応募申請にご協力くださいと明記されています。
なるほど。補助金の申請は早めに出すのが正義なんですね。あと、システムエラーも起きるって本当ですか?
実際のページにも書いてありますが、応募締切直前は申請が混み合い、システムエラーが表示されることがあります。9月28日17時ちょうどに駆け込む、なんていうのは一番危険なパターンですね。時間に余裕を持って申請しましょう。
今回、メインで解説しているのは令和8年度・第4回公募ですね。募集期間は2026年9月7日10時から2026年9月28日17時までです。約3週間ですから、案外短いですよ。
3週間! 書類を集めることを考えると、GビズIDの取得を含めて準備はもう始めておくべきですね。
そうなんです。特に、出願したい国や出願ルートを検討するだけでも時間がかかりますからね。募集期間の前に、弁理士さんと相談して出願戦略を固めておくのが理想です。
令和8年度は、今回の第4回のほかにも複数回の公募が行われています。公式の新着情報を見ると、第1回、第2回、第3回と受付があったようです。第4回は令和8年度の最後の公募の可能性が高いですね。
じゃあ、この機会を逃すと、次はいつになるか分からない?
そこは確実なことは言えないので、必ず公式情報を確認してください。ただ、令和8年度の流れを見ると、第1回が令和7年12月1日開始、第2回が令和8年3月2日開始、第3回が令和8年6月8日開始、そして今回の第4回が9月7日開始となっています。今回のがダメなら年末か来年まで待つ可能性もある、と意識しておいたほうがいいでしょう。
令和8年度の公募スケジュール2025年12月
第1回公募
令和8年度の受付開始
2026年3月
第2回公募
受付終了
2026年6月
第3回公募
受付終了
2026年9月7日〜9月28日
第4回公募
今回解説中の公募。10時〜17時受付
2026年4月〜12月
中間手続補助
出願手続補助の採択者が対象
なるほど、年間を通して複数回のチャンスがあるけど、どの回に出願するかも戦略ですね。
そうですね。出願準備が整っていれば、今回の第4回に応募するのがベストです。
実際に審査するとき、何が見られているんでしょう? そこが知りたいです。
この補助金は、INPITの事務局が提出書類を確認して審査する流れです。書類の完成度はもちろん、出願の内容自体が「国際的な知的財産戦略」に沿っているかどうかが問われるでしょうね。
たとえば、海外に出願する理由がちゃんと説明できているか。つまり、どの国でどういうビジネスをしたいのか、そのためにどの権利を取るのか、というストーリーが明確かどうかです。
なるほど。ただ「うちの会社が海外で出願したいんです」だけじゃ弱いと。
あとは、申請書類の不備がないこと。ここはもう、本当に大切です。提出後に修正を求められると、採択までに時間がかかってしまったり、場合によっては間に合わなかったりする可能性もありますから。
書類を作るときのコツを教えてください。室谷さんがこれまで見てきた中で、こんな工夫が効いたというものはありますか?
そうですね。具体的な他社事例はちょっと出せませんが、一般的なポイントはあります。まず、出願する権利の内容と事業戦略の関係を明確にすること。そして、予定している出願国ごとに、なぜその国が必要なのかを具体的に書くことです。
「なぜこの国なのか」の理由を説明できるかどうかですよね。
そう。あとは、経費の見積もりが合理的であることも大事です。出願ルートを決めて、だいたいいくらかかるかを弁理士さんに見積もりしてもらって、正確な数字を出す。ざっくりした見積もりだと、後で実績報告するときにズレが出てきますからね。
1週間前を目安にするのはいいですね。修正依頼が来ても対応できる。
そう。実際にINPITも「公募期間終了の直前だと対応時間が確保できない恐れがある」と注意を呼びかけています。この業界、締切駆け込みは絶対にやめたほうがいいです。システムエラーのリスクもありますからね。
他の補助金と併用できるんですか? この補助金のほかにも、海外展開を支援する制度があると聞きますが。
ここは注意が必要です。実は、ほかの助成事業の補助対象出願として申請・採択されている出願は、この補助金に応募できないというルールがあります。
完全に併用禁止というわけではなく、特定の出願が二重に助成されている状態を防ぐためのルールですね。同じ出願について、別の補助金をもらうことはできない、ということです。
なるほど。出願単位で見たとき、同じ出願を複数の補助金に申請するのはダメ、と。
そう解釈するのが自然です。もし併用できるかどうか迷ったら、事務局に問い合わせて確認するのが確実ですよ。
あと、経済安全保障という言葉も出てきましたよね。これはどういうことですか?
経済安全保障推進法に定める「特許出願の非公開」制度に該当する発明を含む出願については、この補助金の応募申請ができません。つまり、国が特許出願の内容を秘密にしておくべきだと指定するような発明は、補助金の対象外というわけです。
特定の技術分野で輸出管理されるような案件は、補助金も使えない可能性があるんですね。
かなり限定的なケースですが、自社の技術が対象になるかどうか不安な場合は、事前に確認しておきましょう。
3つ覚えておいてください。1つ目は、補助事業完了後5年間、証拠書類を整理・保存する義務。2つ目は、権利化状況報告書の提出義務。3つ目は、経費の配分変更や事業の中止をする場合、事前にINPITの承認が必要ということです。
補助金をもらって終わりじゃなくて、その後もずっと報告義務が続くんですね。
そう。補助対象出願すべてについて、審査結果や登録状況を報告することが求められます。ここを忘れると面倒なことになりかねないので、しっかり管理できる体制が必要です。
話を聞いていると、この補助金を使うには「海外で何をしたいか」をちゃんと考えていないといけないですね。
まさにそのとおり。この補助金の目的は、単にお金を出すことではなくて、外国における権利取得を促進して、国際的な知的財産戦略の構築を支援することです。
だから、出願する権利とビジネス戦略が結びついていないと、審査を通りにくいんですね。
そう。逆に言うと、海外展開を本気で考えている中小企業にとっては、とても心強い制度ですよ。特許・実用新案・意匠・商標、どの権利でも対象になりますから、自社のビジネスに合わせて選べます。
たとえば、うちが日本で登録済みの商標を海外でも出願したい場合、どういうルートになるんですか?
商標の国際出願には「マドリッド協定議定書」に基づくマドプロというルートがあります。これは、日本の特許庁を経由して、複数の国にまとめて商標登録の出願ができる仕組みです。対応する日本の商標出願がある場合に、このルートが使えます。
マドプロなら、いっぺんに複数国を指定できるんですね。
そうです。もちろん、パリルートと言って、各国の特許庁に直接出願する方法もあります。どちらのルートでも、この補助金の対象になり得ます。
どのルートが自分に合っているかは、弁理士さんに相談するのが早いですか?
そうですね。国によって出願の仕組みや費用が違いますし、商標の区分も複雑なので、専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
補助金の申請手続きって、自社でやらなきゃいけないんですか? 専門家に頼むことはできますか?
jGrantsでの電子申請は、自社で行うことが原則です。ただし、申請書類の作成や出願戦略の相談は、弁理士さんなどの専門家に依頼することができます。
民間の事務所によっては、補助金申請のサポートサービスを提供しているところもあります。ただ、この補助金の申請は、あくまで「自社の出願予定」を正確に書くことが大事なので、まずは自社の計画を固めるのが先決ですよ。
確かに、誰に頼むにしても、自社の海外戦略が曖昧なら話になりませんね。
ここからは、よくある質問にサクッと答えてもらえますか?
補助金なので、原則として返済は不要です。ただし、採択後に報告義務を果たさなかったり、経費の使い方がルールに反していたりすると、返還を求められる可能性はあります。
返さなくていいけど、ルールを守らないと返せと言われる、と。あくまでちゃんと手続きをしましょう、ということですね。
特許出願と商標出願を同時に国内で出していて、海外でも両方取りたい場合、一つの申請書にまとめられますか?
1社1申請というルールがあるので、1回の申請で複数案件をまとめて申請することができます。ただし、それぞれの出願について、対象経費やスケジュールをきちんと明記する必要があります。まとめ方の詳細は公募要領を確認してくださいね。
これは私がひっかかりそうな質問です。弁理士さんに見積もりをもらって、出願しちゃった後でも申請できますか?
ここは要注意です。補助対象経費は、交付決定後に契約(発注)を行い、補助事業実施期間内に検収および支払いが完了したものに限られます。つまり、交付決定前に発注したり支払ったりした費用は、たとえ内容が合っていても補助対象にならない可能性が高いです。
えっ、じゃあ先に出願しちゃったらもうダメなんですか?
そのとおり。この補助金は「これから出願する」という案件に対して交付されるものです。もう出願してしまったものは対象外になる可能性があるので、必ず交付決定後に発注してください。
最後に、困ったときの問い合わせ先を教えてください。
INPIT外国出願補助金事務局です。電話は03-3502-5424。受付時間は10時から17時までで、土日祝日と12月29日から1月3日はお休みです。
メールアドレスは、公式サイトに「★」を「@」に変えて送信してくださいと書かれていることがあるので、間違えないようにしてくださいね。「お間違いのないよう十分ご注意ください」と公式でもかなり強調されています。
今日の話を整理して、最後にポイントをまとめてもらえますか?
もちろん。まず、INPIT外国出願補助金は、海外での特許・実用新案・意匠・商標の出願費用を支援する制度です。補助率は2分の1、年間上限は300万円。今回の第4回公募の締切は2026年9月28日17時です。
申請はjGrantsで、GビズIDプライムが必要でしたよね。
そうです。GビズIDの取得に1〜2週間かかるので、まだ持っていない人はいますぐ始めるのがいい。そして、書類は早めに出す。この2点が本当に大事です。
全体像がつかめました。海外展開を考えている事業者にとっては、本当に心強い制度ですね。室谷さん、今日はありがとうございました!
こちらこそ。ぜひ、この補助金をうまく活用して、海外での権利取得を目指してください。もし不明な点があれば、遠慮なく問い合わせ先に連絡してみてくださいね。