室谷さん、今日は奈良県の事業者向けに使える補助金を教えてもらうと聞いてきました。名前が「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金」と長くて、最初から面食らってるんですけど(笑)。
確かに長いですよね。正式名称は【奈良】令和8年度中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)。国の「業務改善助成金」を、奈良県内の事業場の方が申請できるようにした窓口です。
業務改善助成金といえば、賃金を上げるための制度ですよね。そもそも何をしてくれるんですか?
事業場内で最も低い賃金、つまり「事業場内最低賃金」を50円以上引き上げて、そのうえで生産性向上に資する設備投資などを行った場合に、かかった費用の一部を助成してくれる制度です。
あれ? ちょっと待ってください。設備投資に対する補助金なのに、賃上げが前提なんですか?
そこが一番のポイントですね。賃上げだけでもダメ、設備投資だけでもダメ。賃金の引き上げ計画と設備投資等の計画をセットで申請して、交付決定後に計画どおり実行した結果を報告して、はじめて助成金が支払われます。
なるほど。従業員さんの時給を上げたいけど、そのぶん売上を伸ばす仕組みも整えたい、という事業者にぴったりな制度なんですね。
業務改善助成金のおさらい賃上げと設備投資がセット
事業場内最低賃金を50円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を計画します。
中小企業・小規模事業者が対象
大企業と密接な関係を有する企業(みなし大企業)でないことが条件です。
最大600万円の助成
引き上げる賃金額と人数、事業場内最低賃金の水準に応じて助成上限が変わります。
この申請フォームは奈良労働局宛てなんですよね? 県外の事業所は申請できないんでしょうか。
このページは奈良労働局への申請フォームですから、基本は奈良県内の事業場が対象になります。たとえば本社が県外でも、奈良県内に事業場があるケースは相談してみる価値がありそうです。ただ、提出先を間違えると書類が「棄却」扱いになってしまいますから、必ず管轄を確認してくださいね。
申請先を間違えると、やり直しになるってことですか?
そうです。誤った提出先に申請すると、その労働局では「棄却」処理を行います。改めて正しい提出先へ申請し直す流れになりますが、申請期間内に再申請できるかが勝負です。最初から正しい提出先を選びましょう。
申請期間が限られているからこそ、提出先のミスは痛いですね。登録前にしっかり確認します!
で、気になるのは金額です。上限600万円と聞きましたけど、誰でももらえるわけじゃないですよね?
そのとおりです。まず補助率から見ていきましょう。事業場内最低賃金が1,050円未満の事業者は5分の4、1,050円以上の事業者は4分の3が助成率になります。
あれ、事業場内最低賃金が低い事業者ほど補助率が高いんですね。
ええ。「底上げが必要な事業者ほど手厚く」という設計です。参考までに、助成率を表にまとめました。
| 事業場内最低賃金の水準 | 助成率 |
|---|
| 1,050円未満 | 5分の4 |
| 1,050円以上 | 4分の3 |
なるほど。じゃあ仮に100万円の設備を入れたら、4分の3なら75万円、5分の4なら80万円が助成されるってイメージでいいですか?
はい、基本的にはその計算で合っています。ただし、後ほど説明する「助成上限額」を超えた分は支給されません。費用に助成率を掛けた金額と助成上限額を比べて、安いほうが実際の支給額になると覚えておいてください。
続いて助成上限額です。事業場内最低賃金をいくら引き上げるかでコースが分かれるそうですね。
そうなんです。50円以上引き上げる50円コース、70円以上の70円コース、90円以上の90円コースの3種類。そのうえで、引き上げる労働者の人数に応じて上限額が決まります。
助成上限額の表には「事業場規模30人未満の事業者」と「右記以外の事業者」という区分があります。人数が増えるほど上限も上がっていきます。
交付申請の資料に掲載されている助成上限額をそのまま表にしました。50円コースから見ていきましょう。
| 50円コース | 事業場規模30人未満の事業者 | 右記以外の事業者 |
|---|
| 引き上げる労働者1人 | 40万円 | 30万円 |
| 2〜3人 | 70万円 | 40万円 |
| 4〜5人 | 70万円 | 70万円 |
| 6〜7人 | 90万円 | 90万円 |
| 8人以上 | 110万円 | 110万円 |
| 10人以上※ | 130万円 | 130万円 |
続いて70円コースと90円コースも教えてください。
| 70円コース | 事業場規模30人未満の事業者 | 右記以外の事業者 |
|---|
| 引き上げる労働者1人 | 50万円 | 40万円 |
| 2〜3人 | 100万円 | 50万円 |
| 4〜5人 | 130万円 | 130万円 |
| 6〜7人 | 180万円 | 180万円 |
| 8人以上 | 230万円 | 230万円 |
| 10人以上※ | 300万円 | 300万円 |
| 90円コース | 事業場規模30人未満の事業者 | 右記以外の事業者 |
|---|
| 引き上げる労働者1人 | 100万円 | 90万円 |
| 2〜3人 | 240万円 | 150万円 |
| 4〜5人 | 270万円 | 270万円 |
| 6〜7人 | 360万円 | 360万円 |
| 8人以上 | 450万円 | 450万円 |
| 10人以上※ | 600万円 | 600万円 |
最大600万円に到達するには「90円コース × 10人以上」が必要なんですね。しかも※が付いていますけど、これは何ですか?
※の注記には「10人以上の上限額区分は、特例事業者が10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合に対象になります」とあります。つまり、誰でも10人以上区分が使えるわけではなく、特例事業者に認められた人が対象です。特例事業者の詳しい条件は後ほど説明しますね。
具体的な数字で計算してみないとピンとこないです。何か例はありますか?
厚生労働省のリーフレットに分かりやすい例が出ています。事業場内最低賃金が1,040円、つまり1,050円未満なので助成率は5分の4。8人の労働者を1,130円まで引き上げる90円コースを申請したとしましょう。
8人ですから、さっきの表だと助成上限額は450万円ですね。
そのとおり。設備投資などの費用が600万円かかった場合、600万円×5分の4=480万円となります。ところが助成上限額は450万円ですから、支給額は450万円になるわけです。
ああ、なるほど。費用の8割もらえるからといって上限を超えるぶんは出ない、と。設備投資の計画を立てるときは、上限額とのバランスを見ながら考える必要がありますね。
まさにそこがポイントです。大きい設備を入れればいいというわけではなく、「助成率を掛けた金額」と「コース別の助成上限額」の安いほうが支給額になる。事業計画を立てる段階で、まずこの上限額を意識してください。
では、誰が申請できるのか教えてください。やはり会社の規模などの条件はありますか?
まず大枠として、中小企業・小規模事業者であることが必要です。それに加えて、大企業と密接な関係を有する企業、いわゆる「みなし大企業」は対象外とされています。
みなし大企業、ですか。親会社が大きいとダメなケースもあるんですね。ほかにも条件はあるんでしょうか?
| 前提条件 | 内容 |
|---|
| 事業者の規模 | 中小企業・小規模事業者であること(みなし大企業でないこと) |
| 賃金の水準 | 事業場内最低賃金が令和8年度地域別最低賃金未満であること |
| 労働環境 | 解雇や賃金引き下げなどの不交付事由がないこと |
| 申請の単位 | 労働者がいる事業場ごとに申請すること |
「事業場内最低賃金が令和8年度地域別最低賃金未満」というのがポイントですね。すでに地域別最低賃金以上を支払っている事業者は対象外になってしまう?
そう読めますね。この制度はあくまで「下げどまりの賃金を引き上げる」ための支援ですから、地域別最低賃金をすでに上回っている事業場は前提から外れます。ご自身の事業場の賃金がいくらかを、まず正確に把握しましょう。
ちなみに、過去にこの助成金を利用したことがある事業者は申請できないんでしょうか?
いえ、資料には「過去に業務改善助成金を活用した事業者も助成対象となります」と明記されています。「2回目だから無理」とは決めつけず、最新の交付要綱を確認してみる価値がありますね。
対象になる業種も教えてください。弊社のようなサービス業は入っていますか?
対象業種は幅広いですよ。農業・林業や漁業、鉱業・採石業・砂利採取業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸業・郵便業、卸売業・小売業、金融業・保険業、不動産業・物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉まで並んでいます。
えっ、医療・福祉まで入ってるんですか? それはびっくりです。うちみたいなサービス業ももちろん対象ですね。
はい。サービス業(他に分類されないもの)や複合サービス事業、さらには分類不能の産業まで対象として掲げられていますから、一般的な業種ならほぼ当てはまると考えていいでしょう。
逆に対象外になるのは、みなし大企業くらいのイメージですか?
そこだけではなく、不交付事由があるケースは対象外になります。「解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと」という条件が明記されていますから、申請時点の雇用状況をクリーンに保っておく必要がありますね。
それと「事業場ごとに申請」というのが気になりました。会社単位じゃないんですか?
会社として1回、ではなく、工場Aと事務所Bのように、労働者がいる事業場ごとに申請します。同じ会社でも、事業場が違えば別々に申請できるという考え方です。
なるほど。たとえば奈良県内に工場と事務所があったら、それぞれで賃上げ計画を立てて申請できるんですね。
ええ。ただし、助成金の申請は事業場単位、その事業場の所在地を管轄する都道府県労働局が審査や支払いを行います。この記事のフォームは奈良労働局向けですから、奈良県内の事業場の申請に使う形ですね。
あと、従業員数の上限はあるんですか? 従業員が100人いるような会社は対象外だったりしませんか?
基本情報には「従業員数の制約なし」とあります。助成上限額の表に「30人未満」と「右記以外」という区分がありましたが、あれはあくまで上限額を決めるときの区分であって、従業員が多いから申請できないという話ではないんです。
補助金の使い道、つまり対象になる経費も大事です。設備整備やIT導入と聞きましたが、具体的にどんなものがありますか?
資料に載っている例を紹介すると、まずPOSレジシステム導入による在庫管理の短縮があります。これはIT導入の代表例ですね。あとはリフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮といった機器・設備の導入も対象です。
なるほど。設備やシステムの導入が中心なんですね。IT導入だけじゃなくて、車両みたいなハードもしっかり対象になるのはうれしいです。
さらに、国家資格者による経営コンサルティング、たとえば顧客回転率の向上を目的とした業務フロー見直しや、顧客管理情報のシステム化なども対象経費として挙げられています。「もの」を買うだけではなく、専門家の助言を受けて業務を改善する費用も見込めるわけです。
コンサル費用まで見てもらえるのは大きいですね。ただし、何でもかんでも対象になるわけではないんですよね?
繰り返しになりますが、大前提は「生産性向上に資する設備投資等」であることです。そして、もう一つ忘れてはいけないのが、交付決定前に設備を導入すると助成対象外になるという点。設備を先に発注してから申請するのではなく、必ず交付決定を待ってから導入してください。
対象にならないものの代表例はどんなものがありますか?
たとえば一般の事業者にとっては、パソコンやスマートフォン、タブレット等の端末と周辺機器の導入は通常対象外とされています。IT機器なら何でも対象になるわけではない、という点は注意が必要です。
えっ、PC導入が対象外なんですか? それは意外でした。てっきりIT導入補助っぽく使えるのかと思ってました。
一般事業者はあくまで「生産性向上に資する設備投資等」が対象で、PCやスマホなどの端末類は原則対象外。ただし、後ほどお話しする特例事業者のうち「物価高騰等要件」に該当する事業者は、パソコン等の新規導入が助成対象になるという拡充があります。使えるかどうかは自分の事業者がどの区分に入るか次第です。
ということは、まず「自分が一般事業者なのか特例事業者なのか」を確認しないと、経費の計画すら立てられないんですね。
その理解で正しいです。対象経費の線引きを間違えると、せっかく設備を入れても助成の対象外になってしまいますから、申請前に交付要綱や申請マニュアルでしっかり確認してください。
対象経費と注意点のイメージ- POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
- リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
- 国家資格者による業務フロー見直しの経営コンサルティング
- 顧客管理情報のシステム化
×デメリット
- 交付決定前に設備導入すると助成対象外
- 一般事業者はパソコン・スマホ・タブレット等の新規導入が対象外
- 生産性向上に資する内容かどうか計画段階で確認が必須
対象経費の話と少しずれますが、賃金の引き上げについても注意点があると聞きました。どんな点に気をつければいいですか?
まず、複数回に分けての事業場内最低賃金の引き上げは認められません。50円以上引き上げるなら、その金額をまとめて一度に引き上げる必要があります。さらに、引き上げ後の事業場内最低賃金額と同額を就業規則等に定めることも求められています。
就業規則に「この金額で働いてもらう」とはっきり書かないといけないんですね。手続きが漏れないようにしないと。
しかも、引き上げる対象となる労働者は、週所定労働時間が20時間以上の雇用保険加入者です。パートさんやアルバイトさんを何人引き上げるか計画するときは、この条件に当てはまるかを確認しながら人数を数えてください。
人数の数え方ひとつとっても要件があるんですね。これは専門家のサポートがあったほうが安心かも…。
ご自身で対応する場合は、厚生労働省のサイトに掲載されているQ&Aや申請マニュアル、お役立ちツールを活用するのがおすすめです。申請前に一通り目を通す習慣をつけましょう。
ここからは申請の流れを教えてください。最初は何から始めればいいんでしょうか?
Jグランツという電子申請ポータルから申し込むのが基本です。電子申請にはGビズIDアカウントが必要になりますから、まだお持ちでない方はまずIDを用意しましょう。そのうえで、申請の流れをステップにまとめました。
業務改善助成金の申請ステップ- 1
GビズIDを確認
電子申請にはGビズIDアカウントが必要。未取得の場合は事前に準備します。
- 2
公募要領・申請マニュアルを熟読
厚生労働省サイトの交付要綱・交付要領、Q&A、お役立ちツールを確認します。
- 3
賃上げと設備投資の計画を固める
事業場内最低賃金をいくら引き上げるか、対象経費とあわせて計画します。
- 4
交付申請書と添付書類を作成
申請フォームにアップロードする書類一式を作成します。
- 5
Jグランツで電子申請
奈良労働局宛てのフォームを選び、申請書類欄にファイルをアップロードして送信。
- 6
交付決定後に事業を実施
計画どおり設備投資を進め、事業場内最低賃金を引き上げます。
- 7
実績を報告して助成金の支給
事業完了後、結果を報告して助成金を受け取ります。
申請書類をアップロードして送信するんですね。紙での申請はできないんでしょうか?
電子申請が基本ですが、厚生労働省のサイトには「紙媒体による申請を希望される場合」の案内もあります。申請窓口は各都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。ただし、この制度はJグランツの「この補助金に問い合わせる」機能には対応していませんから、不明点はコールセンターか労働局へ連絡する形になります。
令和8年度申請分の受付は令和8年9月1日から開始です。そして申請期間は、申請事業場の都道府県において適用される地域別最低賃金の発効日の前日、または同年11月30日のいずれか早い日までとなっています。
えっ、11月30日より前に締切が来る可能性もあるんですね。奈良県の地域別最低賃金がいつ発効するかで、実質的な締切が変わってくるということですか?
そういうことです。厚生労働省の資料では、地域別最低賃金は「国が例年10月以降に改定する都道府県単位の最低賃金額」と説明されています。奈良県の場合はいつ発効するのか、必ず最新の情報を確認してください。
ちなみにJグランツのポータルを見ると、募集期間が「2026年8月31日から2028年3月31日」と表示されているように見えたんですけど、あれはどういうことですか?
ポータル上の表示と、厚生労働省が案内している申請期間に食い違いがありますね。これは公募要領で要確認としか言いようがない部分です。公式の案内では令和8年9月1日受付開始、締切は地域別最低賃金の発効日か11月30日の早いほうですから、こちらを軸にスケジュールを組むのが安全です。
加えて、予算が尽きたら途中で締切になる可能性もあると聞きました。本当ですか?
資料にも「予算の範囲内で交付するため、申請期間内に募集を終了する場合があります」と明記されています。つまり、ぎりぎりまで悩むより、計画が固まったら早めに動くほうが得策です。
申請してから助成金がもらえるまで、どのくらいの流れになるんでしょう?
申請から支給までのおおまかな流れ令和8年4月22日頃
交付要綱・要領を公開
コールセンターも開設され、事前の情報収集が可能になります。
令和8年9月1日
申請受付開始
Jグランツの申請フォームから交付申請を受け付けます。
地域別最低賃金発効日の前日
賃金引き上げ完了
地域別最低賃金の発効日までに、事業場内最低賃金の引き上げを終えます。
11月30日または発効日前日
申請期間の終了
地域別最低賃金の発効日の前日か11月30日のいずれか早い日が申請期限です。
交付決定年度の1月31日
事業完了期限
設備投資などの事業を完了させます。
ということは、賃金引き上げと申請期限がかなり近い時期に重なるんですね。書類の準備は前倒しが大事になりそうです。
そのとおりです。しかも賃金の引き上げは、地域別最低賃金の発効日の前日までに完了していなければなりません。厚生労働省の資料には「10月1日に新しい地域別最低賃金が発効される場合、発効日の前日である9月30日までに引き上げを完了すれば対象、当日の10月1日に実施した場合は対象外」という例まで載っています。
1日ズレるだけで対象外になるなんて、こわすぎます…。賃上げのタイミングは絶対に外せませんね。
せっかく申請しても、審査で落ちてしまっては元も子もないです。審査で見られるポイントは何ですか?
実は、審査というより申請時点での書類ミスが一番の落とし穴です。公式の案内にも「交付申請の際に書類の添付漏れや記載ミス等が多く見受けられます」とはっきり注意書きがあります。申請ボタンをクリックする前に、もう一度確認してくださいと呼びかけられているんですよ。
申請件数が多いからこそ、機械的なミスも増えてしまうんでしょうね。具体的にはどんな確認をすればいいですか?
まず添付書類が一式そろっているか。次に申請書の各欄に記載漏れがないか。そして申請先が奈良労働局で合っているかです。もし交付申請後に書類の修正や添付漏れに気づいたら、申請を行った都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ連絡する必要があります。
これはすべての申請者が意識すべきポイントですね。ところで、審査の段階ではどんなところを見られるんでしょうか?
申請の審査や助成金の支払いは、事業場所在地を管轄する都道府県労働局が行います。申請書類について労働局から問い合わせがある場合もありますから、担当者とスムーズに連絡が取れる体制も準備しておきたいですね。あとは、計画が「生産性向上に資する」と言える内容かどうかが問われます。
先ほど申請先の話が出ましたが、うっかり別の労働局に申請してしまったらどうなるんですか?
誤った提出先に申請した場合は、その申請先の労働局で「棄却」処理が行われます。つまり、そこで終わってしまって、再度正しい提出先へ申請し直す必要があります。
されません。しかも再申請ができるのは、あくまで申請期間内です。締切ギリギリに提出先ミスに気づいたら、やり直しの時間がない可能性もある。だからこそ、この申請フォームが奈良労働局宛てなのかを、最初に必ず確認してください。
「申請先に誤りがないようにご注意ください」っていう注意書きの重みを、今ようやく理解しました(笑)。
最後に、不正受給の話も聞いておきたいです。うっかりミスでも重大なことになりますか?
故意に事実と異なる記載をした場合や、添付書類の偽造などによって不正に申請を行った場合は、不正受給額の返還に加えて加算金を支払う義務を負います。さらに、刑事事件として告発される可能性もあります。絶対にやってはいけません。
そこまで重い話なんですね…。書類の作成は誠実に、が大前提ですね。
また、厚生労働省から委託を受けたと装って助成金の活用を勧誘する事業者が存在するという注意喚起も出ています。厚生労働省や労働局が特定の事業者に勧誘を委託することはありませんから、手数料や報酬を求める不審な勧誘には十分注意してください。
いわゆる「助成金コンサル」の悪質業者みたいなものですね。困ったときはどこに相談すればいいですか?
公式の問い合わせ先は業務改善助成金コールセンター、電話は0120-366-440、受付時間は平日の午前9時から午後5時までです。申請者本人が確認できる正規の窓口ですから、不安な点はここで解消しましょう。
先ほど「特例事業者」という言葉が出てきました。ここが600万円の上限に届くためのカギになりそうです。どんな事業者が特例になるんですか?
特例事業者になれるのは、次のアとイのいずれかに該当する事業者です。まずアの賃金要件は、申請事業場の事業場内最低賃金が1,050円未満であること。もう一つ、イの物価高騰等要件は、原材料費の高騰などの外的要因により、申請前6か月間平均における利益率が前年度と比べて3%ポイント以上低下している事業者です。
物価高騰の影響で利益率が下がっている事業者が対象になるんですね。「%ポイント」っていうのは、パーセントで表された2つの数値の差を表す単位と理解しておけばいいですか?
まさにそのとおりです。たとえば前年度の利益率が10%だったのが、申請前6か月平均で7%に下がっていれば、その差は3%ポイント。外的要因によってそうした低下が生じているかどうかが判断基準になります。
メリットは2つあります。1つ目は助成上限額の拡大です。先ほどの助成上限額の表にあった「10人以上※」の区分、あれは特例事業者が10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合に使える区分です。90円コースなら上限が600万円になります。
なるほど、だから最大600万円は「特例事業者」の話だったんですね。一般の事業者が8人以上で90円コースなら450万円まで、と。
その整理で合っています。そして2つ目は助成対象経費の拡大です。ただし、これはアとイの両方ではなく、イの物価高騰等要件に該当する事業者だけが対象になります。
一般事業者では対象外だったパソコン、スマートフォン、タブレット等の端末と周辺機器の新規導入が、助成対象になる場合があります。物価高騰の影響を受けている事業者に対して、ITツールの導入による生産性向上も後押ししようという趣旨です。
なるほど。ただし、あくまで「新規導入」に限られるんですね。
そうです。資料にも「パソコン等は新規導入に限ります」と明記されています。買い替えなのか新規なのかを、見積もりや書類できちんと説明できるようにしておいてください。
ここまで制度の中身を聞いて、だいぶ理解が深まりました。最後に、申請を検討している人が特に気にするポイントをいくつか教えてください。
資料には「同一事業所の申請は年度内1回までです」と記載があります。同じ事業場で何度も申請するのは難しい一方、複数の事業場を持っている場合は事業場ごとに申請が可能です。
交付決定を受けた後に、計画を変更したくなったらどうすればいいですか?
取得財産の処分に係る事前承認手続きなど、一部の手続きは電子申請に対応していません。そうした手続きは都道府県労働局に直接行うことになっています。計画変更が生じたら、まず管轄の労働局へ相談してください。
申請期間の最終日ギリギリに提出しても大丈夫ですか?
書類の添付漏れや記載ミスが多発しているのが現状ですから、ギリギリ提出はかなり危険です。しかも予算の範囲内で交付するため、募集が予定より早く終わる可能性もあります。余裕を持った申請を心がけましょう。
はい。業務改善助成金コールセンター、0120-366-440、平日の午前9時から午後5時までです。電子申請の操作方法はJグランツの申請マニュアルも参考になります。わからないことを放置せず、必ず確認してください。
それでは最後に、この補助金の基本情報を表にまとめてください。
ここまでに出てきた情報を、ぎゅっと1枚にまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 【奈良】令和8年度中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金) |
| 実施機関 | 業務改善助成金(厚生労働省 / 奈良労働局) |
| 対象地域 | 奈良県 |
| 補助金額 | 上限600万円 |
| 補助率 | 5分の4〜4分の3 |
| 対象業種 | 農業・林業、漁業、建設業、製造業、情報通信業、運輸業・郵便業、卸売業・小売業、金融業・保険業、不動産業、宿泊業・飲食サービス業、医療・福祉など |
| 使途 | 設備整備・IT導入 |
| 申請期間の目安 | 令和8年9月1日から、地域別最低賃金の発効日の前日または同年11月30日のいずれか早い日まで |
| 公式URL | https://www.jgrants-portal.go.jp/subsidy/a0WJ200000CDe6FMAT |
ありがとうございます、これで事業計画の検討に進めます。最後に、この制度のポイントを一言でまとめるとしたら?
「賃上げと設備投資をセットで計画し、期限を守って正確な申請をする」、これに尽きます。補助率と上限額は事業場内最低賃金の水準と引き上げ人数で決まりますから、まずは自社の賃金台帳と設備投資計画をセットで見直してみてください。
奈良県で賃上げに取り組む事業者のみなさんは、ぜひ早めに情報収集を始めてくださいね。室谷さん、今日は本当にありがとうございました!
ありがとうございました。申請を検討する際は、必ず公式の交付要綱・交付要領で最新の要件をご確認ください!