今日は「天然ガス利用設備による強靱性向上対策事業費補助金」、しかも【三次公募】という長い名前の制度を扱います。まず、何のための補助金なんですか?
一言でいうと、災害で停電しても電気と空調を動かし続けられる設備を入れる事業者を応援する補助金です。主役は停電対応型のコージェネレーションシステム、通称CGSと、停電対応型のガスヒートポンプエアコン、通称GHPです。
CGSは発電と熱を同時に使えるやつですよね。それが停電時にも動くとなると、避難所の心強い味方になりそうです!
まさにそこが狙いで、目的には「災害時におけるエネルギー供給の強靱性向上を図ること」と書かれています。災害時の電力供給停止にも対応できる設備を導入する事業者に補助金を出す、という設計です。
その設備が入ると、建物で具体的に何ができるようになるんですか?
要件の最後のほうに面白い条件があります。系統電力の停電時に、補助対象設備から空調・照明・電気コンセントの3つのうち2つ以上 を避難スペースに供給できること、とされているんです。つまり停電しても、避難してきた人が暑さ寒さをしのげて、明かりと電源がある状態を作る、ということです。
なるほど! ただ発電するだけじゃなくて、避難スペースに届くかどうかまで見られるんですね。
そうです。そこまで含めて設計しないと要件を満たしません。だからこの補助金は、設備を買う話であると同時に、建物の使い方を設計する話でもあるんです。
タイトルの【三次公募】は、3回目の募集という理解でいいですか?
その読みで大丈夫です。公募期間は令和8年9月25日金曜日から。jGrantsの掲載では令和8年11月30日まで、公式の公募情報では「予算終了まで」と案内されています。
公式には「予算額に達した時点で締め切ります」とはっきり書かれています。だから11月30日は目安で、早く予算が埋まればそれより前に終わる可能性があるということです。のんびりしていると間に合わないタイプですね。
締切を信じてギリギリに出すのは危険、と。覚えました!
交付事務を行うのは一般社団法人都市ガス振興センターです。ここが窓口になります。実は資源エネルギー庁が令和8年4月13日から5月15日まで、この補助金の交付事務を担う補助事業者、いわゆる執行団体を公募していて、令和8年6月2日に都市ガス振興センターが採択された、という流れがあります。
へえ、国がまず配る団体を選んで、その団体が事業者を受け付けるんですね。
そのとおりです。ただし、資源エネルギー庁のその公募は執行団体を選ぶもので、設備を入れる事業者向けの公募ではありません。検索すると紛らわしいので気をつけてください。問い合わせ先は都市ガス振興センター、電話番号は03-6435-7692です。
ここが一番気になるところです。いくら出るんですか?
補助率は補助対象経費の3分の1以内 です。そして上限額は、設備の種類とガスの供給方式で変わります。まずは表で見てください。
設備の種類 ガスの供給方式 補助上限額 停電対応CGS 中圧ガス供給 2億4000万円 停電対応CGS 低圧ガス供給 6000万円 停電対応GHP ― 6600万円
補助率:補助対象経費の3分の1以内
えっ、2億4000万円と6000万円……同じCGSなのに4倍も違うんですか!
そうなんです。停電対応CGSの場合、中圧ガス供給なら2億4000万円 、低圧ガス供給なら6000万円 。停電対応GHPの場合は6600万円 です。数字だけ見ると、中圧のCGSが飛び抜けていますね。
要件で「中圧導管または耐震性を向上させた低圧導管により供給を受けること」とされているので、そもそもどちらの供給方式なのかは建物の立地で決まってきます。自分のところがどちらなのかをまず確認するのが第一歩です。
3分の1って、実際の工事に当てはめるとどうなるんですか?
たとえば補助対象経費が9000万円なら、その3分の1で3000万円。もちろん上限額を超える場合は上限までです。
中圧のCGSで上限の2億4000万円に届かせるには、どれくらいの工事規模が必要なんですか?
単純に逆算すると、補助対象経費が7億2000万円規模ということになります。なかなかの大型投資ですね。
規模が大きい(笑)。逆に小さめの設備なら、上限はあまり気にしなくてよさそうだ。
そうですね。ただし補助対象経費に何が入るかで金額が動くので、そこは公募要領で要確認です。
交付対象要件の(1)に「事業を営む法人を対象とする」とあります。素直に読めば法人が対象で、個人事業主は対象外ということになります。
はい。そしてこの点は、この補助金を検討する最初の関門になります。屋号でやっている方は、ここで対象外になってしまいます。
従業員数の制約はありません。規模で絞られていないんですね。
並んでいる業種はかなり広いです。漁業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸業、郵便業、卸売業、小売業、金融業、保険業、不動産業、物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、教育、学習支援業、医療、福祉、複合サービス事業、公務などが挙げられています。
そう見えます。実際に絞り込みが効くのは業種ではなく、次の条件です。天然ガスを主原料とするガスを、中圧導管または耐震性を向上させた低圧導管で供給を受けていること。そして、そのガスを燃料とした設備を導入して使用すること。
なるほど、ガスの導管が来ていないと、そもそも土俵に上がれないんですね。要件の細かいところはどこで確認しますか?
交付対象要件の詳細は公募説明資料を見てください、と公式に案内されています。交付規程、公募説明資料、申請様式は都市ガス振興センターホームページに掲載されています。
さっきCGSとGHPの話が出ましたけど、どちらか一方でいいんですか?
ここは読み飛ばしやすいポイントです。要件(4)には「対象とする設備は次の(ア)及び(イ)とし、(ウ)を合わせて設置すること」と書かれています。
(ア)が停電対応可能なガスコージェネレーションシステム、(イ)が停電対応可能なガスヒートポンプエアコン、(ウ)が運転状況を確認するために必要な専用の計測装置です。3つをセットで設置する前提の書き方になっています。
発電するやつ、空調のやつ、それに計測装置までセットで、と。
そうなります。だから上限額もCGSの場合とGHPの場合で分けて示されていて、たとえばCGSの2億4000万円にGHPの6600万円を足す、といった書き方はされていません。上限はそれぞれの区分で見るものとして読むのが安全です。細かい運用は公募要領で要確認ですね。
その「専用の計測装置」って、普通のメーターではダメなんですか?
要件の言葉は「運転状況を確認するために必要な専用の計測装置」です。補助対象設備として明記されている以上、これを外すと要件を満たさなくなります。
補助金の効果を確認するための装置、という位置づけですね。
そう理解するのが自然です。導入後の運転状況を見る前提の制度だということです。逆に言えば、申請のときから「導入後にどう運転するか」を説明できる状態にしておくのが大事です。
3点セットを揃えるとして、どこが一番の難所ですか?
設備そのものより、置き場所と供給先の設計だと思います。CGSは発電する、GHPは空調を担う、計測装置は運転状況を確認する。役割が違うものを1つの建物の中で整合させる必要があります。
確かに、機械を並べればいいってもんじゃなさそうだ。
加えて、停電時に空調・照明・電気コンセントのうち2つ以上を避難スペースへ供給する、という条件があります。電気の取り回しまで含めて計画する必要がありますね。
設備は分かりました。でも「どこに置くか」が厳しそうですね。
ここがこの補助金の最大のヤマです。まず(ア)公共性の高い建物として、a. 国や地方公共団体が定める防災計画において指定される建物。b. 国や地方公共団体、社会福祉法人、医療法人及び学校法人が所有及び運営する建物。この2つが挙げられています。
防災計画で指定されているか、公的機関や社会福祉法人、医療法人、学校法人が持っている建物、と。
そうです。次に(イ)として、災害時に避難所等として活用され、避難所としての機能が高い建物が挙げられています。
避難所として使う建物なら条件が緩い、とかはないんですか?
逆です。a. 避難所、避難場所(屋内)。b. 協定による避難場所(屋外)に併設された建物。c. 帰宅困難者受入建物。d. 災害時帰宅支援ステーション。e. 一斉帰宅抑制事業者の建物。f. 協定による物資提供を住民等に行う建物。このaからfは、さらに①②③を全部満たす必要があります。
全部満たす、ときましたか。だんだん緊張してきました(笑)。
①は地方公共団体との協定、または協定に準じる取組みがあること。ここは見込みでもよいとされています。②は設備の能力条件、③は停電時の供給条件です。
②は、停電対応CGSの場合、単機発電能力25kW以上 の機器を設置すること。停電対応GHPのみの場合は、室外機2台以上 かつ冷房能力合計112kW以上 の機器を設置することです。
そして③は、系統電力の停電時に、補助対象設備から空調・照明・電気コンセントの3つのうち2つ以上 を避難スペースに供給できること。停電時に本当に役に立つかどうかを見ているわけです。
なるほど! この3つが揃って初めて「避難所としての機能が高い建物」と認められるんですね。
あります。建物の条件いずれの場合にも、補助対象設備は建物と同一敷地内に設置すること。そして、補助対象設備が災害時に寄与する屋内空間の床面積を明確にすること、とされています。
敷地の外に置いちゃダメ、と。そしてどのくらいの広さの空間を守れるのかを数字で示す必要がある。
そういうことです。なお、これらに当てはまらない場合でも、(ウ)その他審査委員会が認めた建物という枠があります。判断に迷う場合は、そこも含めて相談してみる価値はあると思います。
率が「補助対象経費の3分の1以内」と示されているので、まずその定義を見る必要があります。ただ、この点は公募説明資料の中身なので、この記事では断定できません。公募要領と公募説明資料で要確認です。
なるほど、勝手に「これは対象」と決めつけちゃいけないところですね。
はい。ただ、補助対象設備として明記されているのは、停電対応CGS、停電対応GHP、そして専用の計測装置の3つです。この3つが費用の中心になる、という整理はできます。工事費や設置費がどう扱われるかは、公募要領で確認してください。
この補助金のいいところと、気をつけるところを教えてください。
いいところは、停電時にも使えるエネルギー設備という、ふだんは費用対効果の説明が難しい投資に補助が入るところです。上限も大きく、中圧のCGSなら2億4000万円 まで見られます。BCP対策として社内外に説明しやすいのも大きいですね。
法人限定であること。設置する建物の条件が細かく、協定や能力値、供給先まで問われること。そして予算額に達した時点で締め切られることです。加えて補助金は後払いが前提なので、資金繰りも計画に入れておく必要があります。
この補助金のメリットと注意点 停電時にも使える設備投資に補助が入る 中圧の停電対応CGSなら上限2億4000万円 BCP対策として説明しやすい 従業員数の制約がない × デメリット
事業を営む法人が対象 設置する建物の条件が細かい 能力値や供給先まで要件がある 予算額に達した時点で締め切られる 後払い前提で資金繰り計画が必要
流れを図にしました。まず押さえるべきは、jGrantsでの申請にはGビズIDが必要という点です。GビズIDが取得できない場合は電子メールで申請する、という案内も資源エネルギー庁の公募の中で示されています。
補助金申請の流れ 1 GビズIDを取得
jGrantsでの申請に必須。取得できない場合は電子メールで申請する案内もある
2 公募説明資料を確認
交付規程・公募説明資料・申請様式は都市ガス振興センターホームページに掲載
3 建物と設備の条件を確認
公共性の高い建物か避難所系か、ガス供給方式と能力値をチェック
4 申請書類を作成
災害時に寄与する屋内空間の床面積や供給先を具体的に示す
5 jGrantsで申請
募集は令和8年9月25日から。予算額に達した時点で締め切られる
えっ、メールでもいい場合があるんですね。でも基本はjGrants経由と。
そうです。そしてjGrantsはGビズIDの取得が必要なので、ここでつまずく人が多い。IDの発行には時間がかかることがあるので、公募期間が始まる前に準備しておくのが安全です。
交付規程、公募説明資料、申請様式は都市ガス振興センターホームページに掲載されています。まず公募説明資料で要件と対象経費を確認し、申請様式に沿って書類を作ります。
設備の仕様、設置する建物の情報、停電時にどこへ何を供給するのか。そういった点を具体的に書けるかどうかが勝負です。「なんとなく導入します」では通らなさそうですよね。
たしかに。建物の条件や能力の条件が細かいから、そこを数字で示せないと厳しそうだ。
そのとおりです。申請書類を作る前に、設置場所と設備仕様を固めておくことをおすすめします。
審査を意識した3つのポイント
設置する建物がどの区分に当てはまるかを最初に確定させること。停電時に空調・照明・電気コンセントのどれを避難スペースへ供給するのかを具体的に描くこと。そして、CGSなら単機発電能力25kW以上、GHPのみなら室外機2台以上かつ冷房能力合計112kW以上という能力条件を、設備仕様で満たすことです。
なるほど、停電時の供給先を具体的に描けているか、がキモなんですね。
そう思います。あとは建物の区分に当てはまるかを先に確認すること。公共性の高い建物なのか、避難所系のaからfのどれかに当てはまるのかで、必要な条件が変わってきます。
いつまでに何をすればいいか、整理してもらえますか?
公募までのスケジュール 令和8年4月13日〜5月15日
執行団体の公募
資源エネルギー庁が交付事務を行う団体を公募
令和8年6月2日
執行団体を決定
一般社団法人都市ガス振興センターが採択
令和8年9月25日
三次公募スタート
事業者からの申請受け付け開始
令和8年11月30日
jGrants掲載の募集期限
公式は予算終了まで。予算額に達した時点で締め切られる
令和8年9月25日スタートで、11月30日が目安、でも予算が埋まればそこで終わり、と。
はい。だから早く出すのが鉄則です。予算額に達した時点で締め切られるので、締切日を信じて後半に出すのはおすすめしません。
最後に、この制度の特徴をひとことで整理してもらえますか?
図にしました。設備・建物・供給先の3つが連動しているのがこの制度の面白さです。
この補助金の3つの特徴 停電対応設備が対象
停電しても動くCGSとGHP、専用計測装置を導入する事業者への補助
避難スペースへの供給が条件
停電時、空調・照明・電気コンセントのうち2つ以上を供給できること
法人限定で要件が細かい
協定の有無、機器の能力値、設置する建物の区分まで確認される
なるほど! 設備だけ見てもダメで、建物と停電時の使い方までセットで考えないといけないんですね。
そこがこの補助金の一番おいしいところであり、一番難しいところでもあります。
ここまでの話で気になった点を聞きます。やっぱり法人じゃないと無理ですか?
要件に「事業を営む法人を対象とする」とあるので、法人が対象です。個人事業主の扱いについての記載は、この情報の中では確認できません。公募要領で要確認です。
予算が早くなくなったら、その時点で終わりなんですよね?
はい、予算額に達した時点で締め切ります、と明記されています。だからこそ、GビズIDの準備を先に済ませて、期間が始まったら早めに申請するのが安全です。
準備だけ先に進めておく、と。それが一番効きそうだ。
分からないことがあったら、どこに聞けばいいですか?
一般社団法人都市ガス振興センターです。電話番号は03-6435-7692。公募説明動画も都市ガス振興センターホームページで公開されています。
1 停電時にも動くCGSとGHP、専用の計測装置を合わせて設置するのが対象 2 補助率は補助対象経費の3分の1以内。上限はCGS中圧2億4000万円、CGS低圧6000万円、GHP6600万円 3 対象は事業を営む法人。天然ガスを主原料とするガスの導管供給が前提 4 建物は公共性の高い建物か、協定などの条件を満たす避難所系の建物 5 募集は令和8年9月25日から。予算額に達した時点で締め切られる 6 問い合わせは一般社団法人都市ガス振興センター 03-6435-7692
項目 内容 制度名 【三次公募】令和8年度 天然ガス利用設備による強靱性向上対策事業費補助金 実施機関(執行団体) 一般社団法人都市ガス振興センター 募集期間 令和8年9月25日から(jGrants掲載は令和8年11月30日まで、公式は予算終了まで) 対象地域 全国 対象者 事業を営む法人 補助率 補助対象経費の3分の1以内 補助上限 停電対応CGS:中圧2億4000万円/低圧6000万円、停電対応GHP:6600万円 公式URL https://www.jgrants-portal.go.jp/subsidy/a0WfQ000003ENsfUAG 問い合わせ先 一般社団法人都市ガス振興センター 03-6435-7692
なるほど! 停電しても避難スペースの空調・照明・コンセントを守る、という目的がはっきりしている制度だと分かりました。法人で、ガスの導管が来ていて、建物の条件に合うなら、早めに動くべきだと。
そのとおりです。まずは自分の建物がどの区分に当てはまるのか、そして中圧か低圧か。そこを確認するところから始めてください。分からないことは都市ガス振興センターに直接聞くのが早いですよ。