今日は「令和8年度第2回 創業助成事業」をがっつり深掘りします。室谷さん、これ、ひとことで言うと何なんですか?
東京都と公益財団法人東京都中小企業振興公社が実施している、創業初期の経費を助成する制度です。目的は都内開業率の向上。都内で創業予定の個人、または創業から間もない中小企業者等に対して、創業初期に必要な経費の一部を助成します。
公募情報では「創業後5年未満の中小企業者等」とされています。つまり、まだ開業していない人も、始めて5年未満の人も入ってくる。
そこが大きいんです。開業準備の段階から申請できる制度は、なかなか貴重ですよ。
創業助成事業の特徴創業予定でも申請できる
都内での創業を具体的に計画している個人も対象。開業前から動ける
創業後5年未満も対象
一定の要件を満たす中小企業者等が対象
東京都と公社が実施
東京都及び公益財団法人東京都中小企業振興公社による制度
電子申請のみ
Jグランツによる受付。窓口持参・郵便・メールは不可
4つ出ましたね。創業予定でもいける、5年未満もいける、東京都と公社、そして電子申請だけ、と。
この4点をまず頭に入れておけば、この先の話がスッと入ります。特に「創業予定でも可」と「電子申請のみ」は、後で効いてきます。
助成限度額は上限400万円、そして下限100万円とされています。助成率は3分の2以内です。
大きいですね。たとえば対象経費が600万円なら、その3分の2で400万円。ちょうど上限に当たります。
マジですか。じゃあ600万円分の投資計画を立てるイメージ?
あくまで一例です。ただし後で話すように、事業費・人件費と委託費で枠の考え方が分かれています。そこを理解しないまま組み立てると、申請の形が崩れてしまいます。
公社のページには、事業費及び人件費を助成対象とする助成金の助成限度額は上限300万円、委託費を助成対象とする助成金の助成限度額は上限100万円、と書かれています。全体の上限400万円に対して、こうした区分があるという理解です。
そうですね。そしてもう一つ見落とせないのが、「事業費を助成対象経費として申請する必要がある」という点です。委託費だけ、人件費だけ、という申請はできない。
はい。賃借料や広告費といった事業費を軸に組み立てていく。順番としては、事業費を固めてから人件費や委託費を足していくイメージが合っています。
表にすると一気に見えますね。募集期間が10日間しかないのが気になる……。
そこは後半でがっつり触れます。まずは助成の考え方を固めましょう。
たとえば対象経費を300万円にしたら、いくら助成されます?
3分の2なので200万円ですね。上限にも下限にも収まっています。
下限が100万円とされていますから、助成額が小さすぎる計画は制度の想定から外れてしまう。ある程度まとまった投資を前提に考える必要があります。
うーん、つまり本気の創業計画が要るってことか……。
そういうことです。お試しの申請には向いていません。ここは覚悟を決めて臨むところです。
対象者は「都内で創業を具体的に計画している個人、または創業後5年未満の中小企業者等のうち、一定の要件を満たす方」でしたよね。個人でも本当に通るんですか?
通ります。公社のページにも創業前の個人についての案内があります。ただ個人の場合は、個人事業税の納税地が都内であることが要件に入っています。
そのとおりです。あと法人で引っかかりやすいのが、他の個人事業主や他の法人の実施事業の承継・譲渡に該当するケース。これは申請要件を満たしていないケースとして明示されています。
事業を買い取って始める、みたいなのはダメなんですね。
そこは対象外になります。ゼロから立ち上げる人を応援する制度だと考えれば筋が通ります。
個人事業主と法人で違うポイント- 個人事業税の納税地が都内であること
- 創業前の個人でも申請可
- 経営経験は通算5年未満が必要
- 本店の登記が都内であること
- 履歴事項全部証明書が必要
- 経営経験は通算5年未満が必要
分けて見るとスッキリしますね。共通なのは「経営経験が通算5年未満」のところか。
そうです。ここは個人も法人も同じ条件がかかります。そしてここが一番の落とし穴なんです。
落とし穴? 開業届を出して5年未満ならいいんじゃないんですか?
そこが誤解ポイントで、公社は「法人登記や開業の届出から5年未満であるだけでなく、個人事業主・法人の登記上の代表者としての経営経験が通算5年未満である必要がある」と書いています。
そうなんです。過去に別の会社の代表をやっていた期間も通算される。だから開業したてでも、以前に代表をしていた期間が長いと要件を満たさないことがあります。
申請要件を満たしていないケースとして明記されていますから、必ず自分の経歴を棚卸ししてから動いてください。
公募情報では、漁業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸業・郵便業、卸売業・小売業、金融業・保険業、不動産業・物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉など、かなり広い範囲が挙がっています。
いけます。加えて、従業員数の上限は300名以下とされています。
300名以下なら、かなり多くの会社が当てはまりそうですね。
そうですね。ただし自分の業態がどれに当てはまるかの細かい判定は、募集要項と確認チャートで確かめるのが確実です。
はい。指定されたいずれかの創業支援事業を利用していないと申請できません。これは「申請要件を満たしていないケース」の1番目に挙げられています。
要ります。指定された支援を利用していても、提出した証明書類が所定の申請要件確認書類と違えば、原則として書類審査で不通過になります。
公社は、要件の一つを満たすのに概ね3か月以上かかると案内しています。募集が始まってから慌てても間に合わないことがあるので、そこが一番の時間泥棒です。
対象になりそうかざっくり確認都内で創業予定、または創業後5年未満か?
はい経営経験が通算5年未満か確認
指定の創業支援事業を利用しているか確認
募集要項で全要件をチェック
分岐で見ると、自分がどこにいるか分かりやすいですね。
まず入口で切られる人が多いので、最初にここを確認してください。そのうえで、経営経験と創業支援事業の利用、この2つを潰す。順番としてはこれが最短です。
対象経費を教えてください。何に使ったお金が助成されるんですか?
賃借料、広告費、器具備品購入費、産業財産権出願・導入費、専門家指導費。この5つが挙がっています。
賃借料と広告費は創業初期の定番ですよね。器具備品も入るのはありがたい!
そうですね。委託費は市場調査・分析費、人件費は従業員人件費とされています。ここまでが対象経費の全体像です。
対象経費と、確認が必要なもの- 事業費:賃借料
- 事業費:広告費
- 事業費:器具備品購入費
- 事業費:産業財産権出願・導入費
- 事業費:専門家指導費
- 従業員人件費
- 委託費:市場調査・分析費
×デメリット
- 事業費を助成対象経費として申請する必要がある
- 対象外経費の一覧は公募情報に記載がない
- 区分の判断は募集要項で要確認
そう見てください。右側に書いたとおり、公募情報では「対象にならない経費」の一覧までは示されていません。
じゃあ、対象外のものはどこで確認すればいいんですか?
公社の募集要項で確認してください。勝手に「これはダメだろう」と決めつけて外すのも、逆に「たぶん大丈夫」と入れてしまうのも危険です。
さっき「事業費を助成対象経費として申請する必要がある」と聞きました。これ、なぜ大事なんですか?
委託費や人件費だけでは申請の形にならない、という意味です。事業費が入っていない計画は制度の枠に乗らない。だから最初に事業費を固める必要があります。
あります。事業費を軸にして、そこに人件費や委託費を組み合わせる。そして最後に全体が上限400万円の枠と、事業費・人件費300万円、委託費100万円の区分に収まっているかを確認する。
なるほど! 経費の組み立ては設計図を描く感じですね。
まさに設計図です。ここが雑だと、審査の前に自分の計画が崩れてしまいます。
申請の手順を教えてください。最初に何をすればいいですか?
まずGビズIDプライムのアカウント発行です。Jグランツを利用するには事前にこれが必要で、発行には審査で1か月程度かかる場合があると案内されています。
詰みますね(笑)。しかも申請に利用したGビズIDは絶対に削除しないでください、という注意があります。
審査や交付のやり取りで使うからですね。手続きが終わるまで触らないのが無難です。
申請から助成までの流れ- 1
創業支援事業を利用する
指定されたいずれかの支援の利用が要件。満たすのに概ね3か月以上かかる場合あり
- 2
GビズIDプライムを取得
発行に審査で1か月程度かかる場合あり。申請に使ったIDは削除しない
- 3
募集要項と電子申請マニュアルを確認
対象経費・申請要件・必要書類を把握
- 4
申請書を作成しPDF化
シートの漏れやページの見切れに注意
- 5
Jグランツでフォーム入力とアップロード
電子申請のみ。持参・郵便・メールは不可
- 6
締切前に提出を完了
令和8年10月8日23時59分まで。締切はアクセス集中に注意
- 7
交付決定(令和9年3月1日予定)
決定後、対象期間内で事業を実施
7ステップ。最初の「創業支援事業の利用」が一番時間を食うんですね。
そうなんです。ここが3か月以上かかる場合があるので、GビズIDの1か月と合わせると、動き出しが遅いと募集期間に間に合いません。
いいえ、電子申請(Jグランツ)のみです。窓口への持参、郵便、電子メール等による提出はお断りすると明記されています。
なるほど。Jグランツ上のフォーム入力と申請書のアップロード、両方やるんですね。
そのとおりです。フォームの入力、申請書類のPDF化、アップロードといった作業について、公社はサポートを行っていないとしています。自分でやり切る必要があります。
そこは自力か……。事前に電子申請マニュアルを読んでおくべきですね。
「申請にあたっては、募集要項、電子申請マニュアルを必ず確認」と書かれています。段取りも含めて先に目を通しておくのが得策です。
提出データはPDF形式に変換して提出します。PDF以外(Word、Excel等)で提出して文字化けやデータ破損があっても、受理したデータで審査されます。
だからこそ、変換後に中身を開いて確認してください。シートの漏れ、ページの見切れは要注意です。
「不備があると原則として書類審査で不通過」って書いてありました。具体的に何が危ないんですか?
公社が挙げている不備の多いポイントは6つです。1つめは、申請書(Excel)の一部だけをPDF化してしまうケース。シートの漏れやページの見切れに注意してください。
2つめは、確定申告書の提出が必要な場合に、貸借対照表や損益計算書等の一部の書類が不足しているケース。3つめは、法人で履歴事項全部証明書ではなくインターネットで取得した登記情報を出してしまうケースです。
国内の法務局で発行した、発行後3か月以内の履歴事項全部証明書が必要です。
4つめは、納税証明書の税金の種類や年度の間違い。そして納税証明書ではなく領収証書等を出してしまうケースです。法人税や所得税等、国税の納税証明書を出すケースが多い、と注意書きがあります。
なりません。5つめは、指定された創業支援事業の利用を証明する書類が、所定の申請要件確認書類と異なるケース。6つめは、指定様式以外の添付資料を使っているケースです。
例として「反社会的勢力排除に関する誓約事項(申請書別紙)」は公社指定のものを使う必要がある、と挙げられています。
不備とは別に、そもそも対象外になるケースもありましたよね。
5つ挙がっています。指定された創業支援事業を利用していない、代表者の経営経験が通算5年未満でない、他の個人事業主や法人の実施事業の承継・譲渡に該当する、法人で本店の登記が都内でない、個人事業主で個人事業税の納税地が都内でない。
でも全部、申請前に自分でチェックできる項目です。順番に潰していけば怖くありません。
「内容で勝負する前に、形式で落ちるな」ということですね。
まさに。中身の審査にたどり着けないのが一番もったいない。書類のチェックは誰かにダブルチェックしてもらうのがおすすめです。
令和8年9月29日(火)10時00分から、令和8年10月8日(木)23時59分までです。なお第1回は令和8年4月7日から4月16日で、すでに受付終了しています。今回が令和8年度の2回目の受付です。
短いです。しかも申請フォームは申請受付期間中のみ表示されます。期間外は開かないので、そこも覚えておいてください。
公社もJグランツも、「申請期間の締切日はJグランツへのアクセス集中が予想され、書類の提出に時間がかかる可能性があります」と注意しています。締切を過ぎてしまうと書類は受理できません。
募集から助成対象期間まで令和8年9月29日
第2回 申請受付開始
10時00分からJグランツで受付
令和8年10月8日
申請締切
23時59分までに提出完了。アクセス集中に注意
令和9年3月1日
交付決定日(予定)
ここから助成対象期間が始まる
令和9年8月31日
最短ケースの終了
対象期間6か月の場合
令和11年2月28日
最長ケースの終了
対象期間2年の場合
交付決定が令和9年3月1日予定で、そこから6か月以上2年、と。
そうですね。最短のケースは令和9年3月1日から令和9年8月31日まで。最長のケースは令和9年3月1日から令和11年2月28日までです。
2年ってけっこう長い! じっくり事業を立ち上げられますね。
ただし「事業に必要な期間」とされていますから、自分の計画に必要な長さをきちんと説明する必要があります。長ければいい、というものでもありません。
他の補助金と併用できるかって、どこに書いてありますか?
今回いただいている公募情報の中には、併給の可否についての記載はありません。ですから「公募要領で要確認」です。勝手に大丈夫と判断しないほうがいいですよ。
そうです。窓口に確認すれば済む話です。あわせて申請要件も募集要項で全部確認してください。ここは省略しないほうが安全です。
自分で書類をそろえる自信がないときは、代理申請ってできますか?
公募情報では代理申請が可能とされています。ただし、申請に使ったGビズIDを削除しないこと、提出データはPDFにすることなど、基本ルールは同じです。
代わりにやってもらっても、GビズIDは生きている必要がある、と。
そういうことです。それと公社は電子申請の作業サポートを行っていないとしていますから、誰にどこまで頼むかは早めに決めておくのがいいですね。
公益財団法人 東京都中小企業振興公社、事業戦略部 創業支援課 創業助成担当です。電話番号は03-5220-1142。受付時間は原則、平日10時00分から17時00分までで、土日祝日は受け付けていません。
はい。制度名は「令和8年度第2回 創業助成事業」、公式の募集ページはJグランツです。募集要項、電子申請マニュアル、申請書もあわせて確認できます。
ありがとうございました! 今日の話、まとめてもらえますか?
きれいにまとまりました。今日から動くべき人が多いですね。ありがとうございました!
ありがとうございました。まずは募集要項と、創業支援事業の利用要件の確認から始めてください。